2017年10月09日

「クレオパトラ」浅川紫織

2017年10月9日(月・祝)13:30オーチャードホール
クレオパトラ 浅川紫織
プトレマイオス 篠宮佑一
カエサル スチュアート・キャシディ
アントニウス 栗山廉
オクタヴィアヌス 杉野慧
オクタヴィア 小林美奈
案内人 佐野朋太郎

今までKバレエのために数々の全幕作品を作ってきた熊川さんのあらたな挑戦。
ストーリー、音楽、美術衣装すべてをオリジナルで創り出す。

公演が近くなって、宣伝のためラジオやTVで熊川さんがクレオパトラの話をしているのを色々チェックしました。かいつまんでまとめると、こういうことになります。

@現在に生きるバレエ団として、新作バレエを作るのは責務である。

A当団のプリマ、中村祥子と浅川紫織に合った作品を作りたかった。

Bバレエは女性がタイトルロールになっているものが多くて、たとえば「シンデレラ」に匹敵するようなビッグネームは誰かと考えると、クレオパトラしかないなと思った。

Cニールセンの「アラジン」を聞いてショックを受けて、これで作ろうと決めた。

Dエジプトの民族舞踊なども一通りチェックしたが、ベースはやはりクラシックバレエで作る。


まだ公演は続いているので、あまりネタバレはしない方がいいと思いますが、これは大人のためのバレエです。
マクミランのマノンやルドルフ(うたかたの恋)に通じるようなダークサイドのエピソードがてんこ盛りです。

殺人や陰謀については、「カルメン」でも描かれましたが、今回はもっと強烈だったのはSEXを取り上げたことです。

それも怪しいおクスリを使ってのSEX。
これは今までバレエで描かれていない事だと思います。レイプはマクミランが描いていますから、これは熊川さんからマクミランへの挑戦状かもしれません。

いや私たち観客への挑戦状でもあると思います。

これを楽しめるか否か。観客にも受信力を高めて欲しいと熊川さんは言っています。


熊川さんが創った全幕バレエ「シンデレラ」は、心温まるハッピーで美しいおとぎ話です。

「シンデレラ」が陽だとしたら、殺人と陰謀とSEXうずまく「クレオパトラ」はそれと対極の陰です。

この二つを作品をあえて対になるものだと熊川さんが考えていることは、どちらにも「道化」という役柄があることがヒントとなります。
(クレオパトラでの道化は「案内役」という役名ですが…。)

シンプルでシンボリックな舞台装置と、古代エジプト壁画から抜け出してきたような衣装は、エメラルドグリーンと、くすんだ金色を基調としていてセンスが良く、振付はクラシックバレエでありながら、手の形やステップの中に、スパイス的にエキゾチックな動きをいれて工夫されています。


簡単なあらすじは以下です。
まだご覧になっていない方も、あらすじぐらいは把握していた方が楽しめると思います。


第1幕は、夫である弟のプトレマイオスの幼さが描かれ、彼と対立するクレオパトラが成熟した女ということが描かれ、カエサルに負けたポンペイウスが助けを求めに来ます。

クレオパトラはカエサルを籠絡。

プトレマイオスはポンペイウスの首をカエサルに届け、カエサルを暗殺しようとしますが、クレオパトラのたくらみで逆に殺されてしまいます。


第2幕ではカエサルとの間に子供もでき、幸せに暮らすクレオパトラ。

しかしカエサルはブルータスに殺されてしまい、嘆くクレオパトラの前にアントニウスが現れます。

カエサルの後継者で皇帝になったオクタヴィアヌスは妹オクタヴィアとアントニウスを結婚させます。

その後アントニウスはオクタヴィアを捨ててクレオパトラのもとに走ります。

怒ったオクタヴィアヌスはアントニウスを追い詰め、アントニウスは自殺、クレオパトラも後を追います。


クレオパトラの浅川さんは、正直彼女がこれほどやるとは思わなかった。

第1幕で見せたエロティシズム。

国のために冷酷な女王であろうとした彼女が、カエサルの庇護を得て、少し柔らかな表情になり、カエサルの死後、アントニウスに心惹かれていく過程も良く分かったし、

アントニウスに対しては、女王でなくて一人の女性のような女らしさだったし、

その彼を失った最後の慟哭はすごかった。悲鳴が聞こえるようだった。


今日はクレオパトラの衣装をはがしてボディースにする時、ホックがはずれなかったり

、オクタヴィアとアントニウスのパ・ド・ドゥの時に衣装がひっかかったりして、ドキドキしました。

そういう所や演出がほんの少し間延びしているところなどは、後半に向かって手直しされていくと思います。

後半、東京文化会館では祥子クレオパトラを観るので、どういう風に変わっているか楽しみです。















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ザハロワ&レーピン「トランスシベリア芸術祭 パ・ド・ドウfor Toes & Fingers」

2017年9月29日(金)19時 オーチャードホール

ヴァイオリン演奏とバレエを交互に6演目づつ。

バレエの6演目のうち4演目は演奏もあって、ザハロワとレーピンのヴァイオリンの両方を堪能できる贅沢な公演でした。

ヴァイオリンの演目も、軽めのものを選んでいたし、ザハロワのバレエも、純クラシックから、コンテンポラリーまで、色々な味わいの作品で、ザハロワを多面的に観ることができました。

最後は、レーピンも一緒におどけて踊って、まさに二人のパ・ド・ドゥ。

ホンワカした幸せ夫婦のハッピーな空気が伝わってきました。

ザハロワは、12年ぐらい前に新国立劇場のゲストで何度か観たのですが、そのころは若くて顔がふっくらしていたけれど、今は痩せて鶏ガラのようです。

咲き誇る花のような昔のザハロワはクラクラしそうなほど艶やかでしたが、今は修験者みたいです。

しかし、やはりザハロワの脚は素晴らしい。

その脚が自在に空間を動くのを見ているだけで、この上ない幸せを感じるのです。

しなった膝と高い甲、こんな美しい曲線の脚の持ち主は、300年に一人ぐらいかもしれません。



パガニーニ:“ヴェネツィアの謝肉祭”による変奏曲 op.10 ☆演奏のみ

バレエ「ライモンダ」より“グラン・アダージョ”
スヴェトラーナ・ザハーロワ、デニス・ロヂキン

キッラキラのスワロスキーがいっぱいついた白い衣装で、第1幕 夢の場面。

美しいザハロワの姫オーラ全開でうっとり。


チャイコフスキー:「エフゲニー・オネーギン」より“レンスキーのアリア”☆演奏のみ

バレエ:「プラス・マイナス・ゼロ」振付:ウラジーミル・ヴァルナヴァ
スヴェトラーナ・ザハーロワ、ウラジーミル・ヴァルナヴァ

男性は前をはだけたシャツにズボン、ザハロワはTシャツに練習用っぽいチュチュボン(長め)で髪は後ろに三つ編み。

鋭角的でスピーディな動きで、ザハロワの体幹の強さを感じます。

ギエムっぽい。


ラヴェル:「ツィガーヌ」☆演奏のみ

バレエ:「レヴェレーション」振付:平山素子 *録音音源
スヴェトラーナ・ザハーロワ

薄いグレーのネオクラシック風ロングドレス。

ドレスから除く素足の甲のラインの美しいこと!

シンドラーのリストの音楽で、物哀しさがありながらもフェミニン。

ザハロワの個性にとても似合っている。


ワックスマン:カルメン幻想曲 ☆演奏のみ


バレエ:「ヘンデル・プロジェクト」振付:マウロ・ビゴンゼッティ *録音音源
スヴェトラーナ・ザハーロワ、デニス・ロヂキン

白いボディに後ろだけのチュチュと思ったのは、立方体の枠をたくさん重ねた不思議衣装。

トウシューズなのでザハロワの美脚を存分に堪能できました。

6時のポーズのやや変形で180度開脚したままのプロムナードがすごい。


チャイコフスキー:「ワルツ・スケルツォ op.34」☆演奏のみ


バレエ:「瀕死の白鳥」
スヴェトラーナ・ザハーロワ

レーピンのヴァイオリンとハープのみの演奏がステキでした。

ザハロワは意外とあっさりな踊り方だったけど、みんな待っていた白鳥だから拍手が鳴りやまず。


ポンセ:「エストレリータ」☆演奏のみ

題名のない音楽会で、レーピンさんがよくアンコールで弾く曲だと言っていたけど、かわいらしくてこの曲大好きです。演奏の中で一番良かった。


バレエ:「レ・リュタン」より 振付:ヨハン・コボー
スヴェトラーナ・ザハーロワ、ミハイル・ロブーヒン、ドミトリー・ザグレービン

レーピンさんもおどけて踊るんだけど、脚が上がって意外とイケてました。

ザハロワに特訓うけたのかな?

とっても楽しいハッピーナンバー。

レ・リュタンの完成度としては、コジョカルガラの衝撃に軍配があがるのだけれど、
この夫婦のホンワカした愛が観客をハッピーにしてくれました。

ザハロワさんは、いい旦那様と巡り合って良かったですね💓



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2017年10月07日

ミュージカル「ビリーエリオット」

2017年9月21日(木)17:45 ACTシアター

ビリー 加藤航世
ウィルキンソン先生 島田歌穂
お父さん 益岡徹
オールダービリー 栗山廉
マイケル 古賀瑠
スモールボーイ 菊池凛人

ビリーエリオットの評判がえらくいいので、たまらなく見たくなってしまい、

5人のビリーのうち誰を見ようかと悩みまくった結果、

バレエが上手くない子だとがっかりしそうなので、

一番バレエ上手な加藤君の日にしました。


ミュージカルは昔から好きで、

特に好きだったのが、50年代ハリウッドミュージカルのフレッド・アステア、

60年代〜のボブ・フォッシーの作品(キャバレーとか)、

80年代のアンドリューロイドウェーバーの作品など…


20年ぶりくらいに生のミュージカルを見たのですが、

やられました。

子供たちのエネルギーに。

主役のビリーは長期育成型オーディションで、

このミュージカルに必要なバレエ、タップ、アクロバット、歌、演技などを

300日間にわたって習得してきた子たちで、いわゆる子役タレントではありません。


脇の子役たちは、おそらく小さい頃から俳優事務所に所属している子供タレントで、

舞台経験が豊富なようで、

女の子たちはかなりはっちゃけていたし、

特にマイケル役の古賀瑠くんは、演技が自然で生き生きとしていて、

プロフェッショナルな俳優でした。

彼らに比べると、加藤ビリーはフレッシュで、

最初は固くて、「演技してる」と感じられた時もあるけれど、

ピンと伸びた膝とつま先、スッとした立ち姿はバレエの素養のたまもの。

歌は想像以上に上手で、歌詞がとても聞き取りやすかった。


表情がくるくるかわる瑠マイケルと違って、

加藤ビリーはちょっと陰りのあるような表情があまり変化がみえない。

目が小さいのかな。

そのかわりに動きで十分語っていたけど。


オールダービリーの栗山さんとの、ドリームのシーンがすごく美しかった。

栗山さん、子供の加藤くんよりも顔がちっちゃいし、痩せてる〜

フライングの加藤ビリーの手足がピンと伸びてきれいだった。


このミュージカルは、サッチャー時代の炭鉱労働者のストライキと

バレエダンサーを目指すビリーの物語を綾のように交錯させているのだけれども、

そういう事があったという事実すら良く知らなかったので、

労働者たちが団結して闘おう!と歌っているシーンは、

レ・ミゼラブルの学生たちの砦のパクリかなと思ってしまった。

大きな人形のサッチャーや、巨大なドレスが踊る演出は面白かったけど、

そういう社会現象をからめて描かなくても、

バレエダンサーになるのをお父さんに反対される男の子の話というだけで十分ではなかったかなとも思った。


加藤航世くん。

普通のバレエボーイズだったら、こんなに熱狂的な満席のホールで、

歓声の飛び交うスタンディングオベーションを受けるような経験はないだろうに、

まだ14才で、20回以上もこんなすごい体験をするなんて。

バレエの世界では、ダンサーは舞台本番でしか成長しない、とよく言うけれど、

その本番の中でもスペシャルな本番をこれだけ経験したなら、

どれだけ成長して、将来どんなバレエダンサーになるのか。


それを想像するだけでも、わくわくします。



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2017年10月06日

Kバレエユース「眠れる森の美女」八木りさ&山本雅也

2017年8月6日(日)14時オーチャードホール

オーロラ姫:八木りさ
フロリムント王子:山本雅也
リラの精:吉岡眞友子
カラボス:杉野慧
フロリナ王女:三好梨生
ブルーバード:岡庭伊吹

夏は海外ダンサー達のガラ公演がたくさんあるけど、全幕物の上演が少ない。
そこで、一度見たかったKバレエユース。
二日間ありますが、カラボスを杉野さんがどう演じるか見たくてこの日にしました。

Kバレエユースは、Kバレエスクールも大きくなって生徒数も増え、優秀な子も多くなってきたので、上手な子たちを中心に、プロと同じ美術、装置、衣装で、お金を取れるレベルの舞台を作り上げる経験をさせる、というコンセプトで公演を行っています。
一流の舞台を観たことのない人なら、かなり満足する仕上がりになっていると思います。
舞台美術衣装はセンスがいいし、音楽は生オケだし、ダンサーたちも特にソロを踊る子たちは訓練されてきちんと踊れる子をそろえている。

でも、プロの舞台をいつも見ている私には、ダンサーたちの体つきの、なんというか「締まっていない感じ」や「足先がドタバタしていきたない感じ」や、「振付をただなぞっている感じ」がどうしても気になります。

たとえばプロローグの妖精さんたちは、それぞれの個性を出しながら踊っていてみな上手ではあったけれど、吉岡さんのリラの精と比べてしまうと物足りない。吉岡さんって、Kバレエの公演ではあまり目立つ役はやっていないと思うのだけど、やはりプロは違う。アームスの柔らかな動きや、きりっとした中にも慈愛を感じさせる表情がとても良かった。
ソロを踊る生徒さんたちは、良く訓練されていて、頑張って踊っていたし、あきらかな失敗やクラシックバレエの枠からはずれた動きというものはなかったのだけど、たとえば宝石の踊りなどは、もともとの熊川さんの振付が、速い動きで方向転換も多い難しいものなので、さすがにプロのように踊りこなせてはいなかった。

逆に、ユースならではの演出は、花のワルツで小さい子がいっぱい出てきて可愛かったこと。ワガノワみたい。開幕前にお小姓の子がベルを鳴らして会場を歩く演出も、気が効いていた。

一番の収穫は、オーロラを踊った八木りささん。
八木さんは、登場の瞬間にパッと華やぐオーラがある。
すごくスタイルがいいとか、テクニックが超絶とかいうのではないのだけれど、上品で音の取り方にセンスがある。
軸がびしっとしているので、ピルエットを回るときも、「これから回ります!」みたいに構えなくて、さらっと回るところがいい。余計な動きのない、雑味のない、クリアな踊り。
相当練習したのだと思われます。
決して派手ではないけれども、確かな技術と、自分の表現したい世界を持っていると感じました。
登場から終幕まで、オーロラとして存在していて、それがとても自然に伝ってきました。

八木りささんは、プロとして今すぐに通用しそうです。
プロである山本雅也王子の方がオーラがなくて、登場の時も誰だか分らなかったくらい、りささんがキラキラしていました。
りささんはかなりの逸材かもしれません。彼女をKバレエで見る日が楽しみです。
山本王子は、あまり王子らしくない。一生懸命王子らしく見せようとしているというレベルでした。
熊川さんがひいきにしているのだから、もっと頑張って欲しいです。

お目当ての杉野カラボスは…
もっと「濃い」演技かと思いきや、それほどオーバーな演技ではなくて、あくまでも上品さを失わない節度がありましたが、キャラは立っていました。
そういえば、昔Kバレエでサー・アンソニー・ダウエルのカラボスもありました。ダウエルのカラボスも上品でしたから、杉野さんの目指しているところはそこかもしれません。








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2017年09月04日

バレエ・アステラス2017

2017年7月22日(土)15:00 オペラパレス
第1部
「シンフォニエッタ」新国立劇場バレエ研修所
牧阿佐美先生がバレエ研修所の為に作った作品で、衣装・振り付けともにネオ・クラシックなアブストラクトバレエ。明るくスピーディな流れの中で、群舞や2,3人の踊りが次から次へと入れ変わります。研修所のオリジナル作品として何度か見ています。
私は8期の研修生たちが大好きで将来有望だと思っていたのに、彼女たちが誰一人として新国立劇場に残っていない理不尽さにがっかりして、それ以来モチベーションが下がり最近は研修所の発表会も観に行ってません。
そんなわけで、あまり期待して見ていませんでしたが、ひとり他の方と比べて太目に見えるダンサーが気になったので調べたらパーキンソン赤城さんでした。日本人の子がうすっぺらな体型すぎるので、その中に入ると目立つのですが、胴体がしっかりした外人体型なのです。音楽的な踊りをする方で、魅力的なダンサーになれるのではないかと思いました。

「エスメラルダ」よりグラン・パ・ド・ドゥ 
上草吉子&ルーゼンバーグ・サンタナ(カナダロイヤル ウィニペグバレエ)
上草さんも胴体がしっかりした体型。ピルエットは三回転がデフォのテクニシャン。すごく堂々としていて、観客を楽しませることを知っている。
タンバリンを持ったヴァリエーションは、オケと合わないというか、合わせづらいのか?
サンタナさんは小顔でスタイルいいけれども少し踊りはゆるい感じでした。

「海賊」第2幕よりグラン・パ・ド・ドゥ
中島麻美&大巻雄矢 (スロヴェニア国立マリボル歌劇場)
中島さんは細くてたおやかでいながら、軸はしっかりして強靭。好きなタイプのダンサーです。
衣装がズボンタイプだったのですが、もっと華やかなチュチュの方が見栄えがしたと思います。
女性的で優美でありながら芯の強さを感じさせるようなステキな踊り。
大巻さんはレヴェランスの時も常に「奴隷のアリ」を演じていて、けれん味たっぷりでテクニックもあって、超絶技巧で会場を沸かせていました。

「Still of King」
高野陽年(ジョージア国立バレエ)
高野さんはスタイルがよく、美しい筋肉。まずその体つきにほれぼれ致しました。
このコンテンポラリーはヨルマ・エロがマルセロ・ゴメスに振り付けたものだそうですが、とても達者に踊り、もっといろいろな踊りを見てみたいと思わせる、素敵なダンサーでした。

「ドン・キホーテ」第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ
桑原万奈&金指承太郎(ロシア国立クラスノヤルスクオペラバレエ劇場)
桑原さんは、大阪っぽい押し出しの強いバレエ表現が特徴ですが、足先の表現ひとつでも大きな劇場全体に伝わってくるのが素晴らしいと思います。こういう「伝わる表現力」があるから海外で活躍できるのでしょう。
金指さんは、なかなかのテクニシャンで、昔の熊川さんがやっていたような超絶技巧のジャンプやピルエットを披露していましたが、かなり控えめなので、桑原さんとプラスマイナスでちょうど良いのかもしれません。

第2部
「人形の精」組曲
ワガノワ記念ロシア・アカデミー生
女子6人、男子2人ですが、みんなキレイで上手!!
特に人形の精を踊った7年生のマリア・ホーレワが、信じられないくらい甲が高くて、美しい脚で、その脚をずっと見ていたいと思うほど。この子は将来有望です。
ピエロをやった男の子ふたりは9年生(パーベル・ミヘーエワとニコライ・ヴォロビョーフ)ですが、背も高いしコミカルな演技も上手でした。
その他の子たちも目の保養で、さすがワガノワ!!
若くって美しいって素晴らしい!次のワガノワ公演はぜひ観に行きたいと思います。

「ソワレ・ド・バレエ」
池田理沙子&井澤駿(新国立劇場バレエ)
バレエ・アステラスの主旨として、海外で活躍する若手日本人ダンサーの応援というのなら、もっと海外組をたくさん出演させてあげればいいと思うんです。だってそれこそ色々な国で活躍している日本人ダンサー、いっぱいいるんですから、新国立の推しを無理やりねじ込まなくても…
この演目はディズニープリンセスっぽくて大好きなのですが、ついつい「唯さんはこう踊ってた」とか重ねて見てしまいます。池田さんの踊りには惹かれるところはないのですが、振付を踊りこなすテクニックはあるんですね。ワガノワの生徒の後だと、プロフェッショナルな感じもしますし、この順番は正解です。

「Multiplicity」よりチェロのパ・ド・ドウ
菅野芙里奈&リシャト・ユルバリゾフ(ベルリン国立バレエ)
チェロ 上村文乃
女性をチェロに見立てて、男性が弾くという趣向のナチョ・ドゥアトの作品
その奥に表現しているものを考えると少しエロティックですが、とても美しいし、音楽にもぴったり合っています。菅野さんはとても身体能力が高いダンサーで、すべての瞬間が絵になるようでした。

「ダイアナとアクティオン」
寺田翠&大川航矢(タタールスタン国立ロシアカザン歌劇場)
今回のアステラスの一押し、お目当て!!
モスクワ国際コンクールで一躍大ニュースになったお二人。このペアが出演する効果か客席はほぼ満員。
私も大川さんが2011年にローザンヌに出た時から注目していたので、お二人の快挙は嬉しい。
モスクワ国際コンクールのアーカイブは何度もリピートして見たので、大川さんがかっ飛んでくる登場シーンとかアダージオでふたりが耳に手をやりながら後ずさりするところとか、生で見れて興奮しました。
大川さんは熊川さんばりのジャンプ力とテクニックがあるのに、オレ様でなくて、どこかホンワカしているのが良いです。
コンクールの時よりは少々ジャンプが低めかなとも感じましたが、レベルが高く、まさにプロフェッショナルなお二人の踊りを堪能しました。

「眠れる森の美女」第3幕より
影山茉以&ダビッド・チェンツェミエック(ポーランド国立歌劇場バレエ)
とても端正で美しいオーロラで、特にソロの表情が幸福感があふれてくるようで良かったです。
大川ペアの後でもまったくひけをとらず、この正統派クラシックを格調高くきっちりと踊り、トリにふさわしいパフォーマンスでした。

フィナーレ
「バレエの情景」より
出演者全員が代わるがわる出てきて、さわりの部分を踊ってくれたり、リフトを披露したりしました。
こういうフィナーレは楽しいです。


10演目で、そのうち海外で活躍するダンサーは7組です。少なすぎやしませんか。
ただ、すべてオーケストラがつくのは贅沢で、凄いことです。
全体の時間は短めなので、もう少し長くして、せめて12組くらい海外組にしてはどうなのでしょうか。
パ・ド・ドウじゃなくてもヴァリエーションだけでもいいような気がします。
と言ってもクオリティに差があるし、知名度がないと集客力が弱い。
今回は大川効果で満席でしたが、いつもはもっと空席がある公演です。
でも助成金が出ているのだし、「海外で活躍しているダンサー」が、日本の大劇場で踊れる機会ってあまりないですし、故郷の知り合いにも見てもらえるし…企画としては素晴らしいので、もっとたくさんのダンサーに出演の機会を与えて欲しい、それが日本のバレエ界のトップを走っている≪いちおう国立》の、新国立劇場の役割ではないかと思います。


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2017年06月30日

Kバレエ2017「ジゼル」浅川&宮尾

2017年6月25日(日)13:00 東京文化会館
ジゼル 浅川紫織
アルブレヒト 宮尾俊太郎
ヒラリオン 石橋奨也
ミルタ 矢内千夏
ペザント 中村春奈 井澤諒

Kバレエシネマのバヤデールでのガムザッティの浅川さんが、セリフが聞こえてくるような見事なマイムと踊りだったので、これはぜひ彼女のジゼルが見たいと思い、チケットを取った公演です。

第1幕は、おとなしくて目立たないジゼル…とう造形を狙っていたようで、それが華やかな美貌で強さを感じる彼女のキャラクターとはなじまないように思えました。踊りは軽やかでよかったですが、アルブレヒトの宮尾さんとの交信もあまり感じず。彼女は本当に誰かを強く好きになったことがあるのか、どこか本人のクールさが出てしまい、失恋して狂うジゼルにリアリティがなかったです。

ペザントがKバレエではパ・ド・シスとして6人で踊られますが、中心になるペアの中村春奈さんは、やわからかで優しく美しく、とてもステキでした。有名なペザントの女性ヴァリエーションがこの版ではないのが残念。
Kバレエでは、有名どころの古典作品を熊川さんが再演出していますが、ジゼルに関しては、スタンダートな版とそれほど改変していないし、美術衣装はピーター・ファーマーで、村人たちは茶色を基調とした地味なもの。熊川さんの作品としては珍しいくらいの古典主義です。
その中でも、秀逸な演出は、第2幕のジゼル登場シーンで、ジゼルが中央に進むと、両サイドからスモークがたかれ、その中を他のウィリーたちが取り囲むようにして出てくるところです。幻想的で美しかったです。

第2幕は浅川さんは、そのクールビューティがしっくりきて、感情を感じさせないような静かな踊りで圧倒しました。「静か」な踊りとは、余分なものがそぎ落とされ、精神が集中された状態です。
アルブレヒトが、精霊になったジゼルを頭上にリフトする所があります。
普通は、さっと一気に頭上にジゼルを横たえるように一瞬で持ち上げます。その時にいかに軽く見せるかが男性の腕の見せ所なのですが、宮尾さんの場合は、一気に、ではなく、ゆっくりと頭上にいくまでの過程がスローモーションでみるように持ち上げていました。一気にやるよりもゆっくりスムーズにやる方がはるかに難しいと思いますが、宮尾さんは見事でした。
力を込めてあげているようには全く見えず、ジゼルが体重がないように軽く見えました。
アルブレヒトの一幕の演技、あまり心に響かなかったのですが、このリフトは感心致しました。
彼は熊川さんと違って、オレ様的性格でもないし、こういう縁の下の力持ち的な役柄(サポートだけ)とかの方が光るのかもしれませんね。
第2幕のアルブレヒトのヴァリエーションも、だいたいはいいのですが、途中のピルエットだけ少しもたついてしまって、いったい何年主役やらせてもらっていてこの程度なんだとがっかりもしたんですけど。

第1幕が終わった時点では、やはり祥子ジゼルを選ぶべきだったかなと少々後悔したのですが、第2幕は素晴らしかったので満足です。



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2017年06月14日

横浜バレエフェスティバル2017 初日

2017年6月9日(金)19時 神奈川県民ホール
第1部フレッシャーズ・ガラ
ドンキホーテ バジルのソロ 松浦祐磨
ラ・バヤデール 影のソリスト第1ヴァリエーション 大岩詩依
SOLI-TER 振付ジョゼ・マルティネズ オーギュスト・パライエ
ラ・バヤデール ソロルのヴァリエーション 二山治雄
Mononoke 振付シディ・ラルビ・シェルカウイ 加藤三希央
Les Brillants ジュンヌバレエYOKOHAMA 振付 遠藤康行 ピアノ 蛭崎あゆみ

第2部ワールドプレミアム
スターズ&ストライプス 二山治雄 竹田仁美
アラジン 飯島望未 八幡顕光
Que Seraより〜 柳本の場合 〜*+81新作 振付 柳本雅寛
ジゼル 倉永美沙 清水健太
ジュリエットとロミオより 振付マッツ・エック 湯浅永麻 アントン・ヴァルドヴァウワー
眠れる森の美女 近藤亜香 チェンウ・グオ

横浜バレエフェスティバルは芸術監督の遠藤康行さんが中心となって始められた手作り感あふれる企画で、今回で三年目。箱が大きくなり、二日間というのもチャレンジング。
オーディションやワークショップを開催して若人の育成も行い、日本ではなかなか見られないコンテの新作を上演したりと、商業主義ではできないことをしていて素晴らしいです。
集客が心配ですが、客層はやはりバレエを習っている人が多いようです。
バレエファンの間で注目されている二山君とか、久しぶりの八幡さんのアラジンとか、倉永さんのジゼルとかがお目あてでありましたが、終わってみて一番印象に残ったのは若いダンサーたちでした。
特にトップバッターの松浦祐磨さん。中学生2年生とはとても思えない落ち着きぶりと、確かなテクニック、身長も170以上ありそうだったし、このままぐんぐんと良き成長をとげて頂ければ、すごいダンサーになりそうです。
遠藤さんがロゼラハイタワーで見て気に入って連れてきたオーギュスト・バライエは身長2メートルちかくあるとか。コンテは上手でした。クラシックはどうなのか、わかりませんが、今やバレリーナの巨大化が進むにつれ、身長の高い男性ダンサーは世界的に不足ぎみなので、彼の将来も気になります。これをきっかけに日本に来たらどうでしょうね。クラシックが踊れてサポートができれば、新国立劇場とか、Kバレエとかで採用してもらえそう。
オーディションで選ばれたジュンヌバレエYOKOHAMAのメンバー(川本真寧 縄田花怜 中島耀 中村りず 
竹内渚夏 丸山萌 亥子千聖 生方隆之介)たちも、素直な踊りで身体能力も高く、すがすがしかったです。
二山さんは、一時より太ももがすこし細くなった?パリオペラ座での経験は役に立ったのでしょうか。以前ほど開脚を強調した踊りではなくなっていたようです。
ソロルのヴァリエーションは良かったですが、スターズ・アンド…の衣装、特にブーツは、脚の短い日本人体型には苦しいと思います。壊滅的にスタイルが悪く見える。彼の今後の去就が気になります。日本のバレエファンに注目されているのだから、Kバレエとかに入ったらどうなんでしょうか。身長が高くないから相手役を選ぶけど、みんなが見たいと思うダンサーなのだから。

アラジンを踊る八幡さんを見れて良かった…八幡さんはもう新国立退団するっていう噂がありますし、このパドドゥは男性が踊るところが少ないけれども、八幡さん、踊りたかったのかな…と感じました。彼の代表作ですしね。お相手の飯島望未さんは初めて見たのですが、清楚でたおやか、それでいて芯の強さも感じられるようなステキなバレリーナで、八幡さんよりもむしろ飯島さんに魅了されました。アラジンはいろんなダンサーで何度も見ましたが、新国立劇場で踊られるのと少しニュアンスが違っていて、「ああ、こんな風に踊るのもあるんだなぁ」と感心しました。飯島さんの作る世界が美しかったです。

柳本さんの作品はいつも笑わせてくれるのですが、今回は幕があくと、アラジンの帽子がポツンと置いてあって、それをネタにして踊り、途中で八幡さんが回収に来て、面白かった。他のダンサーとのコラボレーションが、普通のガラとは違うところ。会場もこの作品が一番受けていた。

そのお笑いの雰囲気が残る会場を一気にジゼルの世界に変えてしまった倉永&清水組はさすがでした。まるで体重がないか空気のようにふわふわとただようジゼル、清水さんの職人技のサポートが光っていました。

マッツ・エックのジュリエットとロミオ。2014年に木田真理子さんがこの作品を踊ってブノワ賞を受賞したことが話題になりました。
ジュリエットもロミオも、簡素でシンプルな衣装で、クラシックバレエとはまったく違うアプローチで踊ります。踊るというよりは、じゃれる。キスする寸前まで近づいて、離れる。子猫のようにくっついたり、追いかけたり。好きな人といるだけで、幸せ…っていう気持ちがあふれてくるような振付でした。

ラストの作品、眠れる森の美女は、オーストラリアバレエの二人が格調高く踊りました。

この公演、オープニングがあって、それぞれのダンサーたちがポーズをとって幕開きなのですが、フィナーレも遠藤さんの振付で、「テーマとヴァリエーション」の音楽に載せて、ダンサーが総出演します。
このフィナーレが良かったです!ジュンヌバレエのダンサーが客席に降りてきたりもあって盛り上がりました。お得感がありました。

会場が大きすぎるので、もう少しアットホームな大きさの劇場でやった方がいいのではないかという事と、私の大好きな米沢唯さんが今回は出演されていなかったのが残念でしたが、来年の企画にも期待しています。







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2017年06月12日

ボリショイバレエ2017「白鳥の湖」ステパノワ&オフチャレンコ

2017年6月8日(木)13:00 東京文化会館

オデット/オディール ユリア・ステパノワ
ジークフリード王子 アルチョム・オフチャレンコ
悪魔ロットバルト ミハイル・クチュチコフ
道化 ゲオルギー・グーセフ
王妃(王子の母)ヴェラ・ボリセンコワ
花嫁候補たち
ハンガリー アナ・トゥラザシヴィリ
ロシア アナスタシア・デニソワ
スペイン ダリーヤ・ポチコーワ
ナポリ ブルーナ・カンタニェデ・ガッリャノーニ
ポーランド オルガ・マフチェンコワ
3羽の白鳥 オルガ・マルチェンコワ マルファ・フョードロワ アリョーナ・コワリョーワ

グリゴローヴィッチ版の白鳥は初めて見ましたが、マイムが少なく、踊りまくり。
ダンサーのレベルがとても高いので、群舞の見ごたえがあって楽しい。
衣装もゴージャスで、さすがボリショイ!!

日本に初お目見えのオフチャレンコ、「おさる」とか言われてますが、なかなかどうしてハンサムじゃないですか!メイクの効果か猿顔には全然見えませんでした。
登場してすぐのソロでは、ふわっと軽く高い、しなやかなジャンプで、心の中でワォ!と叫んだぐらい。筋肉の質が柔らかいようで、アントルラッセの後ろ脚がとても高くあがるし、ランベルセがきれい。
男性としてはやや華奢な体つきですが、ノーブルなダンサーだと思います。
もっとオレ様かと思っていたのですが、上品でした。

オデット/オディールのステパノワは、すごく体を絞っているようで、胸のあばら骨が浮いて見えるほどです。終始丁寧に踊っていましたが、緊張感が伝わってきて、なんというか見ている側としては、初主役のダンサーを応援しているような気分になりました。湖畔のシーンで、斜めに並んだ白鳥たちに沿ってアラベスクとリフトを繰り返すところで、王子のサポートがちょっとイマイチだったのか、一瞬緊張感が途切れそうになったので、「がんばれ!集中して!」と念を送っていたところ、なんとか持ち直しました。

経験不足なのか、主役としてのオーラがまだステパノワには身についておらず、踊りはすべてなんとかこなしていましたが、役に入り込むとか、自分自身の解釈とかとはほど遠い出来でした。
でもお顔は美しくて好みのタイプだし、脚のラインやプロポーションも過不足はないので、これから精進していけば立派なプリマになれそうです。
オフチャレンコも、もう少し愛ある態度で接してあげればいいのに…
彼は最初のソロが一番良くて、後半になるに従い、普通になってしまいました。お仕事モード?オデットに対する情熱、バレエに対する情熱があまり感じられなかった。

グリゴローヴィッチ版の特徴は、踊りまくるところと、ロットバルト(悪の天才)が、王子の心の闇の部分の具現化なんだそうです。私が感じたのは、通常の版だとロットバルトは実在のものとして描かれていて、舞踏会ではオディールの父として現れますが、この版では、ロットバルトが見えるのは人間では王子だけ(あとはオデット/オディール)で、他の人にはその姿は見えてないようでした。
ロットバルトは最初から、王子を破滅させる、あるいは深く傷つけるのを目的としているようで、オデットはそのための道具。むしろ自分の娘のオディールを第1幕のオデットに化けさせて、王子を誘惑させた、という解釈も成り立つような気がしました。

ラストは悲劇です。オデットを裏切った王子を一人残し、ロットバルトはオデットを連れ去ります。
呆然とした王子がひとりポツンを取り残される、寂しい幕切れ。
旧ソ連時代は、国策として、ラストはハッピーエンドにしなくてはならなかったそうで、グリゴロ版も当時はハッピーエンドでしたが、その後バッドエンドに変えられたそうです。
チャイコフスキーの音楽は、悲劇で終わるのにふさわしいと思うので、それはそれでいいのですが、それまでが賑やかしいので、なんだか不釣り合いな幕切れだと感じてしまいました。

白鳥の湖はいろいろなバージョンを見てきましたが、ボリショイのグリゴロ版は、ドラマティックさよりも、グランドバレエとしての楽しさを重視していて、それはバレエが日常的な娯楽に溶け込んでいるロシアならではの、芸能として昇華しているもの。
日本ではバレエは裏芸能界だそうで、テレビ放映もめったにないし、バレエを見ないで一生を終わる人も多い。でもロシアではバレエダンサーは、日本で言うと野球選手みたいに人気があって、テレビにもしょっちゅう出ていて知名度も高い。日本のテレビタレント並み。
その文化事情の違いを、さまざまと感じさせるようなボリショイ公演。

花嫁候補たち、スペインボーイズなど、日本ならば主役を踊れるような実力と容姿の持ち主たち。
ここぞとばかりに自己主張して100%のパフォーマンスを見せる。
面白くないわけがない。
踊っていない場面は演奏がやたら早くなる。踊りにあわせて演奏がやたら遅くなる。
こんなに遅く演奏したら音楽がわからなくなるんじゃないかってくらい。
そしてダンサーが退場する時の演奏は速いこと速いこと、ついていくのが大変。
オディールの見せ場のフェッテだけは高速演奏。めちゃめちゃ速かった。
ステパノワは最初ダブルで、あとはシングル。でもその速さについていっていた。

花嫁候補がこれでもかってくらい踊りまくる。
ハンガリー、ロシア、スペイン、ナポリ、ポーランド。ロシアのデニソワはかわいい。
スペインのポチコーワの横っ飛びがすごい。こんなお転婆な花嫁ってどうよ。
道化のグーセフはすごいテクニシャン。
群舞の踊っている間を、スパイスのように縦横無尽に駆け抜けて踊る。
ワルツなどの群舞って、それだけだとつまらなくなりがちだけれど、道化のテクニックを利かせることで、場面を引き締めている。

ドラマとしてのつじつま合わせとかにはこだわっていないみたい。
白鳥の湖のストーリーなんて、ロシアでは100%の人が知っているという前提。
普通の版と違うのは、第1幕で王妃が王子に誕生日プレゼントとして贈るのは弓ではなく、剣とキラキラの宝石がついた首飾り。だから弓をもらって湖に行こうというのではなく、なんとなくロットバルトの導きによって湖にたどりついた感じ。最初から王子を操り、一緒にシンクロして踊り、王子を罠にはめる。
ロットバルトが王子の闇の具現化だとすると、あえて堕ちるとこまで堕ちてやろうというような人間の心理ってことなのかな。
そして最後はそんなことしても何にもならない。
自分の闇にとらわれるのはむなしい、で終わるということ?

この日のソワレがザハロワ様登場で、素晴らしい演技だったらしいけど。
ザハロワのようなスーパーなプリマが出てしまうと、そこに意識が集中してしまって、他の素晴らしいダンサーたちがかすんでしまうという現象も起きるので、このマチネはボリショイのたくさんのダンサーたちを堪能するには良い公演だったと思います。











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2017年05月06日

新国立劇場バレエ「眠れる森の美女」米沢&ムンタギロフ

2017年5月6日(土)14:00 オペラパレス
オーロラ姫 米沢唯
デジレ王子 ワディム・ムンタギロフ
リラの精 木村優里
カラボス 本島美和
誠実の精 寺田亜沙子
優美の精 丸尾孝子
寛容の精 飯野萌子
歓びの精 五月女遥
勇敢の精 柴山沙帆
気品の精 寺井七海
エメラルド 細田千晶
サファイア 寺田亜沙子
アメジスト 広瀬碧
ゴールド 渡邊峻郁
フロリナ王女 小野絢子
青い鳥 福岡雄大

昨年度新しく作られたウェイン・イーリング版の再演です。
この版が通常と違う大きなところは、
1.妖精さんが一人多い(気品の精)
2.王子がオーロラを目覚めさせた後に「目覚めのパ・ド・ドウ」がある。
3.結婚式のディベルティスマンに親指トムが出てくる
あたりなのですが、特筆すべきところは、舞台装置が豪華です。
まるで本物のヨーロッパの王宮のようなセットです。お金かかってそう…

衣装もよく見ると細かいディテールが凝っていたり、玉虫色の布地を多用していたりして豪華なのですが、そのセンスはどうかと思うところも多いです。
妖精さんとリラのお付きの衣装がほとんど一緒なので見分けがつけにくいことと、森の精の衣装が鮮やかな緑なのがジャングルブックか!とツッコみたくなるし、遠目の雰囲気がカラボスとかぶっているので、「森の精はカラボスの手下なのか?」と感じます。

秀逸なのはカラボスの衣装と乗り物。大きなクモなんです。これはハリーポッターを連想させましたが、いいアイデアだし、すごく効果的でした。そう言えば、マンガ「テレプシコーラ」の中で、カラボスをクモに見立てて、六花が歌舞伎のクモの糸を出すところがありましたが、あれ、まんま使われています。パクリ?(笑)

「目覚めのパドドゥ」、これは要らないと思います。必然性がありますか?いきなりネグリジェでオーロラが踊るって…百歩譲って、これはオーロラの心の中の情景だとしても、振付が様式美なので固すぎます。逆に心の中の情景とわかるように、ネオクラシックな振付(ロミジュリみたいな)にすればいいかもしれません。とにかくこのシーンは、製作者の「いいだろう、これ。うっとりするだろう」という押しつけがましさでやってるだけで、まったく面白くなく、前回同様、眠くなりました。
眠りの森の美女は、プティパのクラシックの様式美で貫くところがいいのです。
こういう中途半端なのはカットして欲しいです。

6人目の妖精さんは、狩りのシーンの音楽を利用していますが、今日踊った寺井さんが、それはもう上品で優雅でしたので、これはこれで、よろしいです。
親指トムは、八幡さんへのあてがきなのかもしれませんが、常に「テクニックに優れているけれども王子には身長が足りないダンサー」という人材はいるので、まあこれはこれで、よろしいです。ただ、八幡さんはプリンシパルなんですよね。プリンシパルが村人と親指トムって、役付き酷くないでしょうか。

私の理想としては、舞台装置はこのままで、目覚めのパドドゥはカットして、妖精とプロローグの貴族と、1幕の王様の変な帽子と森の精の衣装を変更してくれたら、なかなか豪華で新国立劇場にふさわしいプロダクションではないかと思います。
けれども、大金を支払って、海外の人に新制作をお願いするよりも、眠りだったら、超スタンダードなヴァージョンと振付で、舞台装置と衣装を凝ったつくりにするだけで充分だし、その方が日本人好みだと思うんですけどね。イーリング版じゃなくて、大原版でよかったのに。大原先生は自分のバージョン作らないつもりなのでしょうか。牧先生は白鳥とかバヤデールとかライモンダとか作りましたよね。はっきり言ってイーグリング氏なんて日本では無名だし、箔づけにならないですけどね。なんか裏があるのかしら。

プロダクションのことはさておいて、今日の公演ですが、
唯さんとムンタギロフさんは素晴らしかったです。
初演時の唯さんは、もっとお堅い感じ(格調高くいこうと意識していたのか)でしたが、今日はもっと優美で、音にピタッとはまって、ヴァリエーションにしびれました。
唯さんの踊りを見ると、純度の高い水を飲んだみたいにスカッとするんです。

唯さんが他日にカラボスをやるそうですが、唯さんがカラボスをやる意味って何でしょう。
演技力の向上のため?唯さんにカラボスって、あまり似合わない感じがするのですが…
むしろリラとか踊ってもらったらいいんじゃないかしら。
カラボスは木村優里さんが似合いそうです。
木村優里さんのリラの精は、あの花びらいっぱいのヘッドドレスをかぶってもなお小顔で、抜群のスタイルで美しいです。でもリラの精の慈愛のようなものは全く感じられません。
堂々としているから、そこはいいのだけれども、リラの精はもう少しベテランのダンサーに踊ってもらった方が良いとおもいます。

本島さんもプリンシパルだから、唯さんにもカラボスを踊らせて、この役はプリンシパルがやる役なんだと重要づける意味なのかもね。登場のシーンはいいけど、やっつけられるシーンが尻つぼみで、印象に残らない。
プリンシパルがやる役なら、フェッテを入れるとか、もうちょっと踊るようにしてほしい。

その他、印象に残ったことですが、
寺田亜沙子さんの誠実の精が素晴らしかった。上体をうまくつかってニュアンスをつけて、こんな風に踊れるなんて、研修生の時から見ているけれども、ダンサーとしてすごく今充実しているなぁと感じます。
もともとスタイル抜群だし、かわいいし、推しメンにしようかしら…と思っていたら、宝石でまさかのイタリアンフェッテ失敗!ありゃりゃ…

宝石の渡邊さん、横っ飛びジュッテが高くて幅広くて、びっくりするくらいでした。あのジュッテはすごい!

小野絢子さんのフロリナ、出てきた時のオーラがパっときて、これでは主役みたいになっちゃうなと思っていたのですが、ヴァリエーションはかわいらしくて、フロリナってこう踊るものだっていうお手本みたいでした。フロリナってふつう、主役一歩手前の人が踊る踊りだから、フレッシュな感じを期待しますよね。ちゃんと絢子さんはそれを理解していて表現していました。さすがバレリーナ脳の持ち主。









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2017年05月05日

東京バレエ団「ドン・キホーテの夢」沖&宮川

2017年4月30日(日)13:30 東京文化会館
今までは夏に「めぐろバレエまつり」という催しを行っていた東京バレエ団が、新たに上野でも「上野の森バレエホリディ」というイベントを開催。
子供向けのドンキホーテ公演と合わせて、上野公園でのフラッシュ・モブ、野外でのダンサー振付作品パフォーマンス、そして会館のホワイエではバレエ用品のお店や、バレリーナによるファッション・ショー、ティアラのワークショップ、初めてのバレエレッスン、裏方の仕事体験…など盛りだくさんな内容。
めぐろバレエまつりの10倍パワーで開催されました。

ホワイエでは、通常のチケットもぎりの位置がクロークのあたりまで後退し、公演チケットをもっていない人でも気軽にバレエ用品のお店を覗くことができます。
私は開演15分前くらいに着いたのですが、どのお店も大賑わいでした。
職業としてのバレエが定着しているとはいいがたい日本ですが、バレエを習う人口は多く、この盛況さを見ると、マーケットとして伸びていく期待が持てます。

キトリ 沖香菜子
バジル 宮川新大
ドン・キホーテ 木村和夫
サンチョ・パンサ 中村瑛人
エスパーダ ブラウリオ・アルバレス
キューピッド 足立真里亜

改訂振付のワシリーエフ氏が、ドンキのエッセンスをぎゅっと詰め込んで、子供でも絶対飽きないようにしたこの作品、年々ブラッシュアップされて、バレエというより、お子様向けミュージカルみたいな、優れたエンターテインメントになってきたように感じます。
今回は、馬の声をワシリーエフ氏が担当したそうで、カーテンコールにもワシリーエフ氏が登場してノリノリで踊っていました。
大人としては、見どころのオンパレードで、少しはしっとりしたところもないと息ができないほどなのですが、クラシックバレエとしての踊りもたっぷりあって、満足できます。
沖さんのキトリは気が強いというよりも、かわいらしいキトリ。宮川さんは踊りは文句ないけれどもお顔が大きいのがどうも…
アルバレスさんのエスパーダが、白いタイツがめちゃくちゃ似合っていて、カッコよかったです。
やはり外人だけあって脚の長さが段違い。190センチぐらい(実際はそんなに高身長ではないでしょうが)に見えました。
足立さんのキューピッドも、ジャンプも軽やかでキュートでした。
足立さんは、公演後のパフォーマンスで、秋山瑛さんと木村和夫さん振付の「ハミングバード」を踊りましたが、ふたりともかわいい系の美人で清潔感があってステキでしたね。
この作品では、サンチョパンサがお話しをしながら進行役を務めますが、中村さんは声も良く、観客つかみのタイミングも絶妙だし、バレエダンサーというよりプロの役者さんのようにお見事でした。
なんと、中村さんはこの公演を最後に東京バレエ団を退団なさったそうです。
「これからも東京バレエ団をよろしくお願いいたします!」ってカーテンコールで言っていましたね。
いい団員が辞めちゃうのは残念。
でも、7,8年前と比べて、すごく新陳代謝が進んでいるのはいいことかもしれません。


posted by haru at 19:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする