2016年06月21日

新国立劇場バレエ「アラジン」奥村&米沢

2016年6月19日(日)14時 オペラパレス
アラジン 奥村康祐
プリンセス 米沢唯
ランプの精ジーン 福田圭吾
魔術師マグリブ人 マイレン・トレウバエフ

アラジンは2008年、2011年に次ぐ3度目の上演。
初演時は、新国立劇場のダンサーにあてて振りつける新作ということで、大変に盛り上がり、私も楽しみでならず、プレビューも含め合計4回、3キャスト制覇しました。
初演ペアは、山本隆二&本島美和、八幡顕光&小野絢子、芳賀望&湯川麻美子の3キャスト。
八幡&小野をイメージして作られた作品ですが、私は細やかな演技の山本アラジンが好きでした。

新国立劇場には、コールドでも主役を踊れるような優れたダンサーがたくさんいます。この作品ではソロの踊りが多く、それぞれに見せ場があり、ダンサー達を生かす構成となっています。
ディズニーアニメでおなじみのお話ですし、ジーンの宙釣りや魔法のじゅうたんの飛翔など、舞台装置に工夫があって、ミュージカルのように大人も子供も楽しめる傑作。
まあ、チャイコフスキー大先生の古典に比べると底が浅いのは致し方ないけれど、ファミリーバレエとして毎年子供の日を中心にゴールデンウィーク上演してはどうかと私は思っていました。

ところが、前回、そのゴールデンウィークに上演したところ、ガラガラだったそうで…
6年もお蔵入りになってしまってました。
今回はなぜか大入り満員でチケット争奪戦が起きるほどの人気。
評判も上々だったですけども、なぜでしょうね。
だって、ロイヤルと牧とザハロワとかぶっているんですよ。
楽日の客層は、男性の姿も多く、子供さんも多かったです。
お母さんとではなく、お父さんと見に来ていた少女もいました。父の日だから?
それなら「父の日はお父さんも子供に帰って、娘と一緒にアラジンを見よう!」という主旨で毎年上演もありでしょうか。
せっかくビントレーさんが作ってくれた宝物なのですから、有効活用して欲しいものです。

というわけで満員御礼の楽日は、奥村&唯。
このペアは、昨年の横浜バレエフェスティバルで見て気に入ったので、期待しておりました。唯さんはムンタギロフ、菅野さん、福岡さん、井澤さんなどと組んでおりますが、私は奥村さんとのペアが相性がいいように感じております。なんというか、ふたりとも男女の匂いを感じさせないし、顔芸とか濃い演技はやらずに踊りの素晴らしさで魅せるタイプというところが似ている。

今回も第2幕の結婚式のパ・ド・ドゥが美しかったです。
その振付で、二人が向かいあってキスをするかと思わせて、手でお互いの口をふさぐ、というのがあるのですが、お子様向けにキスNGなのかと不思議でした。
自然な流れだと、あそこはキスなんですけど、普通じゃつまんないからなのかしら。
ちょっと気になります。気にならせるためにあえて?かもしれません。

この作品、第1幕が秀逸です。
マグリブ人が、アラジンを大金持ちになれるぞとそそのかすシーン。
黒子が二人うしろについて、アラジンの動きにあわせて衣装を変えます。
帽子を取り替え、足を後ろにあげるタイミングで靴を替え、マグリブ人がさっと自分のはめていた指輪をはめ… まったくアナログなトリックなのですが、マジックみたいに見えるところが面白い。

砂漠のシーン。茶色いオンディーヌみたいな衣装の女性たちが砂漠の精として現れ、アラジンをもてあそぶように、風のように現れたり消えたりして踊る。風に舞い上がる砂をよく表現していて、幻想的で大好きです。

洞窟に行かされたアラジンが、体の向きを変えると、視点が洞窟の外→内と反転して、恐竜の骨のような階段があらわれるシーン。
その後の宝石たちのディベルティスマン、スピーディーで目まぐるしく次から次へと宝石たちが現れる、たたみかけるような高揚感がすごい!最後に出てくるダイヤモンドの鋭角的な振付がたまらない!
ランプをこすってジーンが現れるところ、今回はすこしフライングで、こする前からジーンが入口を開けているのが見えちゃいましたが、これは3階サイド席だったせいでしょうか?

家に帰ってきたアラジンが、お母さんに冒険を語るシーン。この時のアラジンの演技がダンサーによって少しずつ違っていて、山本隆二さんがとても丁寧にジェスチャーしていたので好みでしたが、奥村さんの演技も空間を大きく使っていてなかなか良かったです。

ランプをこすって、ジーンの影が長く伸びていって、宙吊りのジーンが現れるシーンも楽しい。

その後街に出かけたアラジンはプリンセスの姿を見て、マグリブ人が見せた女性だと気づく。

ここまでが第1幕の展開、これだけでお腹いっぱいですよ。

第2幕は、ひとめぼれしたプリンセスに会いたさに浴室に忍び込む(なんで浴室なんでしょう、まあ、面白いからだろうけど)アラジンがとっつかまって死刑になりそうなところ、お母さんが命乞いに現れて宝石を見せて王様に結婚の許しをもらい、ジーンとお付きのイケイケダンスシーン、続くアラジンとプリンセスの結婚のパ・ド・ドゥ。

これでめでたしめでたし、もうさらにお腹いっぱいなので、ここで終わってもいいくらいなのですが、そうはいかない後日談となるのが第3幕。

結婚して幸せな日々を送っていた二人ですが、マグリブ人にランプを奪われ、プリンセスも塔に幽閉されます。助けに来たアラジンと協力して、マグリブ人に毒を飲ませて逃げようとする二人。
この時、マグリブ人を油断させるために、プリンセスが色仕掛けの踊りをするのですが、ここが私の定点観測ポイント。
今まで清純で、いやよいやよと拒んでいたマグリブ人をだますため、一転して色っぽい踊りで誘惑するのです。ダンサーによって振り切れ度合に差があります。もともと色っぽい本島さんや湯川さんはあまり差が出ないのですが、小野絢子さんはガラリと変わります。女性の中のいろんな面をかいま見たような感じです。
唯さんも、ガラッととまではいきませんが、なかなかセクシーなところもありました。もっと吹っ切れてやれるようになるといいんじゃないかな。

マグリブ人が塔から落ちて、王宮に帰る二人が乗るのが空飛ぶ魔法のじゅうたん。
ディズニーアニメが刷り込まれていると「ちっちゃ!」というサイズのじゅうたんですが、まあ、装置の都合です。

王宮に帰ってめでたしめでたし、ランプの精ジーンを自由にしてやるところもアニメと一緒。
ここはもっと派手にジーンが踊ってもよかったと思いますけど。
第1幕の宝石シーンと比べると、ちょっと尻つぼみなエンディングは否めません。

第1幕だけでも完結しているし楽しいから、全幕上演が難しいなら、他のものと組み合わせてトリプルビルぐらいにして頻繁に上演する手もあると思います。
今回の上演が評判が良くてとても嬉しいです。









posted by haru at 13:35| Comment(2) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月11日

Kバレエ「眠れる森の美女」中村祥子&遅沢佑介

2016年6月11日(土)12:30 東京文化会館
オーロラ姫 中村祥子
フロリムント王子 遅沢佑介
リラの精 浅川紫織
カラボス ルーク・ヘイドン

私が前回Kバレエの眠りを見たのは2010年。熊川さんと東野さんが主演でした。
その時の自分のレビューを読むと、「東野さんはまだオーロラを踊るのには早すぎたのじゃないか、そして熊川さんはセーブ運転モードだった」等々と書いてあり、あまり満足した公演ではなかったようです。

しかし、今回は、大大満足の素晴らしい公演でした。
その原因は、衣装や装置を新調して色彩が上品で美しかったとか、浅川さんのリラと女性ソリストたちがレベルアップしていたとか、カラボスの演技が面白かったとか、キャシディの王様がかっこよかったとかというもろもろ以上に、「プリマが素晴らしいから」これにつきます。

眠りという演目は、古典中の古典。
ドンキや白鳥にあるような32回転フェッテはありませんが、クラシックのスタイルですべてのパをきっちりと見せることができてこそ、振付の良さが見えてくる演目です。
完璧なアンドォール、脚のライン、アラベスクのポーズ、優美な腕使い、ローズアダージオでのバランス…
端正に踊ることによって、オーロラ姫の貴族性や上品さを表現するのです。

中村祥子さんは、身長172センチくらいでしょうか、長くてスリムな手脚、弓なりの脚のライン、見事な甲、小さくて美しいお顔という容姿

どこまでも伸びていくようなアラベスク、微動だにしないポワントバランス、やわらかな腕使い、丁寧な踊りと、視線や指先までも語るような表現

第1幕の登場シーンでは、あまり跳ねるような踊り方ではなかったですが、そのかわり、紡ぎ糸をもらってはしゃいで踊るところでは、ピョンと飛ぶようなステップを見せて、オーロラの高揚感を表してくれました。

第2幕は「眠っているオーロラ」なので、夢の中にいるようにはかなげで、「眠っている」ことを表す腕のポーズが美しい。

第3幕のグランパのアダージオで、私は不思議な感覚におそわれました。
祥子さんの踊りを見ていると、自分がヨーロッパの伝統ある歌劇場にいるような感じがするのです。
祥子さんは、ウィーン、ベルリン、ハンガリーなど、そうそうたる豪華な歌劇場で踊っていたプリマです。
彼女はヨーロッパの歌劇場の空気を身にまとっているのですね。

バレエでは、わずかな首のかしげ方、ほんの少しの腕の角度などで、まったくニュアンスが違ってきます。
祥子さんは、ヨーロッパで長く踊ることによって、ヨーロッパの貴族のしぐさ、ニュアンスを表現できようになったのだと思います。
こんな感覚、他の日本人のバレリーナでは感じたことないです。
(米沢唯さんの踊りも端正で素晴らしいけど、ヨーロッパにいるという感じはしない)

遅沢さんは、祥子さんを美しく見せるようにサポートしてくださり、ありがとうございます。
特にアダージオでのフィッシュダイブ3連続、祥子さんの脚が天井に向くぐらい急勾配な角度で、あのような角度のフィッシュダイブは初めて見ましたが見事でした。

祥子さんの事ばかり書いてしまいましたが、まさに現役日本人バレリーナの中で一番のプリマでしょう。
今、年齢的にもキャリア的にも技術と表現のバランスが取れて、良い時期ですし、可能ならば彼女のすべての舞台を見たい!!と感じるくらい素晴らしい舞台でした。

熊川さんにも祥子さんを呼んでくれてお礼を言いたい気持です。
こんな素晴らしいプリマを見ることができる幸せ。
このオーロラはシネマにして欲しいし、祥子さんのジゼルも見たい!!











posted by haru at 18:36| Comment(0) | TrackBack(0) | Kバレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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