2016年07月23日

新国立劇場バレエ 子供のためのバレエ劇場「白鳥の湖」井澤&米沢

2016年7月21日(木)15時 オペラパレス
オデット/オディール 米沢唯
ジークフリード王子 井澤駿

子供のために新制作した「白鳥の湖」
オーケストラがないけれども、大人でも楽しめるクオリティの高い公演でした。
子供向けに色々とカットされております。
第1幕は、ワルツの曲の中にすべてを詰め込んでいます。友人たちや道化の踊り、王妃のマイムも。
40分→5分といったところ。
しかし、その後王子の見せ場、哀愁のソロはあります!
女の子の「王子様ステキっ❤」という反応を狙っているのか、あるいは男の子に「カッコいい!僕もあんな風に踊りたい💡」と思わせてバレエ・ボーイズを作るためか…

第2幕は、オデットのヴァリエーションがカットされているのですが、ロットバルトの登場、王子とオデットの出会いとパ・ダクシオン。白鳥の見事なコールドもたっぷりとあります。

米沢唯さんのオデットは、清潔感があって、とても細いのだけれども、すっと強い芯が通っている。
肩の可動域が大きくて、鳥のように後ろにゆっくりと腕がまわり、どこまでも伸びていくようなしなやかさ。指の先までも繊細にコントロールして、音楽に寄り添い、音楽を彼女自身が奏でているような気がしました。

以前は胸が薄くて子供っぽく見えた体型も、体を大きく使って踊ることによって気にならなくなったし、女らしいというよりは、やや中性的な印象も、「人でないもの」というオデットの特性には似合っています。彼女らしい個性だと思います。

色々なダンサーのオデットを観ましたが、女っぽさ全開のオデットもいれば、女王らしいオデットもいるし、少女のようなオデットもいます。唯さんのオデットは、人間の女とか女性とかいうことをあまり感じさせない、不思議な存在感があります。でも、王子に白鳥たちの命乞いをするシーンなどは、少し女らしさが漂います。この不思議さに惹かれます。もう米沢唯のトリコです。

唯さんは、クラシックのテクニックが盤石なので、どんなシーンでも安心してみていられます。
王子との踊りは大変に美しかったです。これを見た少女たちが、「唯さんの白鳥を見て、バレリーナになろうと決意しました!」な〜んてことがたくさん起こりそうな名演でした。

休憩の後は第3幕です。
道化の踊りがたっぷりあります。これは、「あんなすごい踊りを俺もおどりたい!」とバレエボーイズを奮起させる効果がありそうです。各国のディベルティスマンは、スペインとナポリのみです。あとは私でも退屈することが多いのでカットして正解です。

花嫁候補たちの踊りもあります。この衣装が、ヘンテコな細巻貝みたいなものを頭に載せてます。
ああ…これって、今の牧版白鳥の前にやっていたキーロフ版で使用していた衣装だと思い出しました。
見るたびにヘンテコだと吹き出しそうになっていたのに、なぜまた採用したのか理解に苦しみます。ダンサーがかわいそうです。牧版の花嫁候補の衣装は、全員お揃いでなく、少しずつデザインが変わっていて、「やっとステキな衣装になったわ!」と思っていたのに…。
牧版を作ったのが2007年ごろだから、それ以前というと10年前の衣装を引っ張り出してきたのでしょうか。次回上演の際にはぜひ別のデザインで新調して頂きたいです。
ついでに言えば、舞踏会のロットバルトの衣装もたぶんキーロフ版のものですが、ものすごく変なので次回新調希望です。

黒鳥のパ・ド・ドゥはカットなしです!唯さんのオディールは、明快です。ゲームとして王子をたぶらかすのを面白がっているというのがよくわかる。
ヴァリエーションは、トリプルピルエットからアティチュードターン。見事です。稽古場では6回転ピルエットもやってしまうという話です。やはり稽古場で6回転できるからこそ、舞台で余裕の3回転ができるんですね。
注目の32回フェッテは、前半は1−1−3、後半は1−1−2。
トリプルをきっちりと拍の中に入れ込むので、後半のダブルがやけにゆっくり回っているように見えました。
唯さんの技を見ると、胸がスカッとします!!
クリアで雑味のないビールを飲んだ時みたいで…いえ、唯さんをビールに例えるなんて失礼ですよね、ピュアな最高品質、ピュアモルトです!すっきりして雑味がないけれども、奥深い。

井澤王子についてですが…容姿は王子度満点です。ちょっと暗めの雰囲気もいいかも。
彼は新国立劇場のNO1王子を目指して売り出し中ですが、存在感というかオーラが薄いんですよね。
悪くはないけれども、あまりひっかからない。もっとナルシストになればいいのかもしれない。

第4幕は、またまたナレーションであっさりと4曲分ぐらいをカットし、クライマックスへ突入です。
王子とオデットの間を裂こうとするロットバルトから逃げたり、「オデット最終兵器」(王子がバズーカ砲ようにオデットをリフトしてロットバルトに立ち向かうこと)で立ち向かったり…
牧版と振付が似ているので、うやむやにロットバルトが滅ぶのではないだろうな…と心配になりました。
しかし、やっと王子がロットバルトと闘い、それも結構一生懸命に闘って、羽をもぎ、その後ロットバルトが湖に落ちて稲妻とともに死ぬという、わかりやすい結末になっていました。

牧版の大きな欠点は、どうしてロットバルトが死ぬのかがわからないところなんですが、この子供版では、その点をきっちりとわかりやすくしたのは大変評価いたします。

花嫁候補の衣装以外は、白鳥コールドバレエの美しさを堪能できるし、物語もコンパクトにまとめられているし、白鳥の湖の踊り、黒鳥の踊りなど、みどころはすべてきっちりと入っているし、新国立劇場ならではの、クオリティの高い公演になっていたと思います。
これでオーケストラを付けたヴァージョンで、大人向け短縮版白鳥の湖として、料金を安めにして、バレエを見たことがないけれども一度は見てみたいという層を狙った公演を打ったらいいんじゃないかと思いました。












posted by haru at 22:17| Comment(0) | TrackBack(0) | Kバレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月18日

Kバレエトリプルビル 2日目

2016年7月17日(日)14時 オーチャードホール

「ラプソディ」
伊坂文月 荒井祐子

「シンプル・シンフォニー」
中村祥子 遅沢佑介
宮尾俊太郎 井上とも美
栗山廉 小林美奈

「アルルの女」
熊川哲也 浅川紫織

前回の眠り公演のあたりに急に決まったトリプルビル。
パンフレットも間に合わなかったのか、薄いカラー刷りのものが無料で配られました。
ラプソディ30分、シンプル20分、アルル15分で休憩込で85分の公演。短いです。
最後に、出演者全員によるスペシャルアンコールがあって、元を取った感じでした。

熊川さんが出るというせいか、ほぼ満席。ラプソディのみ、ソリスト二人のキャストが違います。
本日のラプソディは井澤さん主演の予定でしたが「芸術的理由」とかで伊坂さんにチェンジ。
井澤さんは後ろのボーイズに混じって踊っていましたが、キレがいいし、すこし音を早取りで踊るので、この作品にはピッタリなのに、なぜなのでしょう。
身長が足りなかったのか、リフトが下手だったのか…伊坂さんの方が「陽性」な感じがするからなのか…

本当の理由はわかりませんが、伊坂さんは、きちっと踊っていました。
悪くはないのですが…面白くはない、物足りない。
この作品って、もともとミーシャに振りつけられたもので、天才的なダンサーが、90%くらいの力で、遊び心をもって余裕で踊るところがいいんです。
熊川さんしかり、マックレー先輩しかり。その点、伊坂さんは上手だけれど、天才ではない。
100%で踊っている感じでいっぱいいっぱい。もっと伸びやかさや、やんちゃなイメージが欲しかったと感じました。もっとはじけて踊るには練習時間不足だったのかもしれません。

荒井さんは久しぶりに見ましたが、抒情的でニュアンスたっぷり。さすが。貫禄がついてきました。
その分、重量感(実際に重くなったということではないです。相変わらず細いです)のある踊りというか、もう少し軽やかに踊っても良かったような。矢内さんとか、白石さんとかがやっても面白いかもしれない。

ラプソディは、DVDになった熊川&都のものと、舞台でも一度見ていますが、主役の男性が空気を切り裂くように飛び出してくる衝撃が、今回はありませんでした。
Kバレエの衣装は、不思議な黄色と赤とで昔のアバンギャルドみたいな強烈なセンスなので、今回は衣装を変えるかと思いましたが、そのままでした。荒井さんの胸にお花だか原子炉マークだかみたいなのがついているのが気になるんですが…
何度か見ているので、これはこれで面白いのかもしれないと思うようになってきました。

ラプソディの後でシンプル・シンフォニーを観ると、熊川さんは、ラプソディへのオマージュとしてこの作品を振りつけたんじゃないかと思うくらい、印象が似ています。音符ひとつひとつに動きがつけられているようなところとか、頻繁に方向変換をするところとか…舞台装置も三角の組み合わせで、なんとなく似ているし。

三人のカップルがでてきますが、メインは中村祥子さんと遅沢さん。
祥子さんがそれは素晴らしくて、柔らかく伸びやかな動きだけれども、この鬼振付にぴったり合っていて、その中で自分らしさを出しているのがわかります。
出演者は全部出づっぱりで、自分の踊りがないときも横で立っている。そのとき、さすがの祥子さんでも、荒い息を隠せないような呼吸をしているのを見て、どれだけ大変な振付なんだろうと。
衣装が黒いシンプルなハイネックのチュチュなのですが、チュチュの裏に鮮やかな緑色がはいっているのがおしゃれです。タイツとポワントも黒で、タイツは少し透けるので、祥子さんの素晴らしく発達した美しい脚の筋肉がよく見えました。
Kバレエに遅沢さんがいてよかった。こんなに祥子さんをきれいに見せてくれて。彼ぐらい踊りのうまい、釣り合うパートナーがいなくては、祥子さんはKバレエに来てくれなかったかもしれません。

男性三人は祥子さんに合わせて高身長。
宮尾さんと栗山さんがユニゾンで踊るところがありましたけど、宮尾さん!!栗山さんに負けてますよ!
栗山さんの方がよっぽど踊りにキレがあります。
プリンシパルなんだから、もっと頑張って!!

最後の演目、アルルの女ですが、私は初めて見ました。
最初は御大はほとんど踊りません。うつろな目をしているだけです。
浅川さんが、彼をなんとかしようとすがったり甘えたりします。
浅川さんはつま先も美しいですし、達者ですけれど、この二人カップルには見えません。

そして、いっちゃてる感じの御大は、彼女が去ったあと、ひとりになって狂気にとらえられて…
ラストのジャンプ、舞台一周(これは飛び上がらないのでマネージュではありません、みなさん、拍手はなさらないで〜〜)窓からのダイブ…終了。

踊りとしては物足りませんし、キレも高さも熊川さんらしくない(本人比)です。
今のKバレエではもっと踊れる男子がいっぱいいます。
でも、役柄に入り込んで、物語を語る演技は素晴らしかったです。
幕が下りて、カーテンコールになっても、役柄からなかなか抜けられないらしく、笑顔にならなかったです。

最後にスペシャルアンコールで、出演者全員が出てきて、最初のラプソディから順番に演目のさわりを踊ってくれました。
熊川さんもサービスで大ジャンプを披露して、やっと笑顔になりました。

しかし、私はアルルの女より、もっときちんと踊る熊川さんが見たかったです。
たとえば、ご自身振付のカルメンより、鎖でつながれて踊るパ・ド・ドゥとか。

今の熊川さんには、これぐらいがちょうどなのでしょうか。
そうすると、もうそろそろ舞台から引退した方がいいと思います。
今回で引退でもいいかと、いや今回引退するつもりで、急にこのトリプルビルをやることにしたのかと思いました。

スペシャルアンコールを見て、これはKバレエオールスターズか?と思いましたが、よく考えてみると、今回はキャシディとか、白石さんとか、佐々部さんとか、山田蘭さんとか、出ていない人も結構いるんです。
それでは引退公演にはできないですよね。













posted by haru at 12:16| Comment(0) | TrackBack(0) | Kバレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする