2015年02月20日

新国立劇場「ラ・バヤデール」小野&ムンタギロフ

2015年2月17日(火)7PM オペラパレス
ニキヤ 小野絢子
ソロル ワディム・ムンタギロフ
ガムザッティ 米沢唯
マクダヴェヤ 福田圭吾
黄金の神像 八幡顕光

久しぶりに夜のオペラパレスへ足を運んだ。
この劇場は音響を考えて、床も壁も木で作られている。
日が暮れた水辺にホワイエの照明が明るく映っているのを見上げながら劇場に入り、独特の匂いの木の客席の間の階段をコツコツを足音をさせて降りていくと、「ああ、劇場に来たんだ…」というわくわく感がこみ上げてきた。
オケピで練習をするオケの音や、始まりの予感でざわめいているホワイエなども、「劇場体験」そのもの。
ゆうぽうとや東京文化会館では味わえない、外国のオペラ劇場のようなこの感じ。やはり新国立劇場はいいなぁ。

ラ・バヤデールは他のバレエ団のものも含めて何度か見ているけれども、やはりニキヤとガムザッティを実力が拮抗するようなプリマが演じると抜群に面白くなる。
ニキヤの小野絢子さんは、安定した技術と、情感のこもった演技で、ガムザッティの米沢唯さんは、磐石のテクニックで観客を沸かせ、ワディム・ムンタギロフは柔らかい背中と、ふわっと浮かぶような跳躍、難しい回転技などもさらっとこなす卓越したダンサーぶりで観客を魅了した。

スーパーなスタイルを持つコールドバレエの美しさも一段と向上している。今回は、コールドの並びを身長が高い人から前の列に配置しているので、さらにスタイルのよさが際立つようです。
特にバレエ研修所9期生の関晶帆さんが常に目立つ位置で目をひきます。大原先生のお気に入り?

コールドの人たちは抜群のスタイルなのだけれども、主役のプリマ二人は、小野さんはテクニックと演技は素晴らしいけどあともうほんの少し手足が長かったらとそれだけが残念だし、超絶技巧をさらっとこなす米沢さんは、細すぎて子供っぽく見えるスタイルだし、お顔が和風で華やかさに欠けるのが残念。
影のヴァリエーションを踊った寺田さん、堀口さん、細田さんはスタイル抜群でゴージャスだから、この三人でニキヤとガムザをやるところを見てみたい。容姿がプリマ向きの人がたくさんいるのに、その方々がなかなか主役にキャスティングされず、経験をつめず育っていません。
牧バージョンのラ・バヤデールは、インド風のタペストリーをふんだんに使った美術も素敵だし、お話もよくまとめられていて無駄がなく楽しめるし、コールドの美しさも堪能できるので、4公演といわず、10公演ぐらい打って、プリマを育てればいいのに、と思います。小野・米沢は少々飽きた。

第一幕のマクダヴェヤが迫力満点。すごい太もも。誰かと思ったら福田圭吾さん。
巫女たちの踊りは、みんなスタイル良くて美人できれいでした。
ソロルの登場シーンはふわっと。ワディムはマイムが明確。
マイレンの大僧正は安定。
小野ニキヤは、前述のように彼女は少しスタイルの部分で不利なので、ヴェールをあげたときの圧倒的な驚きというほどではなかったかな。きれいだけど、やはりザハロワにはかなわない。
まあ、誰もザハロワにはかなわないだろうけど。

米沢ガムザと小野ニキヤ対決は、ニキヤに突き飛ばされて床に倒れたガムザが、スッと上体を起こしたまま、「なんなの、これは一体。なんでこの私が突き飛ばされるの」というように2,3秒自問自答をしているように見え、そのあと「卑しい身分の分際で!許さない」とガムザに怒りをあらわにしていきました。
その脈略がよくわかる良い演技を米沢さんはしていました。
どうしても少々子供っぽく見える容姿だし、いつもさらっとしすぎている米沢さんが、どのようにゴージャスなお姫様を演じるのかと思いましたが、この対決シーンは良かったです。
踊りはいうことなし。婚約式でのヴァリエーションも、イタリアンフェッテも、トリプルを入れたフェッテもまったく危なげなく、さらっとこなして。

小野さんは、婚約式での悲しみの踊りが、とっても情感がこもっていて、緊張感があって素晴らしかったです。その後の花かごの踊り、へびが仕込まれていて毒がまわって、ソロルを見ると、彼はガムザの手をとっている…絶望して大僧正の解毒薬を拒否して死ぬ一連の流れも、女の情念のようなものが出ていました。
第三幕のヴェールの難しい踊りもきれいに踊り、その後のソロでは超速シェネやピケターンにすごいキレがありました。

ワディムさんは、長身、小顔、手足が長く、太もももすらっとしてきれい。背中が柔らかく、ヴァリエーションの最後では、背中が床につくほどそらせていて、驚きました。
彼はノーブルダンサーとか言われていますが、実は野蛮なぐらいのテクニックの持ち主で、今回はやりませんでしたが、見たこともない超絶ファイブフォーティ技を持っています。まだ若いのにすごいもんです。
若くて見た目かわいいのに凄いんですというのは、フィギュアスケートの羽生結弦と通じるとこがあります。
王子役もいいけど、彼が思う存分暴れられるような役柄で見たいものです。

黄金の神像の八幡さんは、さすがという踊りでした。
ボディコントロールと回転技が素晴らしい。
プリンシパルなのに、主役踊らないでこんな役ばっかりなのがお気の毒。

婚約式の踊りもいろいろあってゴージャスだし、影の王国も美しい。
音楽もとっても良かったです。
劇場と音楽と踊りと美術、衣装、すべて楽しかった!!!


ぴかぴか(新しい)







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2015年02月18日

IBCバレエ団「眠れる森の美女」

2015年2月15日(日) 3PM ゆうぽうと
オーロラ姫 松岡梨絵
デジレ王子 ジュゼッぺ・ピコーネ
カラボス 橋本直樹
リラの精 井脇幸江

井脇幸江さんは、斉藤友佳里、吉岡美佳と同世代で長い間、東京バレエ団の3本柱として活躍していました。
古典ではジゼルのミルタ、眠りのカラボス、ドンキのシプシー、ラ・シルフィードのエフィなどの重要な脇役で、舞台を引き締める役どころで、コンテンポラリーでは春の祭典の生贄など、主役級をレパートリーにしていました。
プリンシパルと言っても、常に主役を踊る斉藤さんや吉岡さんとちがって、キャラクターダンサー的な扱いだったと思います。
実力がなかったわけではなくて(それはIBC立ち上げ公演の素晴らしいジゼルで証明されています)、タイミングや団の事情などによるものだったと推測します。
だいたい東京バレエ団は、海外からのゲストを主役にして公演する事がほとんどだったから、団員を主役として育てる環境があまりなかったとも言えます。
東京バレエ団を辞めずにいたら、ミストレスや、付属バレエ学校の教師(校長)をしながら、時々王妃とかの立役をやるような未来だったかもしれません。

バレエ学校からダンサーとして育ててくれた東京バレエ団を飛び出し、IBCというバレエ団を立ち上げ、ダンサーが心から楽しいと感じて踊る事のできる舞台を作りたいという、井脇さんの野望というか、野心とチャレンジ精神には感服していますし、心から応援したいと思っています。
立ち上げ公演のジゼルでは、井脇さんの目指したような舞台になっていたと思います。
その後、ガラとドンキ全幕などは観なかったのですが、今回は、元Kバレエの松岡梨恵さんがオーロラを踊るというので、楽しみにしていました。

松岡梨絵さんは、キラキラしたオーラを放ち、優雅で上品な美しさあふれるオーロラでした。
Kバレエ時代踊ったオーロラが素晴らしかったと友人に聞いていたので、噂以上の演舞が観られて大変満足です。今、日本のプロフェッショナルなバレエ団を見回しても、松岡さんのような美しい容姿と輝き、正確なテクニック、女性らしい柔らかさを兼ね備えたダンサーはいないと思います。

王子のピコーネさんは、すごいイケメンで長身。松岡さんと身長の釣り合いもいいし、本当に絵に描いたような美男美女。だけど踊りは重かったです。いくつなのかわかりませんが、結構年なのかも?

カラボスの橋本直樹さんは柔軟で伸びやかな跳躍は健在で、マネージュしまくりでした。
カラボスを男性が踊るのはよくある事ですが、役の設定自体が男性というのは初めてです。目からウロコです。
ただ、橋本さんって、もともと持っているオーラが明るいので、憎しみや嫉妬まみれのカラボスのダークさとは相容れない個性なんですよね。踊りそのものが明快で爽快なものだから、どうしても伝わってくるものが陽性なんです。
松岡さんと並ぶとちょっと背が低いけど、夫婦だからサポートは慣れているだろうし、橋本さんが王子でも良かったのにと思いました。
井脇さんのリラの精は、観ていた時は、だいぶテクニックが落ちちゃったなぁと思ったのですが、なぜか舞台が終わった後に、頭の中でぐるぐると浮かんでくるような、不思議な存在感がありました。観客に訴えかけてくる力は健在だったようです。

メインの4人のダンサーと、元東京バレエ団の方々、そしてある程度のレベルに達している数人のダンサー以外は下手すぎて、これはプロの舞台として見ていいのか、それともアマチュアの贅沢な発表会として見た方がいいのか困りました。特に妖精たちのレベルが、先週見た東京バレエ団の踊りと違い過ぎるし、コールドの中に足先も伸びない子がいて興ざめでした。これだったら、私の地元のバレエ学校のジュニアちゃんたちの方がもっと上手じゃないかと思います。
いちおう9千円も払ったし、それだけの舞台になっているだろうと思っていたのですが、これでは高すぎると感じました。ジゼルの時は値段に釣り合わないとは感じなかったのですが、演目の選択の問題でしょうか。

眠れる森の美女のようなグランドバレエでは、まず生オケの演奏、宮殿の豪華なセットと貴族達のゴージャスな衣装、ある程度の人数も揃えないと、見応えのある舞台にするのは難しいようです。
井脇さんの演出は、カラボスを男性に設定し、オーロラが黒バラのトゲに刺される設定により、糸紡ぎうんぬんのシーンをバッサリカット、幻想の森もオーロラのヴァリエーションは無くて、パノラマの音楽も使わず、休憩2回でも3時間のかなりの短縮版。
カタラビュットがカラボスに猫に変身させられたり、赤ずきんちゃんが増殖して狼を追い払ったりと、ユニークなアイデアが光っておりましたが、いかんせん、グランドバレエとしては予算が一桁足りないようでした。
芸術にはお金がかかりますからね。
ジゼルなら男性もそんなに必要ないし、セットも豪華でなくてもよい。
井脇さんのチャレンジと、松岡さんをゲストに呼んでくれたという事はいいのですが、身の丈というか、IBCの現実に即した作品を選んで上演して、レパートリーを増やすよりも質を高めるほうがよいのではないかと思いました。

ぴかぴか(新しい)
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2015年02月12日

東京バレエ団「眠れる森の美女」川島&岸本

2015年2月8日(日)2PM 東京文化会館
オーロラ姫 川島麻実子
デジレ王子 岸本秀雄
リラの精 三雲友里加
カラボス ウラジーミル・マラーホフ

マラーホフ版の眠りは、まさにマラーホフの「バレエ絵本」ですね。
彼の大好きな紫色とバラの洪水。
マラーホフの大好きなお菓子のパッケージみたいな妖精の衣装。
マカロンみたいな色使い。
初演の時には、猫ちゃんたちの衣装が、かわいい系ではなくて豹柄だったのでちょっと違和感がありましたが、考えてみたら豹柄もマラーホフが好きそうです。
マラーホフが、自分が好きなものだけを詰め込んで作ったこのヴァージョンを上演するのは、これからは東京バレエ団だけになるのでしょう。
マラーホフのいたベルリンでは、新芸術監督のナチョ・ドゥアトは自分の作った版を上演するだろうし。

王様とか貴族たちの衣装などは、体格が見劣る日本人では着こなせないと初演時に感じましたが、今回この作品を見ていて、これはこれで、なんだか生身の人間でなくてお人形たちが演じているような雰囲気が出て、面白いような気がしてきました。

思えば、初演時はマラーホフが王子でヴィシニョーワがオーロラ。
ただでさえ耽美すぎる美術と衣装に、さらに濃い二人で、もうお腹いっぱい。
その点、淡白な日本人が演じると、くどさが薄まって、ちょうど良い。

川島さんは、はかなさを感じさせるほど細くて、清潔感があって、初々しいオーロラでした。
テクニックもあるようで、ローズ・アダージオでは、王子の顔をにっこりと微笑んで見てから、手をアンオーに上げていました。この場面、表情が固くなるダンサーが多いですが、川島さんはそんなこともなく、あぶなげなくバランスを取っていました。
しっかりしたテクニックがあるのに、そんなことをひけらかすようなことはせず、ひとつひとつの踊りを丁寧に踊っているのがとても好感がもてましたし、必要以上に表情を作ったりしないところも良かったです。
初役だとはとても思えないほど、安定した踊りと演技で素晴らしかったです。

そして岸本王子!!
登場のシーンでの、びっくりするぐらい高い跳躍が美しい。
踊りの質がとても良いダンサーですね。
指の先までエレガントです。
男性ダンサーは、ジャンプをするときに力んでいるように見えることが多いけど、岸本さんはまったく力みなくふわっと跳躍します。特に王子のヴァリエーションでは、マラーホフ仕込なのか、猫のようにまったく着地音のしない、美しいジュッテでした。
すごいポテンシャルを感じます。これからどんな風に進化するのかとっても楽しみです。

妖精さんたちも、コールドもみんな揃っていていい出来だったと思います。
カナリアの精を踊った沖香菜子さんが、生き生きとしてかわいくて目を惹きました。
サファイアを踊った河谷まりあさんもかわいかった。
お二人のオーロラも見たいです。

ぴかぴか(新しい)

posted by haru at 22:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする