2017年06月30日

Kバレエ2017「ジゼル」浅川&宮尾

2017年6月25日(日)13:00 東京文化会館
ジゼル 浅川紫織
アルブレヒト 宮尾俊太郎
ヒラリオン 石橋奨也
ミルタ 矢内千夏
ペザント 中村春奈 井澤諒

Kバレエシネマのバヤデールでのガムザッティの浅川さんが、セリフが聞こえてくるような見事なマイムと踊りだったので、これはぜひ彼女のジゼルが見たいと思い、チケットを取った公演です。

第1幕は、おとなしくて目立たないジゼル…とう造形を狙っていたようで、それが華やかな美貌で強さを感じる彼女のキャラクターとはなじまないように思えました。踊りは軽やかでよかったですが、アルブレヒトの宮尾さんとの交信もあまり感じず。彼女は本当に誰かを強く好きになったことがあるのか、どこか本人のクールさが出てしまい、失恋して狂うジゼルにリアリティがなかったです。

ペザントがKバレエではパ・ド・シスとして6人で踊られますが、中心になるペアの中村春奈さんは、やわからかで優しく美しく、とてもステキでした。有名なペザントの女性ヴァリエーションがこの版ではないのが残念。
Kバレエでは、有名どころの古典作品を熊川さんが再演出していますが、ジゼルに関しては、スタンダートな版とそれほど改変していないし、美術衣装はピーター・ファーマーで、村人たちは茶色を基調とした地味なもの。熊川さんの作品としては珍しいくらいの古典主義です。
その中でも、秀逸な演出は、第2幕のジゼル登場シーンで、ジゼルが中央に進むと、両サイドからスモークがたかれ、その中を他のウィリーたちが取り囲むようにして出てくるところです。幻想的で美しかったです。

第2幕は浅川さんは、そのクールビューティがしっくりきて、感情を感じさせないような静かな踊りで圧倒しました。「静か」な踊りとは、余分なものがそぎ落とされ、精神が集中された状態です。
アルブレヒトが、精霊になったジゼルを頭上にリフトする所があります。
普通は、さっと一気に頭上にジゼルを横たえるように一瞬で持ち上げます。その時にいかに軽く見せるかが男性の腕の見せ所なのですが、宮尾さんの場合は、一気に、ではなく、ゆっくりと頭上にいくまでの過程がスローモーションでみるように持ち上げていました。一気にやるよりもゆっくりスムーズにやる方がはるかに難しいと思いますが、宮尾さんは見事でした。
力を込めてあげているようには全く見えず、ジゼルが体重がないように軽く見えました。
アルブレヒトの一幕の演技、あまり心に響かなかったのですが、このリフトは感心致しました。
彼は熊川さんと違って、オレ様的性格でもないし、こういう縁の下の力持ち的な役柄(サポートだけ)とかの方が光るのかもしれませんね。
第2幕のアルブレヒトのヴァリエーションも、だいたいはいいのですが、途中のピルエットだけ少しもたついてしまって、いったい何年主役やらせてもらっていてこの程度なんだとがっかりもしたんですけど。

第1幕が終わった時点では、やはり祥子ジゼルを選ぶべきだったかなと少々後悔したのですが、第2幕は素晴らしかったので満足です。



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2017年06月14日

横浜バレエフェスティバル2017 初日

2017年6月9日(金)19時 神奈川県民ホール
第1部フレッシャーズ・ガラ
ドンキホーテ バジルのソロ 松浦祐磨
ラ・バヤデール 影のソリスト第1ヴァリエーション 大岩詩依
SOLI-TER 振付ジョゼ・マルティネズ オーギュスト・パライエ
ラ・バヤデール ソロルのヴァリエーション 二山治雄
Mononoke 振付シディ・ラルビ・シェルカウイ 加藤三希央
Les Brillants ジュンヌバレエYOKOHAMA 振付 遠藤康行 ピアノ 蛭崎あゆみ

第2部ワールドプレミアム
スターズ&ストライプス 二山治雄 竹田仁美
アラジン 飯島望未 八幡顕光
Que Seraより〜 柳本の場合 〜*+81新作 振付 柳本雅寛
ジゼル 倉永美沙 清水健太
ジュリエットとロミオより 振付マッツ・エック 湯浅永麻 アントン・ヴァルドヴァウワー
眠れる森の美女 近藤亜香 チェンウ・グオ

横浜バレエフェスティバルは芸術監督の遠藤康行さんが中心となって始められた手作り感あふれる企画で、今回で三年目。箱が大きくなり、二日間というのもチャレンジング。
オーディションやワークショップを開催して若人の育成も行い、日本ではなかなか見られないコンテの新作を上演したりと、商業主義ではできないことをしていて素晴らしいです。
集客が心配ですが、客層はやはりバレエを習っている人が多いようです

バレエファンの間で注目されている二山君とか、久しぶりの八幡さんのアラジンとか、倉永さんのジゼルとかがお目あてでありましたが、終わってみて一番印象に残ったのは若いダンサーたちでした。
特にトップバッターの松浦祐磨さん。中学生2年生とはとても思えない落ち着きぶりと、確かなテクニック、身長も170以上ありそうだったし、このままぐんぐんと良き成長をとげて頂ければ、すごいダンサーになりそうです。
遠藤さんがロゼラハイタワーで見て気に入って連れてきたオーギュスト・バライエは身長2メートルちかくあるとか。コンテは上手でした。クラシックはどうなのか、わかりませんが、今やバレリーナの巨大化が進むにつれ、身長の高い男性ダンサーは世界的に不足ぎみなので、彼の将来も気になります。これをきっかけに日本に来たらどうでしょうね。クラシックが踊れてサポートができれば、新国立劇場とか、Kバレエとかで採用してもらえそう。
オーディションで選ばれたジュンヌバレエYOKOHAMAのメンバー(川本真寧 縄田花怜 中島耀 中村りず 
竹内渚夏 丸山萌 亥子千聖 生方隆之介)たちも、素直な踊りで身体能力も高く、すがすがしかったです。
二山さんは、一時より太ももがすこし細くなった?パリオペラ座での経験は役に立ったのでしょうか。以前ほど開脚を強調した踊りではなくなっていたようです。
ソロルのヴァリエーションは良かったですが、スターズ・アンド…の衣装、特にブーツは、脚の短い日本人体型には苦しいと思います。壊滅的にスタイルが悪く見える。彼の今後の去就が気になります。日本のバレエファンに注目されているのだから、Kバレエとかに入ったらどうなんでしょうか。身長が高くないから相手役を選ぶけど、みんなが見たいと思うダンサーなのだから。

アラジンを踊る八幡さんを見れて良かった…八幡さんはもう新国立退団するっていう噂がありますし、このパドドゥは男性が踊るところが少ないけれども、八幡さん、踊りたかったのかな…と感じました。彼の代表作ですしね。お相手の飯島望未さんは初めて見たのですが、清楚でたおやか、それでいて芯の強さも感じられるようなステキなバレリーナで、八幡さんよりもむしろ飯島さんに魅了されました。アラジンはいろんなダンサーで何度も見ましたが、新国立劇場で踊られるのと少しニュアンスが違っていて、「ああ、こんな風に踊るのもあるんだなぁ」と感心しました。飯島さんの作る世界が美しかったです。

柳本さんの作品はいつも笑わせてくれるのですが、今回は幕があくと、アラジンの帽子がポツンと置いてあって、それをネタにして踊り、途中で八幡さんが回収に来て、面白かった。他のダンサーとのコラボレーションが、普通のガラとは違うところ。会場もこの作品が一番受けていた。

そのお笑いの雰囲気が残る会場を一気にジゼルの世界に変えてしまった倉永&清水組はさすがでした。まるで体重がないか空気のようにふわふわとただようジゼル、清水さんの職人技のサポートが光っていました。

マッツ・エックのジュリエットとロミオ。2014年に木田真理子さんがこの作品を踊ってブノワ賞を受賞したことが話題になりました。
ジュリエットもロミオも、簡素でシンプルな衣装で、クラシックバレエとはまったく違うアプローチで踊ります。踊るというよりは、じゃれる。キスする寸前まで近づいて、離れる。子猫のようにくっついたり、追いかけたり。好きな人といるだけで、幸せ…っていう気持ちがあふれてくるような振付でした。

ラストの作品、眠れる森の美女は、オーストラリアバレエの二人が格調高く踊りました。

この公演、オープニングがあって、それぞれのダンサーたちがポーズをとって幕開きなのですが、フィナーレも遠藤さんの振付で、「テーマとヴァリエーション」の音楽に載せて、ダンサーが総出演します。
このフィナーレが良かったです!ジュンヌバレエのダンサーが客席に降りてきたりもあって盛り上がりました。お得感がありました。

会場が大きすぎるので、もう少しアットホームな大きさの劇場でやった方がいいのではないかという事と、私の大好きな米沢唯さんが今回は出演されていなかったのが残念でしたが、来年の企画にも期待しています。







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2017年06月12日

ボリショイバレエ2017「白鳥の湖」ステパノワ&オフチャレンコ

2017年6月8日(木)13:00 東京文化会館

オデット/オディール ユリア・ステパノワ
ジークフリード王子 アルチョム・オフチャレンコ
悪魔ロットバルト ミハイル・クチュチコフ
道化 ゲオルギー・グーセフ
王妃(王子の母)ヴェラ・ボリセンコワ
花嫁候補たち
ハンガリー アナ・トゥラザシヴィリ
ロシア アナスタシア・デニソワ
スペイン ダリーヤ・ポチコーワ
ナポリ ブルーナ・カンタニェデ・ガッリャノーニ
ポーランド オルガ・マフチェンコワ
3羽の白鳥 オルガ・マルチェンコワ マルファ・フョードロワ アリョーナ・コワリョーワ

グリゴローヴィッチ版の白鳥は初めて見ましたが、マイムが少なく、踊りまくり。
ダンサーのレベルがとても高いので、群舞の見ごたえがあって楽しい。
衣装もゴージャスで、さすがボリショイ!!

日本に初お目見えのオフチャレンコ、「おさる」とか言われてますが、なかなかどうしてハンサムじゃないですか!メイクの効果か猿顔には全然見えませんでした。
登場してすぐのソロでは、ふわっと軽く高い、しなやかなジャンプで、心の中でワォ!と叫んだぐらい。筋肉の質が柔らかいようで、アントルラッセの後ろ脚がとても高くあがるし、ランベルセがきれい。
男性としてはやや華奢な体つきですが、ノーブルなダンサーだと思います。
もっとオレ様かと思っていたのですが、上品でした。

オデット/オディールのステパノワは、すごく体を絞っているようで、胸のあばら骨が浮いて見えるほどです。終始丁寧に踊っていましたが、緊張感が伝わってきて、なんというか見ている側としては、初主役のダンサーを応援しているような気分になりました。湖畔のシーンで、斜めに並んだ白鳥たちに沿ってアラベスクとリフトを繰り返すところで、王子のサポートがちょっとイマイチだったのか、一瞬緊張感が途切れそうになったので、「がんばれ!集中して!」と念を送っていたところ、なんとか持ち直しました。

経験不足なのか、主役としてのオーラがまだステパノワには身についておらず、踊りはすべてなんとかこなしていましたが、役に入り込むとか、自分自身の解釈とかとはほど遠い出来でした。
でもお顔は美しくて好みのタイプだし、脚のラインやプロポーションも過不足はないので、これから精進していけば立派なプリマになれそうです。
オフチャレンコも、もう少し愛ある態度で接してあげればいいのに…
彼は最初のソロが一番良くて、後半になるに従い、普通になってしまいました。お仕事モード?オデットに対する情熱、バレエに対する情熱があまり感じられなかった。

グリゴローヴィッチ版の特徴は、踊りまくるところと、ロットバルト(悪の天才)が、王子の心の闇の部分の具現化なんだそうです。私が感じたのは、通常の版だとロットバルトは実在のものとして描かれていて、舞踏会ではオディールの父として現れますが、この版では、ロットバルトが見えるのは人間では王子だけ(あとはオデット/オディール)で、他の人にはその姿は見えてないようでした。
ロットバルトは最初から、王子を破滅させる、あるいは深く傷つけるのを目的としているようで、オデットはそのための道具。むしろ自分の娘のオディールを第1幕のオデットに化けさせて、王子を誘惑させた、という解釈も成り立つような気がしました。

ラストは悲劇です。オデットを裏切った王子を一人残し、ロットバルトはオデットを連れ去ります。
呆然とした王子がひとりポツンを取り残される、寂しい幕切れ。
旧ソ連時代は、国策として、ラストはハッピーエンドにしなくてはならなかったそうで、グリゴロ版も当時はハッピーエンドでしたが、その後バッドエンドに変えられたそうです。
チャイコフスキーの音楽は、悲劇で終わるのにふさわしいと思うので、それはそれでいいのですが、それまでが賑やかしいので、なんだか不釣り合いな幕切れだと感じてしまいました。

白鳥の湖はいろいろなバージョンを見てきましたが、ボリショイのグリゴロ版は、ドラマティックさよりも、グランドバレエとしての楽しさを重視していて、それはバレエが日常的な娯楽に溶け込んでいるロシアならではの、芸能として昇華しているもの。
日本ではバレエは裏芸能界だそうで、テレビ放映もめったにないし、バレエを見ないで一生を終わる人も多い。でもロシアではバレエダンサーは、日本で言うと野球選手みたいに人気があって、テレビにもしょっちゅう出ていて知名度も高い。日本のテレビタレント並み。
その文化事情の違いを、さまざまと感じさせるようなボリショイ公演。

花嫁候補たち、スペインボーイズなど、日本ならば主役を踊れるような実力と容姿の持ち主たち。
ここぞとばかりに自己主張して100%のパフォーマンスを見せる。
面白くないわけがない。
踊っていない場面は演奏がやたら早くなる。踊りにあわせて演奏がやたら遅くなる。
こんなに遅く演奏したら音楽がわからなくなるんじゃないかってくらい。
そしてダンサーが退場する時の演奏は速いこと速いこと、ついていくのが大変。
オディールの見せ場のフェッテだけは高速演奏。めちゃめちゃ速かった。
ステパノワは最初ダブルで、あとはシングル。でもその速さについていっていた。

花嫁候補がこれでもかってくらい踊りまくる。
ハンガリー、ロシア、スペイン、ナポリ、ポーランド。ロシアのデニソワはかわいい。
スペインのポチコーワの横っ飛びがすごい。こんなお転婆な花嫁ってどうよ。
道化のグーセフはすごいテクニシャン。
群舞の踊っている間を、スパイスのように縦横無尽に駆け抜けて踊る。
ワルツなどの群舞って、それだけだとつまらなくなりがちだけれど、道化のテクニックを利かせることで、場面を引き締めている。

ドラマとしてのつじつま合わせとかにはこだわっていないみたい。
白鳥の湖のストーリーなんて、ロシアでは100%の人が知っているという前提。
普通の版と違うのは、第1幕で王妃が王子に誕生日プレゼントとして贈るのは弓ではなく、剣とキラキラの宝石がついた首飾り。だから弓をもらって湖に行こうというのではなく、なんとなくロットバルトの導きによって湖にたどりついた感じ。最初から王子を操り、一緒にシンクロして踊り、王子を罠にはめる。
ロットバルトが王子の闇の具現化だとすると、あえて堕ちるとこまで堕ちてやろうというような人間の心理ってことなのかな。
そして最後はそんなことしても何にもならない。
自分の闇にとらわれるのはむなしい、で終わるということ?

この日のソワレがザハロワ様登場で、素晴らしい演技だったらしいけど。
ザハロワのようなスーパーなプリマが出てしまうと、そこに意識が集中してしまって、他の素晴らしいダンサーたちがかすんでしまうという現象も起きるので、このマチネはボリショイのたくさんのダンサーたちを堪能するには良い公演だったと思います。











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2017年05月06日

新国立劇場バレエ「眠れる森の美女」米沢&ムンタギロフ

2017年5月6日(土)14:00 オペラパレス
オーロラ姫 米沢唯
デジレ王子 ワディム・ムンタギロフ
リラの精 木村優里
カラボス 本島美和
誠実の精 寺田亜沙子
優美の精 丸尾孝子
寛容の精 飯野萌子
歓びの精 五月女遥
勇敢の精 柴山沙帆
気品の精 寺井七海
エメラルド 細田千晶
サファイア 寺田亜沙子
アメジスト 広瀬碧
ゴールド 渡邊峻郁
フロリナ王女 小野絢子
青い鳥 福岡雄大

昨年度新しく作られたウェイン・イーリング版の再演です。
この版が通常と違う大きなところは、
1.妖精さんが一人多い(気品の精)
2.王子がオーロラを目覚めさせた後に「目覚めのパ・ド・ドウ」がある。
3.結婚式のディベルティスマンに親指トムが出てくる
あたりなのですが、特筆すべきところは、舞台装置が豪華です。
まるで本物のヨーロッパの王宮のようなセットです。お金かかってそう…

衣装もよく見ると細かいディテールが凝っていたり、玉虫色の布地を多用していたりして豪華なのですが、そのセンスはどうかと思うところも多いです。
妖精さんとリラのお付きの衣装がほとんど一緒なので見分けがつけにくいことと、森の精の衣装が鮮やかな緑なのがジャングルブックか!とツッコみたくなるし、遠目の雰囲気がカラボスとかぶっているので、「森の精はカラボスの手下なのか?」と感じます。

秀逸なのはカラボスの衣装と乗り物。大きなクモなんです。これはハリーポッターを連想させましたが、いいアイデアだし、すごく効果的でした。そう言えば、マンガ「テレプシコーラ」の中で、カラボスをクモに見立てて、六花が歌舞伎のクモの糸を出すところがありましたが、あれ、まんま使われています。パクリ?(笑)

「目覚めのパドドゥ」、これは要らないと思います。必然性がありますか?いきなりネグリジェでオーロラが踊るって…百歩譲って、これはオーロラの心の中の情景だとしても、振付が様式美なので固すぎます。逆に心の中の情景とわかるように、ネオクラシックな振付(ロミジュリみたいな)にすればいいかもしれません。とにかくこのシーンは、製作者の「いいだろう、これ。うっとりするだろう」という押しつけがましさでやってるだけで、まったく面白くなく、前回同様、眠くなりました。
眠りの森の美女は、プティパのクラシックの様式美で貫くところがいいのです。
こういう中途半端なのはカットして欲しいです。

6人目の妖精さんは、狩りのシーンの音楽を利用していますが、今日踊った寺井さんが、それはもう上品で優雅でしたので、これはこれで、よろしいです。
親指トムは、八幡さんへのあてがきなのかもしれませんが、常に「テクニックに優れているけれども王子には身長が足りないダンサー」という人材はいるので、まあこれはこれで、よろしいです。ただ、八幡さんはプリンシパルなんですよね。プリンシパルが村人と親指トムって、役付き酷くないでしょうか。

私の理想としては、舞台装置はこのままで、目覚めのパドドゥはカットして、妖精とプロローグの貴族と、1幕の王様の変な帽子と森の精の衣装を変更してくれたら、なかなか豪華で新国立劇場にふさわしいプロダクションではないかと思います。
けれども、大金を支払って、海外の人に新制作をお願いするよりも、眠りだったら、超スタンダードなヴァージョンと振付で、舞台装置と衣装を凝ったつくりにするだけで充分だし、その方が日本人好みだと思うんですけどね。イーリング版じゃなくて、大原版でよかったのに。大原先生は自分のバージョン作らないつもりなのでしょうか。牧先生は白鳥とかバヤデールとかライモンダとか作りましたよね。はっきり言ってイーグリング氏なんて日本では無名だし、箔づけにならないですけどね。なんか裏があるのかしら。

プロダクションのことはさておいて、今日の公演ですが、
唯さんとムンタギロフさんは素晴らしかったです。
初演時の唯さんは、もっとお堅い感じ(格調高くいこうと意識していたのか)でしたが、今日はもっと優美で、音にピタッとはまって、ヴァリエーションにしびれました。
唯さんの踊りを見ると、純度の高い水を飲んだみたいにスカッとするんです。

唯さんが他日にカラボスをやるそうですが、唯さんがカラボスをやる意味って何でしょう。
演技力の向上のため?唯さんにカラボスって、あまり似合わない感じがするのですが…
むしろリラとか踊ってもらったらいいんじゃないかしら。
カラボスは木村優里さんが似合いそうです。
木村優里さんのリラの精は、あの花びらいっぱいのヘッドドレスをかぶってもなお小顔で、抜群のスタイルで美しいです。でもリラの精の慈愛のようなものは全く感じられません。
堂々としているから、そこはいいのだけれども、リラの精はもう少しベテランのダンサーに踊ってもらった方が良いとおもいます。

本島さんもプリンシパルだから、唯さんにもカラボスを踊らせて、この役はプリンシパルがやる役なんだと重要づける意味なのかもね。登場のシーンはいいけど、やっつけられるシーンが尻つぼみで、印象に残らない。
プリンシパルがやる役なら、フェッテを入れるとか、もうちょっと踊るようにしてほしい。

その他、印象に残ったことですが、
寺田亜沙子さんの誠実の精が素晴らしかった。上体をうまくつかってニュアンスをつけて、こんな風に踊れるなんて、研修生の時から見ているけれども、ダンサーとしてすごく今充実しているなぁと感じます。
もともとスタイル抜群だし、かわいいし、推しメンにしようかしら…と思っていたら、宝石でまさかのイタリアンフェッテ失敗!ありゃりゃ…

宝石の渡邊さん、横っ飛びジュッテが高くて幅広くて、びっくりするくらいでした。あのジュッテはすごい!

小野絢子さんのフロリナ、出てきた時のオーラがパっときて、これでは主役みたいになっちゃうなと思っていたのですが、ヴァリエーションはかわいらしくて、フロリナってこう踊るものだっていうお手本みたいでした。フロリナってふつう、主役一歩手前の人が踊る踊りだから、フレッシュな感じを期待しますよね。ちゃんと絢子さんはそれを理解していて表現していました。さすがバレリーナ脳の持ち主。









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2017年05月05日

東京バレエ団「ドン・キホーテの夢」沖&宮川

2017年4月30日(日)13:30 東京文化会館
今までは夏に「めぐろバレエまつり」という催しを行っていた東京バレエ団が、新たに上野でも「上野の森バレエホリディ」というイベントを開催。
子供向けのドンキホーテ公演と合わせて、上野公園でのフラッシュ・モブ、野外でのダンサー振付作品パフォーマンス、そして会館のホワイエではバレエ用品のお店や、バレリーナによるファッション・ショー、ティアラのワークショップ、初めてのバレエレッスン、裏方の仕事体験…など盛りだくさんな内容。
めぐろバレエまつりの10倍パワーで開催されました。

ホワイエでは、通常のチケットもぎりの位置がクロークのあたりまで後退し、公演チケットをもっていない人でも気軽にバレエ用品のお店を覗くことができます。
私は開演15分前くらいに着いたのですが、どのお店も大賑わいでした。
職業としてのバレエが定着しているとはいいがたい日本ですが、バレエを習う人口は多く、この盛況さを見ると、マーケットとして伸びていく期待が持てます。

キトリ 沖香菜子
バジル 宮川新大
ドン・キホーテ 木村和夫
サンチョ・パンサ 中村瑛人
エスパーダ ブラウリオ・アルバレス
キューピッド 足立真里亜

改訂振付のワシリーエフ氏が、ドンキのエッセンスをぎゅっと詰め込んで、子供でも絶対飽きないようにしたこの作品、年々ブラッシュアップされて、バレエというより、お子様向けミュージカルみたいな、優れたエンターテインメントになってきたように感じます。
今回は、馬の声をワシリーエフ氏が担当したそうで、カーテンコールにもワシリーエフ氏が登場してノリノリで踊っていました。
大人としては、見どころのオンパレードで、少しはしっとりしたところもないと息ができないほどなのですが、クラシックバレエとしての踊りもたっぷりあって、満足できます。
沖さんのキトリは気が強いというよりも、かわいらしいキトリ。宮川さんは踊りは文句ないけれどもお顔が大きいのがどうも…
アルバレスさんのエスパーダが、白いタイツがめちゃくちゃ似合っていて、カッコよかったです。
やはり外人だけあって脚の長さが段違い。190センチぐらい(実際はそんなに高身長ではないでしょうが)に見えました。
足立さんのキューピッドも、ジャンプも軽やかでキュートでした。
足立さんは、公演後のパフォーマンスで、秋山瑛さんと木村和夫さん振付の「ハミングバード」を踊りましたが、ふたりともかわいい系の美人で清潔感があってステキでしたね。
この作品では、サンチョパンサがお話しをしながら進行役を務めますが、中村さんは声も良く、観客つかみのタイミングも絶妙だし、バレエダンサーというよりプロの役者さんのようにお見事でした。
なんと、中村さんはこの公演を最後に東京バレエ団を退団なさったそうです。
「これからも東京バレエ団をよろしくお願いいたします!」ってカーテンコールで言っていましたね。
いい団員が辞めちゃうのは残念。
でも、7,8年前と比べて、すごく新陳代謝が進んでいるのはいいことかもしれません。


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2017年02月21日

新国立劇場バレエ「ヴァレンタイン・バレエ」2月17日

2017年2月17日(金)19時 オペラパレス

「テーマとヴァリエーション」米沢唯 福岡雄大

登場した瞬間の唯さんが美しく鳥肌がたった。
軽やかで、まるで体重がないかのよう。きびきびとして、しかし優雅な方向転換、びくともしないバランスの妙。雑味のないクリアな踊り。
手脚が長く、スリムなプロポーションの女性ダンサーたちのコールドはとてもよく揃っている。
前後2列になって同じ振付を踊る時、正面からは二人なのに一人のように見えるほどのシンクロニシティ。
これだけ揃えられるのは日本人ならではだと思う。
たぶん、本家のアメリカでは、これほど揃うことはないだろうし、それよりも個々のダンサーの個性が見えるような踊りをよしとしていると思う。2008年の新国立バレエのワシントン公演では、バランシンの「セレナーデ」を持って行って同様なシンクロニシティを発揮したけれども、現地の評判はそれほど大絶賛でもなかったように記憶している。
個人の見えない無機質なシンクロニシティ。でも私はこれこそが、新国立のバランシンとして素晴らしい所だと感じている。
ただし、これは女性ダンサーに関してのみ。
「テーマとヴァリエーション」でも、男性が出てきたとたんにがっくりきた。
福岡さんは的確に破たんなく、連続ピルエットもぴたっと決めていた。しかし彼の脚のラインはごつごつしていた。コールドの男性たちは、小さかった。どうにか前列の男性4人は高身長で揃えてきたが、それも、最近は王様役とかになってきた貝川さんも含めてだ。
女性陣の美しさに匹敵するくらいの、すらっとして太もものラインもムキムキでない、マリインスキーの男性たちのようなダンサーたちがいたら。
マンガ「テレプシコーラ」にも、男性ダンサーの身長についての話が何度も出てくる。
いわく、「まず体格の変化は女性にあらわれるのではないかしら」
日本の男性ダンサーが、新国立の女性ダンサーに肩を並べるくらいのプロポーションを得る日はいったいいつになるのだろうか。
そうはいっても、全世界的に高身長の男性ダンサーは不足していて、まるで「金の卵」扱いだ。
マシュー・ゴールディング、ワディム・ムンタギロフ、エヴァン・マッキー、デヴィッド・ホールバーグ、ロベルト・ボッレなど、踊りとサポートが上手で高身長なダンサーは世界のプリマからひっぱりだこ。
バレエ以外に目を向ければ、背の高い男性はたしかに最近は結構存在する。スポーツ界とか、一般でも。
うちの息子も183くらいあるから。でも彼をバレエダンサーにしようなんて、まったく考えたこともなかったし、彼自身にもそんな気は毛頭なかっただろうから、そこはやはり「バレエ」という芸術がもう少し広く大衆にアピールするものになって、それで稼げる、という状況にならなければ難しい。

日本ではまずバレエのテレビ放映が少ない。
ロシアではバレエダンサーは、日本でいう野球選手ぐらい人気があって、しょっちゅうTVにも出ているそうだ。
以前、モデルプロダクションのオスカーの社長に話を聞いた時、宝塚とかバレエとかは「裏芸能界」だと言っていた。お金を稼げないという意味なのだろう。
上戸彩のようなタレントなら、小さい時から育てて、14くらいでデビューさせて、年何億と稼いでくれる。
バレエダンサーが一人前になると思える20才ぐらいは、タレントでいうともう旬を過ぎた年増だ。




「ドン・キホーテ」グラン・パ・ド・ドゥ 柴山沙帆 井澤駿

新国立劇場バレエのドンキは何度見たことか。あの赤いチュチュもそろそろデザインを変えてもいいのじゃないかというくらい。そのなかでもとびきり退屈だった。ガラで踊るドンキって、余裕綽綽の中で、遊びでバランス技を見せたり、回転技を見せたりするものだと思っていたけど、柴山さんはかなりいっぱいいっぱいで、最大限にひっぱったゴムみたいだった。
フェッテは前半はダブル、ダブル、シングル、後半はダブル、シングルのパターンを繰り返して、テクニックのあるところを見せたが、最後は曲が終わる前に止まってしまった。たしかに踊れてはいるけれども、顔がおてもやんみたいで好みじゃないし、つまらなかった。早く終わって欲しいと思うドンキなんて。
井澤さんはイケメンで怪我明けを感じさせない軽やかさでとても良かったのに。もっとイケイケの相手を組ませてあげてはどうかしら。ドンキならば、五月女さんなんかでもイケるのでは。
そういえば、井澤&小野絢子ってあまりないですね。 

「ソワレ・ド・バレエ」米沢唯 奥村康祐

唯さんと奥村さんの組み合わせ、大好きなんです。この二人って、清潔感と踊りの軽やかさが近くてお似合い。2年前の横浜バレエフェスティバルで感動した演目なので、ぜひまた見たいと思っていました。
グラズノフの可愛らしい音楽、きらめく星空の下、さらりと超絶技巧を織り交ぜ、楽し気に踊る唯さんと奥村王子。
童話みたいな、ディズニーみたいな、愛にあふれる世界。
きっとこういうの日本人みんな好きだと思うから、ぜひ全幕を新国立で採用してレパートリーにして欲しい!
日本の国立劇場なんだから、日本人の作品もレパートリーにあってしかるべきだし、それもこんな素晴らしい振付家がいるのだから。
もう大原先生はクビにして、深川先生が次の芸術監督でもいいんじゃないか、というくらいこの作品気に入ってます!
衣装は、横浜の時よりも、プリンセス風味で、私は以前のもうちょっと大人っぽいのが良かったけれど、まあこれもディズニープリンセスの世界としてありかなと思いました。
何気に方向変換とか、緩急のスピードを変えての回転技とか、飛び上がる脚をパドシャにするマネージュとか、ちょいと変わった技巧的な振付も面白いですし、それを難しいと感じさせないで踊りこなすお二人も素晴らしい。
唯さんは、「テーマとヴァリエーション」で福岡さんにリフトされたときは、なんだか窮屈そうで急に重さを感じましたが、この作品で奥村さんにリフトされるときは、生き生きとして伸びやかでした。
ぜひ全幕で見たいです。新国立劇場ファンの皆様、劇場へソワレ・ド・バレエの全幕を見たい、レパートリーにしてくれというメールを送りましょう。
ご意見・ご感想がメールできます→ こちら


「タランテラ」小野絢子 八幡顕光

これは以前ニューイヤーガラで唯さん奥村さんを見ました。
久しぶりの八幡さん登場でしたが、絢子さんとサイズ的にぴったり合いますね。
かわいらしさ、というよりもベテランのサービス精神が伝わってきました。
これ、大変疲れる踊りだから、未熟者がやると、ヘロヘロになって、観客を楽しませようというどころじゃなくなっちゃいそうだけど、そこのところ、さすがプリンシパルは配慮たっぷりでした。

「トロイ・ゲーム」

新国立劇場バレエをいっぱい観ていた10年前〜5年前くらいまでは、コールドもほとんど顔がわかったのだけれど、今はもう全然誰なのかわかんなくなってしまいました。
そういうことで、わからないダンサーたちがわからない踊りを、身体的にめちゃめちゃ酷使する振付で、これはイロモノに属するのかなと思いながら見ていました。
私は美しいものが見たくて劇場に来ているので、こういう作品だと事前に分かっていたら幕間に帰っていたかもしれません。
しかし、こういう試みは、普段後ろの方でコールドを踊っているダンサーにとっては、身体能力を思いっきりアピールできる場としていいのではないのかと思う次第です。







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2016年12月27日

2016スターダンサーズバレエ団くるみ割り人形

2016年12月25日(日)14:00 テアトロ・ジーリオ・ショウワ

クララ 渡辺恭子 
王子 吉瀬智弘

鈴木稔演出のスタダンのくるみは、とても良いという評判だったので、ぜひ見たいと思っていました。
テアトロ・ジーリオ・ショウワは駅から近いし、1800席ほどでこじんまりしていて、段差もあって、どの席からでも見やすそうな劇場です。

鈴木版の特徴は、第1幕がクララの家のパーティではなく、ドイツの街中のクリスマス・マーケットだということ。そうそう、公演がはじまる20分ぐらいまえから、芸術監督の小山さんのプレトークがありました。
このプレトークはどの公演でも行っているらしく、公演を見るうえでのポイントなどをわかりやすく解説してくださいます。

今回のプレトークでは、第1幕の場面になっているクリスマス・マーケットにはどんなお店があるのか、役の数が140ぐらいあるけれどもダンサーは半分以下だから、みんな2役や3役をやっていることとか、衣装はすべてイギリスに注文して、人形役は、人間用と人形用と同じデザインで注文しているとか、兵隊さんはキャストに4人しか載っていないけれども、衣装は8人分用意しているので、そのからくりを見破って欲しいとか…、衣装については舞台をみていてなるほどと思いました。

そのご自慢のクリスマス・マーケットのシーン、くるみ割り人形とナッツを売るお店、スパイスを売るお店、クリスマス・オーナメントを売るお店、ホットワインを売るお店…
小道具もそれらしく凝っていて、本当にドイツのクリスマス・マーケットにいるような気分になります。

通常の版のくるみと違って、コロンビーヌやムーア人の踊りはありません。
そのかわりに、大道芸人が芸を披露するというシーンになっております。

そのあと、ドロッセルマイヤーが人形劇用の大きなワゴン車を運んできて、子供たちに人形劇を見せます。
そのあたりは通常版と近いですが、ねすみが走る音楽のときに、人形劇を見ているこどもたちだけではなく、マーケットの大人たちも一斉にリアクションするのが、「いったいなにが起こったの?」と思わせます。

人形劇にねずみが出てきたのなら、子供たちだけがリアクションすればいいことですが、関係ない大人たちもリアクションするので、「地震かかみなりでも起きたという設定」なのかと思ってしまいましたが、そうでもないようです。この部分、納得できませんでした。

人形劇で使うから、プレゼントにもらったお人形を貸してとドロッセルマイヤーに頼まれたクララでしたが、人形劇が終わっても大事なお人形を返してもらえないので、人形を探しまくって、家族ともはぐれてしまい、最後には人形劇用のワゴンに忍び込みます。

そこで人形の世界に足を踏み入れるというお話です。
ねずみにとらわれていた人形たちを解放してやり、危機一髪のくるみ割り人形を助けるために、ねずみ大王にくるみをぶつけて大活躍。呪いが解けたくるみ割り王子に誘われて人形の国へ行きます。

その途中、雪の国を通ります。スタダンでは雪のシーンは、ポワントを履かないモダンダンスです。
衣装も円錐形のアシメントリーなスカート。

コーラスの子供たちはとても上手でした。

ここまでの第1幕、私はなんだか不思議な感覚がしていました。
クラシックバレエを観たというよりは、お芝居かミュージカルプレイを観たような感覚です。
あまりにも、クラシックな振付が少ないせいでしょうか。

20世紀初頭のクリスマス・マーケットの雰囲気と対照をなす、モダンなスノーフレークスの踊り。

私の好みでいうと、ここはやはり白いチュチュで、美しいクラシックバレエを見せて欲しいのです。

第2幕は、通常版とそれほど変わってはいませんでした。
各国の踊りや花のワルツの後、くるみ割り王子にプロポーズされて、人形の世界にとどまるように言われたクララは、悩んだ末、人間の世界に戻ることに決めます。
そして、自分の代わりに、大事なお人形を、人形の国に差し出すのでした。

クララの渡辺恭子さんは演技も踊りもしっかりしていたし、王子の吉瀬さんはスマートで温かみのある王子でした。
クララのお友達や花のワルツに新国立劇場バレエ研修所出身の鈴木優さんがいて、とても可愛らしく、柔らかい優雅な踊りで素敵でした。
すごくきれいなので、彼女ばっかり見てしまいました。

歴史のあるバレエ団だと、団内のヒエラルキーで役が決まってしまうところがあります。
団歴を重ねないと、なかなか上にあがれないし、役もつかない。
東京バレエ団でさえそうです。
今やライジングスターの沖香菜子さんも、入団後しばらくは役がつかず、子供のための眠りで抜擢されたのは入団2年目でした。それでも異例の速さです。
バレエダンサーって旬の時期が短いし、後ろでコールドばかり踊っていると、素質があっても、コールドがなじんでしまい、みずからが光を発しなくてはならない真ん中のオーラがなくなって主役にふさわしくなくなってしまうことも、よくあることです。

だから、芸術監督は、よ〜くダンサーの資質を見極めて、キャスティングするべきなのです。

それが…
スポンサーのごり押しとか、しがらみなど、いろいろな事情で、おかしなことになるケースも良くあります。
芸術監督が男性だと、「お気に入り」の意味を勘ぐられたりすることもしばしばだし…
まあ、それは古くからよくあることだけれども。

何年もバレエ公演を見続けていると、そういう裏側もなんとなくわかってしまうのが、なんだかなぁです。

私は純粋に美しいバレエが見たいし、芸術監督も絶対的な美を追求して欲しい。
素晴らしい舞台を作りあげるためだけに判断して欲しい。そう願うだけです。














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2016年12月22日

東京バレエ団「くるみ割人形」シムキン&沖 

2016年12月18日(日)14:00 東京文化会館 
クララ 沖香菜子
くるみ割り人形/王子 ダニール・シムキン

東京バレエ団はこの版とベジャール版の二つのくるみを交互に上演しています。
このワイノーネン版はオーソドックスですが、衣装や装置などはかなり古色蒼然としています。
今回はライジングスター沖香菜子さんとダニール・シムキンの注目ペア。

このふたり、シムキンの愛らしさにさらに倍増で愛らしい香菜子さんで、ビジュアル的な取り合わせは大変に良好です。シムキンは170センチないくらいだと思いますが、香菜子さんも160ぐらいだと思われますので、身長の取り合わせもよく、愛らしさ抜群の沖さんとのペアでシムキンが王子力をいかんなく発揮できるという。


シムキンはさすがのエレガントな踊りで、まったく音のしない高いジャンプや、美しいランベルセで魅了します。沖さんも負けていません。脚が180度さっと上がるし、美しいポーズや愛らしさで、堂々と渡り合っていたと思います。

シムキンはエレガントで素敵でした。沖さんも踊りでも負けていませんでした。このお二人の取り合わせはとても良かったです。

お二人は踊りの時にまったく足音がしないのですが、雪のシーンや花のワルツではポワントの音が目立ちました。このあたり、もう少し頑張って欲しいです。でもユカリーシャの薫陶のおかげか、コールドのアンサンブルはとてもそろっていたようでした。

ひとつ残念なのは装置と衣装です。
くるみ割り人形は、最近は年末の風物詩として、日本でも各バレエ団が工夫をこらしています。
この東京バレエ団のワイノーネン版は、装置や衣装が古めかしく、「古色蒼然」
特にお菓子の国の装置は、オレンジ色のろうけつ染めのような装置で、ダンサー達はとても良いパフォーマンスをしているのに、古めかしい感じがして残念でした。

プロジェクション・マッピングを導入していますが、それは一部なので、もう少し効果的に使用するとか、現代に即した「くるみ割り人形」としての演出、装置、衣装を新たに作って欲しいと思いました。


スペインの岸本さんのキレの良さ、コロンビーヌの人形っぽさがとてもツボにはまってよかったです。







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2016年12月07日

「フランケンシュタイン」英国ロイヤルバレエ(NHKプレミアムシアター)

ヴィクター・フランケンシュタイン フェデリコ・ボネッリ
エリザベス ラウラ・モレーラ
怪物 スティーブン・マックレー

今年5月に初演されたリアム・スカーレットの初めての全幕作品。
彼の小品は見たことがありますが、ソロやデュエット、群舞それぞれ変化に富んでいて、バランスよく作品を構築する力のある振付家だと思います。

前半はヴィクターがフランケンシュタインを生み出すまでの家族の話、恋人の話、学校の話など。
19世紀のコスチューム・プレイも楽しめる衣装の数々が美しい。ダウントン・アビーみたい。
振付としては、マクミランを彷彿させる、コンパスのようにポワントの先を使って回転するパや、多数の男性にリフトされるシーン(マノンみたい)が多用されています。
フランケンシュタインという題材の暗さから、「マイヤーリング」に似ているかも。

全編これダンサーが踊りっぱなし。
特に踊りっぱなしなのがヴィクター役のボネッリ。出ずっぱりで、濃い演技をしながら踊らなくてはならない、大変にハードな役。
それからラウラ・モレーラ。年増だからお姫様役は似合わないけれども、女性らしいこなれた動きのねばっこさが独特な味を醸し出す。美人ではないけれども魅力的。
難しいリフトや休みなしの激しい踊りがてんこ盛りなのだけれども、抜群のパートナーシップが見事で物語を語ってゆく。

ヴィクターが怪物を作り出す実験解剖室のシーンは、プロジェクション・マッピングや手品のような火花の効果で大変に面白い。

マックレイ先輩の踊りがキレキレなのはデフォルトとして、怪物がヴィクターの弟を殺してしまうシーンや、犯人と間違えられてつるし首になるジュスティーヌのシーンは、見ていてつらい。

しかしこの作品の白眉は、ヴィクターとエリザベスの結婚式で、踊る友人たちの間に怪物が現れたり消えたりするトリッキーなシーン。映像だから、よけい不思議に見えるのかもしれないが、群舞の中にいつのまにかまぎれて踊っている怪物が、またいつのまにか友人と入れ替わっていて、観客もヴィクターと同じく錯覚の迷宮に入ってしまうようなカタルシスがあった。衣装と照明も効果的に使われていて、ここは実際の舞台でぜひ見てみたいと思った。

そして終盤のヴィクターと怪物の男パ・ド・ドゥ。最近はやりの男パ・ド・ドゥ(笑)
なんだか二人がキスでもするんじゃないかと、ドキドキしましたわ。
二人とも大柄ではないけれども、男性をリフトするのって、大変そう。
ちょっと重そうだった。

私の好みは「後味の良い作品」なので、これは好みにはずれているのですが、踊りが多いことや、面白い演出や構成があったので、あとは音楽ですね。音楽がわかりにくい。
ホラーって、一部では人気のある分野だから、もう少しキャッチーな音楽で、殺人や処刑のシーンをどうにかしたら、一般受けする作品になるような気もします。
シリアスドラマは、英国ロイヤルバレエという、ドラマティックバレエを得意とするバレエ団の特徴にはあっているかもしれないが、一般受けは難しいんじゃないかしら。
以前、NBAバレエ団がやった「ドラキュラ」の方がもう少し一般受けする作品だったと思います。

お化け屋敷的作品、という路線はありかもしれない。
いっそのことフランケンシュタイン、ドラキュラ、オオカミ男、ゾンビとか、全部出てきたりして。
ハロウィーン期間上演で。















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2016年11月20日

「ラ・バヤデール」祥子&遅沢

2016年11月19日(土)16:30 東京文化会館

ニキヤ 中村祥子
ガムザッティ 浅川紫織
ソロル 遅沢佑介
ハイ・ブラーミン スチュアート・キャシディ
マクダヴェヤ 酒匂麗
黄金の仏像 井澤諒

熊川さんは中村祥子さんで、Kバレエの全幕レパートリーすべて映像に残すつもりなのでしょう。
白鳥、眠り、このバヤデールもシネマとして公開されるようです。
そのための録画撮りをしていたためか、コールドに至るまで気合の入った良い舞台となりました。

冒頭は苦行僧たちの踊り。ここはKバレエの男性ダンサーたちがはじけるところ。
マクダヴェヤの酒匂さんのジャンプがすごく高くて、開脚も空中のポーズが決まっていて、しょっぱなからワクワクしてきます。

ソロルの登場は、グラン・ジュッテの連続ではなかったです。海賊みたいなパッセの形を見せるジャンプ1回で登場。んーここはやはり、斜めに大きなジュッテで登場して欲しいところです。

ハイ・ブラーミンと共に僧侶たちが登場。このエキストラの僧侶が、初演時に驚いたのですが、太った中年の方々なんです。普通、こういうエキストラって、バレエ団員の下っぱがやるものですが、それだと体格的に細くて舞台に重厚感が出せないと判断したのか、体格の良いエキストラを調達(いったいどこから?)。
こんなところに熊川さんの「こだわり」を感じます。そうです。こういう小さなことの積み重ねで舞台の重みが違ってくるんです。脇役もエキストラも重要な要素です。

巫女の踊りの後、ニキヤ登場。ヴェールをかぶった祥子さん、そのままでも美しい。
この世のならぬ美しさというよりも、もう少しナチュラルで、平民の娘が取り立てられて巫女になった雰囲気。わりと普通っぽいというか。あえてのキラキラ度おさえめというか。

とても控えめで、神に仕える身という自覚があり、ハイ・ブラーミンのプロポーズもきっぱりと断る。
でも、マクダヴェヤから「ソロルが待っている」と聞かされると、突然瞳がキラッと輝いて、表情がパァーッと明るくなる。ニキヤにとって、ソロルは特別な存在だというのがよくわかりました。

ニキヤの踊りは、大変に抑制された感じで、それはこの1幕の時から、影の王国に至るまでずーっと続いていて、唯一解放されるのは、この一幕で踊るソロルとの愛のパ・ド・ドゥ。

そう言えば、この公演の前に行われた公開リハーサルで、ソロルを探すニキヤのことを、熊川さんが「Where is my lover?」ってアテレコをしていたけれども、祥子さんは、まさにそのセリフが聞こえるようなお手本のような演技でしたね。

場面が変わってラジャの屋敷。これがお前の婚約者だよとガムザッティに見せるソロルの似顔絵が、なにげに遅沢さんに似すぎていて(笑)あたりまえなことですが、ここが似ていない舞台って結構あるんです。こういう小道具も神経が行き届いているところ、いいと思います。

浅川ガムザッティが、ゴージャスな美しさでキラキラオーラ全開です。これはソロルでなくても誰でもまいってしまうだろうという位の。思わずくらっとくるソロルの気持ち、わかります。
ニキヤとガムザッティの対決シーンは、マイムからセリフが聞こえてくるようで、大変にドラマティックでした。美女二人の喧嘩、大迫力で、キッラキラのガムザと、身分の低いニキヤという対比もわかりやすかった。浅川ガムザは、生まれながらのお姫様で、自分の思い通りにならなかったことなど、一度もないという育ち方で、だから自分に歯向かっていうことを聞かないニキヤに対して、思わずムカついて「殺す!」となる流れも納得できました。

ニキヤの「殺す!」マイムで休憩かと思ったら、舞台は続いて婚約式のシーンへサクサク進みます。
度肝を抜くくらい大きな象(これは海賊の船にも匹敵するくらいの大装置です!)にソロルが乗って登場。これまた大きな仕留めた虎がお土産。

ジャンぺの踊り、にぎやかな太鼓の踊り、パ・ダクシオン、ガムザッティとソロルのパ・ド・ドゥなど、古典バリバリのクラシックから、土着的な太鼓の踊りまで、さまざまな踊りがてんこ盛りで楽しい!
杉野さんをリーダーとする太鼓の踊りは、みんなはじけておおいに盛り上がる!ボリショイにも負けていない!
バヤデールでは、きたない恰好の男子の方が見せ場が多くて踊りまくる!
例外はソロルの友人の栗山さん。シュッとして細くて長身王子。見た目は抜群です。踊りがもっともっと上手になってKバレエを背負うくらいになって欲しいです。

ガムザッティの難しいヴァリエーション、浅川さんが端正かつ華麗に踊りきって大喝采!!
浅川さんは初演時のニキヤが、とても良かった記憶がありますが、ガムザッティも素晴らしい。祥子さんと浅川さんでニキヤとガムザッティを交替して日替わり公演なんか、いいんじゃないですか?
この二人で、たとえばジゼルとミルタを交替して日替わり公演もいいと思います。

遅沢さんは、もっとできる人だと思いますが、ジャンプの高さが少し物足りない感じではありました。彼はKバレエで長いですからね〜もう7、8年?
経歴を見ると2007年入団、2013年からプリンシパルなんですね。遅沢さんという相手役がいるから祥子さんが踊れるわけであって、祥子さんのために外部からゲストを呼ぶのはKバレエらしくないし、かといって宮尾さんはいまいちなんで、もうすこし彼に頑張ってもらわなくては。

ニキヤの悲しみの踊り。ポワントでススしてからアティチュードという振付、普通はさっと脚を上げてからすぐにアテールに降りるのですが、祥子さんはポワントのまま、片脚をゆっくりとあげてアティチュードにもっていき、そのままポワントバランス。これを繰り返しました。すごい大技!
こういう大技、コジョカルとロホがやったのを見たことがあります。そういう世界でも超一流のバレリーナしかできない技です。

この悲しみの踊りが、花かごをもらってから明るい曲調になるのですが、熊川版では、花かごは直接ソロルからニキヤに渡されます。(準備したのはラジャです。ラジャが花かごに毒蛇をしかけさせたという設定です)
ラジャが花かごを「踊ってくれたお礼に渡せば」みたいな感じでソロルに渡し、ソロルがニキヤに花かごを渡し、受け取ったニキヤが喜んで明るく踊りだすという、大変納得のいく話の流れになっています。

花かごから毒蛇がでてきて噛まれたニキヤに、びっくりする様子のガムザッティ。ガムザッティが仕掛けたのではないようで、でもニキヤは「あなたがやったんでしょう」と言いますが、「そんなの知らないわ」と、まあ本当に知らないんでしょうが、悪びれず、ソロルの手を取り、あちらにいきましょうというガムザ。
それを見て、解毒薬を拒絶して死ぬニキヤ。このあたりのお話しは、ジゼルにそっくりですよね。

ニキヤの死で第一幕は終わって休憩です。第二幕は神殿の中で祈るソロル。この神殿のセット、タイムマシンの異次元空間みたいでなかなか面白いです。マクダヴェヤが水パイプをすすめて、ニキヤの幻があらわれ、それを追っていくと影の王国です。

影の王国は2段半ぐらいのつづら折り。影たちの衣装は、ちょっとかわったバルーンスカート風のチュチュで凝っています。コールドたちの見せ場の長いシーンですが、とても良く揃っていて、緊張感と一体感のある美しい踊りでした。観客もしわぶきせずに、かたずをのんで見守って、引き込まれました。こういう舞台と客席の一体感を味わえるのが、DVDでは味わえない、劇場空間ならではの良いところです。

影となったニキヤの踊りは、余計なもののないシンプルな、クリアな踊りでした。祥子さんはポワントに乗って「たゆとう」のが好きで、作品によってはよくそれをやるのですが、ここではそれは封印し、古典のエッセンスのみで魅せるような踊りでした。
ヴェールの踊りは、左右両方に回転する、とても難しいものですが、完璧でした。
そのあと、ちょっとピルエットで落ちるという祥子さんにしてはめずらしいミスがありました。まあ、たぶんもう一回の公演でもビデオ撮りをして良い方と差し替えてシネマで使うので大丈夫でしょう。
遅沢さんのソロも、だいぶ体力を使ったのか、ヘロッてるところがありました。少しお疲れなのかしら。

三人のオンブル、それぞれのヴァリエーションが素晴らしかったです。ふんわりと軽くて、体重がないようで。中村春奈さん、小林美奈さん、浅野真由香さん。このあたりのランクの女性ダンサーが徐々に育ってきているようです。

影の王国から帰ってくるとソロルは死んでいて、駆け寄ったガムザッティに白蛇が食いつく。
神殿が崩壊して(ここの舞台装置、すごくゆっくりと大岩が落ちてくるのが、CGみたいで迫力あります)すべてが無となった中に黄金の仏像が踊ります。

その後、スモークがたかれ、天国でニキヤを追いかけていくソロルで幕。

この最後の演出ですが、初演時は、たしか神殿崩壊のあと、洪水が起きて、それを水色の布で表現していたと思いますが、そこがなくなってしまいました。
あの水色の布の洪水で、「世界が浄化された」というインパクトがあるのに、改変されたのは少々がっかりです。初演時に、それで終わるのはどうかという意見があったのかと思いますが、熊川さんの秀逸なアイデアなのですから、つらぬき通して欲しいです。






















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