2015年06月13日

新国立劇場バレエ「白鳥の湖」米沢&ムンタギロフ

2015年6月10日(水)7PM オペラパレス
オデット/オディール 米沢唯
ジークフリード王子 ワディム・ムンタギロフ
道化 八幡顕光
ルースカヤ 木村優里

シーズンエンドのこの作品は、この初日舞台が録画され、NHKBSプレミアムシアターで放送されるそうで、そのせいもあってか、みなさん気合が入ったパフォーマンスでした。
第1幕は、道化役の八幡さんが踊りの主役。
ジャンプや回転などのテクニックは目を見張るほどで、それでいながらどんな場面でもかわいらしい!
至極の「道化」芸に昇華している。
オディール顔負けの32回転も見事。

第1幕のコールドはパステルカラーの色あいが優雅で品よく、そこに道化がピリッとした味つけをする。
パ・ド・トロワの三人もふんわりとして心地よく、池田さんのジュッテは後脚が高くあがってきれい。
ワディム王子は、短めに切った髪型も、体型も踊りもノーブルで理想的。

第2幕、登場のシーンのオデットが素晴らしい。
クラシックバレエの象徴でもある「白鳥の湖」の湖畔の2幕のオデットは、余計なものをそぎおとした白い衣装で、鳥になった女性を表現する。
ここでは体型、テクニック、音楽性、プリマの人間性すべてが露呈する。
だから意図的に表情を作るような作業は必要ない。
踊りにすべてを込めて、丁寧に集中するのみ。
その点、唯さんのアプローチは正しいと感じた。
あまり表情を作らないが、正確で美しいポーズ、柔らかな腕の動き、ピタッと止るバランス。
テクニックのあるダンサーなので、余裕がある。
踊りでオデットの悲しみを表現していた。

オディールでは、ヴァリエーションでトリプルピルエットに続いてアティチュードターンという難しい技を、さらっと何事もないように4回ぐらい決めて、途中4回転ピルエットもきれいに決めて、コ―ダのフェッテは、最初はシングル、シングル、トリプルを4回ぐらい繰り返し、その後はシングル、シングル、ダブル。
涼しい顔でこんな大技を決めるという、すべてのバレリーナの羨望と夢を現実に身につけている稀有な存在。
きっと稽古場では10回転ぐらいやってしまうのだろうから、舞台でも、もうちょと頑張って5回転ぐらい見せて欲しい。唯さんの「余裕」でなく「必死」なところを一度見てみたいと思います。

今回のキャスティングで大抜擢されたのが、ルースカヤを踊る木村優里さん。
小学生のうちからコンクールで数々の賞を取り、新国立バレエ研修所に予科生から入所し、この秋にはバレエ団に入団するらしいです。
牧版のルースカヤは、プリンシパルとか次期主役候補とか、他団のプリマとか、重鎮ソリストとかが踊る「様々な事情から今回主役は踊らせてあげられないけれど、これで目立って頂戴ね」という感じの、特別な役。
衣装はロシア人形みたいで素敵だけれど、踊りはたいして面白くなくて、ソロなので長くて退屈〜と感じることが多いです。今まで見た中で面白かったのは、寺島まゆみさんが踊った時ぐらい。

木村優里さんのルースカヤは、登場の時から「なんて堂々としているんだ!」と驚かされ、女性らしい美しさ(彼女はとてもスレンダーな体型で衣装が似合う)、フレッシュな踊りに魅了されました。
この大舞台に立つのが楽しくて仕方がないように微笑み、若さからくる軽やかさをアピール、ゆっくりな所と音楽が盛り上がる所のメリハリも効いていて、観客を引き込みました。こんな風に軽やかにルースカヤを踊った人は初めて観ました!
(ルースカヤという踊りは、今まではベテランが踊ることがほとんどだったので、重厚な感じがつきまとっていたのです)
まだ正式にバレエ団に入ってもいない、無名のダンサーにこの役を踊らせるというのにはびっくりしましたが、その期待に見事に答え、将来が楽しみです。大原芸術監督は彼女を新国立劇場の新たな柱になるプリマとして育てる気なのでしょう。

牧版の白鳥は、第4幕が再演時に改訂されて、王子とオデットが二人で踊る曲(王子がオデットに許しを請い、オデットが許す)が時間短縮の為らしくバッサリカットされてしまったのが残念です。
それから王子がオデットをリフトしてロットバルトに向かうと何故かロットバルトが苦しんで滅びる(オデットが最終兵器?)という演出も相変わらずですが、もう少しわかりやすく工夫して欲しいものです。
創造性の感じられない第4幕が物足りませんが、ダンサーのパフォーマンスも美術も素晴らしいこの舞台が映像に残って、すぐにTV放映されるのは喜ばしいことです。

(たぶん6月28日深夜のNHKBSプレミアムシアターです。)

ぴかぴか(新しい)





posted by haru at 22:29| Comment(1) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月01日

Kバレエ「海賊」中村祥子

2015年5月31日(日)14時 オーチャードホール
メドーラ 中村祥子
コンラッド スチュアート・キャシディ
アリ 池本祥真
グルナーラ 浅川紫織
ビルバント 杉野慧



Kバレエは、日本のバレエ団としては初めて、公演のライブ・ビューイング(と言っても、録画ですが)を映画館で行うそうで、その録画が行われたのがこの日のようでした。
録画を行うこともあって、皆さん気合いが入っているようでしたし、キャシディ、祥子さん、浅川さんとプリンシパル3人投入。

キャスト発表時に、キャシディさんがコンラッドを踊るというので驚きました。(今のKバレエには祥子さんを上手にサポートできる人がいないのか?宮尾さんでは役不足なのか?遅沢さんではダメだったのか?)
キャシディさんはくるみのドロッセルマイヤーとかコッペリウスとか、あまり踊らないキャラクター系主役という認識ができていたので、本人的にもきついのではないだろうかと。

まあ、キャシディさんもまだ踊れなくはないですけれど、正直踊りが重いですし、Kバレエの男性陣はテクニックがあってポンポン飛ぶ子が多いので、比べちゃうと厳しいですね。
ただ存在感はさすがで、今回の海賊の首領コンラッド役にはぴったりでした。

熊川さんがアリを踊ると、コンラッドより偉そうに見えてしまいますが、今回のキャスティングは、コンラッド、アリ、メドーラの関係性がきちっとはまっていたのがよかったです。

中村祥子さんは、登場の瞬間から劇場の空気が変わるようなオーラがありました。
出産をされてから、以前より優しく女性らしさが増したと感じられますが、体型は遜色なく、背中や全身の筋肉のラインがよく見えるほど痩せています。
トゥでのバランスは長く、たゆとうようなゆとりがあって、それがいいのです。
32回転のフェッテでは、最初はシングル、シングル、ダブルを5セットぐらいやって、その後はダブルの連続でした。最後にちょっとよろけちゃったのが、彼女にしては珍しい失敗だったですが、おそらく映画館中継ではゲネプロの録画かなんかと入れ替えるでしょう。

そして、今回素晴らしかったのが池本さんのアリでした。
完璧といえるほどの踊りです。特にジュッテの時に開脚が180度以上パッとひらくのが気持ち良いです。
ジャンプの高さもとっても高くて、高く飛びすぎて戻って来れないんじゃないかと思われたというニジンスキーを彷彿とさせます。
これだけ凄いアリを踊れるダンサーがいるのなら、もう熊川さんは踊る必要ないです(笑)

今のKバレエの中で踊りが上手で目立つのは井澤さんだと思っていましたが、池本さんもこんなに上手だったとは恐れ入りました。ただ、踊りは完璧ですが、もう少し俺様アピールがあってもよいような気がします。演技が少々淡泊というか、この役柄としてはコンラッドの忠実な従者なのでそれでもいいのですが、アリとしての自意識のようなものが感じられませんでした。(熊川アリの場合はそれがありすぎるのですが)

浅川紫織さんは、Kバレエの女性陣の中では現在実質トップなわけですが、祥子さんのオーラと比べると、美しいですが地味に感じられてしまったのは不思議です。怪我を乗り越えてどんどん成長しているプリマですが、硬質な持ち味があるので、もっと自由に自分を解放して色気を醸し出したらいいのではないかと思います。

今回、私のお気に入りの杉野さんがビルバントで、この役はいつもビャンバさんで見てたので、かなり新鮮でとっても素敵でした。やる人によって、ただの悪役でなくて魅力的になるんですね。ホントに杉野さんの才能は日本人としては珍しいぐらいのアピール力で、舞台に立つ人はこのぐらいやってほしいですよ。
これからも注目しています。色物だけでなく、王子もぜひ踊らせてあげてください!

ぴかぴか(新しい)
posted by haru at 22:48| Comment(1) | TrackBack(0) | Kバレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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