2018年06月18日

新国立劇場バレエ「眠れる森の美女」千秋楽 木村&渡邊

2018年6月17日(日)14時 オペラパレス

オーロラ姫 木村優里
デジレ王子 渡邊峻郁
リラの精 寺田亜沙子
カラボス 渡辺与布
フロリナ 池田理沙子
青い鳥 奥村康祐

私は今の新国立バレエのプリマの中では米沢唯さんが一番好きなのですが、ライジングスターの木村さんの評判がとても良いので、オーロラ姫で見てみることにしました。

木村さんはまずほっそりとしたスタイルが抜群です。お顔もかわいいし、テクニックもあります。

私は彼女がまだ研修生の時に抜擢された白鳥でのルースカヤを見て、「今までこんな踊り方をした人はいない!」とびっくりしました。

それまで誰が踊っても少々退屈に感じていたルースカヤがとても新鮮に感じられたからです。優雅でありながら、フレッシュで。

その後入団してドンキの主役を踊った時も観に行きました。演技もなかなか良かったですが、踊りの精緻さという点では今一つでした。

オーロラ姫には、ローズ・アダージオという、テクニックの難所があります。第1幕、4人の王子の手をとってアラベスクでぐるっと回ったあと、次の王子の手を取る前に両手をアンオー(上)に挙げることを繰り返すというバランスの力を試される振付です。

優里さんは、ちょっと表情は固かったですが、すべての王子相手にきちんと両手をアンオーに挙げました。お見事です。

時々、アラベスクであげた脚の膝が下を向いているのが気になりましたが、ほぼパーフェクトに踊りました。

特に第1幕と第3幕のヴァリエーションは、コンクールなどで踊りなれていたのか、余裕もあり、第3幕で両手のひらをくるくると回すところの振りなど、実に優雅で美しかったです。

ただ、木村推しの方に怒られそうですが、時々彼女の踊りを見ていて眠くなりました。
きれいに踊っているのですが、少々退屈というか、唯さんが踊っている時のようなきりきりとするほどのテンションをかけた身体の使い方でないような気がします。

眠れる森の美女は、古典中の古典。古典バレエの真髄です。
古典バレエできっちり魅せるには、回る、ジャンプするなどのテクニック以前の基礎的なテクニックが万全でないといけないのです。
深い5番、きっちりと締め、アンドォールした脚…そのあたりがまだ優里さんには物足りなかったと思います。
その部分で魅せられるのはやはり唯さんです。

対して、このイーグリング版の特徴の一つである「目覚めのパ・ド・ドゥ」は、唯さんが踊った時は少々退屈でしたが、優里さんの踊りは凄く良かった。ここは古典バレエでなく、ネオ・クラシックな振付です。衣装もロミジュリみたいだし。

優里さんには、ガリガリ古典バレエよりも、ネオ・クラシック寄りの作品のほうが似合うのかもしれません。


さて、イーグリング版眠りですが、初演時に違和感のあった衣装ですが、ラピスラズリ・ブルーとクリーム色を基調にした色づかいは、今回3階から見た感じではなかなかまとまりがあってキレイでした。

6人の妖精もリラのお付き妖精たちもクリームで、見分けがつかないのはやはり良くないです。

6人の妖精だけでも、それぞれの色付きのチュチュにしてくれないかしら…

舞台装置はめちゃめちゃ豪華、なのは良いですが、意外と出演者が少なくて、ラストもリラの精以外のお付きとか、6人の妖精とか出てこないんですよね…せっかく舞台装置が豪華なんだから、もう少し出演者がいっぱい出てた方がさらに豪華になると思います。

カラボスの渡辺さんは、なかなか良かったです。美しかったし、マイムも良かった。

リラの精の寺田さん。あの花びらいっぱいの帽子が似合うのは、寺田さんと細田さんくらいしかいません。

6人の妖精さんたちは、抜擢キャストが多かったようですが、みなさん上手でした。
奥田さんの勇敢の精と、寺井さんの気品の精が良かったです。

伯爵夫人の本島さん、さすがにお美しいし、王子とできてる設定に納得ですよ。

渡邊王子は、すごく顔が細くて、シュッとしてました。初演時に宝石踊った時ほどの驚きはなかったですが、ジャンプも高いし、演技もそつなくこなしている印象です。

宝石の女性たちが良かったです。特に飯野さんと五月女さん。五月女さんは音楽にピタピタとはまる、切れの良い動きで目立ちました。

新国立バレエ団って、こういうソロを踊る方たちがとっても上手で、みんな見ごたえがあります。

絢子さんのオーロラも見たかったなぁ…


絢子さんが1幕、優里さんが2幕、唯さんが3幕のオーロラを踊るスペシャル・バージョン、それぞれの個性にぴったりだから、これいいと思いませんか?幕替わりキャストの眠り、やって欲しい。















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ボリショイバレエシネマ「パリの炎」

2018年4月18日 

ボリショイ・バレエ in シネマ
「パリの炎」
2018年3月4日モスクワ公演収録

ジャンヌ マルガリータ・シュライナー
ジェローム デニス・サーヴィン
フィリップ イーゴリ・ツヴィルコ
ボールガール侯爵 セミョーン・チュージン
アデリーヌ アナ・トゥラザシヴィリ

CMでバスクの踊りを見て、どうしても見たくなって、帰りが遅くなるけど観に行ったボリショイシネマ。
どうして、一日限りなのか、土日の昼間にやってくれないのか、ロイヤルバレエはもっと長く上映しているのに…
川崎で見たんですが、終わったら11時近くで、川崎アゼリア地下街がガラーンとしていて怖かったですよ。

バスクの踊りが出るまで、1幕はフランスの宮廷の劇中劇などがあります。
オフチャレンコとクレトワのパ・ド・ドゥ、長いし音楽がつまらないので寝落ちしました。

しかし、その後、ラブラブだと思われたこのカップルの男の二股が発覚し、浮気相手と船で逃亡したので、怒り狂ったクレトワが嵐の妖精を魔術で呼び寄せて船を沈めるという驚愕の展開で、クレトワ(女優)の付き添いの4人の巨女群団のダイナミックな踊りと、謎な衣装の嵐の妖精たち、そしてルイ16世のヘンテコ踊り。

このセンスがどうもわからないまま、キレッキレのエロ侯爵のチュージンの踊りを堪能しました。

宮廷のシーン、音楽が大時代的で退屈で、劇中劇もトンデモ展開の意味不明さなので、どこに面白さを見出したらよいのか困りました。

これは、あえて第2幕の民衆シーンの生き生きとした音楽や、わくわくする楽しさと対比するために、「あえて」狙っているのでしょうか。


お待ちかねのバスクの踊りは、メチャメチャ盛り上がる!!!

ラ・バヤデールの中での太鼓の踊りみたいな盛り上がり!!

ここではマルガリータはポワントでなくキャラクターシューズで出てくるのですが、振付がダンダンダンダダと音に合わせて後ろに下がり、右手と左手で交互に円を描くようにして前に出てくるという、簡単そうな踊りなので、私にもできるんじゃないか?一緒に踊ってみたい!と思うくらい、楽しそうです!

そして、ガラなどでおなじみの「パリの炎」パ・ド・ドゥは、ツヴィルコがパワー炸裂のすごい技の連発です!

マルガリータ・シュライナーも負けていない。

彼女はジュッテが男性並みに高くて、スタイルも良く堂々としてパワフルです!

まだコールドなのに大抜擢も納得です。

おなじみのパリの炎のパ・ド・ドゥになると、音楽が耳馴染みが良いせいか、それまでとは別の空気に変わります。

エンディングは、主人公がギロチンではねられた恋人アデリーヌの首を抱いて嘆くという、少々グロい味つけでした。

第1幕と第2幕がまったくテイストの違うこの作品、第1幕いらないんじゃないかとも思います。

第1幕の部分が、第2幕の民衆の生き生きとしたパワーをより際立たせるために必要なら、4分の1くらいに短くしたらいいと思います。

第2幕は楽しいし、パワー炸裂で、すごくこちらもエネルギーをもらえました。

あ〜バスクの踊り、踊ってみたい!







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東京バレエ団「セレナーデ/真夏の夜の夢」沖&フォーゲル

2018年4月30日(月・祝)15:00 東京文化会館

GWは東京文化会館でバレエホリディ!
今年からの新しい試み。

文化会館の中はバレエ少女と付き添いのお母さん
大人バレエの女性たちで盛況でした。

外でのクラスレッスンのデモ、道行く人達に大人気で、「くるくる回って凄い!」って。

バレエなんてまったく見たことない人もいるだろうから、これは布教活動としてはなかなかよろしいと思います。



メインの公演はフォーゲルをゲストに真夏の夜の夢。
その前にセレナーデ。

「セレナーデ」
上野水香、川島麻実子、中川美雪、
秋元康臣、ブラウリオ・アルバレス


セレナーデというと、新国立で2007年ごろに上演されたのが素晴らしくて記憶に残っています。

私のひいきの寺島ツインズが日替わりでジャンプの多いロシアンガールを踊って。
二人ともジャンプの高さでは定評があったので。(特にまゆみさんの方は男性なみ)

それを比べてしまうと、少しロシアンガールが弱かったです。
コールドはたしかに揃っているのだけれども、川島&秋元ペア以外は物足りない。
水香さんがアラベスクの足首をサポートされたままぐるーと回る所も、もっと硬質にやって欲しい。

あと、決定的に「これは違う!」と感じたのはヘアスタイル。

バランシンは夜会巻きがデフォではないのですか?
ふつうのお団子だったですけど…
ここは夜会巻きでお願いします!!

ステキな瞬間もありましたよ。
秋元さんと川島さんが組んで踊るのは、まさに奇跡のよう。
川島さんが羽根でも生えているか、まったく体重がないかのようにふわっと宙を舞うのを観るのは至福の時。
この二人はすばらしい。ポワントも無音。



「真夏の夜の夢」
タイターニア: 沖香菜子
オベロン:フリーでマン・フォーゲル
パック: 宮川新大


真夏の夜の夢は、なぜフォーゲルが必要だったのかよくわからず。
フォーゲルでなくても秋元さんで良かったのではないかと思います。

沖さんとだいぶ身長差があって、カップルとして見えない感じですし、ケミストリーも起こっていないし。

横に抱えるようなリフトがあるから、沖さんだと軽くてやりやすいのかもしれないけれど。

フォーゲルって、踊りが少しもっさりしているんですよ。

その点、パックの宮川さんは、軽やかでキレッキレで素晴らしかったです。
彼のジャンプと踊りが目に刺激的で楽しかった。

沖さんのハーミアは難しい体勢からのパンシェとかあるし、フォーゲルさんとの身長差もあって大変そうだけれど、彼女は柔軟性が飛びぬけているのでポーズがキレイに決まっていました。
アクトの部分の表情も良かったです。





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2018年03月26日

東京シティ・バレエ団創立50周年記念公演『白鳥の湖』〜大いなる愛の讃歌〜

2018年3月6日(火)18:30 東京文化会館
オデット・オディール: ヤーナ・サレンコ
ジークフリード王子: ディヌ・タマズラカル
演出・振付:石田種生
指揮:大野和士 演奏:東京都交響楽団

白鳥の湖が日本で初演された時の、藤田嗣二の美術を再現したことで話題になったこの公演。

当初キャスティングされていたヤーナ・サレンコがパリオペラ座のミリアム・ウルド・ブラームに変更になると発表があり、その後またヤーナにキャストが戻るという経緯がありました。

ミリアムが来るというので喜んだパリオペファンがチケットを買った後でキャストの変更は、パリオペをがっつり抑えているNB○さんの横やりではないかとか憶測が流れました。

うち以外の公演に出たら、今年の世界バレフェスに呼んでやらないよと脅されたとかいう噂。

大御所が弱いものいじめをするような、酷いやり口ですよ。

そんなことしなくて、みんなで日本のバレエ界を盛り立てていけばいいのに。

シティの公演でミリアムが評判になれば、バレフェスでもう一度ミリアムを観たいっていう人もいるでしょうに。


私は繊細で強靭なテクニックの持ち主ヤーナも好きですが、第1幕のふわっとしたパステルカラーの舞台を見たら、きりっとしたヤーナよりもふんわりとした雰囲気のミリアムの方がこの舞台には似合うのではと感じました。

第1幕、藤田の舞台装置は、脇袖に森が重なるようなセットに、パステルカラーの自然の風景が描かれます。
拍子抜けするほど、白鳥の湖のストーリーに沿った、くせのない美術でした。

そうですよね、考えてみれば日本で初めての白鳥の舞台。

現代に新しく制作するのならば、他でやっていないものとか、斬新なデザインとかに走るのでしょうが、初めてなのですから、あくまでオーソドックスで奇をてらわないもの。ダンサーを生かす、控えめな色彩。

衣装は新しく制作したものなのでしょうが、少しトーンを落とした美しいパステルカラーのピンクと、薄い若草色の二色があって、コールドが隊列を変えるたびに春の野原でスイトピーが咲いているようできれいでした。

第1幕のコールドバレエは、スタンダードな演出で、女性ダンサーはきれいで良く揃っていて、男性ダンサーもそれなりの人数が出てきて、長身の人もいたし、王子の誕生日前日の楽しい雰囲気が出ていました。

パ・ド・トロワはこっくりとした濃いめのオレンジ茶色の衣装で、コールドからは目立ちます。踊りはわりとやさしめの振付でした。

新国立劇場バレエの牧版白鳥ばっかり見ていたので、どうしても比較をしてしまうのですが、新国立はスリリングな振付で、女性ふたりが踊りを競いあうのですが、シティのパ・ド・ドロワは仲良しの踊りという感じでした。

シティは初めて見たのですが、コールドの男性もなかなかスタイルの良い方が多くて、王子のタマズラカルさんよりもスタイルいいんじゃないかという方もいました。

ディヌさんは、演技は相応なのですが、背があまり高くなくて、あまり王子らしく目立ちません。
登場してきた時も、パッとは気づかない程度に埋没してました。
この役がはまっているとは言えないですが、きれいに5番に入るし、踊りはすっきりとしていました。

第1幕〜第3幕までの演出は、新国立劇場の牧版(キーロフ版を元にしている)に似ていますが、第4幕がとても個性的な演出になっています。

そしてこの公演では、オケと指揮者が、普段バレエのピットに入らない、コンサート専門(?)らしく、音楽がかなり個性的に鳴ります。

まず、ほんのわずかなことなのですが、全体的にテンポが速い。
普通のバレエ公演では、バレエ指揮者が踊りをみながら、踊りやすいようにテンポをゆっくりにしたり、拍手やレべランスのタイミングを入れるために、曲を途中でストップさせたりします。

今回の指揮者は、踊りに合わせてゆっくりにするということをあまりせず、いくつかの場面ではダンサーが踊りにくそうに見えることがありました。

いちばんいけなかったのは、第3幕で、オデットが王子に愛を誓わせて、そこで音楽がダダダダダと高揚してジャーン!だまされた〜〜!!となるところが、王子のマイムのタイミングより早くなってしまったことです。
マイムで誓うより前にダダダ…ダマサレタ〜〜っとなってしまってました。
あれはいくらなんでも、ドラマの肝なのですから、合わせなくてはいけない所でしょう。

それ以外の部分では、いろいろ聞いていて新鮮なところもありました。
第2幕のオデットのソロでは、普通のダンサーなら音に遅れてしまうところを、テクニシャンのヤーナ・サレンコが絶妙な音はめをして踊ったことに感心しましたし、ヴァイオリンのソロも、いつも聞いている音楽と比べて、音程(ピッチ)が高いのか、すごく強烈な印象を受けました。

サレンコは、王子とのケミストリーは感じられませんでしたが、特にオデットでは、鳥肌がたつくらいに美しいポーズの瞬間が何度もありました。また、この速いテンポでも、当代一流のプリマは、黒鳥のフェッテを三回転を多用しながら、ぴったりと音楽に合わせるという超絶技巧で魅せてくれました。さすがサレンコ!!

演出で特筆すべきは、第4幕、王子に裏切られたオデットと、許しを求める王子のデュエットに使われるのが、「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」として知られている曲なのです。

もともと白鳥の湖の中で使われていたそうで、ブルメイステル版でも第3幕のオディールと王子のパ・ド・ドゥで使われていますが、石田版では、第4幕の白鳥と王子の踊りに使われています。

この曲がすがすがしい美しさに満ちているので、ロットバルトの呪いを解くことができなかった王子とオデットの悲しみ、そして二人の愛を表現するのにぴったり…そう、まさに愛の讃歌といえる曲なんです。

この曲をこの場面で使用したのは、素晴らしいアイデアでした。

どんどんと曲が高揚していき、それは王子とオデットの愛も高まっていくことを表現し、その愛の力が世界を変え、ロットバルトの呪いを解いたという結末に無理なくつながっていく演出になっていました。

第2幕と第4幕、白鳥のコールドのフォーメーションの変化は工夫があって面白かったです。
これは上の階から見ていた方が良くわかることですけれど。

ほぼ満席の観客は、シニア男性も多く、バレエ好きの他に音楽ファンも来ているようでした。

バレエの舞台で、音楽の方を重視して演奏していることって、めったにないです。

私が観た舞台では、2014年に指揮者の西本智美さんが創ったイルミナートバレエの白鳥が、音楽を大切にしながら、バレエとして踊れるぎりぎりのラインを目指していました。

今回は、第4幕の前にたっぷり2曲オケだけで聴かせてくれるなど、音楽の素晴らしさが際立っていましたので、もうちょっとだけバレエの踊りやすさにも配慮してくれたら良かったなと思いました。

2018年は白鳥の湖がたくさん上演される当たり年です。
この東京シティ・バレエ団のあとに、Kバレエ、新国立劇場バレエ、東京バレエ、そしてマリインスキーバレエの来日公演でも白鳥の湖が上演されるので、見比べて楽しもうと思っております。



















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2017年11月01日

新国立劇場バレエ「くるみ割り人形」米沢&井澤

2017年10月29日(日)14時 オペラパレス

クララ 米沢唯
王子 井澤駿
ねずみの王様 渡邊峻郁

ウェイン・イーグリング氏による改訂版。

クララは子役が演じるが、彼女が夢を見るところからは大人のダンサーが演じる。
王子はドロッセルマイヤーの甥とくるみ割り人形と王子の三役を演じる。

牧版のくるみは、オープニングが現代の新宿で、安っぽいビニール傘をさした人たちが出てくるのが興ざめだし、ラストにサンタクロースが出てくるのも不自然だった。

アラビアにエジプトのピラミッドとスフィンクスが出てくるのも変だった。
しかし、それ以外は構成や振付も、まあまあ普通のくるみであった。

今回の改訂版は、オープニングはヨーロッパの街で、運河が凍っていてアイススケートをする人々が出てくる。
プログラムの「スケートをする人々」というのを見て、アシュトンのレ・パルティヌールが思い浮かんだのだが、この舞台では、ローラースニーカーを履いたダンサーが本当に滑っていた。

スケートをするというアイディアは初めてみたので面白かった。
しかし、その横ではクララの家にやってくる客人の道行シーンもあるが、いったい今は昼なのか夜なのか。

スケートをして遊ぶのは、昼間のうちのような気がするし、パーティが始まるのは夕方だと思うし。

音楽の使い方も少し違う。場面の入れ込み方がずれているので、いつものくるみとの違和感を感じる。

聖ニコラウスというおじいさんが出てきて(サンタクロース?)、リストを見ながら子供たちにプレゼントを渡す。
フリッツのプレゼントがないので、フリッツが抗議をしてプレゼントをもらう。

クララにもプレゼントがなくて、「私にはプレゼントがない」とグスグス泣いているのに、お父さんもお母さんも誰も気づかないのは酷いのではないか。

ドロッセルマイヤーがそれに気づいているという風でもなかったのに、あとでくるみ割り人形をクララにくれた。

クララの姉という役があるのに、クララと仲が良いようにも描いていない。

この家族は冷たい家族。

クララが寝る時にくるみ割り人形を部屋に持っていこうとしたら、お母さんに止められてクローゼットの中に入れた。それをネズミが夜中にクララのベッドの下に持ってきた。

なのに、パーティの次の朝?にはベッドの下にはなかった。

夢から覚めたクララとフリッツが玄関へ行くと、ドロッセルマイヤーと甥が帰るところだった。
眼が覚めたのは朝?だとしたら、ドロッセルマイヤーは一晩泊ったの?

雪が降ってるのに、ネグリジェのクララと半そで下着のフリッツは玄関の外でドロッセルマイヤーをお見送りして寒くないの?

いろいろ整合性のないところが気になってしまいました。

スケートをするとか、クララがお菓子の国に行くのに気球を使うのは初めてみたし、花のワルツがポピーの花でピンクでなくオレンジ色というのもちょっとびっくりしました。

悪くはないのだけれど、なんだか「どうだ、新しいだろう、すごいアイディアだろう」ってドヤ顔で言われているような感じです。

振付についても、アラビアでのリフトは、男性四人がお神輿みたいに女性を担いだり、ほとんど女性が空中移動することばっかり目につき、踊りというよりも組体操みたい。
中国も、リフトが多い。せっかく上手なダンサーが踊っているのだから、もっと踊るところが見たい。

雪は、ウェーブもあって、マスゲームみたい。

この振付も「どうだ、すごい振付だろう」とドヤ顔。

くるみ割り人形のような、スタンダード古典作品だと、改訂版を作る時に、新しいことやびっくりするようなアイディアを入れて目新しさを狙うというのはわかりますよ。

でも、なぜ「くるみ割り人形」というバレエがこれほど愛されているのか。

それをよく理解して創って欲しい。

変えるべきところと、絶対に変えてはいけないところ。

「くるみ割り人形」のエッセンス。

楽しいパーティ、家族の愛、ちょっとした冒険、夢の世界。

たとえば、雪のシーンに、クララとくるみ割りを追いかけてくるネズミの王様とのコントが入りますが、これは余計なものです。

雪のシーンでは、美しいコールドバレエを堪能することに集中したいので邪魔です。

ただ、グラン・パ・ド・ドゥは振付もあまり変えていないスタンダードに近いものだったので、そこは良かったです。

米沢唯さんの繊細で格調高く、絶妙に音楽をまとうような踊りが素晴らしかったです。

井澤さんも、イケメンオーラ全開で、登場シーンから軍服が似合っていました。

オレンジポピーの花のワルツも、リードの細田&寺田コンビが美しくて、これはこれでなかなかステキでした。

外国の人に大金払って改訂版作らなくても、深川秀夫さんとか、日本人に作ってもらえばいいじゃないかと思うし、私は昔のキーロフ版が好きなので、あれをベースに大原さんが、舞台装置と衣装をチャチャッと手を加えるくらいで、スタンダードな演出でいいじゃないかと思うんです。
新国立のダンサーならば、むしろその方が素晴らしく見せられるし。


くるみ割り人形改訂版で良くできていると思うのは熊川版で、チャイコフスキーとプティパに対するリスペクトがあって、しかもお話はオリジナルストーリーになっている。
熊川さんのバレエ愛が感じられる作品です。

それに比べると…イーグリングさんは、音楽へのリスペクトよりも、自分のアイデアをドヤ顔で…もうやめましょう。










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2017年10月09日

ザハロワ&レーピン「トランスシベリア芸術祭 パ・ド・ドウfor Toes & Fingers」

2017年9月29日(金)19時 オーチャードホール

ヴァイオリン演奏とバレエを交互に6演目づつ。

バレエの6演目のうち4演目は演奏もあって、ザハロワとレーピンのヴァイオリンの両方を堪能できる贅沢な公演でした。

ヴァイオリンの演目も、軽めのものを選んでいたし、ザハロワのバレエも、純クラシックから、コンテンポラリーまで、色々な味わいの作品で、ザハロワを多面的に観ることができました。

最後は、レーピンも一緒におどけて踊って、まさに二人のパ・ド・ドゥ。

ホンワカした幸せ夫婦のハッピーな空気が伝わってきました。

ザハロワは、12年ぐらい前に新国立劇場のゲストで何度か観たのですが、そのころは若くて顔がふっくらしていたけれど、今は痩せて鶏ガラのようです。

咲き誇る花のような昔のザハロワはクラクラしそうなほど艶やかでしたが、今は修験者みたいです。

しかし、やはりザハロワの脚は素晴らしい。

その脚が自在に空間を動くのを見ているだけで、この上ない幸せを感じるのです。

しなった膝と高い甲、こんな美しい曲線の脚の持ち主は、300年に一人ぐらいかもしれません。



パガニーニ:“ヴェネツィアの謝肉祭”による変奏曲 op.10 ☆演奏のみ

バレエ「ライモンダ」より“グラン・アダージョ”
スヴェトラーナ・ザハーロワ、デニス・ロヂキン

キッラキラのスワロスキーがいっぱいついた白い衣装で、第1幕 夢の場面。

美しいザハロワの姫オーラ全開でうっとり。


チャイコフスキー:「エフゲニー・オネーギン」より“レンスキーのアリア”☆演奏のみ

バレエ:「プラス・マイナス・ゼロ」振付:ウラジーミル・ヴァルナヴァ
スヴェトラーナ・ザハーロワ、ウラジーミル・ヴァルナヴァ

男性は前をはだけたシャツにズボン、ザハロワはTシャツに練習用っぽいチュチュボン(長め)で髪は後ろに三つ編み。

鋭角的でスピーディな動きで、ザハロワの体幹の強さを感じます。

ギエムっぽい。


ラヴェル:「ツィガーヌ」☆演奏のみ

バレエ:「レヴェレーション」振付:平山素子 *録音音源
スヴェトラーナ・ザハーロワ

薄いグレーのネオクラシック風ロングドレス。

ドレスから除く素足の甲のラインの美しいこと!

シンドラーのリストの音楽で、物哀しさがありながらもフェミニン。

ザハロワの個性にとても似合っている。


ワックスマン:カルメン幻想曲 ☆演奏のみ


バレエ:「ヘンデル・プロジェクト」振付:マウロ・ビゴンゼッティ *録音音源
スヴェトラーナ・ザハーロワ、デニス・ロヂキン

白いボディに後ろだけのチュチュと思ったのは、立方体の枠をたくさん重ねた不思議衣装。

トウシューズなのでザハロワの美脚を存分に堪能できました。

6時のポーズのやや変形で180度開脚したままのプロムナードがすごい。


チャイコフスキー:「ワルツ・スケルツォ op.34」☆演奏のみ


バレエ:「瀕死の白鳥」
スヴェトラーナ・ザハーロワ

レーピンのヴァイオリンとハープのみの演奏がステキでした。

ザハロワは意外とあっさりな踊り方だったけど、みんな待っていた白鳥だから拍手が鳴りやまず。


ポンセ:「エストレリータ」☆演奏のみ

題名のない音楽会で、レーピンさんがよくアンコールで弾く曲だと言っていたけど、かわいらしくてこの曲大好きです。演奏の中で一番良かった。


バレエ:「レ・リュタン」より 振付:ヨハン・コボー
スヴェトラーナ・ザハーロワ、ミハイル・ロブーヒン、ドミトリー・ザグレービン

レーピンさんもおどけて踊るんだけど、脚が上がって意外とイケてました。

ザハロワに特訓うけたのかな?

とっても楽しいハッピーナンバー。

レ・リュタンの完成度としては、コジョカルガラの衝撃に軍配があがるのだけれど、
この夫婦のホンワカした愛が観客をハッピーにしてくれました。

ザハロワさんは、いい旦那様と巡り合って良かったですね💓



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2017年10月07日

ミュージカル「ビリーエリオット」

2017年9月21日(木)17:45 ACTシアター

ビリー 加藤航世
ウィルキンソン先生 島田歌穂
お父さん 益岡徹
オールダービリー 栗山廉
マイケル 古賀瑠
スモールボーイ 菊池凛人

ビリーエリオットの評判がえらくいいので、たまらなく見たくなってしまい、

5人のビリーのうち誰を見ようかと悩みまくった結果、

バレエが上手くない子だとがっかりしそうなので、

一番バレエ上手な加藤君の日にしました。


ミュージカルは昔から好きで、

特に好きだったのが、50年代ハリウッドミュージカルのフレッド・アステア、

60年代〜のボブ・フォッシーの作品(キャバレーとか)、

80年代のアンドリューロイドウェーバーの作品など…


20年ぶりくらいに生のミュージカルを見たのですが、

やられました。

子供たちのエネルギーに。

主役のビリーは長期育成型オーディションで、

このミュージカルに必要なバレエ、タップ、アクロバット、歌、演技などを

300日間にわたって習得してきた子たちで、いわゆる子役タレントではありません。


脇の子役たちは、おそらく小さい頃から俳優事務所に所属している子供タレントで、

舞台経験が豊富なようで、

女の子たちはかなりはっちゃけていたし、

特にマイケル役の古賀瑠くんは、演技が自然で生き生きとしていて、

プロフェッショナルな俳優でした。

彼らに比べると、加藤ビリーはフレッシュで、

最初は固くて、「演技してる」と感じられた時もあるけれど、

ピンと伸びた膝とつま先、スッとした立ち姿はバレエの素養のたまもの。

歌は想像以上に上手で、歌詞がとても聞き取りやすかった。


表情がくるくるかわる瑠マイケルと違って、

加藤ビリーはちょっと陰りのあるような表情があまり変化がみえない。

目が小さいのかな。

そのかわりに動きで十分語っていたけど。


オールダービリーの栗山さんとの、ドリームのシーンがすごく美しかった。

栗山さん、子供の加藤くんよりも顔がちっちゃいし、痩せてる〜

フライングの加藤ビリーの手足がピンと伸びてきれいだった。


このミュージカルは、サッチャー時代の炭鉱労働者のストライキと

バレエダンサーを目指すビリーの物語を綾のように交錯させているのだけれども、

そういう事があったという事実すら良く知らなかったので、

労働者たちが団結して闘おう!と歌っているシーンは、

レ・ミゼラブルの学生たちの砦のパクリかなと思ってしまった。

大きな人形のサッチャーや、巨大なドレスが踊る演出は面白かったけど、

そういう社会現象をからめて描かなくても、

バレエダンサーになるのをお父さんに反対される男の子の話というだけで十分ではなかったかなとも思った。


加藤航世くん。

普通のバレエボーイズだったら、こんなに熱狂的な満席のホールで、

歓声の飛び交うスタンディングオベーションを受けるような経験はないだろうに、

まだ14才で、20回以上もこんなすごい体験をするなんて。

バレエの世界では、ダンサーは舞台本番でしか成長しない、とよく言うけれど、

その本番の中でもスペシャルな本番をこれだけ経験したなら、

どれだけ成長して、将来どんなバレエダンサーになるのか。


それを想像するだけでも、わくわくします。



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2017年09月04日

バレエ・アステラス2017

2017年7月22日(土)15:00 オペラパレス
第1部
「シンフォニエッタ」新国立劇場バレエ研修所
牧阿佐美先生がバレエ研修所の為に作った作品で、衣装・振り付けともにネオ・クラシックなアブストラクトバレエ。明るくスピーディな流れの中で、群舞や2,3人の踊りが次から次へと入れ変わります。研修所のオリジナル作品として何度か見ています。
私は8期の研修生たちが大好きで将来有望だと思っていたのに、彼女たちが誰一人として新国立劇場に残っていない理不尽さにがっかりして、それ以来モチベーションが下がり最近は研修所の発表会も観に行ってません。
そんなわけで、あまり期待して見ていませんでしたが、ひとり他の方と比べて太目に見えるダンサーが気になったので調べたらパーキンソン赤城さんでした。日本人の子がうすっぺらな体型すぎるので、その中に入ると目立つのですが、胴体がしっかりした外人体型なのです。音楽的な踊りをする方で、魅力的なダンサーになれるのではないかと思いました。

「エスメラルダ」よりグラン・パ・ド・ドゥ 
上草吉子&ルーゼンバーグ・サンタナ(カナダロイヤル ウィニペグバレエ)
上草さんも胴体がしっかりした体型。ピルエットは三回転がデフォのテクニシャン。すごく堂々としていて、観客を楽しませることを知っている。
タンバリンを持ったヴァリエーションは、オケと合わないというか、合わせづらいのか?
サンタナさんは小顔でスタイルいいけれども少し踊りはゆるい感じでした。

「海賊」第2幕よりグラン・パ・ド・ドゥ
中島麻美&大巻雄矢 (スロヴェニア国立マリボル歌劇場)
中島さんは細くてたおやかでいながら、軸はしっかりして強靭。好きなタイプのダンサーです。
衣装がズボンタイプだったのですが、もっと華やかなチュチュの方が見栄えがしたと思います。
女性的で優美でありながら芯の強さを感じさせるようなステキな踊り。
大巻さんはレヴェランスの時も常に「奴隷のアリ」を演じていて、けれん味たっぷりでテクニックもあって、超絶技巧で会場を沸かせていました。

「Still of King」
高野陽年(ジョージア国立バレエ)
高野さんはスタイルがよく、美しい筋肉。まずその体つきにほれぼれ致しました。
このコンテンポラリーはヨルマ・エロがマルセロ・ゴメスに振り付けたものだそうですが、とても達者に踊り、もっといろいろな踊りを見てみたいと思わせる、素敵なダンサーでした。

「ドン・キホーテ」第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ
桑原万奈&金指承太郎(ロシア国立クラスノヤルスクオペラバレエ劇場)
桑原さんは、大阪っぽい押し出しの強いバレエ表現が特徴ですが、足先の表現ひとつでも大きな劇場全体に伝わってくるのが素晴らしいと思います。こういう「伝わる表現力」があるから海外で活躍できるのでしょう。
金指さんは、なかなかのテクニシャンで、昔の熊川さんがやっていたような超絶技巧のジャンプやピルエットを披露していましたが、かなり控えめなので、桑原さんとプラスマイナスでちょうど良いのかもしれません。

第2部
「人形の精」組曲
ワガノワ記念ロシア・アカデミー生
女子6人、男子2人ですが、みんなキレイで上手!!
特に人形の精を踊った7年生のマリア・ホーレワが、信じられないくらい甲が高くて、美しい脚で、その脚をずっと見ていたいと思うほど。この子は将来有望です。
ピエロをやった男の子ふたりは9年生(パーベル・ミヘーエワとニコライ・ヴォロビョーフ)ですが、背も高いしコミカルな演技も上手でした。
その他の子たちも目の保養で、さすがワガノワ!!
若くって美しいって素晴らしい!次のワガノワ公演はぜひ観に行きたいと思います。

「ソワレ・ド・バレエ」
池田理沙子&井澤駿(新国立劇場バレエ)
バレエ・アステラスの主旨として、海外で活躍する若手日本人ダンサーの応援というのなら、もっと海外組をたくさん出演させてあげればいいと思うんです。だってそれこそ色々な国で活躍している日本人ダンサー、いっぱいいるんですから、新国立の推しを無理やりねじ込まなくても…
この演目はディズニープリンセスっぽくて大好きなのですが、ついつい「唯さんはこう踊ってた」とか重ねて見てしまいます。池田さんの踊りには惹かれるところはないのですが、振付を踊りこなすテクニックはあるんですね。ワガノワの生徒の後だと、プロフェッショナルな感じもしますし、この順番は正解です。

「Multiplicity」よりチェロのパ・ド・ドウ
菅野芙里奈&リシャト・ユルバリゾフ(ベルリン国立バレエ)
チェロ 上村文乃
女性をチェロに見立てて、男性が弾くという趣向のナチョ・ドゥアトの作品
その奥に表現しているものを考えると少しエロティックですが、とても美しいし、音楽にもぴったり合っています。菅野さんはとても身体能力が高いダンサーで、すべての瞬間が絵になるようでした。

「ダイアナとアクティオン」
寺田翠&大川航矢(タタールスタン国立ロシアカザン歌劇場)
今回のアステラスの一押し、お目当て!!
モスクワ国際コンクールで一躍大ニュースになったお二人。このペアが出演する効果か客席はほぼ満員。
私も大川さんが2011年にローザンヌに出た時から注目していたので、お二人の快挙は嬉しい。
モスクワ国際コンクールのアーカイブは何度もリピートして見たので、大川さんがかっ飛んでくる登場シーンとかアダージオでふたりが耳に手をやりながら後ずさりするところとか、生で見れて興奮しました。
大川さんは熊川さんばりのジャンプ力とテクニックがあるのに、オレ様でなくて、どこかホンワカしているのが良いです。
コンクールの時よりは少々ジャンプが低めかなとも感じましたが、レベルが高く、まさにプロフェッショナルなお二人の踊りを堪能しました。

「眠れる森の美女」第3幕より
影山茉以&ダビッド・チェンツェミエック(ポーランド国立歌劇場バレエ)
とても端正で美しいオーロラで、特にソロの表情が幸福感があふれてくるようで良かったです。
大川ペアの後でもまったくひけをとらず、この正統派クラシックを格調高くきっちりと踊り、トリにふさわしいパフォーマンスでした。

フィナーレ
「バレエの情景」より
出演者全員が代わるがわる出てきて、さわりの部分を踊ってくれたり、リフトを披露したりしました。
こういうフィナーレは楽しいです。


10演目で、そのうち海外で活躍するダンサーは7組です。少なすぎやしませんか。
ただ、すべてオーケストラがつくのは贅沢で、凄いことです。
全体の時間は短めなので、もう少し長くして、せめて12組くらい海外組にしてはどうなのでしょうか。
パ・ド・ドウじゃなくてもヴァリエーションだけでもいいような気がします。
と言ってもクオリティに差があるし、知名度がないと集客力が弱い。
今回は大川効果で満席でしたが、いつもはもっと空席がある公演です。
でも助成金が出ているのだし、「海外で活躍しているダンサー」が、日本の大劇場で踊れる機会ってあまりないですし、故郷の知り合いにも見てもらえるし…企画としては素晴らしいので、もっとたくさんのダンサーに出演の機会を与えて欲しい、それが日本のバレエ界のトップを走っている≪いちおう国立》の、新国立劇場の役割ではないかと思います。


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2017年06月14日

横浜バレエフェスティバル2017 初日

2017年6月9日(金)19時 神奈川県民ホール
第1部フレッシャーズ・ガラ
ドンキホーテ バジルのソロ 松浦祐磨
ラ・バヤデール 影のソリスト第1ヴァリエーション 大岩詩依
SOLI-TER 振付ジョゼ・マルティネズ オーギュスト・パライエ
ラ・バヤデール ソロルのヴァリエーション 二山治雄
Mononoke 振付シディ・ラルビ・シェルカウイ 加藤三希央
Les Brillants ジュンヌバレエYOKOHAMA 振付 遠藤康行 ピアノ 蛭崎あゆみ

第2部ワールドプレミアム
スターズ&ストライプス 二山治雄 竹田仁美
アラジン 飯島望未 八幡顕光
Que Seraより〜 柳本の場合 〜*+81新作 振付 柳本雅寛
ジゼル 倉永美沙 清水健太
ジュリエットとロミオより 振付マッツ・エック 湯浅永麻 アントン・ヴァルドヴァウワー
眠れる森の美女 近藤亜香 チェンウ・グオ

横浜バレエフェスティバルは芸術監督の遠藤康行さんが中心となって始められた手作り感あふれる企画で、今回で三年目。箱が大きくなり、二日間というのもチャレンジング。
オーディションやワークショップを開催して若人の育成も行い、日本ではなかなか見られないコンテの新作を上演したりと、商業主義ではできないことをしていて素晴らしいです。
集客が心配ですが、客層はやはりバレエを習っている人が多いようです。
バレエファンの間で注目されている二山君とか、久しぶりの八幡さんのアラジンとか、倉永さんのジゼルとかがお目あてでありましたが、終わってみて一番印象に残ったのは若いダンサーたちでした。
特にトップバッターの松浦祐磨さん。中学生2年生とはとても思えない落ち着きぶりと、確かなテクニック、身長も170以上ありそうだったし、このままぐんぐんと良き成長をとげて頂ければ、すごいダンサーになりそうです。
遠藤さんがロゼラハイタワーで見て気に入って連れてきたオーギュスト・バライエは身長2メートルちかくあるとか。コンテは上手でした。クラシックはどうなのか、わかりませんが、今やバレリーナの巨大化が進むにつれ、身長の高い男性ダンサーは世界的に不足ぎみなので、彼の将来も気になります。これをきっかけに日本に来たらどうでしょうね。クラシックが踊れてサポートができれば、新国立劇場とか、Kバレエとかで採用してもらえそう。
オーディションで選ばれたジュンヌバレエYOKOHAMAのメンバー(川本真寧 縄田花怜 中島耀 中村りず 
竹内渚夏 丸山萌 亥子千聖 生方隆之介)たちも、素直な踊りで身体能力も高く、すがすがしかったです。
二山さんは、一時より太ももがすこし細くなった?パリオペラ座での経験は役に立ったのでしょうか。以前ほど開脚を強調した踊りではなくなっていたようです。
ソロルのヴァリエーションは良かったですが、スターズ・アンド…の衣装、特にブーツは、脚の短い日本人体型には苦しいと思います。壊滅的にスタイルが悪く見える。彼の今後の去就が気になります。日本のバレエファンに注目されているのだから、Kバレエとかに入ったらどうなんでしょうか。身長が高くないから相手役を選ぶけど、みんなが見たいと思うダンサーなのだから。

アラジンを踊る八幡さんを見れて良かった…八幡さんはもう新国立退団するっていう噂がありますし、このパドドゥは男性が踊るところが少ないけれども、八幡さん、踊りたかったのかな…と感じました。彼の代表作ですしね。お相手の飯島望未さんは初めて見たのですが、清楚でたおやか、それでいて芯の強さも感じられるようなステキなバレリーナで、八幡さんよりもむしろ飯島さんに魅了されました。アラジンはいろんなダンサーで何度も見ましたが、新国立劇場で踊られるのと少しニュアンスが違っていて、「ああ、こんな風に踊るのもあるんだなぁ」と感心しました。飯島さんの作る世界が美しかったです。

柳本さんの作品はいつも笑わせてくれるのですが、今回は幕があくと、アラジンの帽子がポツンと置いてあって、それをネタにして踊り、途中で八幡さんが回収に来て、面白かった。他のダンサーとのコラボレーションが、普通のガラとは違うところ。会場もこの作品が一番受けていた。

そのお笑いの雰囲気が残る会場を一気にジゼルの世界に変えてしまった倉永&清水組はさすがでした。まるで体重がないか空気のようにふわふわとただようジゼル、清水さんの職人技のサポートが光っていました。

マッツ・エックのジュリエットとロミオ。2014年に木田真理子さんがこの作品を踊ってブノワ賞を受賞したことが話題になりました。
ジュリエットもロミオも、簡素でシンプルな衣装で、クラシックバレエとはまったく違うアプローチで踊ります。踊るというよりは、じゃれる。キスする寸前まで近づいて、離れる。子猫のようにくっついたり、追いかけたり。好きな人といるだけで、幸せ…っていう気持ちがあふれてくるような振付でした。

ラストの作品、眠れる森の美女は、オーストラリアバレエの二人が格調高く踊りました。

この公演、オープニングがあって、それぞれのダンサーたちがポーズをとって幕開きなのですが、フィナーレも遠藤さんの振付で、「テーマとヴァリエーション」の音楽に載せて、ダンサーが総出演します。
このフィナーレが良かったです!ジュンヌバレエのダンサーが客席に降りてきたりもあって盛り上がりました。お得感がありました。

会場が大きすぎるので、もう少しアットホームな大きさの劇場でやった方がいいのではないかという事と、私の大好きな米沢唯さんが今回は出演されていなかったのが残念でしたが、来年の企画にも期待しています。







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2017年06月12日

ボリショイバレエ2017「白鳥の湖」ステパノワ&オフチャレンコ

2017年6月8日(木)13:00 東京文化会館

オデット/オディール ユリア・ステパノワ
ジークフリード王子 アルチョム・オフチャレンコ
悪魔ロットバルト ミハイル・クチュチコフ
道化 ゲオルギー・グーセフ
王妃(王子の母)ヴェラ・ボリセンコワ
花嫁候補たち
ハンガリー アナ・トゥラザシヴィリ
ロシア アナスタシア・デニソワ
スペイン ダリーヤ・ポチコーワ
ナポリ ブルーナ・カンタニェデ・ガッリャノーニ
ポーランド オルガ・マフチェンコワ
3羽の白鳥 オルガ・マルチェンコワ マルファ・フョードロワ アリョーナ・コワリョーワ

グリゴローヴィッチ版の白鳥は初めて見ましたが、マイムが少なく、踊りまくり。
ダンサーのレベルがとても高いので、群舞の見ごたえがあって楽しい。
衣装もゴージャスで、さすがボリショイ!!

日本に初お目見えのオフチャレンコ、「おさる」とか言われてますが、なかなかどうしてハンサムじゃないですか!メイクの効果か猿顔には全然見えませんでした。
登場してすぐのソロでは、ふわっと軽く高い、しなやかなジャンプで、心の中でワォ!と叫んだぐらい。筋肉の質が柔らかいようで、アントルラッセの後ろ脚がとても高くあがるし、ランベルセがきれい。
男性としてはやや華奢な体つきですが、ノーブルなダンサーだと思います。
もっとオレ様かと思っていたのですが、上品でした。

オデット/オディールのステパノワは、すごく体を絞っているようで、胸のあばら骨が浮いて見えるほどです。終始丁寧に踊っていましたが、緊張感が伝わってきて、なんというか見ている側としては、初主役のダンサーを応援しているような気分になりました。湖畔のシーンで、斜めに並んだ白鳥たちに沿ってアラベスクとリフトを繰り返すところで、王子のサポートがちょっとイマイチだったのか、一瞬緊張感が途切れそうになったので、「がんばれ!集中して!」と念を送っていたところ、なんとか持ち直しました。

経験不足なのか、主役としてのオーラがまだステパノワには身についておらず、踊りはすべてなんとかこなしていましたが、役に入り込むとか、自分自身の解釈とかとはほど遠い出来でした。
でもお顔は美しくて好みのタイプだし、脚のラインやプロポーションも過不足はないので、これから精進していけば立派なプリマになれそうです。
オフチャレンコも、もう少し愛ある態度で接してあげればいいのに…
彼は最初のソロが一番良くて、後半になるに従い、普通になってしまいました。お仕事モード?オデットに対する情熱、バレエに対する情熱があまり感じられなかった。

グリゴローヴィッチ版の特徴は、踊りまくるところと、ロットバルト(悪の天才)が、王子の心の闇の部分の具現化なんだそうです。私が感じたのは、通常の版だとロットバルトは実在のものとして描かれていて、舞踏会ではオディールの父として現れますが、この版では、ロットバルトが見えるのは人間では王子だけ(あとはオデット/オディール)で、他の人にはその姿は見えてないようでした。
ロットバルトは最初から、王子を破滅させる、あるいは深く傷つけるのを目的としているようで、オデットはそのための道具。むしろ自分の娘のオディールを第1幕のオデットに化けさせて、王子を誘惑させた、という解釈も成り立つような気がしました。

ラストは悲劇です。オデットを裏切った王子を一人残し、ロットバルトはオデットを連れ去ります。
呆然とした王子がひとりポツンを取り残される、寂しい幕切れ。
旧ソ連時代は、国策として、ラストはハッピーエンドにしなくてはならなかったそうで、グリゴロ版も当時はハッピーエンドでしたが、その後バッドエンドに変えられたそうです。
チャイコフスキーの音楽は、悲劇で終わるのにふさわしいと思うので、それはそれでいいのですが、それまでが賑やかしいので、なんだか不釣り合いな幕切れだと感じてしまいました。

白鳥の湖はいろいろなバージョンを見てきましたが、ボリショイのグリゴロ版は、ドラマティックさよりも、グランドバレエとしての楽しさを重視していて、それはバレエが日常的な娯楽に溶け込んでいるロシアならではの、芸能として昇華しているもの。
日本ではバレエは裏芸能界だそうで、テレビ放映もめったにないし、バレエを見ないで一生を終わる人も多い。でもロシアではバレエダンサーは、日本で言うと野球選手みたいに人気があって、テレビにもしょっちゅう出ていて知名度も高い。日本のテレビタレント並み。
その文化事情の違いを、さまざまと感じさせるようなボリショイ公演。

花嫁候補たち、スペインボーイズなど、日本ならば主役を踊れるような実力と容姿の持ち主たち。
ここぞとばかりに自己主張して100%のパフォーマンスを見せる。
面白くないわけがない。
踊っていない場面は演奏がやたら早くなる。踊りにあわせて演奏がやたら遅くなる。
こんなに遅く演奏したら音楽がわからなくなるんじゃないかってくらい。
そしてダンサーが退場する時の演奏は速いこと速いこと、ついていくのが大変。
オディールの見せ場のフェッテだけは高速演奏。めちゃめちゃ速かった。
ステパノワは最初ダブルで、あとはシングル。でもその速さについていっていた。

花嫁候補がこれでもかってくらい踊りまくる。
ハンガリー、ロシア、スペイン、ナポリ、ポーランド。ロシアのデニソワはかわいい。
スペインのポチコーワの横っ飛びがすごい。こんなお転婆な花嫁ってどうよ。
道化のグーセフはすごいテクニシャン。
群舞の踊っている間を、スパイスのように縦横無尽に駆け抜けて踊る。
ワルツなどの群舞って、それだけだとつまらなくなりがちだけれど、道化のテクニックを利かせることで、場面を引き締めている。

ドラマとしてのつじつま合わせとかにはこだわっていないみたい。
白鳥の湖のストーリーなんて、ロシアでは100%の人が知っているという前提。
普通の版と違うのは、第1幕で王妃が王子に誕生日プレゼントとして贈るのは弓ではなく、剣とキラキラの宝石がついた首飾り。だから弓をもらって湖に行こうというのではなく、なんとなくロットバルトの導きによって湖にたどりついた感じ。最初から王子を操り、一緒にシンクロして踊り、王子を罠にはめる。
ロットバルトが王子の闇の具現化だとすると、あえて堕ちるとこまで堕ちてやろうというような人間の心理ってことなのかな。
そして最後はそんなことしても何にもならない。
自分の闇にとらわれるのはむなしい、で終わるということ?

この日のソワレがザハロワ様登場で、素晴らしい演技だったらしいけど。
ザハロワのようなスーパーなプリマが出てしまうと、そこに意識が集中してしまって、他の素晴らしいダンサーたちがかすんでしまうという現象も起きるので、このマチネはボリショイのたくさんのダンサーたちを堪能するには良い公演だったと思います。











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2017年05月06日

新国立劇場バレエ「眠れる森の美女」米沢&ムンタギロフ

2017年5月6日(土)14:00 オペラパレス
オーロラ姫 米沢唯
デジレ王子 ワディム・ムンタギロフ
リラの精 木村優里
カラボス 本島美和
誠実の精 寺田亜沙子
優美の精 丸尾孝子
寛容の精 飯野萌子
歓びの精 五月女遥
勇敢の精 柴山沙帆
気品の精 寺井七海
エメラルド 細田千晶
サファイア 寺田亜沙子
アメジスト 広瀬碧
ゴールド 渡邊峻郁
フロリナ王女 小野絢子
青い鳥 福岡雄大

昨年度新しく作られたウェイン・イーリング版の再演です。
この版が通常と違う大きなところは、
1.妖精さんが一人多い(気品の精)
2.王子がオーロラを目覚めさせた後に「目覚めのパ・ド・ドウ」がある。
3.結婚式のディベルティスマンに親指トムが出てくる
あたりなのですが、特筆すべきところは、舞台装置が豪華です。
まるで本物のヨーロッパの王宮のようなセットです。お金かかってそう…

衣装もよく見ると細かいディテールが凝っていたり、玉虫色の布地を多用していたりして豪華なのですが、そのセンスはどうかと思うところも多いです。
妖精さんとリラのお付きの衣装がほとんど一緒なので見分けがつけにくいことと、森の精の衣装が鮮やかな緑なのがジャングルブックか!とツッコみたくなるし、遠目の雰囲気がカラボスとかぶっているので、「森の精はカラボスの手下なのか?」と感じます。

秀逸なのはカラボスの衣装と乗り物。大きなクモなんです。これはハリーポッターを連想させましたが、いいアイデアだし、すごく効果的でした。そう言えば、マンガ「テレプシコーラ」の中で、カラボスをクモに見立てて、六花が歌舞伎のクモの糸を出すところがありましたが、あれ、まんま使われています。パクリ?(笑)

「目覚めのパドドゥ」、これは要らないと思います。必然性がありますか?いきなりネグリジェでオーロラが踊るって…百歩譲って、これはオーロラの心の中の情景だとしても、振付が様式美なので固すぎます。逆に心の中の情景とわかるように、ネオクラシックな振付(ロミジュリみたいな)にすればいいかもしれません。とにかくこのシーンは、製作者の「いいだろう、これ。うっとりするだろう」という押しつけがましさでやってるだけで、まったく面白くなく、前回同様、眠くなりました。
眠りの森の美女は、プティパのクラシックの様式美で貫くところがいいのです。
こういう中途半端なのはカットして欲しいです。

6人目の妖精さんは、狩りのシーンの音楽を利用していますが、今日踊った寺井さんが、それはもう上品で優雅でしたので、これはこれで、よろしいです。
親指トムは、八幡さんへのあてがきなのかもしれませんが、常に「テクニックに優れているけれども王子には身長が足りないダンサー」という人材はいるので、まあこれはこれで、よろしいです。ただ、八幡さんはプリンシパルなんですよね。プリンシパルが村人と親指トムって、役付き酷くないでしょうか。

私の理想としては、舞台装置はこのままで、目覚めのパドドゥはカットして、妖精とプロローグの貴族と、1幕の王様の変な帽子と森の精の衣装を変更してくれたら、なかなか豪華で新国立劇場にふさわしいプロダクションではないかと思います。
けれども、大金を支払って、海外の人に新制作をお願いするよりも、眠りだったら、超スタンダードなヴァージョンと振付で、舞台装置と衣装を凝ったつくりにするだけで充分だし、その方が日本人好みだと思うんですけどね。イーリング版じゃなくて、大原版でよかったのに。大原先生は自分のバージョン作らないつもりなのでしょうか。牧先生は白鳥とかバヤデールとかライモンダとか作りましたよね。はっきり言ってイーグリング氏なんて日本では無名だし、箔づけにならないですけどね。なんか裏があるのかしら。

プロダクションのことはさておいて、今日の公演ですが、
唯さんとムンタギロフさんは素晴らしかったです。
初演時の唯さんは、もっとお堅い感じ(格調高くいこうと意識していたのか)でしたが、今日はもっと優美で、音にピタッとはまって、ヴァリエーションにしびれました。
唯さんの踊りを見ると、純度の高い水を飲んだみたいにスカッとするんです。

唯さんが他日にカラボスをやるそうですが、唯さんがカラボスをやる意味って何でしょう。
演技力の向上のため?唯さんにカラボスって、あまり似合わない感じがするのですが…
むしろリラとか踊ってもらったらいいんじゃないかしら。
カラボスは木村優里さんが似合いそうです。
木村優里さんのリラの精は、あの花びらいっぱいのヘッドドレスをかぶってもなお小顔で、抜群のスタイルで美しいです。でもリラの精の慈愛のようなものは全く感じられません。
堂々としているから、そこはいいのだけれども、リラの精はもう少しベテランのダンサーに踊ってもらった方が良いとおもいます。

本島さんもプリンシパルだから、唯さんにもカラボスを踊らせて、この役はプリンシパルがやる役なんだと重要づける意味なのかもね。登場のシーンはいいけど、やっつけられるシーンが尻つぼみで、印象に残らない。
プリンシパルがやる役なら、フェッテを入れるとか、もうちょっと踊るようにしてほしい。

その他、印象に残ったことですが、
寺田亜沙子さんの誠実の精が素晴らしかった。上体をうまくつかってニュアンスをつけて、こんな風に踊れるなんて、研修生の時から見ているけれども、ダンサーとしてすごく今充実しているなぁと感じます。
もともとスタイル抜群だし、かわいいし、推しメンにしようかしら…と思っていたら、宝石でまさかのイタリアンフェッテ失敗!ありゃりゃ…

宝石の渡邊さん、横っ飛びジュッテが高くて幅広くて、びっくりするくらいでした。あのジュッテはすごい!

小野絢子さんのフロリナ、出てきた時のオーラがパっときて、これでは主役みたいになっちゃうなと思っていたのですが、ヴァリエーションはかわいらしくて、フロリナってこう踊るものだっていうお手本みたいでした。フロリナってふつう、主役一歩手前の人が踊る踊りだから、フレッシュな感じを期待しますよね。ちゃんと絢子さんはそれを理解していて表現していました。さすがバレリーナ脳の持ち主。









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2017年05月05日

東京バレエ団「ドン・キホーテの夢」沖&宮川

2017年4月30日(日)13:30 東京文化会館
今までは夏に「めぐろバレエまつり」という催しを行っていた東京バレエ団が、新たに上野でも「上野の森バレエホリディ」というイベントを開催。
子供向けのドンキホーテ公演と合わせて、上野公園でのフラッシュ・モブ、野外でのダンサー振付作品パフォーマンス、そして会館のホワイエではバレエ用品のお店や、バレリーナによるファッション・ショー、ティアラのワークショップ、初めてのバレエレッスン、裏方の仕事体験…など盛りだくさんな内容。
めぐろバレエまつりの10倍パワーで開催されました。

ホワイエでは、通常のチケットもぎりの位置がクロークのあたりまで後退し、公演チケットをもっていない人でも気軽にバレエ用品のお店を覗くことができます。
私は開演15分前くらいに着いたのですが、どのお店も大賑わいでした。
職業としてのバレエが定着しているとはいいがたい日本ですが、バレエを習う人口は多く、この盛況さを見ると、マーケットとして伸びていく期待が持てます。

キトリ 沖香菜子
バジル 宮川新大
ドン・キホーテ 木村和夫
サンチョ・パンサ 中村瑛人
エスパーダ ブラウリオ・アルバレス
キューピッド 足立真里亜

改訂振付のワシリーエフ氏が、ドンキのエッセンスをぎゅっと詰め込んで、子供でも絶対飽きないようにしたこの作品、年々ブラッシュアップされて、バレエというより、お子様向けミュージカルみたいな、優れたエンターテインメントになってきたように感じます。
今回は、馬の声をワシリーエフ氏が担当したそうで、カーテンコールにもワシリーエフ氏が登場してノリノリで踊っていました。
大人としては、見どころのオンパレードで、少しはしっとりしたところもないと息ができないほどなのですが、クラシックバレエとしての踊りもたっぷりあって、満足できます。
沖さんのキトリは気が強いというよりも、かわいらしいキトリ。宮川さんは踊りは文句ないけれどもお顔が大きいのがどうも…
アルバレスさんのエスパーダが、白いタイツがめちゃくちゃ似合っていて、カッコよかったです。
やはり外人だけあって脚の長さが段違い。190センチぐらい(実際はそんなに高身長ではないでしょうが)に見えました。
足立さんのキューピッドも、ジャンプも軽やかでキュートでした。
足立さんは、公演後のパフォーマンスで、秋山瑛さんと木村和夫さん振付の「ハミングバード」を踊りましたが、ふたりともかわいい系の美人で清潔感があってステキでしたね。
この作品では、サンチョパンサがお話しをしながら進行役を務めますが、中村さんは声も良く、観客つかみのタイミングも絶妙だし、バレエダンサーというよりプロの役者さんのようにお見事でした。
なんと、中村さんはこの公演を最後に東京バレエ団を退団なさったそうです。
「これからも東京バレエ団をよろしくお願いいたします!」ってカーテンコールで言っていましたね。
いい団員が辞めちゃうのは残念。
でも、7,8年前と比べて、すごく新陳代謝が進んでいるのはいいことかもしれません。


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2017年02月21日

新国立劇場バレエ「ヴァレンタイン・バレエ」2月17日

2017年2月17日(金)19時 オペラパレス

「テーマとヴァリエーション」米沢唯 福岡雄大

登場した瞬間の唯さんが美しく鳥肌がたった。
軽やかで、まるで体重がないかのよう。きびきびとして、しかし優雅な方向転換、びくともしないバランスの妙。雑味のないクリアな踊り。
手脚が長く、スリムなプロポーションの女性ダンサーたちのコールドはとてもよく揃っている。
前後2列になって同じ振付を踊る時、正面からは二人なのに一人のように見えるほどのシンクロニシティ。
これだけ揃えられるのは日本人ならではだと思う。
たぶん、本家のアメリカでは、これほど揃うことはないだろうし、それよりも個々のダンサーの個性が見えるような踊りをよしとしていると思う。2008年の新国立バレエのワシントン公演では、バランシンの「セレナーデ」を持って行って同様なシンクロニシティを発揮したけれども、現地の評判はそれほど大絶賛でもなかったように記憶している。
個人の見えない無機質なシンクロニシティ。でも私はこれこそが、新国立のバランシンとして素晴らしい所だと感じている。
ただし、これは女性ダンサーに関してのみ。
「テーマとヴァリエーション」でも、男性が出てきたとたんにがっくりきた。
福岡さんは的確に破たんなく、連続ピルエットもぴたっと決めていた。しかし彼の脚のラインはごつごつしていた。コールドの男性たちは、小さかった。どうにか前列の男性4人は高身長で揃えてきたが、それも、最近は王様役とかになってきた貝川さんも含めてだ。
女性陣の美しさに匹敵するくらいの、すらっとして太もものラインもムキムキでない、マリインスキーの男性たちのようなダンサーたちがいたら。
マンガ「テレプシコーラ」にも、男性ダンサーの身長についての話が何度も出てくる。
いわく、「まず体格の変化は女性にあらわれるのではないかしら」
日本の男性ダンサーが、新国立の女性ダンサーに肩を並べるくらいのプロポーションを得る日はいったいいつになるのだろうか。
そうはいっても、全世界的に高身長の男性ダンサーは不足していて、まるで「金の卵」扱いだ。
マシュー・ゴールディング、ワディム・ムンタギロフ、エヴァン・マッキー、デヴィッド・ホールバーグ、ロベルト・ボッレなど、踊りとサポートが上手で高身長なダンサーは世界のプリマからひっぱりだこ。
バレエ以外に目を向ければ、背の高い男性はたしかに最近は結構存在する。スポーツ界とか、一般でも。
うちの息子も183くらいあるから。でも彼をバレエダンサーにしようなんて、まったく考えたこともなかったし、彼自身にもそんな気は毛頭なかっただろうから、そこはやはり「バレエ」という芸術がもう少し広く大衆にアピールするものになって、それで稼げる、という状況にならなければ難しい。

日本ではまずバレエのテレビ放映が少ない。
ロシアではバレエダンサーは、日本でいう野球選手ぐらい人気があって、しょっちゅうTVにも出ているそうだ。
以前、モデルプロダクションのオスカーの社長に話を聞いた時、宝塚とかバレエとかは「裏芸能界」だと言っていた。お金を稼げないという意味なのだろう。
上戸彩のようなタレントなら、小さい時から育てて、14くらいでデビューさせて、年何億と稼いでくれる。
バレエダンサーが一人前になると思える20才ぐらいは、タレントでいうともう旬を過ぎた年増だ。




「ドン・キホーテ」グラン・パ・ド・ドゥ 柴山沙帆 井澤駿

新国立劇場バレエのドンキは何度見たことか。あの赤いチュチュもそろそろデザインを変えてもいいのじゃないかというくらい。そのなかでもとびきり退屈だった。ガラで踊るドンキって、余裕綽綽の中で、遊びでバランス技を見せたり、回転技を見せたりするものだと思っていたけど、柴山さんはかなりいっぱいいっぱいで、最大限にひっぱったゴムみたいだった。
フェッテは前半はダブル、ダブル、シングル、後半はダブル、シングルのパターンを繰り返して、テクニックのあるところを見せたが、最後は曲が終わる前に止まってしまった。たしかに踊れてはいるけれども、顔がおてもやんみたいで好みじゃないし、つまらなかった。早く終わって欲しいと思うドンキなんて。
井澤さんはイケメンで怪我明けを感じさせない軽やかさでとても良かったのに。もっとイケイケの相手を組ませてあげてはどうかしら。ドンキならば、五月女さんなんかでもイケるのでは。
そういえば、井澤&小野絢子ってあまりないですね。 

「ソワレ・ド・バレエ」米沢唯 奥村康祐

唯さんと奥村さんの組み合わせ、大好きなんです。この二人って、清潔感と踊りの軽やかさが近くてお似合い。2年前の横浜バレエフェスティバルで感動した演目なので、ぜひまた見たいと思っていました。
グラズノフの可愛らしい音楽、きらめく星空の下、さらりと超絶技巧を織り交ぜ、楽し気に踊る唯さんと奥村王子。
童話みたいな、ディズニーみたいな、愛にあふれる世界。
きっとこういうの日本人みんな好きだと思うから、ぜひ全幕を新国立で採用してレパートリーにして欲しい!
日本の国立劇場なんだから、日本人の作品もレパートリーにあってしかるべきだし、それもこんな素晴らしい振付家がいるのだから。
もう大原先生はクビにして、深川先生が次の芸術監督でもいいんじゃないか、というくらいこの作品気に入ってます!
衣装は、横浜の時よりも、プリンセス風味で、私は以前のもうちょっと大人っぽいのが良かったけれど、まあこれもディズニープリンセスの世界としてありかなと思いました。
何気に方向変換とか、緩急のスピードを変えての回転技とか、飛び上がる脚をパドシャにするマネージュとか、ちょいと変わった技巧的な振付も面白いですし、それを難しいと感じさせないで踊りこなすお二人も素晴らしい。
唯さんは、「テーマとヴァリエーション」で福岡さんにリフトされたときは、なんだか窮屈そうで急に重さを感じましたが、この作品で奥村さんにリフトされるときは、生き生きとして伸びやかでした。
ぜひ全幕で見たいです。新国立劇場ファンの皆様、劇場へソワレ・ド・バレエの全幕を見たい、レパートリーにしてくれというメールを送りましょう。
ご意見・ご感想がメールできます→ こちら


「タランテラ」小野絢子 八幡顕光

これは以前ニューイヤーガラで唯さん奥村さんを見ました。
久しぶりの八幡さん登場でしたが、絢子さんとサイズ的にぴったり合いますね。
かわいらしさ、というよりもベテランのサービス精神が伝わってきました。
これ、大変疲れる踊りだから、未熟者がやると、ヘロヘロになって、観客を楽しませようというどころじゃなくなっちゃいそうだけど、そこのところ、さすがプリンシパルは配慮たっぷりでした。

「トロイ・ゲーム」

新国立劇場バレエをいっぱい観ていた10年前〜5年前くらいまでは、コールドもほとんど顔がわかったのだけれど、今はもう全然誰なのかわかんなくなってしまいました。
そういうことで、わからないダンサーたちがわからない踊りを、身体的にめちゃめちゃ酷使する振付で、これはイロモノに属するのかなと思いながら見ていました。
私は美しいものが見たくて劇場に来ているので、こういう作品だと事前に分かっていたら幕間に帰っていたかもしれません。
しかし、こういう試みは、普段後ろの方でコールドを踊っているダンサーにとっては、身体能力を思いっきりアピールできる場としていいのではないのかと思う次第です。







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2016年12月27日

2016スターダンサーズバレエ団くるみ割り人形

2016年12月25日(日)14:00 テアトロ・ジーリオ・ショウワ

クララ 渡辺恭子 
王子 吉瀬智弘

鈴木稔演出のスタダンのくるみは、とても良いという評判だったので、ぜひ見たいと思っていました。
テアトロ・ジーリオ・ショウワは駅から近いし、1800席ほどでこじんまりしていて、段差もあって、どの席からでも見やすそうな劇場です。

鈴木版の特徴は、第1幕がクララの家のパーティではなく、ドイツの街中のクリスマス・マーケットだということ。そうそう、公演がはじまる20分ぐらいまえから、芸術監督の小山さんのプレトークがありました。
このプレトークはどの公演でも行っているらしく、公演を見るうえでのポイントなどをわかりやすく解説してくださいます。

今回のプレトークでは、第1幕の場面になっているクリスマス・マーケットにはどんなお店があるのか、役の数が140ぐらいあるけれどもダンサーは半分以下だから、みんな2役や3役をやっていることとか、衣装はすべてイギリスに注文して、人形役は、人間用と人形用と同じデザインで注文しているとか、兵隊さんはキャストに4人しか載っていないけれども、衣装は8人分用意しているので、そのからくりを見破って欲しいとか…、衣装については舞台をみていてなるほどと思いました。

そのご自慢のクリスマス・マーケットのシーン、くるみ割り人形とナッツを売るお店、スパイスを売るお店、クリスマス・オーナメントを売るお店、ホットワインを売るお店…
小道具もそれらしく凝っていて、本当にドイツのクリスマス・マーケットにいるような気分になります。

通常の版のくるみと違って、コロンビーヌやムーア人の踊りはありません。
そのかわりに、大道芸人が芸を披露するというシーンになっております。

そのあと、ドロッセルマイヤーが人形劇用の大きなワゴン車を運んできて、子供たちに人形劇を見せます。
そのあたりは通常版と近いですが、ねすみが走る音楽のときに、人形劇を見ているこどもたちだけではなく、マーケットの大人たちも一斉にリアクションするのが、「いったいなにが起こったの?」と思わせます。

人形劇にねずみが出てきたのなら、子供たちだけがリアクションすればいいことですが、関係ない大人たちもリアクションするので、「地震かかみなりでも起きたという設定」なのかと思ってしまいましたが、そうでもないようです。この部分、納得できませんでした。

人形劇で使うから、プレゼントにもらったお人形を貸してとドロッセルマイヤーに頼まれたクララでしたが、人形劇が終わっても大事なお人形を返してもらえないので、人形を探しまくって、家族ともはぐれてしまい、最後には人形劇用のワゴンに忍び込みます。

そこで人形の世界に足を踏み入れるというお話です。
ねずみにとらわれていた人形たちを解放してやり、危機一髪のくるみ割り人形を助けるために、ねずみ大王にくるみをぶつけて大活躍。呪いが解けたくるみ割り王子に誘われて人形の国へ行きます。

その途中、雪の国を通ります。スタダンでは雪のシーンは、ポワントを履かないモダンダンスです。
衣装も円錐形のアシメントリーなスカート。

コーラスの子供たちはとても上手でした。

ここまでの第1幕、私はなんだか不思議な感覚がしていました。
クラシックバレエを観たというよりは、お芝居かミュージカルプレイを観たような感覚です。
あまりにも、クラシックな振付が少ないせいでしょうか。

20世紀初頭のクリスマス・マーケットの雰囲気と対照をなす、モダンなスノーフレークスの踊り。

私の好みでいうと、ここはやはり白いチュチュで、美しいクラシックバレエを見せて欲しいのです。

第2幕は、通常版とそれほど変わってはいませんでした。
各国の踊りや花のワルツの後、くるみ割り王子にプロポーズされて、人形の世界にとどまるように言われたクララは、悩んだ末、人間の世界に戻ることに決めます。
そして、自分の代わりに、大事なお人形を、人形の国に差し出すのでした。

クララの渡辺恭子さんは演技も踊りもしっかりしていたし、王子の吉瀬さんはスマートで温かみのある王子でした。
クララのお友達や花のワルツに新国立劇場バレエ研修所出身の鈴木優さんがいて、とても可愛らしく、柔らかい優雅な踊りで素敵でした。
すごくきれいなので、彼女ばっかり見てしまいました。

歴史のあるバレエ団だと、団内のヒエラルキーで役が決まってしまうところがあります。
団歴を重ねないと、なかなか上にあがれないし、役もつかない。
東京バレエ団でさえそうです。
今やライジングスターの沖香菜子さんも、入団後しばらくは役がつかず、子供のための眠りで抜擢されたのは入団2年目でした。それでも異例の速さです。
バレエダンサーって旬の時期が短いし、後ろでコールドばかり踊っていると、素質があっても、コールドがなじんでしまい、みずからが光を発しなくてはならない真ん中のオーラがなくなって主役にふさわしくなくなってしまうことも、よくあることです。

だから、芸術監督は、よ〜くダンサーの資質を見極めて、キャスティングするべきなのです。

それが…
スポンサーのごり押しとか、しがらみなど、いろいろな事情で、おかしなことになるケースも良くあります。
芸術監督が男性だと、「お気に入り」の意味を勘ぐられたりすることもしばしばだし…
まあ、それは古くからよくあることだけれども。

何年もバレエ公演を見続けていると、そういう裏側もなんとなくわかってしまうのが、なんだかなぁです。

私は純粋に美しいバレエが見たいし、芸術監督も絶対的な美を追求して欲しい。
素晴らしい舞台を作りあげるためだけに判断して欲しい。そう願うだけです。














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2016年12月22日

東京バレエ団「くるみ割人形」シムキン&沖 

2016年12月18日(日)14:00 東京文化会館 
クララ 沖香菜子
くるみ割り人形/王子 ダニール・シムキン

東京バレエ団はこの版とベジャール版の二つのくるみを交互に上演しています。
このワイノーネン版はオーソドックスですが、衣装や装置などはかなり古色蒼然としています。
今回はライジングスター沖香菜子さんとダニール・シムキンの注目ペア。

このふたり、シムキンの愛らしさにさらに倍増で愛らしい香菜子さんで、ビジュアル的な取り合わせは大変に良好です。シムキンは170センチないくらいだと思いますが、香菜子さんも160ぐらいだと思われますので、身長の取り合わせもよく、愛らしさ抜群の沖さんとのペアでシムキンが王子力をいかんなく発揮できるという。


シムキンはさすがのエレガントな踊りで、まったく音のしない高いジャンプや、美しいランベルセで魅了します。沖さんも負けていません。脚が180度さっと上がるし、美しいポーズや愛らしさで、堂々と渡り合っていたと思います。

シムキンはエレガントで素敵でした。沖さんも踊りでも負けていませんでした。このお二人の取り合わせはとても良かったです。

お二人は踊りの時にまったく足音がしないのですが、雪のシーンや花のワルツではポワントの音が目立ちました。このあたり、もう少し頑張って欲しいです。でもユカリーシャの薫陶のおかげか、コールドのアンサンブルはとてもそろっていたようでした。

ひとつ残念なのは装置と衣装です。
くるみ割り人形は、最近は年末の風物詩として、日本でも各バレエ団が工夫をこらしています。
この東京バレエ団のワイノーネン版は、装置や衣装が古めかしく、「古色蒼然」
特にお菓子の国の装置は、オレンジ色のろうけつ染めのような装置で、ダンサー達はとても良いパフォーマンスをしているのに、古めかしい感じがして残念でした。

プロジェクション・マッピングを導入していますが、それは一部なので、もう少し効果的に使用するとか、現代に即した「くるみ割り人形」としての演出、装置、衣装を新たに作って欲しいと思いました。


スペインの岸本さんのキレの良さ、コロンビーヌの人形っぽさがとてもツボにはまってよかったです。







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2016年11月10日

新国立劇場バレエ「ロミオとジュリエット」米沢&ムンタギロフ

2016年10月30日(日)14時 オペラパレス
ジュリエット 米沢唯
ロミオ ワディム・ムンタギロフ
ティボルト 中家正博
マキューシオ 福田圭吾
ベンヴォーリオ 奥村康佑
乳母 楠本郁子
キャピュレット夫人 本島美和

私が新国立劇場バレエのロミジュリを見たのは2回目です。
前回は小野絢子さんとマトヴィエンコを見ましたが、マトヴィがどうもロミオに見えず、小野さんの熱演もいまひとつしっくり来ず、モブシーンはバーミンガムバレエ版のせいか、舞台に乗っている人数がロイヤル版よりも少なくて、スカスカしているような印象が残っていました。

今回も同じバーミンガムバレエ版なので、やはり人数少な目ではありましたが、主役の二人が素晴らしくて、あまり気になりませんでした。
最近お気に入りのプリマ、米沢唯さん。
お稽古場だとピルエット5,6回転してしまうという抜群のテクニック。端正で丁寧な踊りが魅力です。
古典の見せ場、連続フェッテなどでさらりとすごい技をやってしまうのがたまりません。
演技もわりとあっさり目という感じなので、今回のロミジュリ観に行こうかどうしようか悩みました。
ロミジュリだと古典のテクニックを見せるようなシーンはあまりなくて、演技が重要ですから。

でも観に行って良かったです!
唯さんの初登場シーン、ジュリエットの寝室。乳母とたわむれる唯さんのかわいらしいことといったら!!
いたずらっこの14歳そのもの。そのキュートさにハートを射抜かれました。

ワディムのロミオは、ひとりとびぬけて別人種の体型。腰の位置が他の男子より30センチくらい高くて、ゴージャスなヒップとすらりとした太ももが目を惹きます。あんなタイツのラインが出るのは日本人ではめったにいないでしょう。肉体の持つ力がすごい。もう立っているだけで美しい。その上踊りも端正で上手。

こんな素敵なロミオだったら、恋に堕ちなくてはいられないよね
バルコニーのシーン、ロミオの腕を取り、自分の胸が「ほら、こんなにドキドキしている」と
教える唯ジュリエットを見ていると、こっちもドキドキしてしまう。
ワディムロミオも恋に落ちた情感たっぷりで、唯ジュリエットを見つめる目が輝いている。

そう、恋をするって、こうだよね〜
ロミオとの恋に浮きたつそのまま、唯ジュリエットはまるで羽根のようで、リフトされてもまったく重力を感じさせません。

こんなに唯さんが、感情を踊りに乗せて解放しているのを見たことがあったでしょうか?
思う存分身体を伸ばして踊り、安心して思い切り飛び込んでいけるワディムロミオだから。
今まさに舞台の上でジュリエットとして生きている唯さん。
これです!
こういう米沢唯を見たかったのです!
こんな風に素晴らしく踊れるなんて!
この瞬間、世界は二人のためにある!
ワディムも唯さんも超一流レベルのヴィルトオーゾなダンサーですが、その二人がテクニックどうのこうのを超越したZONE状態に入ったようなバルコニーのパ・ド・ドゥでした。

良かったね、唯さん、こんな風に踊ることができて…といつの間にか涙がぽろぽろ流れてきて止まりませでした。そう、いままで唯さんの踊りをみて何か物足りない、米沢唯はこんなものではない、もっと出し惜しみをしないですべてを出し尽くして欲しいと感じていたフラストレーションが一気に解決されました!

それが古典作品ではなくて、ロミジュリだったのは意外でしたが、こういう演技が重要な役を演じることによって、つぎに古典作品を踊る時には、殻をやぶってさらに高いレベルのものを見せてくれるのではないでしょうか。
プリマ米沢唯が次のステージに上がった

唯さん以外のことについて。
今回はサイド席だったので、舞台を上から見下したのですが、そうすると、広場でのモブたちの配列や動線が良く見えて面白かったです。コールドはああいう風にカウントで斜め一列に出てくるんだな〜とか、それが紗に交差する具合とかも、段取りっぽい感じがありすぎて、もう少しその中でもそれぞれが芝居とか個性的な動きとかをするとだいぶ違ってみえてくるのだろうと思います。
でも、マクミランのロミジュリやマノンなど、コールドに至るまで演技を求められる作品をやることは、バレエ団の向上のためにはとても良い経験だと思います。
観客の動員率もよかったようだし、男性の観客も多かったので、もっと回数多く上演できるといいですね。
いっそのこと、舞台装置と衣装も新調して、2年に1回ぐらいやればいい。

ロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオの三バカトリオ。
ワディムロミオは上手なのですが、日本人男子はアンディオール不足。どこがというと、トリオの振付では、片足を上げて前から横、後ろへとぐるっと足を回すようなパが多用されています。女性のパでいうと、フェッテのようなパですが、前から横へ開くのって、日本人は苦手みたいです。
英国ロイヤルバレエのマックレイなどはここが実にクリア。吉田都さんのラストジュリエットの時は、マックレイ、マロニー、ポルーニンで三人とも見事でした。
体型の差はいかんともしがたいですけれど、三人の雰囲気は悪くなかったです。

マキューシオの福田さん。福田さんは道化役とかよくやるテクニシャンだと認識していましたが、あまりキレがありませんでした。この役は熊川哲也さんの当たり役だったそうで、思わず熊川さんだったら、さぞかし派手に演じるんだろうなぁと重ねて見てしまいました。チャンバラシーンは楽しいですね!音楽に乗ったリズミカルなチャンバラは、ロミジュリの名シーン。

本島美和さん、キャピュレット夫人、お似合いです。クッションダンスも美しいし、ティボルトの死を嘆くところも迫力がありました。本島さんも、もう主役は踊らなくなってしまって、キャラクターばっかり。以前の湯川さんのポジション的になってますね。











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2016年08月22日

東京バレエ団「ドン・キホーテの夢」秋元&川島

2016年8月21日(日)14:30 めぐろパーシモンホール
キトリ/ドゥルシネア姫 川島麻実子
バジル 秋元康臣
サンチョ・パンサ 氷室友
ガマーシュ 岡崎隼也
エスパーダ 岸本秀雄
キューピッド 森田理紗

午前公演と比べると上位ランクのダンサーが多く出演していました。
サンチョパンサは、この子供ドンキではお話しをする進行役ですが、氷室さんは昨年もやっていてもうベテラン。とても上手だけれども、慣れちゃっているのでちょっと偉そうな感じ。午前中のサンチョの中村さんは、その点頼りないサンチョで可愛かったな。声も良く通っていたし。

安定の秋元&川島ペアだけども、想像以上に素晴らしかったのは岸本エスパーダ!
身のこなしに品格とオーラがある!そう、エスパーダとは誰もがなれる地位ではない。
闘牛士の頂点エスパーダには品格とみんなが憧れるオーラがあるべき。
岸本さんには、役に求められているのはどんな事なのかをきっちりと把握して表現できる力があります。
エスパーダのソロの途中で、2,3歩普通に歩く所があるのですが、そこで素のエスパーダとして歩く歩き方が、ちょっとぶっきらぼうで男らしいのもエスパーダっぽい!変なところにツボりました。
岸本さんは踊りも丁寧だけれども、役になりきる力が素晴らしい。
宮川さんよりこちらの方をもっと主役にして鍛えて欲しい!!
ルグリにも気に入られていたそうだし、すごく良いダンサーになる伸びしろがあると思います。

川島さんはテクニシャンだし、キトリはお手のものという感じですが、もしかして初役なのかしら?
だとしたら大したものです。グランパのフェッテは扇を開くという技も3回ぐらい入れ込んでいたし、他の大技も危なげなし。もっとも秋元さんはとてもサポートがうまいらしいから、安心して踊れるということもあるのかもしれません。沖キトリがほわんとしているのと比べて、川島キトリは気が強そう。

そしてお目当ての秋元さん。彼は本当に踊りがうまい。そのうまさ加減といったら、ヴァリエーションで、ザンレールの後ピタッとアラベスクで静止するとこなど、熊川哲也さんのうまさ加減にも匹敵するくらい。
才能なんでしょうね。踊りにキレがあるので、彼だけ輪郭が他のダンサーよりくっきりと見える。
どうしても目が秋元さんを追ってしまう。
演技はわりと薄めなんだけれど、踊りですべてを物語ってしまうから、それで事足りる感じ。
背は高くはないけれども、体幹がしっかりしていて、胴が厚くて顔が小さく、太ももが発達しすぎていなくてすらっとしている。体のバランスがいいんです。
サポートも上手で、女性が踊りやすいように、さりげなく次に動く方向へ押したりしてます。
おそらく、Kを退団したあと、ロシアのバレエ団で数多くの舞台で鍛えられたのでしょう。
日本と比べ年間の公演数が桁違いに多いロシア。「ダンサーは舞台の上でしか成長しない」とはよく言われる事です。もとからの才能が、舞台でさらに鍛えられて開花したのでしょう。
9年ぐらい前、NBAバレエ団にいたころも上手ではありましたが、今は段違いのレベルだと思います。

秋元さんは、おそらくどんな作品も、どんな役も踊りこなすことができると思いますし、どんな相手役でも上手にサポートすると思います。東京バレエ団はもちろんプロフェッショナルなんだけれど、他のダンサーとはレベルが違う、「超」のつくぐらいのプロフェッショナルダンサーだと感じます。
だから、彼の踊りをみると感心するし、もっと見たいと思う。

けれどもですね…そのプロフェッショナル具合が、時には物足りなさも感じさせるのです。
もっと一生懸命に、いちずに役になりきって欲しい。
踊ることへの情熱、踊ることが楽しくて仕方ない、というような気持があまり伝わってこないダンサーでもあります。お仕事でやってま〜す、というのが、上手なだけに他のダンサーよりも伝わってしまう。

たとえば、上でひきあいに出した熊川さんも、時にはセーブモードで踊ることもあります。
でも、踊りに対する情熱は常に伝わってくるのです。バレエに対する「愛」というようなものが。
そこのとこが、秋元さんの場合は足りないように感じます。
そこが残念。
もしかしたら、Kバレエを退団したのも、バレエを愛する熊川さんと、バレエをお仕事としてしかとらえていない秋元さんとの感覚の違いがその原因になっていたのかもしれないと妄想してしまいました。
真実は当事者じゃなければわかりませんし、秋元さんにもバレエへの情熱があるのかもしれないけれども、それならもっと役に没頭して欲しい、120%くらいを見せて欲しいと思うのです。















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2016年08月21日

東京バレエ団「ドン・キホーテの夢」沖&宮川

2016年8月21日(日)11:30 めぐろパーシモンホール

キトリ/ドゥルシネア姫 沖香菜子
バジル 宮川新大
サンチョ・パンサ 中村瑛人
ガマーシュ 山田眞央
エスパーダ 森川茉央
キューピッド 足立真里亜

二年目の子供ドンキ。マイナーチェンジはあれど、子供を飽きさせない工夫と飛びきりの楽しさを届けよう!
という意気込みが伝わってくる舞台。
本公演では目立たないコールドのダンサーがたくさん出ているし、今回は、ロシナンテとお嫁サンバという二匹の馬の足をやっているダンサーが、カーテンコールで出てきて、馬の足の衣装のまま、大ジャンプとか540とか、回転技とか、バクテンとか、思い切り好きな事やりまくっていたのが面白かった。
馬の中に入っていたフラストレーションを爆発させたみたいで、とっても微笑ましかった。
むしろ今回初めてそこに一番ツボったというか...

沖さんはすっかりプリマらしくなって、わがままでも気が強くもないけれども、かわいらしくてキュートなキトリ。むしろ、柔らかい腕の動きなど、とても女性らしさを感じる。
踊りも盤石。フェッテも危なげなくダブルをたくさん入れていた。
目が大きいので、視線の行先がはっきりみえて、細かい演技が分かりやすい。
去年より演技がとても自然になっている。
これから20代後半はバレリーナとしてぐんぐん伸びる時期だから、色々な演目を踊っていってほしい。
ジゼルなんか似合いそう。

宮川さんは、初めて見ましたが、踊りはまあまあ、頭が大きいのが気になります。
演技も薄いんですよね。昨年のドンキで沖さんと組んだ梅ちゃんがイケメンオーラがあって芝居上手で良かったのに、退団してしまって残念!
沖香菜子を、より輝かせてくれる相手役は誰だ?
岸本君じゃだめなんですかね?
まあ、12月のくるみでシムキンと組むからこれからは海外有名ゲストと組むことが増えるのかもしれない。

森川さんがエスパーダ、サラリーマンみたいな髪型で出てくるから、誰だか最初分からなかった。
なんか踊りが緩いのです。こんなダンサーだったっけ?もっと男性的な個性だった記憶があるのですけど。

足立さんのキューピッドが素敵でした!軽やかで、かわいらしくて、足音も全然しないし、スタイルも新国立基準だから抜群。
これからはどんどんソロにキャスティングされるといいですね。くるみの配役に期待します。

今日は午後の部とのダブルヘッダーなので、このへんで。


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2016年08月03日

オールスターガラBプロ最終日

2016年7月27日(水)18:30 東京文化会館

「ラプソディ」(振付:F.アシュトン) 
アレッサンドラ・フェリ
エルマン・コルネホ
[ピアノ:中野翔太]
「白鳥の湖」より第2幕アダージォ(振付:M.プティパ) 
ニーナ・アナニアシヴィリ
マルセロ・ゴメス
「Fragments of one's Biography」より(振付(振付:F.アシュトン) 
ジリアン・マーフィー
マチアス・エイマン
「ジゼル」(振付:M.プティパ) 
スヴェトラーナ・ザハーロワ
ミハイル・ロブーヒン
「リーズの結婚」(振付:F.アシュトン) 
ジリアン・マーフィー
マチアス・エイマン

休憩

「プレリュード」(振付:N.カサトキナ) 
ウリヤーナ・ロパートキナ
アンドレイ・エルマコフ
「フー・ケアーズ?」より(振付:G.バランシン) 
ジリアン・マーフィー
マチアス・エイマン
「ディスタント・クライズ」(振付: E.リャン) 
スヴェトラーナ・ザハーロワ
ミハイル・ロブーヒン
「レクリ」(振付:V.チャブキアーニ〜ジョージアの民族舞踊に基づく) 
ニーナ・アナニアシヴィリ
「ル・パルク」(振付:A.プレルジョカージュ) 
アレッサンドラ・フェリ
エルマン・コルネホ
[ピアノ:中野翔太]
「眠りの森の美女」(振付:M.プティパ/A.ラトマンスキー) 
カッサンドラ・トレナリー
マルセロ・ゴメス

フェリ、ニーナ、ロパートキナ、ザハロワ…バレエ界のレジェンドになるであろう方々のガラ。
同世代だとあと目ぼしいプリマはギエム、ヴィシニョーワ、オレリー・デュポン、ダーシー・バッセル、ユリア・マハリナとか?
ジリアン・マーフィーも素晴らしいけど、少し小粒。
タマラ・ロッホ、コジョカル、ルシア・ラカッラ、テリョーシキナ、アレクサンドロワ、ヤンヤン・タンも大好きなんですが…

ダンサーの旬の時期は本当に短い。テクニックの充実を追いかけていた若い頃を過ぎて、表現力が伸びてくると、今度は身体が思うように動かなくなってくるというせめぎあい。
だから、テクニックと表現力が両方とも熟してきた旬の時期のバレリーナの舞台にあたるのは至福の時となる。

まさに今旬の時期であろうザハロワ。
10年前ぐらいは新国立劇場バレエにゲストとしてたびたび来ていた。そのころはポテンシャルに恵まれている事の方が際立っていたが、今はそれに加えて踊りに深みがぐっと増している。
ジゼルは「孤高の」とでもつけたくなるように、ひんやりと冷たい空気をまとっている。
ゆっくりとデベロッペした脚を6時のポーズまであげて、アラベスクへ移行する、様式美のような端正さ。
たとえばギエムが6時のポーズに脚を上げるのは、どこか挑戦的なイメージがつきまとうが、ザハロワはあくまでも白いバレエらしく、たおやかさの中にすっと細く長い芯が通っている感じだ。
シャンジュマンの高さがすごい。ジュッテも軽い。開脚は180度を越えて200度ぐらい。
身体能力を出し惜しみせずに120%くらい見せてくれているような踊りだ。

容貌も卵型の顔で目鼻だちも上品に整っている。腕の細さ、脚の長さとしなるカーブの曲線、高く出た甲。出産後はガリガリに痩せすぎていたが、今は少し戻している。しかし、驚くほど細い体のどこにあれだけのスタミナがあるのだろうか。

ロパートキナも細い体型をずっと維持し続けている。fragment…はあまり踊りらしい踊りはなかったが、それでも踊り終わったあと、まったく息が荒くなっていないのには驚かされる。

ニーナの白鳥は、体型がコマのようになっていたが、情緒たっぷりの素晴らしい白鳥で、動作のひとつひとつに伝えたい思いがこもっているように感じられた。
回転技は健在で、サポートがなくてもくるくると回ってしまえそうだった。
ニーナの場合は、細い軸というよりはぶっとい軸があるようだ。

踊る女優フェリ。まさにレジェンド。女らしいオーラをまとっているし、見事な甲は相変わらず。だが、背中はやはり50を越えると固くなるようで、アラベスクのラインは良くなかった。
「ラプソディ」ではコルネホのソロが、精緻なピルエット、小気味よく決まる方向変換と、ラテンのイケメンオーラで実に素晴らしいかった。

マチアスとジリアンは、テクニシャンで踊り上手どうしなので、アシュトンの細かいパもものともせず踊りまくりで楽しかった。マチアスの見せ場をもっと見たかった。
ゴメスの見せ場ももっと見たかった。
基本、女性を見せるガラなので、そこが少々残念。

ラストの眠りは、ラトマンスキー版で、ちょこちょこ違和感を感じた。
トレナリーは、この女性陣の中で一人若くて、ハツラツとしていた。
このメンツならば、トレナリーでなくて、ジェリーケントとか呼んだらよかったかもしれない。



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2016年06月21日

新国立劇場バレエ「アラジン」奥村&米沢

2016年6月19日(日)14時 オペラパレス
アラジン 奥村康祐
プリンセス 米沢唯
ランプの精ジーン 福田圭吾
魔術師マグリブ人 マイレン・トレウバエフ

アラジンは2008年、2011年に次ぐ3度目の上演。
初演時は、新国立劇場のダンサーにあてて振りつける新作ということで、大変に盛り上がり、私も楽しみでならず、プレビューも含め合計4回、3キャスト制覇しました。
初演ペアは、山本隆二&本島美和、八幡顕光&小野絢子、芳賀望&湯川麻美子の3キャスト。
八幡&小野をイメージして作られた作品ですが、私は細やかな演技の山本アラジンが好きでした。

新国立劇場には、コールドでも主役を踊れるような優れたダンサーがたくさんいます。この作品ではソロの踊りが多く、それぞれに見せ場があり、ダンサー達を生かす構成となっています。
ディズニーアニメでおなじみのお話ですし、ジーンの宙釣りや魔法のじゅうたんの飛翔など、舞台装置に工夫があって、ミュージカルのように大人も子供も楽しめる傑作。
まあ、チャイコフスキー大先生の古典に比べると底が浅いのは致し方ないけれど、ファミリーバレエとして毎年子供の日を中心にゴールデンウィーク上演してはどうかと私は思っていました。

ところが、前回、そのゴールデンウィークに上演したところ、ガラガラだったそうで…
6年もお蔵入りになってしまってました。
今回はなぜか大入り満員でチケット争奪戦が起きるほどの人気。
評判も上々だったですけども、なぜでしょうね。
だって、ロイヤルと牧とザハロワとかぶっているんですよ。
楽日の客層は、男性の姿も多く、子供さんも多かったです。
お母さんとではなく、お父さんと見に来ていた少女もいました。父の日だから?
それなら「父の日はお父さんも子供に帰って、娘と一緒にアラジンを見よう!」という主旨で毎年上演もありでしょうか。
せっかくビントレーさんが作ってくれた宝物なのですから、有効活用して欲しいものです。

というわけで満員御礼の楽日は、奥村&唯。
このペアは、昨年の横浜バレエフェスティバルで見て気に入ったので、期待しておりました。唯さんはムンタギロフ、菅野さん、福岡さん、井澤さんなどと組んでおりますが、私は奥村さんとのペアが相性がいいように感じております。なんというか、ふたりとも男女の匂いを感じさせないし、顔芸とか濃い演技はやらずに踊りの素晴らしさで魅せるタイプというところが似ている。

今回も第2幕の結婚式のパ・ド・ドゥが美しかったです。
その振付で、二人が向かいあってキスをするかと思わせて、手でお互いの口をふさぐ、というのがあるのですが、お子様向けにキスNGなのかと不思議でした。
自然な流れだと、あそこはキスなんですけど、普通じゃつまんないからなのかしら。
ちょっと気になります。気にならせるためにあえて?かもしれません。

この作品、第1幕が秀逸です。
マグリブ人が、アラジンを大金持ちになれるぞとそそのかすシーン。
黒子が二人うしろについて、アラジンの動きにあわせて衣装を変えます。
帽子を取り替え、足を後ろにあげるタイミングで靴を替え、マグリブ人がさっと自分のはめていた指輪をはめ… まったくアナログなトリックなのですが、マジックみたいに見えるところが面白い。

砂漠のシーン。茶色いオンディーヌみたいな衣装の女性たちが砂漠の精として現れ、アラジンをもてあそぶように、風のように現れたり消えたりして踊る。風に舞い上がる砂をよく表現していて、幻想的で大好きです。

洞窟に行かされたアラジンが、体の向きを変えると、視点が洞窟の外→内と反転して、恐竜の骨のような階段があらわれるシーン。
その後の宝石たちのディベルティスマン、スピーディーで目まぐるしく次から次へと宝石たちが現れる、たたみかけるような高揚感がすごい!最後に出てくるダイヤモンドの鋭角的な振付がたまらない!
ランプをこすってジーンが現れるところ、今回はすこしフライングで、こする前からジーンが入口を開けているのが見えちゃいましたが、これは3階サイド席だったせいでしょうか?

家に帰ってきたアラジンが、お母さんに冒険を語るシーン。この時のアラジンの演技がダンサーによって少しずつ違っていて、山本隆二さんがとても丁寧にジェスチャーしていたので好みでしたが、奥村さんの演技も空間を大きく使っていてなかなか良かったです。

ランプをこすって、ジーンの影が長く伸びていって、宙吊りのジーンが現れるシーンも楽しい。

その後街に出かけたアラジンはプリンセスの姿を見て、マグリブ人が見せた女性だと気づく。

ここまでが第1幕の展開、これだけでお腹いっぱいですよ。

第2幕は、ひとめぼれしたプリンセスに会いたさに浴室に忍び込む(なんで浴室なんでしょう、まあ、面白いからだろうけど)アラジンがとっつかまって死刑になりそうなところ、お母さんが命乞いに現れて宝石を見せて王様に結婚の許しをもらい、ジーンとお付きのイケイケダンスシーン、続くアラジンとプリンセスの結婚のパ・ド・ドゥ。

これでめでたしめでたし、もうさらにお腹いっぱいなので、ここで終わってもいいくらいなのですが、そうはいかない後日談となるのが第3幕。

結婚して幸せな日々を送っていた二人ですが、マグリブ人にランプを奪われ、プリンセスも塔に幽閉されます。助けに来たアラジンと協力して、マグリブ人に毒を飲ませて逃げようとする二人。
この時、マグリブ人を油断させるために、プリンセスが色仕掛けの踊りをするのですが、ここが私の定点観測ポイント。
今まで清純で、いやよいやよと拒んでいたマグリブ人をだますため、一転して色っぽい踊りで誘惑するのです。ダンサーによって振り切れ度合に差があります。もともと色っぽい本島さんや湯川さんはあまり差が出ないのですが、小野絢子さんはガラリと変わります。女性の中のいろんな面をかいま見たような感じです。
唯さんも、ガラッととまではいきませんが、なかなかセクシーなところもありました。もっと吹っ切れてやれるようになるといいんじゃないかな。

マグリブ人が塔から落ちて、王宮に帰る二人が乗るのが空飛ぶ魔法のじゅうたん。
ディズニーアニメが刷り込まれていると「ちっちゃ!」というサイズのじゅうたんですが、まあ、装置の都合です。

王宮に帰ってめでたしめでたし、ランプの精ジーンを自由にしてやるところもアニメと一緒。
ここはもっと派手にジーンが踊ってもよかったと思いますけど。
第1幕の宝石シーンと比べると、ちょっと尻つぼみなエンディングは否めません。

第1幕だけでも完結しているし楽しいから、全幕上演が難しいなら、他のものと組み合わせてトリプルビルぐらいにして頻繁に上演する手もあると思います。
今回の上演が評判が良くてとても嬉しいです。









posted by haru at 13:35| Comment(2) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする