2018年05月05日

Kバレエ2018年「白鳥の湖」浅川&宮尾

2018年3月21日(水・祝)14時 オーチャードホール
オデット・オディール 浅川紫織
ジークフリード王子 宮尾俊太郎


この公演が始まる前に、浅川さんがプリマとしての現役引退を表明しました。
4年ほど前に股関節を痛め、一時は踊れないほどだったけれども、おそらく手術などはおこなわずに治療して、主役を務めるほどに回復してましたが、いつ痛みが再発するかわからないので、納得できる踊りができる間にけじめをつけたい、という事のようです。

浅川さんをはじめて認識したのは、熊川さんが企画したバレエ音楽が主役の舞台「舞曲〜第1楽章〜」で、眠りの森の美女のローズ・アダージオを踊った時です。
その時の感想についてはこちら

王子達がタキシードでサポートするというおしゃれなもので、びしっとアチチュード・バランスを決めていたのですが、この場面が終わったあと、司会者が「どうですか?」とたずねると「たいへんですよ」とクールに答えていたのがとても印象に残っています。

その時から10年経ち、浅川さんはKバレエで精進し、中村祥子さんと並ぶトップ2プリマに昇りつめました。

当初はあっさりしていた表現もぐっと深くなり、マイムはセリフが聞こえるようです。

今回の白鳥の湖では、祥子さんを差し置いてファーストキャストです。熊川さんの彼女への思い入れの現れでしょうか。

浅川さんは、美人ですが、白鳥向きの体型というほどではないのです。たとえばザハロワのように手脚が長いわけでもないし、とびきりの甲のラインでもなく、背中がすごく柔らかいわけでもない。
でも、ひとつひとつのパやマイムをとても丁寧に大切に踊っていて、オデットの感情が伝わってきました。

抑圧されて自由がなくて、感情すらも持つのを禁じられているようなオデット。
耐えて耐えて、王子の「あなたと永遠の愛を誓います」という申し出にも、「ご厚情を賜り恐れ入ります…」と、最後のわずかな望みをつなぐ細い糸にすがるよう。
このオデットは、いわばKバレエの中で今まで耐えて耐えてきた彼女の象徴かもしれません。
王子(熊川ディレクター)からの良い話にも、おそるおそる手を伸すような…

そして黒鳥は、生き生きとして艶やかでのびやか。自由でキラキラとしていて、白鳥とのコントラストが際立っていました。

彼女のマイムはセリフが聞こえてくるようです。
「この湖は私の母の涙でできています」(第2幕)とか、「もう私は死ぬしかありません!」(第4幕)とか。

ケガをした後に表現の幅をぐっと広げて、踊りも精進して、観客に感動を与えられるプリマに成長した浅川さん。第4幕の嘆くオデットを観ていると自然と目から涙がにじんできました。この前演じたクレオパトラも、ラ・バヤデールのガムザッティも素晴らしかったのに、もう舞台で見られなくなるとは、残念でなりません。


宮尾さんはサポートが上手でした。ソロはまあいつものクオリティでしたが、浅川さんを美しく見せられるよう、彼女が踊りやすいように心を砕いているようでした。

演奏は、東京シティバレエの白鳥と比べると、やはり音楽よりもバレエに寄り添った演奏なので、ダンサーによって遅くなったり早くなったりテンポが揺れますが、私にとってはこういう演奏の方がしっくりしました。

今回、前に見た時と違ったのは、第1幕で、舞台の後ろにテーブルがセットされて、そこにパドトロワを踊る友人たちが座っていること。

いつもパドトロワに対して「あら、あの人たち、どこから出てきたの?」という違和感を感じていたので、その点は解消されました。

熊川版の白鳥は、つねに初めての観客にもわかりやすくと改訂をしているので、わかりやすいことこの上なし。

ただし、群舞の白鳥たちが、ボロボロに裂けたようなスカートなのはこだわりの衣装とはいえ、古典作品の中で、マシューボーンか?と感じてしまいます。やはり白鳥は白いチュチュの方が一般受けするし、美しいと思うので、ヨランダ・ソナベント氏にはもう相談できないけれども、勇気をもってチュチュに変更することをそのうち考えて欲しいです。




ところで、Me tooムーブメントについて書こうと思うのですが、これはあくまでも私の想像です。

今回の浅川さん引退発表での異例の特別扱い、そしてKバレエスクール大宮校を立ち上げた時、熊川さんが浅川さんの後ろからそっと「これが紫織のお城だよ」とささやいた雰囲気に何かを感じた方は多いと思います。

団員総食いという都市伝説(?)のある熊川さん。

それほどの実力があるとは思えないのに、主役や大きな役に抜擢されたダンサーがいたり、そういうダンサーが突然辞めてしまったり。

団内恋愛禁止とかで、そういう関係になったらどちらかが辞めざるをえないとかの噂。

女性だけでなく、男性についても、一時はあれだけ推していたのに、ぷっつりと役付が悪くなるとかの不思議。

自分のバレエ団なのだから、好きなようにキャスティングする権利はあるでしょうが、それがハラスメントの道具になっているとしたら、大変に残念なことだし、今のご時世、クマさん、危ないよ〜〜と思うんです。

私は熊川さんの創るバレエ芸術が大好きで、彼の真摯なバレエ愛を感じるし、日本のバレエ界を変革してきた英雄だと思います。
帰国した当時は、彼が踊ることで引っ張ってきたけれども、今やKバレエは彼が出演しなくてもチケットの売れるバレエ団に成長しました。

勲章も授かり、これから大物として日本的慣習や情緒に縛られることなく、バレエ界を改革できるのは彼しかいません。
ですから、Me tooムーブメントに巻き込まれて大変なことになりやしないか、心配しております。

もし、彼が過去にハラスメントをしたとしたら、自分の過ちを認めて、反省して欲しいです。
でも、それが明らかになったとしても、必要以上にパッシングはしないで欲しい。
彼のバレエを愛する心が折れてしまわないようにと願っています。





















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2018年03月26日

東京シティ・バレエ団創立50周年記念公演『白鳥の湖』〜大いなる愛の讃歌〜

2018年3月6日(火)18:30 東京文化会館
オデット・オディール: ヤーナ・サレンコ
ジークフリード王子: ディヌ・タマズラカル
演出・振付:石田種生
指揮:大野和士 演奏:東京都交響楽団

白鳥の湖が日本で初演された時の、藤田嗣二の美術を再現したことで話題になったこの公演。

当初キャスティングされていたヤーナ・サレンコがパリオペラ座のミリアム・ウルド・ブラームに変更になると発表があり、その後またヤーナにキャストが戻るという経緯がありました。

ミリアムが来るというので喜んだパリオペファンがチケットを買った後でキャストの変更は、パリオペをがっつり抑えているNB○さんの横やりではないかとか憶測が流れました。

うち以外の公演に出たら、今年の世界バレフェスに呼んでやらないよと脅されたとかいう噂。

大御所が弱いものいじめをするような、酷いやり口ですよ。

そんなことしなくて、みんなで日本のバレエ界を盛り立てていけばいいのに。

シティの公演でミリアムが評判になれば、バレフェスでもう一度ミリアムを観たいっていう人もいるでしょうに。


私は繊細で強靭なテクニックの持ち主ヤーナも好きですが、第1幕のふわっとしたパステルカラーの舞台を見たら、きりっとしたヤーナよりもふんわりとした雰囲気のミリアムの方がこの舞台には似合うのではと感じました。

第1幕、藤田の舞台装置は、脇袖に森が重なるようなセットに、パステルカラーの自然の風景が描かれます。
拍子抜けするほど、白鳥の湖のストーリーに沿った、くせのない美術でした。

そうですよね、考えてみれば日本で初めての白鳥の舞台。

現代に新しく制作するのならば、他でやっていないものとか、斬新なデザインとかに走るのでしょうが、初めてなのですから、あくまでオーソドックスで奇をてらわないもの。ダンサーを生かす、控えめな色彩。

衣装は新しく制作したものなのでしょうが、少しトーンを落とした美しいパステルカラーのピンクと、薄い若草色の二色があって、コールドが隊列を変えるたびに春の野原でスイトピーが咲いているようできれいでした。

第1幕のコールドバレエは、スタンダードな演出で、女性ダンサーはきれいで良く揃っていて、男性ダンサーもそれなりの人数が出てきて、長身の人もいたし、王子の誕生日前日の楽しい雰囲気が出ていました。

パ・ド・トロワはこっくりとした濃いめのオレンジ茶色の衣装で、コールドからは目立ちます。踊りはわりとやさしめの振付でした。

新国立劇場バレエの牧版白鳥ばっかり見ていたので、どうしても比較をしてしまうのですが、新国立はスリリングな振付で、女性ふたりが踊りを競いあうのですが、シティのパ・ド・ドロワは仲良しの踊りという感じでした。

シティは初めて見たのですが、コールドの男性もなかなかスタイルの良い方が多くて、王子のタマズラカルさんよりもスタイルいいんじゃないかという方もいました。

ディヌさんは、演技は相応なのですが、背があまり高くなくて、あまり王子らしく目立ちません。
登場してきた時も、パッとは気づかない程度に埋没してました。
この役がはまっているとは言えないですが、きれいに5番に入るし、踊りはすっきりとしていました。

第1幕〜第3幕までの演出は、新国立劇場の牧版(キーロフ版を元にしている)に似ていますが、第4幕がとても個性的な演出になっています。

そしてこの公演では、オケと指揮者が、普段バレエのピットに入らない、コンサート専門(?)らしく、音楽がかなり個性的に鳴ります。

まず、ほんのわずかなことなのですが、全体的にテンポが速い。
普通のバレエ公演では、バレエ指揮者が踊りをみながら、踊りやすいようにテンポをゆっくりにしたり、拍手やレべランスのタイミングを入れるために、曲を途中でストップさせたりします。

今回の指揮者は、踊りに合わせてゆっくりにするということをあまりせず、いくつかの場面ではダンサーが踊りにくそうに見えることがありました。

いちばんいけなかったのは、第3幕で、オデットが王子に愛を誓わせて、そこで音楽がダダダダダと高揚してジャーン!だまされた〜〜!!となるところが、王子のマイムのタイミングより早くなってしまったことです。
マイムで誓うより前にダダダ…ダマサレタ〜〜っとなってしまってました。
あれはいくらなんでも、ドラマの肝なのですから、合わせなくてはいけない所でしょう。

それ以外の部分では、いろいろ聞いていて新鮮なところもありました。
第2幕のオデットのソロでは、普通のダンサーなら音に遅れてしまうところを、テクニシャンのヤーナ・サレンコが絶妙な音はめをして踊ったことに感心しましたし、ヴァイオリンのソロも、いつも聞いている音楽と比べて、音程(ピッチ)が高いのか、すごく強烈な印象を受けました。

サレンコは、王子とのケミストリーは感じられませんでしたが、特にオデットでは、鳥肌がたつくらいに美しいポーズの瞬間が何度もありました。また、この速いテンポでも、当代一流のプリマは、黒鳥のフェッテを三回転を多用しながら、ぴったりと音楽に合わせるという超絶技巧で魅せてくれました。さすがサレンコ!!

演出で特筆すべきは、第4幕、王子に裏切られたオデットと、許しを求める王子のデュエットに使われるのが、「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」として知られている曲なのです。

もともと白鳥の湖の中で使われていたそうで、ブルメイステル版でも第3幕のオディールと王子のパ・ド・ドゥで使われていますが、石田版では、第4幕の白鳥と王子の踊りに使われています。

この曲がすがすがしい美しさに満ちているので、ロットバルトの呪いを解くことができなかった王子とオデットの悲しみ、そして二人の愛を表現するのにぴったり…そう、まさに愛の讃歌といえる曲なんです。

この曲をこの場面で使用したのは、素晴らしいアイデアでした。

どんどんと曲が高揚していき、それは王子とオデットの愛も高まっていくことを表現し、その愛の力が世界を変え、ロットバルトの呪いを解いたという結末に無理なくつながっていく演出になっていました。

第2幕と第4幕、白鳥のコールドのフォーメーションの変化は工夫があって面白かったです。
これは上の階から見ていた方が良くわかることですけれど。

ほぼ満席の観客は、シニア男性も多く、バレエ好きの他に音楽ファンも来ているようでした。

バレエの舞台で、音楽の方を重視して演奏していることって、めったにないです。

私が観た舞台では、2014年に指揮者の西本智美さんが創ったイルミナートバレエの白鳥が、音楽を大切にしながら、バレエとして踊れるぎりぎりのラインを目指していました。

今回は、第4幕の前にたっぷり2曲オケだけで聴かせてくれるなど、音楽の素晴らしさが際立っていましたので、もうちょっとだけバレエの踊りやすさにも配慮してくれたら良かったなと思いました。

2018年は白鳥の湖がたくさん上演される当たり年です。
この東京シティ・バレエ団のあとに、Kバレエ、新国立劇場バレエ、東京バレエ、そしてマリインスキーバレエの来日公演でも白鳥の湖が上演されるので、見比べて楽しもうと思っております。



















posted by haru at 22:59| Comment(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月01日

新国立劇場バレエ「くるみ割り人形」米沢&井澤

2017年10月29日(日)14時 オペラパレス

クララ 米沢唯
王子 井澤駿
ねずみの王様 渡邊峻郁

ウェイン・イーグリング氏による改訂版。

クララは子役が演じるが、彼女が夢を見るところからは大人のダンサーが演じる。
王子はドロッセルマイヤーの甥とくるみ割り人形と王子の三役を演じる。

牧版のくるみは、オープニングが現代の新宿で、安っぽいビニール傘をさした人たちが出てくるのが興ざめだし、ラストにサンタクロースが出てくるのも不自然だった。

アラビアにエジプトのピラミッドとスフィンクスが出てくるのも変だった。
しかし、それ以外は構成や振付も、まあまあ普通のくるみであった。

今回の改訂版は、オープニングはヨーロッパの街で、運河が凍っていてアイススケートをする人々が出てくる。
プログラムの「スケートをする人々」というのを見て、アシュトンのレ・パルティヌールが思い浮かんだのだが、この舞台では、ローラースニーカーを履いたダンサーが本当に滑っていた。

スケートをするというアイディアは初めてみたので面白かった。
しかし、その横ではクララの家にやってくる客人の道行シーンもあるが、いったい今は昼なのか夜なのか。

スケートをして遊ぶのは、昼間のうちのような気がするし、パーティが始まるのは夕方だと思うし。

音楽の使い方も少し違う。場面の入れ込み方がずれているので、いつものくるみとの違和感を感じる。

聖ニコラウスというおじいさんが出てきて(サンタクロース?)、リストを見ながら子供たちにプレゼントを渡す。
フリッツのプレゼントがないので、フリッツが抗議をしてプレゼントをもらう。

クララにもプレゼントがなくて、「私にはプレゼントがない」とグスグス泣いているのに、お父さんもお母さんも誰も気づかないのは酷いのではないか。

ドロッセルマイヤーがそれに気づいているという風でもなかったのに、あとでくるみ割り人形をクララにくれた。

クララの姉という役があるのに、クララと仲が良いようにも描いていない。

この家族は冷たい家族。

クララが寝る時にくるみ割り人形を部屋に持っていこうとしたら、お母さんに止められてクローゼットの中に入れた。それをネズミが夜中にクララのベッドの下に持ってきた。

なのに、パーティの次の朝?にはベッドの下にはなかった。

夢から覚めたクララとフリッツが玄関へ行くと、ドロッセルマイヤーと甥が帰るところだった。
眼が覚めたのは朝?だとしたら、ドロッセルマイヤーは一晩泊ったの?

雪が降ってるのに、ネグリジェのクララと半そで下着のフリッツは玄関の外でドロッセルマイヤーをお見送りして寒くないの?

いろいろ整合性のないところが気になってしまいました。

スケートをするとか、クララがお菓子の国に行くのに気球を使うのは初めてみたし、花のワルツがポピーの花でピンクでなくオレンジ色というのもちょっとびっくりしました。

悪くはないのだけれど、なんだか「どうだ、新しいだろう、すごいアイディアだろう」ってドヤ顔で言われているような感じです。

振付についても、アラビアでのリフトは、男性四人がお神輿みたいに女性を担いだり、ほとんど女性が空中移動することばっかり目につき、踊りというよりも組体操みたい。
中国も、リフトが多い。せっかく上手なダンサーが踊っているのだから、もっと踊るところが見たい。

雪は、ウェーブもあって、マスゲームみたい。

この振付も「どうだ、すごい振付だろう」とドヤ顔。

くるみ割り人形のような、スタンダード古典作品だと、改訂版を作る時に、新しいことやびっくりするようなアイディアを入れて目新しさを狙うというのはわかりますよ。

でも、なぜ「くるみ割り人形」というバレエがこれほど愛されているのか。

それをよく理解して創って欲しい。

変えるべきところと、絶対に変えてはいけないところ。

「くるみ割り人形」のエッセンス。

楽しいパーティ、家族の愛、ちょっとした冒険、夢の世界。

たとえば、雪のシーンに、クララとくるみ割りを追いかけてくるネズミの王様とのコントが入りますが、これは余計なものです。

雪のシーンでは、美しいコールドバレエを堪能することに集中したいので邪魔です。

ただ、グラン・パ・ド・ドゥは振付もあまり変えていないスタンダードに近いものだったので、そこは良かったです。

米沢唯さんの繊細で格調高く、絶妙に音楽をまとうような踊りが素晴らしかったです。

井澤さんも、イケメンオーラ全開で、登場シーンから軍服が似合っていました。

オレンジポピーの花のワルツも、リードの細田&寺田コンビが美しくて、これはこれでなかなかステキでした。

外国の人に大金払って改訂版作らなくても、深川秀夫さんとか、日本人に作ってもらえばいいじゃないかと思うし、私は昔のキーロフ版が好きなので、あれをベースに大原さんが、舞台装置と衣装をチャチャッと手を加えるくらいで、スタンダードな演出でいいじゃないかと思うんです。
新国立のダンサーならば、むしろその方が素晴らしく見せられるし。


くるみ割り人形改訂版で良くできていると思うのは熊川版で、チャイコフスキーとプティパに対するリスペクトがあって、しかもお話はオリジナルストーリーになっている。
熊川さんのバレエ愛が感じられる作品です。

それに比べると…イーグリングさんは、音楽へのリスペクトよりも、自分のアイデアをドヤ顔で…もうやめましょう。










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2017年10月21日

2017「クレオパトラ」中村祥子

2017年10月20日(金)14時 東京文化会館
クレオパトラ 中村祥子
プトレマイオス 山本雅也
カエサル スチュアート・キャシディ
アントニウス 宮尾俊太郎
オクタヴィアヌス 遅沢佑介
案内役 酒匂麗
オクタヴィア 矢内千夏

会場を東京文化会館に移してのファースト・キャスト。

クレオパトラの祥子さんを中心に熱の入った素晴らしい舞台でした。

両方のキャストを見て思ったのは、セカンドキャストも、全然遜色ない!!

いくつかのキャストでは、セカンドキャストの方が良かったと思える事もありました。

アントニウスは栗山さんの方が、純粋な心でクレオパトラに愛を捧げているのが、彼のピュアな雰囲気と相まって似合っていたし、オクタヴィアヌスは、杉野さんが、目力が強くて、皇帝の貫禄がありました。

宮尾さんは、ひとまわり大きくなったような、体型が厚みがでたようで、踊りが重かったです。

遅沢さんは、逆にすごく絞っていて、熊川さんも踊りたいといっていた、勇猛果敢なオクタヴィアヌスをキレッキレで踊っていましたが、逆に体を絞りすぎて線が細くなってしまったような気がしました。

宮尾さんと遅沢さんは役を入れ替えた方があっていたかなぁ、でも、今の宮尾さんにあの踊りが踊りこなせるのかなぁ…宮尾さんは、カエサル役でもよかったかなぁ…。

カエサル役のスチュアート・キャシディは、こういう「重要な脇役」には欠かせない存在です。
熊川さんは、脇役が上手だと舞台の重厚さが増すということを良くご存じで、昔から脇役にロイヤルのダンサーを呼んだり、宝塚出身者を女王に使ったりしていました。

宮尾さんも、バレエ王子から徐々にキャシディのポジションにシフトしているようです。

この夏のKバレエユースでカラボスを演じたし、くるみではドロッセルマイヤーを演じるようだし。

今や、栗山王子がビリーエリオットの経験を得てぐんぐんと成長しているし、杉野さんも濃い演技で認められていい役をもらっています。

今回のクレオパトラでは、セカンドキャストで案内役をやっていた佐野朋太郎さんが、バネのある踊りで若々しくて目を引きましたし、選ばれた男娼役の堀内将平さんが、野性的なセクシーさで印象に残りました。

コールドの男性陣もテクニックが高くて、若さと勢いにあふれています。

クレオパトラを演じた中村さんと浅川さんも、どちらも比べようもなく素晴らしく、しいていえば、熊川さんがテレビで言っていたように、独特なエキゾチックな手や足ポーズを、浅川さんはまあるい中できれいに踊る、中村さんは、手脚の長さを生かしてエッジを利かせて踊る。

あとは観客の好みですが、私は浅川さんのクレオパトラの方が心に残りました。

選ばれた男娼とのSEXで見せる残酷な笑いとエロティックさ、ラストシーンでの叫び声が聞こえるような慟哭。

王国のために冷酷な心だったクレオパトラが、カエサルに庇護されて安堵感を知り、アントニウスに愛されて一人の女性としての柔らかい心に変わってきた過程がとても自然に伝わってきました。

これはSEX、陰謀、殺人とダークなバレエですから、確かに踊りぬくのに強い精神力が要るでしょう。

ストーリー、音楽、舞台美術、衣装、振付と、個性的でありながら、万人受けする大人のバレエ、このクレオパトラの大成功で、Kバレエはついに熊川さんが踊らなくても会場を満席にできるバレエ団になったと思います。

案内役の扱い方が、ちょっと疑問に思ったのですが、熊川さんのことですから、再演の時にはブラッシュアップしてくれることでしょう。






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2017年10月09日

「クレオパトラ」浅川紫織

2017年10月9日(月・祝)13:30オーチャードホール
クレオパトラ 浅川紫織
プトレマイオス 篠宮佑一
カエサル スチュアート・キャシディ
アントニウス 栗山廉
オクタヴィアヌス 杉野慧
オクタヴィア 小林美奈
案内人 佐野朋太郎

今までKバレエのために数々の全幕作品を作ってきた熊川さんのあらたな挑戦。
ストーリー、音楽、美術衣装すべてをオリジナルで創り出す。

公演が近くなって、宣伝のためラジオやTVで熊川さんがクレオパトラの話をしているのを色々チェックしました。かいつまんでまとめると、こういうことになります。

@現在に生きるバレエ団として、新作バレエを作るのは責務である。

A当団のプリマ、中村祥子と浅川紫織に合った作品を作りたかった。

Bバレエは女性がタイトルロールになっているものが多くて、たとえば「シンデレラ」に匹敵するようなビッグネームは誰かと考えると、クレオパトラしかないなと思った。

Cニールセンの「アラジン」を聞いてショックを受けて、これで作ろうと決めた。

Dエジプトの民族舞踊なども一通りチェックしたが、ベースはやはりクラシックバレエで作る。


まだ公演は続いているので、あまりネタバレはしない方がいいと思いますが、これは大人のためのバレエです。
マクミランのマノンやルドルフ(うたかたの恋)に通じるようなダークサイドのエピソードがてんこ盛りです。

殺人や陰謀については、「カルメン」でも描かれましたが、今回はもっと強烈だったのはSEXを取り上げたことです。

それも怪しいおクスリを使ってのSEX。
これは今までバレエで描かれていない事だと思います。レイプはマクミランが描いていますから、これは熊川さんからマクミランへの挑戦状かもしれません。

いや私たち観客への挑戦状でもあると思います。

これを楽しめるか否か。観客にも受信力を高めて欲しいと熊川さんは言っています。


熊川さんが創った全幕バレエ「シンデレラ」は、心温まるハッピーで美しいおとぎ話です。

「シンデレラ」が陽だとしたら、殺人と陰謀とSEXうずまく「クレオパトラ」はそれと対極の陰です。

この二つを作品をあえて対になるものだと熊川さんが考えていることは、どちらにも「道化」という役柄があることがヒントとなります。
(クレオパトラでの道化は「案内役」という役名ですが…。)

シンプルでシンボリックな舞台装置と、古代エジプト壁画から抜け出してきたような衣装は、エメラルドグリーンと、くすんだ金色を基調としていてセンスが良く、振付はクラシックバレエでありながら、手の形やステップの中に、スパイス的にエキゾチックな動きをいれて工夫されています。


簡単なあらすじは以下です。
まだご覧になっていない方も、あらすじぐらいは把握していた方が楽しめると思います。


第1幕は、夫である弟のプトレマイオスの幼さが描かれ、彼と対立するクレオパトラが成熟した女ということが描かれ、カエサルに負けたポンペイウスが助けを求めに来ます。

クレオパトラはカエサルを籠絡。

プトレマイオスはポンペイウスの首をカエサルに届け、カエサルを暗殺しようとしますが、クレオパトラのたくらみで逆に殺されてしまいます。


第2幕ではカエサルとの間に子供もでき、幸せに暮らすクレオパトラ。

しかしカエサルはブルータスに殺されてしまい、嘆くクレオパトラの前にアントニウスが現れます。

カエサルの後継者で皇帝になったオクタヴィアヌスは妹オクタヴィアとアントニウスを結婚させます。

その後アントニウスはオクタヴィアを捨ててクレオパトラのもとに走ります。

怒ったオクタヴィアヌスはアントニウスを追い詰め、アントニウスは自殺、クレオパトラも後を追います。


クレオパトラの浅川さんは、正直彼女がこれほどやるとは思わなかった。

第1幕で見せたエロティシズム。

国のために冷酷な女王であろうとした彼女が、カエサルの庇護を得て、少し柔らかな表情になり、カエサルの死後、アントニウスに心惹かれていく過程も良く分かったし、

アントニウスに対しては、女王でなくて一人の女性のような女らしさだったし、

その彼を失った最後の慟哭はすごかった。悲鳴が聞こえるようだった。


今日はクレオパトラの衣装をはがしてボディースにする時、ホックがはずれなかったり

、オクタヴィアとアントニウスのパ・ド・ドゥの時に衣装がひっかかったりして、ドキドキしました。

そういう所や演出がほんの少し間延びしているところなどは、後半に向かって手直しされていくと思います。

後半、東京文化会館では祥子クレオパトラを観るので、どういう風に変わっているか楽しみです。















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ザハロワ&レーピン「トランスシベリア芸術祭 パ・ド・ドウfor Toes & Fingers」

2017年9月29日(金)19時 オーチャードホール

ヴァイオリン演奏とバレエを交互に6演目づつ。

バレエの6演目のうち4演目は演奏もあって、ザハロワとレーピンのヴァイオリンの両方を堪能できる贅沢な公演でした。

ヴァイオリンの演目も、軽めのものを選んでいたし、ザハロワのバレエも、純クラシックから、コンテンポラリーまで、色々な味わいの作品で、ザハロワを多面的に観ることができました。

最後は、レーピンも一緒におどけて踊って、まさに二人のパ・ド・ドゥ。

ホンワカした幸せ夫婦のハッピーな空気が伝わってきました。

ザハロワは、12年ぐらい前に新国立劇場のゲストで何度か観たのですが、そのころは若くて顔がふっくらしていたけれど、今は痩せて鶏ガラのようです。

咲き誇る花のような昔のザハロワはクラクラしそうなほど艶やかでしたが、今は修験者みたいです。

しかし、やはりザハロワの脚は素晴らしい。

その脚が自在に空間を動くのを見ているだけで、この上ない幸せを感じるのです。

しなった膝と高い甲、こんな美しい曲線の脚の持ち主は、300年に一人ぐらいかもしれません。



パガニーニ:“ヴェネツィアの謝肉祭”による変奏曲 op.10 ☆演奏のみ

バレエ「ライモンダ」より“グラン・アダージョ”
スヴェトラーナ・ザハーロワ、デニス・ロヂキン

キッラキラのスワロスキーがいっぱいついた白い衣装で、第1幕 夢の場面。

美しいザハロワの姫オーラ全開でうっとり。


チャイコフスキー:「エフゲニー・オネーギン」より“レンスキーのアリア”☆演奏のみ

バレエ:「プラス・マイナス・ゼロ」振付:ウラジーミル・ヴァルナヴァ
スヴェトラーナ・ザハーロワ、ウラジーミル・ヴァルナヴァ

男性は前をはだけたシャツにズボン、ザハロワはTシャツに練習用っぽいチュチュボン(長め)で髪は後ろに三つ編み。

鋭角的でスピーディな動きで、ザハロワの体幹の強さを感じます。

ギエムっぽい。


ラヴェル:「ツィガーヌ」☆演奏のみ

バレエ:「レヴェレーション」振付:平山素子 *録音音源
スヴェトラーナ・ザハーロワ

薄いグレーのネオクラシック風ロングドレス。

ドレスから除く素足の甲のラインの美しいこと!

シンドラーのリストの音楽で、物哀しさがありながらもフェミニン。

ザハロワの個性にとても似合っている。


ワックスマン:カルメン幻想曲 ☆演奏のみ


バレエ:「ヘンデル・プロジェクト」振付:マウロ・ビゴンゼッティ *録音音源
スヴェトラーナ・ザハーロワ、デニス・ロヂキン

白いボディに後ろだけのチュチュと思ったのは、立方体の枠をたくさん重ねた不思議衣装。

トウシューズなのでザハロワの美脚を存分に堪能できました。

6時のポーズのやや変形で180度開脚したままのプロムナードがすごい。


チャイコフスキー:「ワルツ・スケルツォ op.34」☆演奏のみ


バレエ:「瀕死の白鳥」
スヴェトラーナ・ザハーロワ

レーピンのヴァイオリンとハープのみの演奏がステキでした。

ザハロワは意外とあっさりな踊り方だったけど、みんな待っていた白鳥だから拍手が鳴りやまず。


ポンセ:「エストレリータ」☆演奏のみ

題名のない音楽会で、レーピンさんがよくアンコールで弾く曲だと言っていたけど、かわいらしくてこの曲大好きです。演奏の中で一番良かった。


バレエ:「レ・リュタン」より 振付:ヨハン・コボー
スヴェトラーナ・ザハーロワ、ミハイル・ロブーヒン、ドミトリー・ザグレービン

レーピンさんもおどけて踊るんだけど、脚が上がって意外とイケてました。

ザハロワに特訓うけたのかな?

とっても楽しいハッピーナンバー。

レ・リュタンの完成度としては、コジョカルガラの衝撃に軍配があがるのだけれど、
この夫婦のホンワカした愛が観客をハッピーにしてくれました。

ザハロワさんは、いい旦那様と巡り合って良かったですね💓



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2017年10月07日

ミュージカル「ビリーエリオット」

2017年9月21日(木)17:45 ACTシアター

ビリー 加藤航世
ウィルキンソン先生 島田歌穂
お父さん 益岡徹
オールダービリー 栗山廉
マイケル 古賀瑠
スモールボーイ 菊池凛人

ビリーエリオットの評判がえらくいいので、たまらなく見たくなってしまい、

5人のビリーのうち誰を見ようかと悩みまくった結果、

バレエが上手くない子だとがっかりしそうなので、

一番バレエ上手な加藤君の日にしました。


ミュージカルは昔から好きで、

特に好きだったのが、50年代ハリウッドミュージカルのフレッド・アステア、

60年代〜のボブ・フォッシーの作品(キャバレーとか)、

80年代のアンドリューロイドウェーバーの作品など…


20年ぶりくらいに生のミュージカルを見たのですが、

やられました。

子供たちのエネルギーに。

主役のビリーは長期育成型オーディションで、

このミュージカルに必要なバレエ、タップ、アクロバット、歌、演技などを

300日間にわたって習得してきた子たちで、いわゆる子役タレントではありません。


脇の子役たちは、おそらく小さい頃から俳優事務所に所属している子供タレントで、

舞台経験が豊富なようで、

女の子たちはかなりはっちゃけていたし、

特にマイケル役の古賀瑠くんは、演技が自然で生き生きとしていて、

プロフェッショナルな俳優でした。

彼らに比べると、加藤ビリーはフレッシュで、

最初は固くて、「演技してる」と感じられた時もあるけれど、

ピンと伸びた膝とつま先、スッとした立ち姿はバレエの素養のたまもの。

歌は想像以上に上手で、歌詞がとても聞き取りやすかった。


表情がくるくるかわる瑠マイケルと違って、

加藤ビリーはちょっと陰りのあるような表情があまり変化がみえない。

目が小さいのかな。

そのかわりに動きで十分語っていたけど。


オールダービリーの栗山さんとの、ドリームのシーンがすごく美しかった。

栗山さん、子供の加藤くんよりも顔がちっちゃいし、痩せてる〜

フライングの加藤ビリーの手足がピンと伸びてきれいだった。


このミュージカルは、サッチャー時代の炭鉱労働者のストライキと

バレエダンサーを目指すビリーの物語を綾のように交錯させているのだけれども、

そういう事があったという事実すら良く知らなかったので、

労働者たちが団結して闘おう!と歌っているシーンは、

レ・ミゼラブルの学生たちの砦のパクリかなと思ってしまった。

大きな人形のサッチャーや、巨大なドレスが踊る演出は面白かったけど、

そういう社会現象をからめて描かなくても、

バレエダンサーになるのをお父さんに反対される男の子の話というだけで十分ではなかったかなとも思った。


加藤航世くん。

普通のバレエボーイズだったら、こんなに熱狂的な満席のホールで、

歓声の飛び交うスタンディングオベーションを受けるような経験はないだろうに、

まだ14才で、20回以上もこんなすごい体験をするなんて。

バレエの世界では、ダンサーは舞台本番でしか成長しない、とよく言うけれど、

その本番の中でもスペシャルな本番をこれだけ経験したなら、

どれだけ成長して、将来どんなバレエダンサーになるのか。


それを想像するだけでも、わくわくします。



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2017年10月06日

Kバレエユース「眠れる森の美女」八木りさ&山本雅也

2017年8月6日(日)14時オーチャードホール

オーロラ姫:八木りさ
フロリムント王子:山本雅也
リラの精:吉岡眞友子
カラボス:杉野慧
フロリナ王女:三好梨生
ブルーバード:岡庭伊吹

夏は海外ダンサー達のガラ公演がたくさんあるけど、全幕物の上演が少ない。
そこで、一度見たかったKバレエユース。
二日間ありますが、カラボスを杉野さんがどう演じるか見たくてこの日にしました。

Kバレエユースは、Kバレエスクールも大きくなって生徒数も増え、優秀な子も多くなってきたので、上手な子たちを中心に、プロと同じ美術、装置、衣装で、お金を取れるレベルの舞台を作り上げる経験をさせる、というコンセプトで公演を行っています。
一流の舞台を観たことのない人なら、かなり満足する仕上がりになっていると思います。
舞台美術衣装はセンスがいいし、音楽は生オケだし、ダンサーたちも特にソロを踊る子たちは訓練されてきちんと踊れる子をそろえている。

でも、プロの舞台をいつも見ている私には、ダンサーたちの体つきの、なんというか「締まっていない感じ」や「足先がドタバタしていきたない感じ」や、「振付をただなぞっている感じ」がどうしても気になります。

たとえばプロローグの妖精さんたちは、それぞれの個性を出しながら踊っていてみな上手ではあったけれど、吉岡さんのリラの精と比べてしまうと物足りない。吉岡さんって、Kバレエの公演ではあまり目立つ役はやっていないと思うのだけど、やはりプロは違う。アームスの柔らかな動きや、きりっとした中にも慈愛を感じさせる表情がとても良かった。
ソロを踊る生徒さんたちは、良く訓練されていて、頑張って踊っていたし、あきらかな失敗やクラシックバレエの枠からはずれた動きというものはなかったのだけど、たとえば宝石の踊りなどは、もともとの熊川さんの振付が、速い動きで方向転換も多い難しいものなので、さすがにプロのように踊りこなせてはいなかった。

逆に、ユースならではの演出は、花のワルツで小さい子がいっぱい出てきて可愛かったこと。ワガノワみたい。開幕前にお小姓の子がベルを鳴らして会場を歩く演出も、気が効いていた。

一番の収穫は、オーロラを踊った八木りささん。
八木さんは、登場の瞬間にパッと華やぐオーラがある。
すごくスタイルがいいとか、テクニックが超絶とかいうのではないのだけれど、上品で音の取り方にセンスがある。
軸がびしっとしているので、ピルエットを回るときも、「これから回ります!」みたいに構えなくて、さらっと回るところがいい。余計な動きのない、雑味のない、クリアな踊り。
相当練習したのだと思われます。
決して派手ではないけれども、確かな技術と、自分の表現したい世界を持っていると感じました。
登場から終幕まで、オーロラとして存在していて、それがとても自然に伝ってきました。

八木りささんは、プロとして今すぐに通用しそうです。
プロである山本雅也王子の方がオーラがなくて、登場の時も誰だか分らなかったくらい、りささんがキラキラしていました。
りささんはかなりの逸材かもしれません。彼女をKバレエで見る日が楽しみです。
山本王子は、あまり王子らしくない。一生懸命王子らしく見せようとしているというレベルでした。
熊川さんがひいきにしているのだから、もっと頑張って欲しいです。

お目当ての杉野カラボスは…
もっと「濃い」演技かと思いきや、それほどオーバーな演技ではなくて、あくまでも上品さを失わない節度がありましたが、キャラは立っていました。
そういえば、昔Kバレエでサー・アンソニー・ダウエルのカラボスもありました。ダウエルのカラボスも上品でしたから、杉野さんの目指しているところはそこかもしれません。








posted by haru at 23:24| Comment(0) | Kバレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月04日

バレエ・アステラス2017

2017年7月22日(土)15:00 オペラパレス
第1部
「シンフォニエッタ」新国立劇場バレエ研修所
牧阿佐美先生がバレエ研修所の為に作った作品で、衣装・振り付けともにネオ・クラシックなアブストラクトバレエ。明るくスピーディな流れの中で、群舞や2,3人の踊りが次から次へと入れ変わります。研修所のオリジナル作品として何度か見ています。
私は8期の研修生たちが大好きで将来有望だと思っていたのに、彼女たちが誰一人として新国立劇場に残っていない理不尽さにがっかりして、それ以来モチベーションが下がり最近は研修所の発表会も観に行ってません。
そんなわけで、あまり期待して見ていませんでしたが、ひとり他の方と比べて太目に見えるダンサーが気になったので調べたらパーキンソン赤城さんでした。日本人の子がうすっぺらな体型すぎるので、その中に入ると目立つのですが、胴体がしっかりした外人体型なのです。音楽的な踊りをする方で、魅力的なダンサーになれるのではないかと思いました。

「エスメラルダ」よりグラン・パ・ド・ドゥ 
上草吉子&ルーゼンバーグ・サンタナ(カナダロイヤル ウィニペグバレエ)
上草さんも胴体がしっかりした体型。ピルエットは三回転がデフォのテクニシャン。すごく堂々としていて、観客を楽しませることを知っている。
タンバリンを持ったヴァリエーションは、オケと合わないというか、合わせづらいのか?
サンタナさんは小顔でスタイルいいけれども少し踊りはゆるい感じでした。

「海賊」第2幕よりグラン・パ・ド・ドゥ
中島麻美&大巻雄矢 (スロヴェニア国立マリボル歌劇場)
中島さんは細くてたおやかでいながら、軸はしっかりして強靭。好きなタイプのダンサーです。
衣装がズボンタイプだったのですが、もっと華やかなチュチュの方が見栄えがしたと思います。
女性的で優美でありながら芯の強さを感じさせるようなステキな踊り。
大巻さんはレヴェランスの時も常に「奴隷のアリ」を演じていて、けれん味たっぷりでテクニックもあって、超絶技巧で会場を沸かせていました。

「Still of King」
高野陽年(ジョージア国立バレエ)
高野さんはスタイルがよく、美しい筋肉。まずその体つきにほれぼれ致しました。
このコンテンポラリーはヨルマ・エロがマルセロ・ゴメスに振り付けたものだそうですが、とても達者に踊り、もっといろいろな踊りを見てみたいと思わせる、素敵なダンサーでした。

「ドン・キホーテ」第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ
桑原万奈&金指承太郎(ロシア国立クラスノヤルスクオペラバレエ劇場)
桑原さんは、大阪っぽい押し出しの強いバレエ表現が特徴ですが、足先の表現ひとつでも大きな劇場全体に伝わってくるのが素晴らしいと思います。こういう「伝わる表現力」があるから海外で活躍できるのでしょう。
金指さんは、なかなかのテクニシャンで、昔の熊川さんがやっていたような超絶技巧のジャンプやピルエットを披露していましたが、かなり控えめなので、桑原さんとプラスマイナスでちょうど良いのかもしれません。

第2部
「人形の精」組曲
ワガノワ記念ロシア・アカデミー生
女子6人、男子2人ですが、みんなキレイで上手!!
特に人形の精を踊った7年生のマリア・ホーレワが、信じられないくらい甲が高くて、美しい脚で、その脚をずっと見ていたいと思うほど。この子は将来有望です。
ピエロをやった男の子ふたりは9年生(パーベル・ミヘーエワとニコライ・ヴォロビョーフ)ですが、背も高いしコミカルな演技も上手でした。
その他の子たちも目の保養で、さすがワガノワ!!
若くって美しいって素晴らしい!次のワガノワ公演はぜひ観に行きたいと思います。

「ソワレ・ド・バレエ」
池田理沙子&井澤駿(新国立劇場バレエ)
バレエ・アステラスの主旨として、海外で活躍する若手日本人ダンサーの応援というのなら、もっと海外組をたくさん出演させてあげればいいと思うんです。だってそれこそ色々な国で活躍している日本人ダンサー、いっぱいいるんですから、新国立の推しを無理やりねじ込まなくても…
この演目はディズニープリンセスっぽくて大好きなのですが、ついつい「唯さんはこう踊ってた」とか重ねて見てしまいます。池田さんの踊りには惹かれるところはないのですが、振付を踊りこなすテクニックはあるんですね。ワガノワの生徒の後だと、プロフェッショナルな感じもしますし、この順番は正解です。

「Multiplicity」よりチェロのパ・ド・ドウ
菅野芙里奈&リシャト・ユルバリゾフ(ベルリン国立バレエ)
チェロ 上村文乃
女性をチェロに見立てて、男性が弾くという趣向のナチョ・ドゥアトの作品
その奥に表現しているものを考えると少しエロティックですが、とても美しいし、音楽にもぴったり合っています。菅野さんはとても身体能力が高いダンサーで、すべての瞬間が絵になるようでした。

「ダイアナとアクティオン」
寺田翠&大川航矢(タタールスタン国立ロシアカザン歌劇場)
今回のアステラスの一押し、お目当て!!
モスクワ国際コンクールで一躍大ニュースになったお二人。このペアが出演する効果か客席はほぼ満員。
私も大川さんが2011年にローザンヌに出た時から注目していたので、お二人の快挙は嬉しい。
モスクワ国際コンクールのアーカイブは何度もリピートして見たので、大川さんがかっ飛んでくる登場シーンとかアダージオでふたりが耳に手をやりながら後ずさりするところとか、生で見れて興奮しました。
大川さんは熊川さんばりのジャンプ力とテクニックがあるのに、オレ様でなくて、どこかホンワカしているのが良いです。
コンクールの時よりは少々ジャンプが低めかなとも感じましたが、レベルが高く、まさにプロフェッショナルなお二人の踊りを堪能しました。

「眠れる森の美女」第3幕より
影山茉以&ダビッド・チェンツェミエック(ポーランド国立歌劇場バレエ)
とても端正で美しいオーロラで、特にソロの表情が幸福感があふれてくるようで良かったです。
大川ペアの後でもまったくひけをとらず、この正統派クラシックを格調高くきっちりと踊り、トリにふさわしいパフォーマンスでした。

フィナーレ
「バレエの情景」より
出演者全員が代わるがわる出てきて、さわりの部分を踊ってくれたり、リフトを披露したりしました。
こういうフィナーレは楽しいです。


10演目で、そのうち海外で活躍するダンサーは7組です。少なすぎやしませんか。
ただ、すべてオーケストラがつくのは贅沢で、凄いことです。
全体の時間は短めなので、もう少し長くして、せめて12組くらい海外組にしてはどうなのでしょうか。
パ・ド・ドウじゃなくてもヴァリエーションだけでもいいような気がします。
と言ってもクオリティに差があるし、知名度がないと集客力が弱い。
今回は大川効果で満席でしたが、いつもはもっと空席がある公演です。
でも助成金が出ているのだし、「海外で活躍しているダンサー」が、日本の大劇場で踊れる機会ってあまりないですし、故郷の知り合いにも見てもらえるし…企画としては素晴らしいので、もっとたくさんのダンサーに出演の機会を与えて欲しい、それが日本のバレエ界のトップを走っている≪いちおう国立》の、新国立劇場の役割ではないかと思います。


posted by haru at 09:52| Comment(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月30日

Kバレエ2017「ジゼル」浅川&宮尾

2017年6月25日(日)13:00 東京文化会館
ジゼル 浅川紫織
アルブレヒト 宮尾俊太郎
ヒラリオン 石橋奨也
ミルタ 矢内千夏
ペザント 中村春奈 井澤諒

Kバレエシネマのバヤデールでのガムザッティの浅川さんが、セリフが聞こえてくるような見事なマイムと踊りだったので、これはぜひ彼女のジゼルが見たいと思い、チケットを取った公演です。

第1幕は、おとなしくて目立たないジゼル…とう造形を狙っていたようで、それが華やかな美貌で強さを感じる彼女のキャラクターとはなじまないように思えました。踊りは軽やかでよかったですが、アルブレヒトの宮尾さんとの交信もあまり感じず。彼女は本当に誰かを強く好きになったことがあるのか、どこか本人のクールさが出てしまい、失恋して狂うジゼルにリアリティがなかったです。

ペザントがKバレエではパ・ド・シスとして6人で踊られますが、中心になるペアの中村春奈さんは、やわからかで優しく美しく、とてもステキでした。有名なペザントの女性ヴァリエーションがこの版ではないのが残念。
Kバレエでは、有名どころの古典作品を熊川さんが再演出していますが、ジゼルに関しては、スタンダートな版とそれほど改変していないし、美術衣装はピーター・ファーマーで、村人たちは茶色を基調とした地味なもの。熊川さんの作品としては珍しいくらいの古典主義です。
その中でも、秀逸な演出は、第2幕のジゼル登場シーンで、ジゼルが中央に進むと、両サイドからスモークがたかれ、その中を他のウィリーたちが取り囲むようにして出てくるところです。幻想的で美しかったです。

第2幕は浅川さんは、そのクールビューティがしっくりきて、感情を感じさせないような静かな踊りで圧倒しました。「静か」な踊りとは、余分なものがそぎ落とされ、精神が集中された状態です。
アルブレヒトが、精霊になったジゼルを頭上にリフトする所があります。
普通は、さっと一気に頭上にジゼルを横たえるように一瞬で持ち上げます。その時にいかに軽く見せるかが男性の腕の見せ所なのですが、宮尾さんの場合は、一気に、ではなく、ゆっくりと頭上にいくまでの過程がスローモーションでみるように持ち上げていました。一気にやるよりもゆっくりスムーズにやる方がはるかに難しいと思いますが、宮尾さんは見事でした。
力を込めてあげているようには全く見えず、ジゼルが体重がないように軽く見えました。
アルブレヒトの一幕の演技、あまり心に響かなかったのですが、このリフトは感心致しました。
彼は熊川さんと違って、オレ様的性格でもないし、こういう縁の下の力持ち的な役柄(サポートだけ)とかの方が光るのかもしれませんね。
第2幕のアルブレヒトのヴァリエーションも、だいたいはいいのですが、途中のピルエットだけ少しもたついてしまって、いったい何年主役やらせてもらっていてこの程度なんだとがっかりもしたんですけど。

第1幕が終わった時点では、やはり祥子ジゼルを選ぶべきだったかなと少々後悔したのですが、第2幕は素晴らしかったので満足です。



posted by haru at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Kバレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする