2016年05月08日

新国立劇場バレエ「ドン・キホーテ」木村&中家

2016年5月7日(土)14時 オペラパレス
キトリ(ドゥルシネア)木村優里
バジル 中家正博
ドン・キホーテ 貝川鐵夫
サンチョ・パンサ 八幡顕光
キトリの友達 柴山紗帆 飯野萌子
エスパーダ 小柴富久修
街の踊り子 寺田亜沙子
メルセデス 本島美和
カスタネットの踊り 堀口純
キューピッド 五月女 遥
森の女王 細田千晶
第1ヴァリエーション 奥田花純
第2ヴァリエーション 柴山紗帆

新国立劇場バレエ研修所から一足飛びにソリスト採用されたライジングスター、木村優里さんの全幕初主演。
今しか見られない若さの輝きがあることを期待して行ってきました。

まだ若干20歳。32回転のフェッテを含む、難しい技がてんこ盛りでスタミナも必要なキトリ役を、ほぼパーフェクトで演じ切りました。それだけでも大したものです。劇場側の期待にも答えて、今後ますます役付きが良くなるでしょう。「20歳の新星!」とうたわれて次々と主役の座と射止める姿が目に浮かびます。

木村優里さんは164センチ。体重はわかりませんが、新国立劇場のダンサーの中でも飛びぬけてスレンダーで、手脚が長く細く、小顔でかわいく、少々立ち耳なのが気になるぐらいで、抜群の舞台映えがする容姿です。

小学生の頃からバレエコンクールの上位に何度も入賞しています。その後新国立劇場バレエ研修所に予科生から入って2015/16シーズンよりソリストです。バレエ研修所時代にボリショイ劇場で行われた世界のバレエ学校の集まる公演にも参加してソロパートを踊っていました。小学生の頃もかなりスレンダー体型ですので、そのまま変わらずに体型を維持しているようです。海外留学はしていないようですが、留学時に太ってしまう子も多いので、彼女の場合は留学しなくて良かったと言えるのかもしれません。

肝心の踊りですが、アティチュードやアラベスクを上げる角度は常に125度ぐらいで高いです。
森のシーンで、森の女王の細田さんが前、木村さんが後に並んで同じ振り付けでアラベスクをしますが、細田さんが110度くらいなのに対して125度。デフォルト125度と、まるでパズルのピースをかちっとはめるようにそのポジションに持っていきます。
アラベスクなどでのキープも十分にあります。
そして回転系のテクニックもあって、第1幕の闘牛士たちの前をペアテで進んでいくところもお見事でしたし、第3幕のグランパのフェッテは、シングル・シングル・トリプルを3セットで、ウェストの所で扇を開いて閉じてをつけていました。その後はシングル・シングル・ダブル。途中でちょっと傾いて、立て直そうとした時に、十分にロンデせずに正面でパッセに脚を巻き込んだのは汚い印象でしたので、そこが唯一残念なところでした。

優里さんの脚が十分にアンドォールしていないという人もいるので、どうなのかなぁと見てみました。
草刈民代さんもアンドォールできていないと言われていて、確かに写真で見るとアラベスクに上げた脚の膝が下を向いています。優里さんの場合は、それほどではなく、ほんのわずかな問題だと思いますが、たとえば米沢唯さんの踊りと比べると、優里さんの踊りが端正ではないと感じられるのは、そのあたりに原因があるのかもしれません。

演技に関しては、キトリという役柄は庶民的で年齢的にも近く、等身大で素直に演じれば良いので、普通にかわいくて良かったです。相手役の中家さんとは、橘バレエ学校の発表会で組んだこともあるようですし、サポートが上手ですので、やりやすかったことでしょう。

全幕主演がドンキというのは、若さと勢いで押し切れるので彼女にはぴったりでしたね。
それぞれ主役を張れる実力のある新国立のソリストやプリンシパルたちを脇役にして、盛り上げてもらって、その中心として、ちゃんと存在感のある演舞ができる、その精神力の強さに驚きます。
自分の実力を、舞台で常に100%、いや120%発揮できるダンサーになるのは、公演回数を重ねて経験を積んでいく中で(普通は)つちかって行くものなんでしょうが、それをこのように最初からできるというのは、熊川哲也みたいな物おじしない性格?(褒めてます)
むしろその精神的タフネスさを、私は賞賛したいと思います。観客の期待を背負うプリマの資質として。

これからは米沢唯さんの端正さや小野絢子さんの勘の良さなどを見習い、繊細で美しい表現ができるように鍛練していって頂きたいと願っています。

木村優里さんのことばかり書いてしまいました。
新国立のドンキ、そろそろ10年位経つと思いますので、ここらで新制作してはいかがでしょうか。
衣装も見飽きてきました。
以前も書いたように、この版は、ストーリーを追う楽しみがないのが欠点です。
東京バレエ団のドンキは「お祭りドンキ」と銘打っているくらい楽しいですし、Kバレエのドンキは、ストーリーと登場人物に工夫があって面白いです。
新国立の上手なダンサーたちが引き立つような楽しいオリジナル版、奇をてらわなくていいので、お子様でも楽しめるような普通のストーリーで、衣装と装置をぜいたくに!!











posted by haru at 15:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月05日

新国立劇場バレエ「ドン・キホーテ」米沢&井澤

2016年5月3日(火)14時 オペラパレス
キトリ(ドゥルシネア)米沢唯
バジル 井澤駿
ドン・キホーテ 貝川鐵夫
サンチョ・パンサ 橋一輝
キトリの友達 柴山紗帆 飯野萌子
エスパーダ マイレン・トレウバエフ
街の踊り子 長田佳世
メルセデス 本島美和
カスタネットの踊り 堀口純
キューピッド 五月女 遥
森の女王 細田千晶
第1ヴァリエーション 奥田花純
第2ヴァリエーション 寺田亜沙子

まず、この公演で二つ強烈に印象に残ったことを申し上げます。
@マイレンエスパーダが登場の時に、帽子をポーンと天高く放り投げて、それがセットの上3分の2ぐらいの上方に、ありえないくらいに高くあがって、どっかに消えた!!(さすがマイレン、笑わせてくれます)
A唯さんの凄技フェッテ


新国立劇場のドンキは何度も見ていますが、版の特徴としては、バジルの狂言自殺で恋人達の物語の決着がついてしまったあとに、ジプシーのシーンやらキホーテの風車への突進、森のシーンがあります。
物語を語っていく事よりも、たくさんのダンサーが出てきて踊りで見せて行く方に重点が置かれています。

普通ならばメルセデス一人で演じるところを、街の踊り子とメルセデスで分けあっているので、エスパーダにとってはどっちが本命?とわからなくなり、さらにエスパーダはカスタネットの踊り子にも色目を使っています。(もしかしたらマイレン独自の演技かもしれませんが)

新国立劇場バレエ団のオノラブル・ダンサーであり、数々の王子を踊ってきた山本隆之さんがドン・キホーテを踊った時も衝撃でしたが、今回は貝川さんがドン・キホーテ役で、「ダンサーの旬の時期の短さよ…」と、いつの間にか王子がおじいさんになってしまったという哀愁を感じてました。(いえ、貝川さんはとっても上品で素晴らしいドン・キホーテを演じていらっしゃいました。王子役よりはまっていたかも。笑)

今回は脇やらチョっとだけ踊る役にもプリンパルやらファーストソリスト大量投入でした。
キャラクターや脇役はとても重要であり、舞台のなんたるかを知りつくしたベテランがそういう役をやることで、舞台の重厚さがぐっと増すことはわかっていますが、あれだけ踊れるプリンシパルの八幡さんがサンチョ・パンサとは… エスパーダをやらせてあげてもいいんじゃないでしょうか。

そして、オデットを踊ったこともある堀口純さんがカスタネットの踊りですからね…
キャラから言ったら森の女王とかが(ランクからしても)順当なんですけど。
それならいっそ長田佳世さんがこの踊りをどう踊るか見たかったです。
東バならばジプシーの踊り、新国立ならカスタネットの踊りは、ちょっとメインストリームからはずれた異質の踊りなんですけど、ここで魅せられるダンサーはなかなかいなくて、「上手いけど綺麗じゃない」「綺麗だけど面白くない」というパターンが多いんです。
堀口さんは、どちらかというと「綺麗だけど面白くない」方のパターンでしたけど、不思議な透明感があって、ジプシー女でなくて白鳥が踊ってるみたいでした。

メルセデスの本島さんは、さすがの華やかさでぴったりでした。上体が固くて、あまり大きくそらないのが残念ですけど(その点はたぶん堀口さんの方が柔らかいと思います)
本島さんも、すっかりベテラン扱いで主役が回ってこなくなりました。プリンシパル8名のうち、主役を常に踊る人が実質2,3人で後はキャラクテール要員というのは、バレエ団としてどうなんでしょう??

とまあ、いろいろ思うことはあるのですが、そのような重厚な脇役をしたがえて真ん中で踊る二人は、飛びぬけたオーラはありませんが、主役としての責任はちゃんと果たしていたと思います。
井澤王子は、演技は薄めでしたが、片手リフトもちゃんとこなし、ソロもきれいで見ごたえがありました。
そして、米沢唯さんは、盤石のテクニックを持っていますから、どの踊りも安心して見ていられます。
高度なテクニックがあるから、その分余裕があって、音にぴったり合わせることができる。それが観客にとっては胸のすくような爽快感を感じさせます。

第1幕でバジルと同じ振りで回転を入れて踊る所、男性の方が早く回転して女性が遅れることが多いのですが、そこもぴったり二人で揃っていました。
あまりこれみよがしなことはしないのですが、バランスも長くて、すべての踊りが端正で、雑なところがないというのは凄いことです。

第3幕のフェッテは、トリプル‐シングル‐シングルで、トリプルの最中に手を上にあげてから腰に下ろすと同時に扇を開いてひらひらするという大技を3セット入れていました。
あんな技をさらっと涼しい顔でやるんですから、もう観客大熱狂でした。

アンサンブルや脇役まで舞台を盛り上げていて、とても楽しい公演でした。


















posted by haru at 11:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月02日

東京バレエ団「ラ・シルフィード」沖&松野

2016年4月30日(土)14時 東京文化会館

ラ・シルフィード:沖香菜子
ジェイムズ:松野乃知
エフィー(花嫁):河谷まりあ
ガーン(ジェイムズの友人):和田康佑
マッジ(魔法使い):森川茉央

ラコット版のラ・シルフィードが面白いのは第1幕にあるオンブル(影)のパ・ド・トロワ。
ジェイムズとエフィーが婚約パーティで踊るところに、いつの間にかシルフィードが入り込む。
シルフィードが見えるのはジェイムズだけ。
ジェイムズ以外の人間たちにはパ・ド・ドゥに見えるが、ジェイムズとシルフィードにとってはパ・ド・トロワ。
エフィーにはシルフィードは見えないけれども、ジェイムズの気持ちがどこかまっすぐ自分に向っていないことを感じながら踊る。

ジェイムズは、かわいくて愛らしいエフィーと、蠱惑的なシルフィードのはざまで、どちらを選ぶかという悩みをかかえながら、二人の相手をして踊る。
沖香菜子のシルフィードは静謐で、この世のものならぬほど美しい。踊っている間にも、その魔力のようなものにジェイムズがどんどん惹かれていくのが感じられた。

そしてついにジェイムズはシルフィードを追って森の奥へ行ってしまう。
松野乃知はアントラッせの後脚が高くあがるし、繊細ながらダイナミックな跳躍が素晴らしい。

第2幕、フライングなどもあり、森でのシルフィード達の踊り。
フォーメーションの移動もきれいで、体の角度もぴったり揃っていて、極上のコールドバレエだった。
芸術監督、斉藤由佳里の指導が行き届いていることがうかがえる。

マッジにそそのかされて、ヴェールをシルフィードにかけると、羽根が取れて急速に弱っていく。
そして、シルフィードの細い腕が、力なく下がると、パサッと中身がなくなって蝉の抜け殻になったようで、この臨終シーンは今まで見た事のない表現であった。
そして、その後のジェイムズの慟哭。
 
沖シルフィードと松野ジェイムズは、これが2回目のラ・シルフィードだったが、特にこの第2幕後半は二人とも役に入りこんでいて、観客もどんどん舞台の世界に引き込まれて行きました。

舞台の素晴らしさを堪能した公演でした。





 








posted by haru at 23:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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