2016年11月20日

「ラ・バヤデール」祥子&遅沢

2016年11月19日(土)16:30 東京文化会館

ニキヤ 中村祥子
ガムザッティ 浅川紫織
ソロル 遅沢佑介
ハイ・ブラーミン スチュアート・キャシディ
マクダヴェヤ 酒匂麗
黄金の仏像 井澤諒

熊川さんは中村祥子さんで、Kバレエの全幕レパートリーすべて映像に残すつもりなのでしょう。
白鳥、眠り、このバヤデールもシネマとして公開されるようです。
そのための録画撮りをしていたためか、コールドに至るまで気合の入った良い舞台となりました。

冒頭は苦行僧たちの踊り。ここはKバレエの男性ダンサーたちがはじけるところ。
マクダヴェヤの酒匂さんのジャンプがすごく高くて、開脚も空中のポーズが決まっていて、しょっぱなからワクワクしてきます。

ソロルの登場は、グラン・ジュッテの連続ではなかったです。海賊みたいなパッセの形を見せるジャンプ1回で登場。んーここはやはり、斜めに大きなジュッテで登場して欲しいところです。

ハイ・ブラーミンと共に僧侶たちが登場。このエキストラの僧侶が、初演時に驚いたのですが、太った中年の方々なんです。普通、こういうエキストラって、バレエ団員の下っぱがやるものですが、それだと体格的に細くて舞台に重厚感が出せないと判断したのか、体格の良いエキストラを調達(いったいどこから?)。
こんなところに熊川さんの「こだわり」を感じます。そうです。こういう小さなことの積み重ねで舞台の重みが違ってくるんです。脇役もエキストラも重要な要素です。

巫女の踊りの後、ニキヤ登場。ヴェールをかぶった祥子さん、そのままでも美しい。
この世のならぬ美しさというよりも、もう少しナチュラルで、平民の娘が取り立てられて巫女になった雰囲気。わりと普通っぽいというか。あえてのキラキラ度おさえめというか。

とても控えめで、神に仕える身という自覚があり、ハイ・ブラーミンのプロポーズもきっぱりと断る。
でも、マクダヴェヤから「ソロルが待っている」と聞かされると、突然瞳がキラッと輝いて、表情がパァーッと明るくなる。ニキヤにとって、ソロルは特別な存在だというのがよくわかりました。

ニキヤの踊りは、大変に抑制された感じで、それはこの1幕の時から、影の王国に至るまでずーっと続いていて、唯一解放されるのは、この一幕で踊るソロルとの愛のパ・ド・ドゥ。

そう言えば、この公演の前に行われた公開リハーサルで、ソロルを探すニキヤのことを、熊川さんが「Where is my lover?」ってアテレコをしていたけれども、祥子さんは、まさにそのセリフが聞こえるようなお手本のような演技でしたね。

場面が変わってラジャの屋敷。これがお前の婚約者だよとガムザッティに見せるソロルの似顔絵が、なにげに遅沢さんに似すぎていて(笑)あたりまえなことですが、ここが似ていない舞台って結構あるんです。こういう小道具も神経が行き届いているところ、いいと思います。

浅川ガムザッティが、ゴージャスな美しさでキラキラオーラ全開です。これはソロルでなくても誰でもまいってしまうだろうという位の。思わずくらっとくるソロルの気持ち、わかります。
ニキヤとガムザッティの対決シーンは、マイムからセリフが聞こえてくるようで、大変にドラマティックでした。美女二人の喧嘩、大迫力で、キッラキラのガムザと、身分の低いニキヤという対比もわかりやすかった。浅川ガムザは、生まれながらのお姫様で、自分の思い通りにならなかったことなど、一度もないという育ち方で、だから自分に歯向かっていうことを聞かないニキヤに対して、思わずムカついて「殺す!」となる流れも納得できました。

ニキヤの「殺す!」マイムで休憩かと思ったら、舞台は続いて婚約式のシーンへサクサク進みます。
度肝を抜くくらい大きな象(これは海賊の船にも匹敵するくらいの大装置です!)にソロルが乗って登場。これまた大きな仕留めた虎がお土産。

ジャンぺの踊り、にぎやかな太鼓の踊り、パ・ダクシオン、ガムザッティとソロルのパ・ド・ドゥなど、古典バリバリのクラシックから、土着的な太鼓の踊りまで、さまざまな踊りがてんこ盛りで楽しい!
杉野さんをリーダーとする太鼓の踊りは、みんなはじけておおいに盛り上がる!ボリショイにも負けていない!
バヤデールでは、きたない恰好の男子の方が見せ場が多くて踊りまくる!
例外はソロルの友人の栗山さん。シュッとして細くて長身王子。見た目は抜群です。踊りがもっともっと上手になってKバレエを背負うくらいになって欲しいです。

ガムザッティの難しいヴァリエーション、浅川さんが端正かつ華麗に踊りきって大喝采!!
浅川さんは初演時のニキヤが、とても良かった記憶がありますが、ガムザッティも素晴らしい。祥子さんと浅川さんでニキヤとガムザッティを交替して日替わり公演なんか、いいんじゃないですか?
この二人で、たとえばジゼルとミルタを交替して日替わり公演もいいと思います。

遅沢さんは、もっとできる人だと思いますが、ジャンプの高さが少し物足りない感じではありました。彼はKバレエで長いですからね〜もう7、8年?
経歴を見ると2007年入団、2013年からプリンシパルなんですね。遅沢さんという相手役がいるから祥子さんが踊れるわけであって、祥子さんのために外部からゲストを呼ぶのはKバレエらしくないし、かといって宮尾さんはいまいちなんで、もうすこし彼に頑張ってもらわなくては。

ニキヤの悲しみの踊り。ポワントでススしてからアティチュードという振付、普通はさっと脚を上げてからすぐにアテールに降りるのですが、祥子さんはポワントのまま、片脚をゆっくりとあげてアティチュードにもっていき、そのままポワントバランス。これを繰り返しました。すごい大技!
こういう大技、コジョカルとロホがやったのを見たことがあります。そういう世界でも超一流のバレリーナしかできない技です。

この悲しみの踊りが、花かごをもらってから明るい曲調になるのですが、熊川版では、花かごは直接ソロルからニキヤに渡されます。(準備したのはラジャです。ラジャが花かごに毒蛇をしかけさせたという設定です)
ラジャが花かごを「踊ってくれたお礼に渡せば」みたいな感じでソロルに渡し、ソロルがニキヤに花かごを渡し、受け取ったニキヤが喜んで明るく踊りだすという、大変納得のいく話の流れになっています。

花かごから毒蛇がでてきて噛まれたニキヤに、びっくりする様子のガムザッティ。ガムザッティが仕掛けたのではないようで、でもニキヤは「あなたがやったんでしょう」と言いますが、「そんなの知らないわ」と、まあ本当に知らないんでしょうが、悪びれず、ソロルの手を取り、あちらにいきましょうというガムザ。
それを見て、解毒薬を拒絶して死ぬニキヤ。このあたりのお話しは、ジゼルにそっくりですよね。

ニキヤの死で第一幕は終わって休憩です。第二幕は神殿の中で祈るソロル。この神殿のセット、タイムマシンの異次元空間みたいでなかなか面白いです。マクダヴェヤが水パイプをすすめて、ニキヤの幻があらわれ、それを追っていくと影の王国です。

影の王国は2段半ぐらいのつづら折り。影たちの衣装は、ちょっとかわったバルーンスカート風のチュチュで凝っています。コールドたちの見せ場の長いシーンですが、とても良く揃っていて、緊張感と一体感のある美しい踊りでした。観客もしわぶきせずに、かたずをのんで見守って、引き込まれました。こういう舞台と客席の一体感を味わえるのが、DVDでは味わえない、劇場空間ならではの良いところです。

影となったニキヤの踊りは、余計なもののないシンプルな、クリアな踊りでした。祥子さんはポワントに乗って「たゆとう」のが好きで、作品によってはよくそれをやるのですが、ここではそれは封印し、古典のエッセンスのみで魅せるような踊りでした。
ヴェールの踊りは、左右両方に回転する、とても難しいものですが、完璧でした。
そのあと、ちょっとピルエットで落ちるという祥子さんにしてはめずらしいミスがありました。まあ、たぶんもう一回の公演でもビデオ撮りをして良い方と差し替えてシネマで使うので大丈夫でしょう。
遅沢さんのソロも、だいぶ体力を使ったのか、ヘロッてるところがありました。少しお疲れなのかしら。

三人のオンブル、それぞれのヴァリエーションが素晴らしかったです。ふんわりと軽くて、体重がないようで。中村春奈さん、小林美奈さん、浅野真由香さん。このあたりのランクの女性ダンサーが徐々に育ってきているようです。

影の王国から帰ってくるとソロルは死んでいて、駆け寄ったガムザッティに白蛇が食いつく。
神殿が崩壊して(ここの舞台装置、すごくゆっくりと大岩が落ちてくるのが、CGみたいで迫力あります)すべてが無となった中に黄金の仏像が踊ります。

その後、スモークがたかれ、天国でニキヤを追いかけていくソロルで幕。

この最後の演出ですが、初演時は、たしか神殿崩壊のあと、洪水が起きて、それを水色の布で表現していたと思いますが、そこがなくなってしまいました。
あの水色の布の洪水で、「世界が浄化された」というインパクトがあるのに、改変されたのは少々がっかりです。初演時に、それで終わるのはどうかという意見があったのかと思いますが、熊川さんの秀逸なアイデアなのですから、つらぬき通して欲しいです。






















posted by haru at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | Kバレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする