2015年03月31日

「ジゼル」ザハロワ&ボッレ

2015年3月15日(日)2PM ゆうぽうとホール

ジゼル スヴェトラーナ・ザハロワ
アルブレヒト ロベルト・ボッレ
ヒラリオン 森川茉央
バチルド姫 吉岡美佳
ミルタ 奈良春夏

女王の風格でプリマとして君臨するザハロワには、ジゼルには似合わないのではないか…
という思いを裏切ったのが、DVD化された2006年ミラノスカラ座の「ジゼル」
とにかく美しかった。
それから9年。
「ジゼル」と「白鳥の湖」はバレリーナにとって特別の意味のある作品らしい。
白鳥のオデットとオディールを踊り分けること。
ジゼルの乙女らしさ、そして狂乱の場面を演じきること。

白鳥はテクニックとして難しい部分があるので、年齢を重ねていくと踊るのが難しくなるが、ジゼルはその点、32回転のフェッテのようなものはないので、かなり年配になって技術よりも演技力や情緒性の部分が増しても十分観客を感動させることができる。
往年の谷桃子先生のジゼルを子供の頃に見て感動したことを覚えている。
新国立でのダリア・クレメントヴァのジゼルも、一幕では年齢を感じさせないかわいらしさだった。

さてザハロワは、このところボリショイでは、若手ダンサーを育てる立場になっているようだ。
ワールドバレエデイのレッスン風景でも「孤高のバレリーナ」とでも言うような他を寄せ付けないような雰囲気をただよわせている。

9年前は、ただ踊っているだけで美しかったザハロワだが、出産後は、あばら骨が目立つほど痩せて、悲壮を感じるほどだ。今は、ジゼルという役柄をこう演じたいというしっかりしたプランを持って踊っている。
踊りが好きだけれども控えめで、箱入り娘のようにうぶで。
差し出す足先ひとつとっても、丁寧である。

ボッレはもうすぐ40才とは思えないほど若々しくて美しい。
ベージュ系のマイ衣装は、美しい脚と美しいヒップのラインを際立たせる。
こんなベージュ色の衣装が似合う奴はそうそういない。

ウィルフリードの岸本君は、マイムもエレガントで、貴族につかえる者らしい。彼のアルブレヒトが見たい、と思わせるほど、踊らなくてもたたずまいが良いのです。

ザハロワもマイ衣装らしく、白いクラシックチュチュにブルーのサッシュとエプロン。
東京バレエ団の方々のパ・ド・ユイットやコールドバレエはアンサンブルが良くなってきているのだけれど、この中に衣装の雰囲気もスタイルも違うザハロワはまるで妖精さんがひとり混じっているよう。

せめてもう少し衣装が東京バレエ団となじみがあるような暖色系のものだったりすればよいのだが、たとえていえば、月から来たかぐや姫が、百姓たちの中に一人まざっているようなもの。

狂乱の場面でも、ヘアもあまりぼさぼさにはならない。
美しくダウンへアになった感じで、美しさを壊さないように狂っていく、というか美しくないように見せることのほうが彼女の場合は難しいのかもしれない。

ボッレは、あまり濃い演技はしない。彼ほどのイケメンで踊り上手ならば、もっと、どうだっ!という俺様モードになったり、ナルシストになってもよさそうなものなのに、彼にはまったくそれらがない。
容姿にも身体能力にも恵まれて、コンプレックスのない人というのは、このように毒にも薬にもならない雰囲気を身に着けるのだろうか…などと考えてしまった。それほど、美しいけれど私の心にひっかからない。
たぶんボッレはコンプレックスがないから人を恨んだりしないし、きっとすごく性格がいいのだと思う。
踊りは素晴らしい…ウィリーに踊らされる場面で、連続のアントルシャをやるのを見たのは清水健太さん以来だ…素晴らしいというか凄い!!
それにサポートがめちゃくちゃうまい。ザハロワが、まったく体重がないようにふわっとあがる。
だけどもっと…なんというか…せっかく東京バレエ団のアドバイザーとしてマラーホフが来ているのだから、もっとロマンティックにやって欲しかった。

でもおそらくマラーホフも少しは演技指導したのだと思う。第二幕では、ザハロワとボッレは視線を合わせないように踊っていた。それは、マラーホフの解釈で、アルブレヒトは精霊になったジゼルを感じることはできるけれども、見ることはできないから、二人の視線は合うことがない、という。
二幕では、ザハロワも、思う存分妖精らしさを発揮できて、お墓から出てきたところも高速回転で、ジャンプも高くて素晴らしかった。
ボッレも最後に夜明けが来て、ジゼルのお墓で泣き崩れるところは、彼の慟哭が伝わってきて良い演技だった。

第二幕のジゼルのヴァリエーションでは、ピクリともせずに脚を6時のポーズまでもっていくザハロワの身体能力と集中力のすごさを堪能した。

ミルタの奈良春夏さんは、ふわっとして空気の精の感じはよく出ていたが、ミルタの恐ろしさや冷たさ、威厳のようなものはあまり感じられず。東京バレエ団のミルタといえば、なんといっても井脇幸江さんの絶対零度のようなミルタが印象に残っているが、井脇さんの温度をさらにマイナスして氷点下ぐらいに客席を凍らせてくれるミルタを待ち望んでいる。

ウィリー達のコールドバレエは良く揃っていて見事だった。特にヒラリオンとアルブレヒトをいけにえにして連れて来る場面で、舞台を斜めに一列に並ぶところは一糸乱れぬ直線で息を呑むほどのビジュアルであった。




posted by haru at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする