2015年04月27日

バーミンガム・ロイヤルバレエ団「白鳥の湖」ギッテンズ&シングルトン

2015年4月26日(日)14:00 東京文化会館

オデット・オディール セリーヌ・ギッテンズ
ジークフリード王子 タイロン・シングルトン
王子の友人ベンノ ツァオ・チー

ピーター・ライト版の白鳥は初めて見ました。
まず、プロローグで王様の冠を載せた棺が運ばれ、涙にくれた王妃が続きます。
喪中という設定で、王子も王妃も黒い衣装です。
普通の版では、王子の誕生日のお祝いで友人や街の若者が踊り、王妃からプレゼントに弓を贈られるという設定ですが、ライト版では、王子を励まそうとベンノが宴を催し、高級娼婦を二人呼ぶという設定です。
弓は友人からの贈り物で、高級娼婦二人とベンノと王子が踊るのがパ・ド・トロワ。

白鳥の第二幕は、出演するのがほとんど女性で、この版では一幕と二幕を休憩なしで上演するという都合上、第一幕ではトロワの女性二人以外は冒頭だけですぐいなくなり、あとは男性陣が踊りまくり、振袖みたいな重々しい衣装の男性達も踊るという、異色な一幕です。
通常は湖に行く途中で踊れられる哀愁を帯びた王子のソロも、パ・ド・トロワに挿入されています。
タイロン・シングルトンは長身でスタイルが良く、エレガントにとても丁寧に踊っているのが好感が持てます。
美術は黒を多用して、暗めで重厚な雰囲気、女性の衣装も、黒や茶やダークな色合いを中心に、中世風にレースを重ねるようなものが多かったです。
友人達と宴を催していると、王妃が現れて、「喪中なのに、なんて不謹慎なことをしているのです!あなたは王に即位しなくてはならないのですから、明日の晩餐会では、このお姫様の中から結婚相手を選びなさい!」と三枚のお見合い写真(大きな本のようになっていて、従者が開けて見せます)を持ってきます。
王妃は王を亡くした悲しみで老け込み有無を言わせません。

鬱々とした王子はベンノと湖へ狩に行き、白鳥と出会って…という二幕はほとんど通常と同じです。
オデットが身の上をマイムで語るシーンもあります。
白鳥が4羽かける4列で16名というのは、ツアー仕様だからなのか、もともとそういう構成なのか、少々物足りません。
白鳥たちはフォーメーションを頻繁に変えます。
前列に2009年のローザンヌ・コンクールでスカラシップを受賞した水谷実喜さんがいました。他にも東洋系の方が3人ぐらいいました。

セリーヌ・ギッテンスはトリニダート・トバコ出身で、2006年のローザンヌコンクールのファイナリストだそうです。黒人というよりは、少し褐色系の肌色ですが、かなりドーランを塗っているらしく、黒人という感じはまったくしませんでした。手足が長く、顔もかわいくて、ポリーナ・セミオノワに雰囲気が似ています。
彼女も高い身体能力を過剰に見せることなく、上品にすべてをコントロールして、差し出す足先の一歩も丁寧に踊っていて好感が持てました。
シングルトンとの並びは背の高さもヴィジュアルもぴったりお似合いで、この二人は黒人の持つ並外れた身体能力を上手に、きれいに見せることを心得ていると思いました。

四羽の白鳥は、水谷さんも左端に入っていましたが、ピッタリと揃って見事でした。

そして休憩をはさんで第三幕は、王子の花嫁候補は3人です。
それぞれがソロを踊った後に、各国の踊りがあります。
ハンガリーの王女は、2007年のローザンヌ・コンクールで印象に残ったデリア・マシューズ。金髪美人で、踊りもきっちり正確でなかなか迫力がありました。曲は何の曲がわかりませんでした。
ポーランドの王女の曲は、ロットバルトのソロで使われる曲でした。
イタリアの王女が水谷さん。チャイパドのヴァリエーションの曲で、アレグロの速さにピタピタと軽やかにあわせる音楽性が素晴らしくて、彼女はこれからどんどん昇格していくと思いました。

オディールに扮したギッテンズは、白鳥の時よりも幼く感じるようなカラリとした可愛さ。あまり悪意のない小悪魔ちゃん、といったところでしょうか。
演技は過剰ではありませんが、程よく、ヴァリエーションも大変にきっちりと見事に踊ります。
オディールのグラン・フェッテはダブルを最後まで挟み込みながら、ほとんど場所の移動なしにきれいに回り、体の軸がしっかりしているのがよくわかりました。

第4幕では、白鳥たちのコールドバレエがあり、その後オデットが悲しみにくれてやってきて、そして王子がやってきてオデットに許しを請います。ロットバルトが現れて二人をいじめ、王子がオデットを頭上にリフトし、バズーカ砲のようにロットバルトに向けると、愛の力でロットバルトは弱ります。しかし、現世では結ばれることはないとオデットは湖に身を投げてしまいます。
王子もその後を追って飛び込もうとするのを阻止しようとするロットバルト。
ロットバルトを押しのけて身を投げる王子。
白鳥たちがロットバルトをつつき、ロットバルトは滅びます。
あの世で結ばれる王子とオデット。
現実の世界では、王子の遺体を抱いたベンノが現れて、幕となります。

黒人の主役カップルという事に注目していた公演でしたが、ギッテンズはビジュアルは白人に近いので、人種のことはあまり気になりませんでした。
先日、遅ればせながら、映画「ファースト・ポジション」を観たのですが、あれに出てくるシエラネオレ出身の女の子ぐらいだったら、白鳥を踊るのはやはり違和感があるだろうと思ったのです。
白鳥と黒鳥、善と悪。
そういう決め付けはいけませんよね。
だから、ダンサーが黒人ならば、いっそのこと衣装の色を逆にして、オデットが黒の衣装、オディールを白の衣装にしたら、そしてもちろん群舞も黒い衣装にしたら、もうそれだけでも、まったく違う物語になってしまうかもしれない、などと妄想していました。
白鳥の湖は、いろんなヴァージョンがありますが、まだそういう版は作られていません。
クラシックバレエの世界には圧倒的に黒人の数が少ないですから。
ハーレム・ダンスシアター、あるいはキューバ国立あたりで、そういうのやってくれないかな。


ぴかぴか(新しい)




posted by haru at 08:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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