2017年06月12日

ボリショイバレエ2017「白鳥の湖」ステパノワ&オフチャレンコ

2017年6月8日(木)13:00 東京文化会館

オデット/オディール ユリア・ステパノワ
ジークフリード王子 アルチョム・オフチャレンコ
悪魔ロットバルト ミハイル・クチュチコフ
道化 ゲオルギー・グーセフ
王妃(王子の母)ヴェラ・ボリセンコワ
花嫁候補たち
ハンガリー アナ・トゥラザシヴィリ
ロシア アナスタシア・デニソワ
スペイン ダリーヤ・ポチコーワ
ナポリ ブルーナ・カンタニェデ・ガッリャノーニ
ポーランド オルガ・マフチェンコワ
3羽の白鳥 オルガ・マルチェンコワ マルファ・フョードロワ アリョーナ・コワリョーワ

グリゴローヴィッチ版の白鳥は初めて見ましたが、マイムが少なく、踊りまくり。
ダンサーのレベルがとても高いので、群舞の見ごたえがあって楽しい。
衣装もゴージャスで、さすがボリショイ!!

日本に初お目見えのオフチャレンコ、「おさる」とか言われてますが、なかなかどうしてハンサムじゃないですか!メイクの効果か猿顔には全然見えませんでした。
登場してすぐのソロでは、ふわっと軽く高い、しなやかなジャンプで、心の中でワォ!と叫んだぐらい。筋肉の質が柔らかいようで、アントルラッセの後ろ脚がとても高くあがるし、ランベルセがきれい。
男性としてはやや華奢な体つきですが、ノーブルなダンサーだと思います。
もっとオレ様かと思っていたのですが、上品でした。

オデット/オディールのステパノワは、すごく体を絞っているようで、胸のあばら骨が浮いて見えるほどです。終始丁寧に踊っていましたが、緊張感が伝わってきて、なんというか見ている側としては、初主役のダンサーを応援しているような気分になりました。湖畔のシーンで、斜めに並んだ白鳥たちに沿ってアラベスクとリフトを繰り返すところで、王子のサポートがちょっとイマイチだったのか、一瞬緊張感が途切れそうになったので、「がんばれ!集中して!」と念を送っていたところ、なんとか持ち直しました。

経験不足なのか、主役としてのオーラがまだステパノワには身についておらず、踊りはすべてなんとかこなしていましたが、役に入り込むとか、自分自身の解釈とかとはほど遠い出来でした。
でもお顔は美しくて好みのタイプだし、脚のラインやプロポーションも過不足はないので、これから精進していけば立派なプリマになれそうです。
オフチャレンコも、もう少し愛ある態度で接してあげればいいのに…
彼は最初のソロが一番良くて、後半になるに従い、普通になってしまいました。お仕事モード?オデットに対する情熱、バレエに対する情熱があまり感じられなかった。

グリゴローヴィッチ版の特徴は、踊りまくるところと、ロットバルト(悪の天才)が、王子の心の闇の部分の具現化なんだそうです。私が感じたのは、通常の版だとロットバルトは実在のものとして描かれていて、舞踏会ではオディールの父として現れますが、この版では、ロットバルトが見えるのは人間では王子だけ(あとはオデット/オディール)で、他の人にはその姿は見えてないようでした。
ロットバルトは最初から、王子を破滅させる、あるいは深く傷つけるのを目的としているようで、オデットはそのための道具。むしろ自分の娘のオディールを第1幕のオデットに化けさせて、王子を誘惑させた、という解釈も成り立つような気がしました。

ラストは悲劇です。オデットを裏切った王子を一人残し、ロットバルトはオデットを連れ去ります。
呆然とした王子がひとりポツンを取り残される、寂しい幕切れ。
旧ソ連時代は、国策として、ラストはハッピーエンドにしなくてはならなかったそうで、グリゴロ版も当時はハッピーエンドでしたが、その後バッドエンドに変えられたそうです。
チャイコフスキーの音楽は、悲劇で終わるのにふさわしいと思うので、それはそれでいいのですが、それまでが賑やかしいので、なんだか不釣り合いな幕切れだと感じてしまいました。

白鳥の湖はいろいろなバージョンを見てきましたが、ボリショイのグリゴロ版は、ドラマティックさよりも、グランドバレエとしての楽しさを重視していて、それはバレエが日常的な娯楽に溶け込んでいるロシアならではの、芸能として昇華しているもの。
日本ではバレエは裏芸能界だそうで、テレビ放映もめったにないし、バレエを見ないで一生を終わる人も多い。でもロシアではバレエダンサーは、日本で言うと野球選手みたいに人気があって、テレビにもしょっちゅう出ていて知名度も高い。日本のテレビタレント並み。
その文化事情の違いを、さまざまと感じさせるようなボリショイ公演。

花嫁候補たち、スペインボーイズなど、日本ならば主役を踊れるような実力と容姿の持ち主たち。
ここぞとばかりに自己主張して100%のパフォーマンスを見せる。
面白くないわけがない。
踊っていない場面は演奏がやたら早くなる。踊りにあわせて演奏がやたら遅くなる。
こんなに遅く演奏したら音楽がわからなくなるんじゃないかってくらい。
そしてダンサーが退場する時の演奏は速いこと速いこと、ついていくのが大変。
オディールの見せ場のフェッテだけは高速演奏。めちゃめちゃ速かった。
ステパノワは最初ダブルで、あとはシングル。でもその速さについていっていた。

花嫁候補がこれでもかってくらい踊りまくる。
ハンガリー、ロシア、スペイン、ナポリ、ポーランド。ロシアのデニソワはかわいい。
スペインのポチコーワの横っ飛びがすごい。こんなお転婆な花嫁ってどうよ。
道化のグーセフはすごいテクニシャン。
群舞の踊っている間を、スパイスのように縦横無尽に駆け抜けて踊る。
ワルツなどの群舞って、それだけだとつまらなくなりがちだけれど、道化のテクニックを利かせることで、場面を引き締めている。

ドラマとしてのつじつま合わせとかにはこだわっていないみたい。
白鳥の湖のストーリーなんて、ロシアでは100%の人が知っているという前提。
普通の版と違うのは、第1幕で王妃が王子に誕生日プレゼントとして贈るのは弓ではなく、剣とキラキラの宝石がついた首飾り。だから弓をもらって湖に行こうというのではなく、なんとなくロットバルトの導きによって湖にたどりついた感じ。最初から王子を操り、一緒にシンクロして踊り、王子を罠にはめる。
ロットバルトが王子の闇の具現化だとすると、あえて堕ちるとこまで堕ちてやろうというような人間の心理ってことなのかな。
そして最後はそんなことしても何にもならない。
自分の闇にとらわれるのはむなしい、で終わるということ?

この日のソワレがザハロワ様登場で、素晴らしい演技だったらしいけど。
ザハロワのようなスーパーなプリマが出てしまうと、そこに意識が集中してしまって、他の素晴らしいダンサーたちがかすんでしまうという現象も起きるので、このマチネはボリショイのたくさんのダンサーたちを堪能するには良い公演だったと思います。











posted by haru at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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