2015年08月03日

世界バレエフェスティバル全幕「ドン・キホーテ」コジョカル&ムンタギロフ

2015年7月29日(水)7PM 東京文化会館
キトリ アリーナ・コジョカル
バジル ワディム・ムンタギロフ
メルセデス ヴィエングセイ・ヴァルデス(1幕)
      川島麻実子(2幕)
エスパーダ 柄本弾
ガマーシュ 梅澤紘貴
森の女王 渡辺理恵
キューピッド 松倉真玲
ドンキホーテ 木村和夫
サンチョパンサ 岡崎隼也
ジプシー女 奈良春夏

久しぶりに東京バレエ団のドンキホーテを見たら、演出も装置も舞台も変わっていて、「楽しい」が凄かったです。「お祭りドンキ」の宣伝文句は伊達じゃない!!まさにその通り!
2014年9月の時にワシーリエフが来日して改訂したようですね。
エピローグもたくさん人が出てくるし、舞台を賑やかにしようという意図で、ソロを踊っている時に後ろの群衆が同じ踊りをシンクロしたり、子供たちをたくさん出したり、3階席だったので演出、振付上の色々な工夫がされているのが良くわかりました。

1幕は夢の場面まで続けてしまって、休憩は1回。
スピーディな演出ながら、ジプシー野営地からドンキホーテが風車に突っ込むまでの話の流れも自然で、いつもそこだけ突出しているような違和感を感じていたジプシー女の踊りも、奈良さんの迫力と気迫もあり、良いアクセントとして感じられました。
ダンスも盛りだくさん、バジルもジプシーと一緒に踊るし、場面転換の時は幕前でのやりとりや小芝居もある。
もちろん主役のコジョカルとムンタギロフは素晴らしかったのですが、東京バレエ団のダンサー達はノリノリで、お祭りを盛り上げるゾ、というパワーがあって、第1幕の広場では群衆役の一人一人がそれぞれの役になりきり、小芝居をして舞台を盛り上げていて、どこを観ても面白い。キトリのソロでも、後ろの人たちが同じ動きをシンクロして踊ることによって、賑やかさを演出していました。

普通ならオペラグラスでコジョカルだけ追っかけてしまう所ですが、それでは舞台全体を観られなくてあまりにももったいないので、第1幕はほとんど使わずに観ていました。それぐらい、東京バレエ団の皆さんが楽しませてくれた。

木村さんのドンキホーテは風格と存在感があり、物語に奥行きを与えていたし、ガマーシュとサンチョパンサがおかしくて、しょっちゅうクスクス笑ってしまいました。観客の皆さん、ここはもっと笑ってあげていい所だと思いますよ。

オーケストラも豪快に鳴らしていて、バレエの伴奏ではボリショイが爆音だったけど、それに近いかも。
コジョカルは、容姿もポーズもテクニックも演技も素晴らしい。一時筋肉ムキムキだったけど、今回はそれほど気にならず、赤い自前の衣装がとても綺麗な色で、かわいいし、何で今まで日本で踊らなかったのだろうかと思いました。ムンタギロフ君は、荒技もさらりとこなすテクニシャンで、頭小さいし手足長いし長身で、身体も柔らかく踊りも正確でサポート上手ということなしだけど、ちょいと控え目なので、こういう演目ではもっとはじけてくれても良かったかも。
ジプシー達と一緒に、エスパーダとバジルが踊るところで、膝から下を後ろに曲げてジャンプするパ(白鳥の道化がよくやるやつね)、ワディム君は柄本さんと比べて、きれいに反っていて、身体が柔らかいのね〜と感心しました。白鳥の道化でも、グレゴリー・バリノフさんは理想的に反っていましたけど、このポーズは意外と難しいんでしょうね。

柄本さんのエスパーダは、もうちょっとあざといくらいキッレキレに踊って欲しかったです。太もものラインが丸いので、そこで既にエスパーダとしてどうかという印象ですし、粋じゃなかった。(森川さんのエスパーダが観たかったな。)

夢のシーンでは、女性の皆さまがぴったりと揃っていて、手の角度などびっくりするぐらいシンクロしていました。ユカリーシャ効果かしら。厳しいリハーサルするらしいので。
ドリアードの女王の渡辺理恵さんは、清楚できりっとして踊りも端正で美しかったです。
キューピッドの松倉さんは脚長くて、ジャンプも軽やかで、適役でした。
マラーホフの指導か、東京バレエのダンサーの皆さんは、ほとんど足音がしないのですが、ここで登場のちびっこキューピッド達だけカツカツとポワントの音がうるさくて、どうしてユカリーシャはそこにダメ出ししなかったのかと思いました。
子どもにはムリってこともないですよね。ポワントを柔らかめの物に工夫したり、最後まで力を抜かずに踊るように指導したり(漫画「アラベスク」にもそう書いてありましたよね)、やろうと思えばできるはず。
そこでせっかくの素晴らしい舞台が興ざめになってしまう事があるのですから。

第2幕は狂言自殺から、グランパドドゥまでで、1幕に比べてクラシックのテクニックを見せる場面が多かったですが、東京バレエ団のダンサーたちは皆健闘していました。
一時期に比べ(特に男子)クラシックが上手になってきました。マラーホフ効果でしょうか。
中堅どころがごっそり抜けてしまいましたが、こういう時こそ若手をどんどん育てて欲しいし、若い人もチャンスを与えられたらがっちりつかんで欲しいですね。

そのチャンスを掴んで見事プリンシパルになった梅澤さんのガマーシュは絶品でした。
最後にガマーシュとキトリとバジルのピルエット合戦があって、ここでマネージュやピルエットをするのですが、梅澤さんも負けていなかったし、とても楽しい趣向でいいですね!
客席も大盛り上がりでずーっと大きな手拍子があがって、本当にこんなに素敵な空間と時間を共有できて、ダンサーのみならず客席の観客の皆さんもありがとう!最高のバレエフェスの幕明けになりました。


ぴかぴか(新しい)









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2015年07月05日

新国立劇場バレエ「白鳥の湖」茅ケ崎公演

2015年7月4日(土)15時 茅ケ崎市民文化会館
オデット/オディール 長田佳世
ジークフリード王子 奥村康祐
ロートバルト 貝川鐡夫
道化 八幡顕光
パ・ド・トロワ 柴山紗帆 細田千晶 池田武志
ルースカヤ 木村優里

NHKで放映されたキャストと、主役以外はほぼ同じです。
舞台が少々狭いので踊りにくいところもあったかもしれません。
1列目で観賞しましたが、オケピがないので、ダンサーとの距離が近いこと!!
奥村王子の荒い息づかいや、ダンサー達の汗に光る肌も良く見えました。

シーズンラストの公演とあって、ダンサー達はとても気持ちの入った演技と踊りで、1列目の私は舞台の中に入ってしまったような感覚で楽しみました。
特に一幕の王子の友人たち、村人たちの踊りは、上品で軽やかで、そこに道化がぴりっと締める、みたいな。
八幡さんの道化は、かわいくてテクニシャンで素晴らしい。

第2幕の白鳥のコールドの揃っていること、最前列に超美人の関晶帆さん。
大原先生は白鳥もコールドは背の高い順に前から、なんですね。

長田さんのオデット。音楽のとらえ方や差し出す足先にも気持ちの入った饒舌な踊り。
姫にしてはファニーフェイスだけど、踊りの上手さ、演技力、表現力のバランスのとれたプリマだと実感しました。

王子の奥村さんは、若者らしく、どこかボクちゃんっぽい感じですが、踊りはのびやかでノーブルさもありました。

新国立バレエ団はやはりレベルが高く、素晴らしい舞台を見せてくれました。
残念だったのは、集客です。1階、2階とも7割ぐらいの入りだったでしょうか。
地元のバレエ教室は500人も生徒さんがいて、発表会は3回に分けてやっていて、もちろん満席。
なのに、どうして生徒さんたちはこんな凄いお手本を見に来ないのでしょう。
主催の茅ケ崎市も集客の努力が足りないと思いました。
親子券などのセット割引をしてもいいし、学性割引とか、直前割引とか、いろいろ打つ手はあったはずです。
そんなに集客をしなくてもいいという殿さま商売的な感覚がプンプンします。
たとえば、私が車椅子の母を連れて行こうと、障害者割引はあるかと聞いたら「まったくない」とのことです。
障害者割引、高齢者割引などがあってもいいと思います。
まったく茅ケ崎市のやり方は納得できません。
せっかくの、一流の文化芸術に触れる機会なのに。


ぴかぴか(新しい)



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2015年06月13日

新国立劇場バレエ「白鳥の湖」米沢&ムンタギロフ

2015年6月10日(水)7PM オペラパレス
オデット/オディール 米沢唯
ジークフリード王子 ワディム・ムンタギロフ
道化 八幡顕光
ルースカヤ 木村優里

シーズンエンドのこの作品は、この初日舞台が録画され、NHKBSプレミアムシアターで放送されるそうで、そのせいもあってか、みなさん気合が入ったパフォーマンスでした。
第1幕は、道化役の八幡さんが踊りの主役。
ジャンプや回転などのテクニックは目を見張るほどで、それでいながらどんな場面でもかわいらしい!
至極の「道化」芸に昇華している。
オディール顔負けの32回転も見事。

第1幕のコールドはパステルカラーの色あいが優雅で品よく、そこに道化がピリッとした味つけをする。
パ・ド・トロワの三人もふんわりとして心地よく、池田さんのジュッテは後脚が高くあがってきれい。
ワディム王子は、短めに切った髪型も、体型も踊りもノーブルで理想的。

第2幕、登場のシーンのオデットが素晴らしい。
クラシックバレエの象徴でもある「白鳥の湖」の湖畔の2幕のオデットは、余計なものをそぎおとした白い衣装で、鳥になった女性を表現する。
ここでは体型、テクニック、音楽性、プリマの人間性すべてが露呈する。
だから意図的に表情を作るような作業は必要ない。
踊りにすべてを込めて、丁寧に集中するのみ。
その点、唯さんのアプローチは正しいと感じた。
あまり表情を作らないが、正確で美しいポーズ、柔らかな腕の動き、ピタッと止るバランス。
テクニックのあるダンサーなので、余裕がある。
踊りでオデットの悲しみを表現していた。

オディールでは、ヴァリエーションでトリプルピルエットに続いてアティチュードターンという難しい技を、さらっと何事もないように4回ぐらい決めて、途中4回転ピルエットもきれいに決めて、コ―ダのフェッテは、最初はシングル、シングル、トリプルを4回ぐらい繰り返し、その後はシングル、シングル、ダブル。
涼しい顔でこんな大技を決めるという、すべてのバレリーナの羨望と夢を現実に身につけている稀有な存在。
きっと稽古場では10回転ぐらいやってしまうのだろうから、舞台でも、もうちょと頑張って5回転ぐらい見せて欲しい。唯さんの「余裕」でなく「必死」なところを一度見てみたいと思います。

今回のキャスティングで大抜擢されたのが、ルースカヤを踊る木村優里さん。
小学生のうちからコンクールで数々の賞を取り、新国立バレエ研修所に予科生から入所し、この秋にはバレエ団に入団するらしいです。
牧版のルースカヤは、プリンシパルとか次期主役候補とか、他団のプリマとか、重鎮ソリストとかが踊る「様々な事情から今回主役は踊らせてあげられないけれど、これで目立って頂戴ね」という感じの、特別な役。
衣装はロシア人形みたいで素敵だけれど、踊りはたいして面白くなくて、ソロなので長くて退屈〜と感じることが多いです。今まで見た中で面白かったのは、寺島まゆみさんが踊った時ぐらい。

木村優里さんのルースカヤは、登場の時から「なんて堂々としているんだ!」と驚かされ、女性らしい美しさ(彼女はとてもスレンダーな体型で衣装が似合う)、フレッシュな踊りに魅了されました。
この大舞台に立つのが楽しくて仕方がないように微笑み、若さからくる軽やかさをアピール、ゆっくりな所と音楽が盛り上がる所のメリハリも効いていて、観客を引き込みました。こんな風に軽やかにルースカヤを踊った人は初めて観ました!
(ルースカヤという踊りは、今まではベテランが踊ることがほとんどだったので、重厚な感じがつきまとっていたのです)
まだ正式にバレエ団に入ってもいない、無名のダンサーにこの役を踊らせるというのにはびっくりしましたが、その期待に見事に答え、将来が楽しみです。大原芸術監督は彼女を新国立劇場の新たな柱になるプリマとして育てる気なのでしょう。

牧版の白鳥は、第4幕が再演時に改訂されて、王子とオデットが二人で踊る曲(王子がオデットに許しを請い、オデットが許す)が時間短縮の為らしくバッサリカットされてしまったのが残念です。
それから王子がオデットをリフトしてロットバルトに向かうと何故かロットバルトが苦しんで滅びる(オデットが最終兵器?)という演出も相変わらずですが、もう少しわかりやすく工夫して欲しいものです。
創造性の感じられない第4幕が物足りませんが、ダンサーのパフォーマンスも美術も素晴らしいこの舞台が映像に残って、すぐにTV放映されるのは喜ばしいことです。

(たぶん6月28日深夜のNHKBSプレミアムシアターです。)

ぴかぴか(新しい)





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2015年04月27日

バーミンガム・ロイヤルバレエ団「白鳥の湖」ギッテンズ&シングルトン

2015年4月26日(日)14:00 東京文化会館

オデット・オディール セリーヌ・ギッテンズ
ジークフリード王子 タイロン・シングルトン
王子の友人ベンノ ツァオ・チー

ピーター・ライト版の白鳥は初めて見ました。
まず、プロローグで王様の冠を載せた棺が運ばれ、涙にくれた王妃が続きます。
喪中という設定で、王子も王妃も黒い衣装です。
普通の版では、王子の誕生日のお祝いで友人や街の若者が踊り、王妃からプレゼントに弓を贈られるという設定ですが、ライト版では、王子を励まそうとベンノが宴を催し、高級娼婦を二人呼ぶという設定です。
弓は友人からの贈り物で、高級娼婦二人とベンノと王子が踊るのがパ・ド・トロワ。

白鳥の第二幕は、出演するのがほとんど女性で、この版では一幕と二幕を休憩なしで上演するという都合上、第一幕ではトロワの女性二人以外は冒頭だけですぐいなくなり、あとは男性陣が踊りまくり、振袖みたいな重々しい衣装の男性達も踊るという、異色な一幕です。
通常は湖に行く途中で踊れられる哀愁を帯びた王子のソロも、パ・ド・トロワに挿入されています。
タイロン・シングルトンは長身でスタイルが良く、エレガントにとても丁寧に踊っているのが好感が持てます。
美術は黒を多用して、暗めで重厚な雰囲気、女性の衣装も、黒や茶やダークな色合いを中心に、中世風にレースを重ねるようなものが多かったです。
友人達と宴を催していると、王妃が現れて、「喪中なのに、なんて不謹慎なことをしているのです!あなたは王に即位しなくてはならないのですから、明日の晩餐会では、このお姫様の中から結婚相手を選びなさい!」と三枚のお見合い写真(大きな本のようになっていて、従者が開けて見せます)を持ってきます。
王妃は王を亡くした悲しみで老け込み有無を言わせません。

鬱々とした王子はベンノと湖へ狩に行き、白鳥と出会って…という二幕はほとんど通常と同じです。
オデットが身の上をマイムで語るシーンもあります。
白鳥が4羽かける4列で16名というのは、ツアー仕様だからなのか、もともとそういう構成なのか、少々物足りません。
白鳥たちはフォーメーションを頻繁に変えます。
前列に2009年のローザンヌ・コンクールでスカラシップを受賞した水谷実喜さんがいました。他にも東洋系の方が3人ぐらいいました。

セリーヌ・ギッテンスはトリニダート・トバコ出身で、2006年のローザンヌコンクールのファイナリストだそうです。黒人というよりは、少し褐色系の肌色ですが、かなりドーランを塗っているらしく、黒人という感じはまったくしませんでした。手足が長く、顔もかわいくて、ポリーナ・セミオノワに雰囲気が似ています。
彼女も高い身体能力を過剰に見せることなく、上品にすべてをコントロールして、差し出す足先の一歩も丁寧に踊っていて好感が持てました。
シングルトンとの並びは背の高さもヴィジュアルもぴったりお似合いで、この二人は黒人の持つ並外れた身体能力を上手に、きれいに見せることを心得ていると思いました。

四羽の白鳥は、水谷さんも左端に入っていましたが、ピッタリと揃って見事でした。

そして休憩をはさんで第三幕は、王子の花嫁候補は3人です。
それぞれがソロを踊った後に、各国の踊りがあります。
ハンガリーの王女は、2007年のローザンヌ・コンクールで印象に残ったデリア・マシューズ。金髪美人で、踊りもきっちり正確でなかなか迫力がありました。曲は何の曲がわかりませんでした。
ポーランドの王女の曲は、ロットバルトのソロで使われる曲でした。
イタリアの王女が水谷さん。チャイパドのヴァリエーションの曲で、アレグロの速さにピタピタと軽やかにあわせる音楽性が素晴らしくて、彼女はこれからどんどん昇格していくと思いました。

オディールに扮したギッテンズは、白鳥の時よりも幼く感じるようなカラリとした可愛さ。あまり悪意のない小悪魔ちゃん、といったところでしょうか。
演技は過剰ではありませんが、程よく、ヴァリエーションも大変にきっちりと見事に踊ります。
オディールのグラン・フェッテはダブルを最後まで挟み込みながら、ほとんど場所の移動なしにきれいに回り、体の軸がしっかりしているのがよくわかりました。

第4幕では、白鳥たちのコールドバレエがあり、その後オデットが悲しみにくれてやってきて、そして王子がやってきてオデットに許しを請います。ロットバルトが現れて二人をいじめ、王子がオデットを頭上にリフトし、バズーカ砲のようにロットバルトに向けると、愛の力でロットバルトは弱ります。しかし、現世では結ばれることはないとオデットは湖に身を投げてしまいます。
王子もその後を追って飛び込もうとするのを阻止しようとするロットバルト。
ロットバルトを押しのけて身を投げる王子。
白鳥たちがロットバルトをつつき、ロットバルトは滅びます。
あの世で結ばれる王子とオデット。
現実の世界では、王子の遺体を抱いたベンノが現れて、幕となります。

黒人の主役カップルという事に注目していた公演でしたが、ギッテンズはビジュアルは白人に近いので、人種のことはあまり気になりませんでした。
先日、遅ればせながら、映画「ファースト・ポジション」を観たのですが、あれに出てくるシエラネオレ出身の女の子ぐらいだったら、白鳥を踊るのはやはり違和感があるだろうと思ったのです。
白鳥と黒鳥、善と悪。
そういう決め付けはいけませんよね。
だから、ダンサーが黒人ならば、いっそのこと衣装の色を逆にして、オデットが黒の衣装、オディールを白の衣装にしたら、そしてもちろん群舞も黒い衣装にしたら、もうそれだけでも、まったく違う物語になってしまうかもしれない、などと妄想していました。
白鳥の湖は、いろんなヴァージョンがありますが、まだそういう版は作られていません。
クラシックバレエの世界には圧倒的に黒人の数が少ないですから。
ハーレム・ダンスシアター、あるいはキューバ国立あたりで、そういうのやってくれないかな。


ぴかぴか(新しい)




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2015年03月31日

「ジゼル」ザハロワ&ボッレ

2015年3月15日(日)2PM ゆうぽうとホール

ジゼル スヴェトラーナ・ザハロワ
アルブレヒト ロベルト・ボッレ
ヒラリオン 森川茉央
バチルド姫 吉岡美佳
ミルタ 奈良春夏

女王の風格でプリマとして君臨するザハロワには、ジゼルには似合わないのではないか…
という思いを裏切ったのが、DVD化された2006年ミラノスカラ座の「ジゼル」
とにかく美しかった。
それから9年。
「ジゼル」と「白鳥の湖」はバレリーナにとって特別の意味のある作品らしい。
白鳥のオデットとオディールを踊り分けること。
ジゼルの乙女らしさ、そして狂乱の場面を演じきること。

白鳥はテクニックとして難しい部分があるので、年齢を重ねていくと踊るのが難しくなるが、ジゼルはその点、32回転のフェッテのようなものはないので、かなり年配になって技術よりも演技力や情緒性の部分が増しても十分観客を感動させることができる。
往年の谷桃子先生のジゼルを子供の頃に見て感動したことを覚えている。
新国立でのダリア・クレメントヴァのジゼルも、一幕では年齢を感じさせないかわいらしさだった。

さてザハロワは、このところボリショイでは、若手ダンサーを育てる立場になっているようだ。
ワールドバレエデイのレッスン風景でも「孤高のバレリーナ」とでも言うような他を寄せ付けないような雰囲気をただよわせている。

9年前は、ただ踊っているだけで美しかったザハロワだが、出産後は、あばら骨が目立つほど痩せて、悲壮を感じるほどだ。今は、ジゼルという役柄をこう演じたいというしっかりしたプランを持って踊っている。
踊りが好きだけれども控えめで、箱入り娘のようにうぶで。
差し出す足先ひとつとっても、丁寧である。

ボッレはもうすぐ40才とは思えないほど若々しくて美しい。
ベージュ系のマイ衣装は、美しい脚と美しいヒップのラインを際立たせる。
こんなベージュ色の衣装が似合う奴はそうそういない。

ウィルフリードの岸本君は、マイムもエレガントで、貴族につかえる者らしい。彼のアルブレヒトが見たい、と思わせるほど、踊らなくてもたたずまいが良いのです。

ザハロワもマイ衣装らしく、白いクラシックチュチュにブルーのサッシュとエプロン。
東京バレエ団の方々のパ・ド・ユイットやコールドバレエはアンサンブルが良くなってきているのだけれど、この中に衣装の雰囲気もスタイルも違うザハロワはまるで妖精さんがひとり混じっているよう。

せめてもう少し衣装が東京バレエ団となじみがあるような暖色系のものだったりすればよいのだが、たとえていえば、月から来たかぐや姫が、百姓たちの中に一人まざっているようなもの。

狂乱の場面でも、ヘアもあまりぼさぼさにはならない。
美しくダウンへアになった感じで、美しさを壊さないように狂っていく、というか美しくないように見せることのほうが彼女の場合は難しいのかもしれない。

ボッレは、あまり濃い演技はしない。彼ほどのイケメンで踊り上手ならば、もっと、どうだっ!という俺様モードになったり、ナルシストになってもよさそうなものなのに、彼にはまったくそれらがない。
容姿にも身体能力にも恵まれて、コンプレックスのない人というのは、このように毒にも薬にもならない雰囲気を身に着けるのだろうか…などと考えてしまった。それほど、美しいけれど私の心にひっかからない。
たぶんボッレはコンプレックスがないから人を恨んだりしないし、きっとすごく性格がいいのだと思う。
踊りは素晴らしい…ウィリーに踊らされる場面で、連続のアントルシャをやるのを見たのは清水健太さん以来だ…素晴らしいというか凄い!!
それにサポートがめちゃくちゃうまい。ザハロワが、まったく体重がないようにふわっとあがる。
だけどもっと…なんというか…せっかく東京バレエ団のアドバイザーとしてマラーホフが来ているのだから、もっとロマンティックにやって欲しかった。

でもおそらくマラーホフも少しは演技指導したのだと思う。第二幕では、ザハロワとボッレは視線を合わせないように踊っていた。それは、マラーホフの解釈で、アルブレヒトは精霊になったジゼルを感じることはできるけれども、見ることはできないから、二人の視線は合うことがない、という。
二幕では、ザハロワも、思う存分妖精らしさを発揮できて、お墓から出てきたところも高速回転で、ジャンプも高くて素晴らしかった。
ボッレも最後に夜明けが来て、ジゼルのお墓で泣き崩れるところは、彼の慟哭が伝わってきて良い演技だった。

第二幕のジゼルのヴァリエーションでは、ピクリともせずに脚を6時のポーズまでもっていくザハロワの身体能力と集中力のすごさを堪能した。

ミルタの奈良春夏さんは、ふわっとして空気の精の感じはよく出ていたが、ミルタの恐ろしさや冷たさ、威厳のようなものはあまり感じられず。東京バレエ団のミルタといえば、なんといっても井脇幸江さんの絶対零度のようなミルタが印象に残っているが、井脇さんの温度をさらにマイナスして氷点下ぐらいに客席を凍らせてくれるミルタを待ち望んでいる。

ウィリー達のコールドバレエは良く揃っていて見事だった。特にヒラリオンとアルブレヒトをいけにえにして連れて来る場面で、舞台を斜めに一列に並ぶところは一糸乱れぬ直線で息を呑むほどのビジュアルであった。




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2015年02月18日

IBCバレエ団「眠れる森の美女」

2015年2月15日(日) 3PM ゆうぽうと
オーロラ姫 松岡梨絵
デジレ王子 ジュゼッぺ・ピコーネ
カラボス 橋本直樹
リラの精 井脇幸江

井脇幸江さんは、斉藤友佳里、吉岡美佳と同世代で長い間、東京バレエ団の3本柱として活躍していました。
古典ではジゼルのミルタ、眠りのカラボス、ドンキのシプシー、ラ・シルフィードのエフィなどの重要な脇役で、舞台を引き締める役どころで、コンテンポラリーでは春の祭典の生贄など、主役級をレパートリーにしていました。
プリンシパルと言っても、常に主役を踊る斉藤さんや吉岡さんとちがって、キャラクターダンサー的な扱いだったと思います。
実力がなかったわけではなくて(それはIBC立ち上げ公演の素晴らしいジゼルで証明されています)、タイミングや団の事情などによるものだったと推測します。
だいたい東京バレエ団は、海外からのゲストを主役にして公演する事がほとんどだったから、団員を主役として育てる環境があまりなかったとも言えます。
東京バレエ団を辞めずにいたら、ミストレスや、付属バレエ学校の教師(校長)をしながら、時々王妃とかの立役をやるような未来だったかもしれません。

バレエ学校からダンサーとして育ててくれた東京バレエ団を飛び出し、IBCというバレエ団を立ち上げ、ダンサーが心から楽しいと感じて踊る事のできる舞台を作りたいという、井脇さんの野望というか、野心とチャレンジ精神には感服していますし、心から応援したいと思っています。
立ち上げ公演のジゼルでは、井脇さんの目指したような舞台になっていたと思います。
その後、ガラとドンキ全幕などは観なかったのですが、今回は、元Kバレエの松岡梨恵さんがオーロラを踊るというので、楽しみにしていました。

松岡梨絵さんは、キラキラしたオーラを放ち、優雅で上品な美しさあふれるオーロラでした。
Kバレエ時代踊ったオーロラが素晴らしかったと友人に聞いていたので、噂以上の演舞が観られて大変満足です。今、日本のプロフェッショナルなバレエ団を見回しても、松岡さんのような美しい容姿と輝き、正確なテクニック、女性らしい柔らかさを兼ね備えたダンサーはいないと思います。

王子のピコーネさんは、すごいイケメンで長身。松岡さんと身長の釣り合いもいいし、本当に絵に描いたような美男美女。だけど踊りは重かったです。いくつなのかわかりませんが、結構年なのかも?

カラボスの橋本直樹さんは柔軟で伸びやかな跳躍は健在で、マネージュしまくりでした。
カラボスを男性が踊るのはよくある事ですが、役の設定自体が男性というのは初めてです。目からウロコです。
ただ、橋本さんって、もともと持っているオーラが明るいので、憎しみや嫉妬まみれのカラボスのダークさとは相容れない個性なんですよね。踊りそのものが明快で爽快なものだから、どうしても伝わってくるものが陽性なんです。
松岡さんと並ぶとちょっと背が低いけど、夫婦だからサポートは慣れているだろうし、橋本さんが王子でも良かったのにと思いました。
井脇さんのリラの精は、観ていた時は、だいぶテクニックが落ちちゃったなぁと思ったのですが、なぜか舞台が終わった後に、頭の中でぐるぐると浮かんでくるような、不思議な存在感がありました。観客に訴えかけてくる力は健在だったようです。

メインの4人のダンサーと、元東京バレエ団の方々、そしてある程度のレベルに達している数人のダンサー以外は下手すぎて、これはプロの舞台として見ていいのか、それともアマチュアの贅沢な発表会として見た方がいいのか困りました。特に妖精たちのレベルが、先週見た東京バレエ団の踊りと違い過ぎるし、コールドの中に足先も伸びない子がいて興ざめでした。これだったら、私の地元のバレエ学校のジュニアちゃんたちの方がもっと上手じゃないかと思います。
いちおう9千円も払ったし、それだけの舞台になっているだろうと思っていたのですが、これでは高すぎると感じました。ジゼルの時は値段に釣り合わないとは感じなかったのですが、演目の選択の問題でしょうか。

眠れる森の美女のようなグランドバレエでは、まず生オケの演奏、宮殿の豪華なセットと貴族達のゴージャスな衣装、ある程度の人数も揃えないと、見応えのある舞台にするのは難しいようです。
井脇さんの演出は、カラボスを男性に設定し、オーロラが黒バラのトゲに刺される設定により、糸紡ぎうんぬんのシーンをバッサリカット、幻想の森もオーロラのヴァリエーションは無くて、パノラマの音楽も使わず、休憩2回でも3時間のかなりの短縮版。
カタラビュットがカラボスに猫に変身させられたり、赤ずきんちゃんが増殖して狼を追い払ったりと、ユニークなアイデアが光っておりましたが、いかんせん、グランドバレエとしては予算が一桁足りないようでした。
芸術にはお金がかかりますからね。
ジゼルなら男性もそんなに必要ないし、セットも豪華でなくてもよい。
井脇さんのチャレンジと、松岡さんをゲストに呼んでくれたという事はいいのですが、身の丈というか、IBCの現実に即した作品を選んで上演して、レパートリーを増やすよりも質を高めるほうがよいのではないかと思いました。

ぴかぴか(新しい)
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2015年02月12日

東京バレエ団「眠れる森の美女」川島&岸本

2015年2月8日(日)2PM 東京文化会館
オーロラ姫 川島麻実子
デジレ王子 岸本秀雄
リラの精 三雲友里加
カラボス ウラジーミル・マラーホフ

マラーホフ版の眠りは、まさにマラーホフの「バレエ絵本」ですね。
彼の大好きな紫色とバラの洪水。
マラーホフの大好きなお菓子のパッケージみたいな妖精の衣装。
マカロンみたいな色使い。
初演の時には、猫ちゃんたちの衣装が、かわいい系ではなくて豹柄だったのでちょっと違和感がありましたが、考えてみたら豹柄もマラーホフが好きそうです。
マラーホフが、自分が好きなものだけを詰め込んで作ったこのヴァージョンを上演するのは、これからは東京バレエ団だけになるのでしょう。
マラーホフのいたベルリンでは、新芸術監督のナチョ・ドゥアトは自分の作った版を上演するだろうし。

王様とか貴族たちの衣装などは、体格が見劣る日本人では着こなせないと初演時に感じましたが、今回この作品を見ていて、これはこれで、なんだか生身の人間でなくてお人形たちが演じているような雰囲気が出て、面白いような気がしてきました。

思えば、初演時はマラーホフが王子でヴィシニョーワがオーロラ。
ただでさえ耽美すぎる美術と衣装に、さらに濃い二人で、もうお腹いっぱい。
その点、淡白な日本人が演じると、くどさが薄まって、ちょうど良い。

川島さんは、はかなさを感じさせるほど細くて、清潔感があって、初々しいオーロラでした。
テクニックもあるようで、ローズ・アダージオでは、王子の顔をにっこりと微笑んで見てから、手をアンオーに上げていました。この場面、表情が固くなるダンサーが多いですが、川島さんはそんなこともなく、あぶなげなくバランスを取っていました。
しっかりしたテクニックがあるのに、そんなことをひけらかすようなことはせず、ひとつひとつの踊りを丁寧に踊っているのがとても好感がもてましたし、必要以上に表情を作ったりしないところも良かったです。
初役だとはとても思えないほど、安定した踊りと演技で素晴らしかったです。

そして岸本王子!!
登場のシーンでの、びっくりするぐらい高い跳躍が美しい。
踊りの質がとても良いダンサーですね。
指の先までエレガントです。
男性ダンサーは、ジャンプをするときに力んでいるように見えることが多いけど、岸本さんはまったく力みなくふわっと跳躍します。特に王子のヴァリエーションでは、マラーホフ仕込なのか、猫のようにまったく着地音のしない、美しいジュッテでした。
すごいポテンシャルを感じます。これからどんな風に進化するのかとっても楽しみです。

妖精さんたちも、コールドもみんな揃っていていい出来だったと思います。
カナリアの精を踊った沖香菜子さんが、生き生きとしてかわいくて目を惹きました。
サファイアを踊った河谷まりあさんもかわいかった。
お二人のオーロラも見たいです。

ぴかぴか(新しい)

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2014年12月07日

2014年ボリショイバレエ「ドン・キホーテ」アレクサンドロワ&ラントラートフ

2014年12月6日(土)12:30 東京文化会館

キトリ/ドゥルシネア:マリーヤ・アレクサンドロワ
バジル:ウラディスラフ・ラントラートフ
ファニータ・ピッキリア:アンナ・レベツカヤ、ヤニーナ・パリエンコ
エスパーダ:ルスラン・スクヴォルツォフ
街の踊り子:アンジェリーナ・カルポワ
メルセデス:クリスティーナ・カラショーワ
ジプシーの踊り:アンナ・バルコワ
森の精の女王:アンナ・ニクーリナ
キューピッド:ユリア・ルンキナ
第1ヴァリエーション:アンナ・チホミロワ
第2ヴァリエーション:アナ・トラザシヴィリ

マリーナ・アレクサンドロワというバレリーナは、なんという人なんでしょう!!
突き刺すようなポワント、ダイナミックなステップと跳躍、
軸がしっかりしていて脚も高くあがるし、踊りが大きい!
表情もキュートだし、明るいオーラで場を満たす。
そして、舞台の上でその人物になりきって生きる、ということだけではなく、
彼女の伝えたいことが、まるでテレパシーのように会場全体に伝わってきました。

第1幕のパ・ド・ドゥ。
真っ赤な衣装の彼女が、ラントラートフのサポートで踊る、
それは恋人同士の幸福にあふれたもので、
とても楽しい場面なのですが、そこで私はマーシャが
「怪我をしてつらい時間があったけれど、
こうして舞台に戻ってきて、私の大好きな日本の観客の皆さんに、
私の踊りを見てもらえて、本当に嬉しい、幸せ!
この喜びをみなさんに伝えたい」
と心で叫んでいるように感じて、思わず涙が出てきました。
涙するような場面じゃないのに、不思議…

2013年夏のロンドン公演のバヤデールで、ラントラートフとぶつかってアキレス腱損傷、
復帰には半年以上かかったでしょうし、リハビリも大変だったでしょう。
そういうことを知っている私だから、マーシャの心の声が聞こえたのかもしれないけれど、
でもマーシャが大怪我をしたと知らない人でも、あのマーシャの
「この喜びをみんなに伝えたい」というテレパシーは絶対伝わっています。

だからか、終了時のカーテンコールはすごい熱狂で、最後の方は1階はオールスタンディング。
何度もカーテンからマーシャとウラドが出てきて、いろんなお辞儀やユーモアでサービスしてくれた。
マーシャは上階を指差して手を振ってくれて、もちろん私も手をいっぱい振って。
「こんな素敵な舞台を見せてくれてありがとう!!おかえりマーシャ!!」

思えば私がマリーヤ・アレクサンドロワを初めて見たのは、2005年ボリショイバレエ来日公演のバヤデール。
ニキヤがザハロワ、ソロルがツィスカリーゼ、ガムザッティがマーシャという黄金トリオ。
ツィスカリーゼが面白すぎて、ニキヤが美しすぎて、ガムザが高貴で、楽しくて素晴らしすぎて、
今でも強く記憶に残っていて、その記憶を上書きしたくないので、今回のバヤデールは行かなかったほど。

その後ガラでもマーシャを見たけれど、あのころは、顔は昔のエリザベス女王みたいだし、
体型は大きくて少しごついし、貫禄ありすぎて、好みのバレリーナではないなぁ、と思っていました。
妖精さんみたいなみかけで愛らしい系で、でもパワフルなバレリーナが好きなので。
でも、マーシャの気さくで愛嬌のある性格などを知っていって、だいぶ親近感が沸いてきたし、
あのダイナミックでスカッとする大きな踊りは、キトリにはぴったりだし、
YOUTUBEで、居酒屋のシーンの飛び込みの大胆さを見たりしていくうちに、
絶対キトリを見たい、と思うようになりました。

今回はその望みがかない、マーシャだけでなく、ソリスト陣のレベルの高さにもうならされました。
特にキャラクターダンサーがさすがですね。
このドンキって、新国立のヴァージョンとほぼ同じなのですが、
新国立だと眠くなる「ギターの踊り」もすごい美女が踊って迫力だし、
街の踊り子のカルボワ、大人っぽくて美しくて、エスパーダへバラの花でくすぐって、
色仕掛けという言葉がぴったりぐらいななまめかしさ。

ボリショイ風、とでもいうようなダイナミックな踊りをするダンサーが多いです。
第1ヴァリエーションを踊ったチホミロワはジャンプがふわっと高くてキレがありました。
第2ヴァリエーションのトラザシヴィリは、手足が長くてプロポーション抜群でした。

コールドダンサーたちもみな美しくて、第3幕の貴族たちの衣装が、
スペインのエリザベス1世みたいな大きな白い襟飾りのついたものですが、
日本人だったら絶対これは似合わないというようなものが似合うこと。

バジルを踊ったラントラートフは、回転技、ジャンプもしなやかで
大きな拍手をもらっていました。
マーシャとの演技もラブラブ〜で、もしや私生活でもこの二人???
と思うぐらいでした。


ぴかぴか(新しい)


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2014年11月11日

東京バレエ団50周年記念「第九交響曲」

2014年11月9日(日)6時 NHKホール
映画「エトワール」で見たときから気になっていた第九を、ついに見る事ができました!

これはバレエ公演というよりも、オーケストラとソリスト、合唱団、ダンサー、その場にいる観客すべてが、空間と時間を共有する「ライブ」です!

楽しかった!!

ベジャールは、普段の公演では、あえてオケを使わず録音音源ですが、この作品で目論んでいたのは、おそらくこのライブ感、祝祭感、生きる喜びを共有する事。

これは、録音音源や、テレビ画面では絶対に味わえない、その場にいなければ感じ取ることのできないたぐいのものです。

総勢350名の出演者、数が多ければいいってわけでもないけれど、大勢の熱気、パワー、エネルギーがいつのまにか会場を満たし、その暖かいオーラに包まれた幸福な時間。

ズービン・メータさん率いるイスラエル響(かなりの大編成)の演奏が素晴らしく、管楽器、特にホルンは、前日の新国立劇場眠りのオケに爪の垢でも煎じて飲ませたいくらい美しい音色でした。

いつもバレエ公演の伴奏でしかオーケストラを聞いてないので、一流のオーケストラはこんなにも違うものかと驚きます。

舞台は通常ならばオケピットになる位置までせり出して円形のバスケットコートのようなライン引かれた床です。

どこか体育館のようなスポーティな感じでもあり、観客席に向かって踊る時もあれば、中央の円に向かって踊る時もあり、これは絶対上の席から俯瞰して見た方が、フォーメーションが分かって面白いでしょう。

中央に画かれた円形のラインは、時にはこの空間をつかさどる魔法陣のようにも見えます。

ベジャールは各楽章を、土火水風としているそうで、衣装(ユニタードのようなシンプルなもの)は茶色、赤、白、黄色でした。

それぞれの楽章で核となるソリストの踊りがあり、ソリストを丸く囲んでコールドが踊る、いわば拡大版ボレロのようなシーンが多かったです。

第九と言えば、熊川哲也さんがKバレエの為に作った「ベートーベン第九」という作品があり、私はかなり好きなんですが、そちらは、火山、海、生命の誕生、人間達の祭、というテーマをそれぞれの楽章に当てはめています。

そのKバレエの第九を見る時に、いつも眠くなってしまう第3楽章。
少しゆっくりしたテンポで大変美しい音楽ですが、ベジャール版ではここで大ベテランのエリザベット・ロスとジュリアン・ファブロー投入。

2人のアダージョにもやや眠気を覚えてきた所、指揮者のメータさんが、体の向きをかなり観客側に変えて、下の舞台で踊る二人を見ながら指揮を始めたのです!

これにはしびれました。
メータさん、なんて穏やかで優しい顔つきなんだろうと。

こんな指揮者と舞台を作れるダンサーは何て幸福なのだろうかと。

メータさんのおかげで乗り切った第3楽章のあとはお待ちかね歓喜の第4楽章。ソリスト陣の歌声は第一級でしたし、ここでやっと登場した黒豹のようなオスカー・シャコン、女黒豹マーシャ・ロドリゲスも素晴らしく、アフリカンダンサーたちも祝祭の輪に加わり(全然踊ってなかったみたいだけど、列になって歩くところに出てきました)
フィナーレを迎えます。

東バのソリストもなかなか良かったですが、やはりベジャールのダンサーたちは身体のキレがよくて、大貫真幹さん、オスカー、マーシャ、2幕のキャサリンティエルヘルムも素敵でした。

2幕には冲香菜子さんも出てきて、とても楽しそうにノビノビと踊っていたのが印象に残っています。



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2014年11月09日

新国立劇場バレエ「眠れる森の美女」米沢&ムンタギロフ

2014年11月9日(土)2PM オペラパレス
オーロラ 米沢唯
デジレ王子 ワディム・ムンタギロフ
カラボス 本島美和

大原芸監でのシーズンオープニング公演。
どんなゴージャスな眠りを見せてくれるか期待していました。

舞台装置は豪華で、宮殿のセットが袖幕の数でいくつも重なり、1幕は重厚な彫刻、3幕はルイ王朝風の絵画が描かれていて、こんなに立派な眠りのセットは、今まで見たことがないという程。
衣装もお金がかかってそうでしたが、童話のイメージなのか、色合いがなんとも言い難い…
宮殿の男性たちが、ブルーの服に真赤なタイツと靴を履いていたり、女性はワインカラーのロングドレスでエプロン付けてるから、この人たちはみんな召使なの??…とか。

一番残念だったのは、妖精たちの衣装が同じだったこと。
オーソドックスに、パッと見て見分けがつくような色違いのチュチュにして、リラのお付きの妖精たちはリラ色の衣装にして欲しかった。

どうせ新国立劇場のプロダクションでは
大胆なストーリーの読み替えや演出など望めないのだから、装置や衣装にこだわるのは致し方ないにしても、妖精とリラの精たちは、基本を抑えてくれてもいいのに。
バレエを習ってる子達のためにもね。


衣装で良かったのはカラボスですね。
カラボスは蜘蛛の化身なのか、大グモの乗り物も、ハリーポッターみたいでしたが面白かったです。消える時に歌舞伎で使う糸を吐くのも、いいアイデアでした。
でもこれって、山岸涼子「テレプシコーラ」に出てましたね、まさかパクリ?

衣装も良かったけれど、本島さんのカラボスは、美しいし狂気じみた怒りの表情もきまっていて、カラボスと呼ぶより、マレフィセントと呼んであげたい。まさに適役。この舞台で受けた感銘の30%くらいを占めてます。

2幕に森の精たちの素敵なコールドバレエがあるのだけど、衣装が強烈な緑色で、カラボスの衣装も緑だから、この人達はもしかしてカラボスの手下なのだろうか?
むしろその方が面白かったりして。

オーロラの衣装はシンプルすぎませんか?1幕はやはりピンクの方がいいし、3幕は結婚式だから、もっとゴージャスにしてくれないと!!

なぜか2幕の幻想のオーロラが、ブルーのお花などがいっぱいついていて、一番かわいい衣装でした。


100年の眠りから覚めて王子と踊る「目覚めのパドドゥ」では、まるでジュリエットな衣装でしたが、ここで二人がパドドゥを踊ることで、幻想の中でしか会っていなかった二人に、自然に愛の感情が生まれるという、ストーリーの流れができました。ラストに二人のキスで幕が降りるのもロマンチック。

3幕は宝石、猫、赤ずきんと狼、青い鳥、親指トムが出てきました。親指トムというのが珍しいけど、小柄な技巧系ダンサーの為に作った役らしく、八幡さんが、素晴らしいテクニックを披露して、まさにショーストッパー。


宝石の女性3人はキビキビとして良かったのですが、堀口さんがすべって転び、その後ポワントの具合がおかしくなったみたいに見えて心配しました。


青い鳥は小野&管野でさすがプリンシパルの安定感はありましたが、初々しさとか可愛らしさはなかったです。可愛らしさど言えば、以前テレビドラマで石原さとみがバレリーナに扮して青い鳥を踊った時、踊りはともかく雰囲気とか表情がとても可愛らしくて、まさに理想的なフロリナだったので感心しました。

それはそうと、小野さんはもともと小柄で可愛らしい系のプリマだったのに、いつの間にか大人っぽいプリマに変貌してきていますね。もうフロリナが似合わないくらいに。

主役の二人について話しましょう。
ワディムは今や飛ぶ鳥を落とす勢いのライジングスター。
長身でスタイルが良くサポート上手で、実は凄い荒技も繰り出すテクニックと運動能力の持ち主。
通常の540(ファイブフォーティ)にプラスαで、もう半回転ぐらいやっちゃったりします。

そのような荒ぶる技は今回は封印して、端正な王子を70%ぐらいの力で リラックスして演じてた感じです。

ザンレールはきれいに5番にはいるし、ピルエットも10回ぐらいまわっちゃうし、言うことありません。眠りじゃなければ、あの荒技も見たかった。

米沢唯さんは、1幕、2幕、初々しくて清潔感にあふれるオーロラを演じ、ピルエット3回転をピタリと音のなかに入れて、凄いことをやってるのに、あまりにサラリとしてるので、驚きを通り越して、それが普通みたいに思えてしまいます。

でも唯さんの個性なのか、まるで白いハンカチみたいな感じで、あっさりしすぎて物足りないのです。特に3幕。

幸せにあふれた、こぼれるような女性らしい美しさ、満ち足りた雰囲気。
花のかぐわしい香りで舞台をおおうようなオーラが欲しい。

ワディムさんと唯さんとのケミストリーが感じられなかった。
バドドゥの最後のコーダで、ふわっとして重力のないようなリフト、唯さんのフェッテの入った連続技のあたりは、お二人の熱が入っていて、観ているこちらも盛り上がりましたが、ああいう所をもっと早くから出していれば良かったのにね。
唯さんは初役だし、初めて組む相手だったという事もあったのかもしれません。
唯さんは、あれだけのテクニックの持ち主なのだから、これからはプリマとして[美しく存在する]ことも是非勉強して欲しい。と言っても、これは勉強することじゃないけれど。

やはりプリマは美の象徴だから、舞台が終わったら、ジーンズ姿で普通に横にいるような女の子じゃなくて、赤いドレスを着た手の届かないような存在であって欲しい…
これはあくまでも比喩ですけどね、昔のプリマは、マーゴット・フォンティーンやアリシア・アロンソなど皆オーラがあって女優のように美しかった。

今の時代でもタマラ・ロホやアニエス・ルテステュなど見て下さい。



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2014年11月05日

NBAバレエ「ドラキュラ」

2014年10月25日(土)18時30分 ゆうぽうと

演出・振付 マイケル・ピンク
音楽 フィリップ・フィーニー
美術 レズ・ブラザーストーン

ドラキュラ 大貫勇輔
ジョナサン・ハーカー 久保紘一
ルーシー 田澤祥子
ミナ・ハーカー 峰岸千晶

久保紘一さんが芸術監督に就任してから、NBAは変化をとげつつあります。
今回のドラキュラ日本初演も、大変野心的な試みですばらしいと思います。
全幕バレエではありますが、クラシックバレエというよりも、演劇に近いような作品です。

第1幕はジョナサン・ハーカーがトランシルヴァニアでドラキュラ伯爵にとらわれて、
命からがら帰ってきたもの悪夢になやませられる、というような話で、
セットは暗く、音楽も不安をかきたてるようなパーカッションを多用していますが、
話がよくわかりませんでした。
なぜ2回も結婚式をやるのか、とか、あとでロビーのあらすじを読まなくてはならなかったです。
HPに書いてあるものと、ロビーのものは内容が違いました。
ドラキュラと芸監である久保さんの男性二人のパ・ド・ドゥは、鬼気迫る感じで印象的でした。
そのあと三人の女ドラキュラがハーカーのベッドの下から出てくるところで、はじめてドラキュラっぽさを感じました。
ルーマニアの民族舞踊的なものは、長すぎて退屈しました。

階段を中央に置いた高低差のあるセットに、背景の海の青さが美しいのが第2幕です。
第2幕は1幕とは違って明るく、ルーシーを中心に、クラシックバレエのテクニックを使ったダンスが続き、ルーシーの田澤さんは、難易度の高い振り付けを踊りこなして上手でした。

第3幕は、また暗い感じのセットになります。上手側の高い所に精神を病んだ男がいて、
その高さからドラキュラがあらわれて、セットにぶらさがりながらゆっくり下まで降りてくる、
そのゆっくりさ加減がなんとも不気味でした。

この公演の成功は、ひとつは大貫勇輔という、ものすごいダンサーをドラキュラに据えたことにあります。
まだ26才、本格的にバレエのレッスンを始めてからまだそんなに経っていないそうですが、
180センチ以上ある恵まれた体躯に加えて、世界的に見ても高い身体能力、表現者としての自覚とその目指しているレベルの高さ、観客をとりこにする身にまとったオーラとカリスマ性。
(カリスマ性は、このドラキュラという役には絶対に必要です)

ドラキュラをこれだけ完璧にやれるのは彼以外にいないんじゃないか、そんな風に感じました。
残念ながら、クラシックバレエダンサーとしての彼の能力を発揮する機会が少なめで、
もっとソロを踊ってみせてほしかったです。
彼ならば、小さい時から訓練を受けていれば、ルグリにもなれた…そんな気がします。
すごい素質と才能の持ち主です。
峰岸さんとのパ・ド・ドゥでのリフトも上手でしたし。
まだ若いですから、これからどっちの方向へいくのか興味深いです。
ホリプロに入ったそうですから、古典パレエには行かないでしょうね。

大貫さんのずば抜けた素晴らしさに比べて、NBAのメンバーは頑張ってはいましたが、
まだまだレベルアップができると思います。
この作品は面白いし、再演を重ねてNBAの財産にして欲しいと思います。

ぴかぴか(新しい)



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2014年08月17日

イルミナートバレエ「白鳥の湖」

2014年8月17日(日)2PM パルテノン多摩大ホール
演出・指揮 西本智美
オデット 中村美佳
ジークフリード王子 法村圭緒
オディール 寺島ひろみ
王子の友人 吉田旭

新国立劇場時代にずっと応援していた寺島ひろみさんが、出産後、初めて出演する舞台を観に行ってきました。
指揮者の西本さんとは、ワガノワ留学時代に同じ寮に住んでいたご縁だそうです。
今回の公演は、ワガノワに留学していたダンサーや、西本さんの幼馴染のダンサーなどが多数出演しているそうです。
西本さんの演出では、オデットとオディールは別人です。
誰しも心の中にある2面性を表現しているそうです。

観客はふだんバレエを見ている人よりも、西本ファンや関係者が多いように見受けられました。
西本さんの指揮は、ご自身のブログでおっしゃっているように、ダンサーの妙技に拍手する暇もないほど、曲間が短く、テンポが速めでサクサクと進行します。
バレエの舞台の場合は、ダンサーが踊りやすいように、テンポを揺らして遅くしたりすることがよくありますが、西本さんの場合は、そういうことはせずに、音楽の完成度の方を重要視しているように感じました。
曲のテンポが速すぎて踊りきれない部分は振付の方を変えて調整していたようでした。
逆に、王子のソロなど、遅すぎて踊りにくそうな所もありました。
西本さんはバレエを習っていたこともあるそうですし、おそらく音楽を重視しながらも、ぎりぎりダンサーが踊れるような絶妙のテンポだったのではないかと思います。
こういうアプローチのバレエ公演は、初めてのような気がします。
音楽は伴奏ではなく、音楽もバレエも共に同じレベルで主役、という意味で、西本さんの目指している所は共感できました。

この公演には男性ダンサーが4人しか出てきません。
王子、友人、道化、ロットバルトです。
夏休みは男性ダンサーの稼ぎ時。
あちこちの発表会にひっぱりだこだから、大勢揃えるのが難しいのかもしれません。
それで演出で、たとえば3幕の舞踏会の部分では、ディベルティスマンをその都度、王子や道化、王妃なども入れて踊るような工夫をして、男性が少ないのをカバーするようにしていました。
日本のバレエ団は常に男性不足ですから、こういうのは上手ですね。
王子役の法村圭緒さんは、踊りもサポートもそつなくこなすノーブルタイプのダンサーですが、演技がわりとあっさりめで少し物足りない感じでした。もっとオデットへの愛が伝わってくるとよかった。
友人役の吉田旭さんは、ジャンプが高くて着地音もしないし、イケメンだし、なかなかいいダンサーでした。
道化役の末原雅広さんはジャンプやピルエットのキレがよく、テクニックがあってとても上手でしたが、道化としては、もっともっと愛嬌とか、可愛らしさがある方が私の好みかな。
ロットバルトのビクトルさんはガタイが良くて男らしくてカッコ良かったです。オディールとのパ・ド・ドゥも、頭上リフトの安定感があって、オディールがきれいに見えました。

ダンサーたちは、関西の方が多いようでしたが、コールドの皆さんは、にこやかに踊っていて良かったです。
4羽の白鳥は最近見た中でもダントツに揃っていました。
オデットの中村美佳さんは、昔新国立劇場で主役を踊っていたダンサーだそうですが、悲嘆の中で感情を抑えつけてしまったオデットなのか、登場の時に地味に感じました。
踊りはとてもしっかりと踊っていましたが、尼僧のようなかたくなさと控えめさとでもいうのでしょうか。
ダンサーによって色々なオデットがあって、ザハロワのあでやかなオデット、マリーアニエスジローの女王のようなオデット、ロパートキナのクールビューティなオデット……ですから、そういうオデットもありだと思いました。

肝心のオディールですが…ゴージャスでした
スタイルも現役時代と遜色なく、脚のラインも美しく、華やかで衣装と同じくキッラキラでした。

今回の誘惑者・オディールの役はぴったりで、別格な印象を観客に与えたようです。
3幕の後にカーテンコールがあって、各国の踊りのソリストなどが出てきました。
ひろみさんは智美さんに投げキッスを送って、大受けでした。

先日の松岡梨絵さんの記事にも書いたのですが、日本では子どもを産んで第一線で活躍するプリマがいません。
この公演も、音楽は一流かもしれませんが、男性ダンサー4人しかいないし、舞台美術は新国立劇場などには及びません。
せっかく長い時間をかけて技術と表現力を磨いていたダンサーが、人生経験を積んでさらに魅力的に踊れる時期だというのに、この状況は残念でなりません。
円熟期を迎えた素晴らしいプリマが、第一級の舞台美術と衣装、音楽の備わった舞台で踊るのを観たい!!
(もちろん相応しい相手役と、脇役、その他コールドも一流で)
というのはファンとしての正直な気持ちです。

ゲストプリンシパルとか、年に数回だけ舞台に出る契約とか、ママさんにとって負担の少ないやり方で劇場、バレエ団と契約はできないのでしょうか。

ママさんプリマの側にとっても、子供を預けるところとか、家事とか、周囲の理解とか、色々とハードルがあるでしょうが、少しずつでもいいから、この状況が変わっていくようにと願っています。
ぴかぴか(新しい)


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2014年08月12日

めぐろバレエまつり「ロミオとジュリエット上映会」

パーシモンホールの小ホールで行われたノイマイヤー版「ロミオとジュリエット」の映像上映会に行ってきました。
この映像は初日の録画で、私が観た舞台は2月8日でしたが、キャストは同じだと思います。
アンコールでノイマイヤーさんも出てきていました。
ジュリエットは沖香菜子さん、ロミオは柄本弾さん。


あらためて、東京バレエ団のロミジュリは素晴らしい!!と感動しました。

主役の二人はもちろんのこと、コールドのすみずみまで、若さがみなぎっていて、大勢のダンサーにもそれぞれ、見せどころがあって、物語のスピーディな展開もいいし、コンテンポラリーといっても、とがり過ぎな振付ではないし。

この2、3年で団員の顔ぶれがかなり変わった、新生東京バレエ団にふさわしい演目だと思います。
ロミオの弾さんは、日本人のダンサーにしては珍しい、たくましい体躯で、頭が多少大きいのですが、王子ではなくこういう役柄なら気にならないですし、男性らしくて、相手の女性ダンサーが可憐に見えるという長所にもなります。
恋の喜びにゴムまりのようにはしゃぐ若者ロミオで、ほほえましくなるぐらいかわいい。
ザ・カブキの弾さんもいいですけれど、ロミオもすごくいい。当たり役だと思います。

ジュリエットの沖さんは、バスタオルを巻いて裸足で踊るシーンの動きがすごくキレがあってvividで、目を惹きつけられます。パンシェの脚がスパッと180度上がるところが気持ちがいいです。
演技も良かった。今の彼女とは年齢も近いし、自然に演じられる役かもしれません。
身体能力が高くて、すごく動けるのに、雰囲気はホワンとしてるのが個性なのかなと感じました。

主役二人のパ・ド・ドゥでは難しそうなリフトもテンコ盛りですが、リフトはたぶん2回目の方がスムーズに行っていたようですが、この初日の方が感情の表出がすごく伝わってきて、最後泣けました。

若いダンサーが大活躍の中で、マキューシオは大ベテランの木村さん。
さすがの演技と踊りでしたが、若手で揃えることはできなかったのでしょうか。
マキューシオを踊れるような若手のダンサーはまだ育っていないという事なのでしょうか。
そのあたりが課題ですね。

ぴかぴか(新しい)








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2014年08月04日

アリーナ・コジョカルドリームプロジェクトAプロ

2014年7月20日(日)3PM ゆうぽうと

「オープニング」
アリ―ナコジョカル
グラズノフのおとぎ話っぽい音楽で星空をバックに、5人のイケメンを従えて踊るお姫様なコジョカル。
さあ、プリンシパル達がっ!と思ったらちょっと違っていて、イケメン達はルーマニア国立バレエ団の芸術監督になったコボーさんが連れてきたダンサー達でした。

「眠れる森の美女」
ローレン・カスバートソン&ワディム・ムンタギロフ
カスバートソンって、この間の冬物語の王妃がすごく良かったので、オーロラには違和感がありました。
おっとりしていて上品だけど、ういういしさや愛らしさが足りないようで。
ムンタギロフはしばらく見ない間に出世して、少年からおっさんぽくなったような(ほうれい線が目出つ)

「HETのための2つの小品」
ユルギータ・ドロニナ、イサック・エルナンデス
出だしはビートのきいた音楽でカッコよかったけれども、後半の静かなパートが長すぎて眠くなりました。
ドロニナは小柄だけれども身体能力高くて美人な魅力的ダンサーです。

「エスメラルダ」
日高世菜、ダヴィッド・チェンツェミエック
日高さん、デカイ!
ダイナミックな個性がありますね。
ヴァリエーションは踊りこなしていて素晴らしかったです。

「ラプソディー」より
吉田都、スティーヴン・マックレー
マックレーはなんて踊りがうまいのでしょう。うますぎる!
アシュトンの細かい振付での方向転換や回転を音楽にぴたりぴたりと合わせて。
もちろん都さんのかろやかさは言うまでもなく。
みんなが一番楽しみにしていたであろう期待を裏切らないスペシャルな出来でした。

「5つのタンゴ」よりソロ
イサック・エルナンデス
ピアソラの音楽に乗って、カッコ良く決めた!!

「リリオム」より ベンチのパ・ド・ドゥ
アリーナ・コジョカル、カーステン・ユング
リリオムはコジョカルとユングにノイマイヤーが振りつけたそうで、どういう場面なのかお話がわからなくてもドラマを感じさせるものがありました。
コジョカル、顔はかわいくても身体能力はギエム並だから、空間を切り裂くその動きにどきっとするんですよね。

「白鳥の湖」 第2幕より
アリーナ・コジョカル、ヨハン・コボー
東京バレエ団
今のコジョカルは、白鳥を踊りたいとは思っていなさそうだけど、マラーホフガラがなくなって、東京バレエ団の抱き合わせ演目が必要だったのかしら。東バの白鳥はフォーメーションがうるさいんですよね。
でも4羽は揃っていて良かったです。
コジョカルは腕の筋肉がムッキムキなので、見た目の造形美があまり白鳥らしくないような。

「海賊」 ディヴェルティスマン
アリーナ・コジョカル、ユルギータ・ドロニナ、日高世菜、ローレン・カスバートソン
ヨハン・コボー、スティーヴン・マックレー、ダヴィッド・チェンツェミエック、
ワディム・ムンタギロフ、イサック・エルナンデス

これは楽しいるんるん
男性のピルエット合戦、勝ったのはマックレー。
女性のフェッテ合戦も見ごたえあり。
みんなの見せ場を上手に作っていました。
最後は観客みんな手拍子。ノリノリでした!
ワディムが540プラス180度で720??みたいな凄い技をやってました。
おっさんぽくなったかと思ったけど、やっぱり若者だったのね。

ぴかぴか(新しい)

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2014年04月30日

英国ロイヤルバレエ「冬物語」ライブビューイング

2014年4月29日(火祝)19:15 海老名イオンシネマ
冬物語
振付 クリストファー・ウィールドン
音楽 ジョビー・タルボット

レオンティーズ エドワード・ワトソン
ハーマイオニー ローレン・カスバートソン
パーディタ サラ・ラム
フロリゼル スティーブン・マックレー
ポーライナ ゼナイダ・ヤノウスキー
ポリクシニーズ フェデリコ・ボネッリ

シェイクスピアの原作を、あのアリスのスタッフがバレエ化!
ケヴィン・オヘア監督の初の物語全幕バレエということで、幕間にインタビューもありました。

第1幕はシシリア王のレオンティーズが、幼馴染の親友ポリクシニーズが妻と不倫をしているのではないかという、猛烈な嫉妬心と猜疑心に突然襲われて、その結果、友も妻も子供もすべて失うという話。

身重の妻が、自分と親友の手をとって、大きなお腹に触らせた瞬間から始まる、狂気のような夫の嫉妬心。
ワトソンが鬼気迫る演技で踊りました。
幕間のインタビューで、振付したウィールドンが、「ワトソンは特殊な筋肉を持っている」と語っていましたが、嫉妬地獄に堕ちるその瞬間、ワトソンの手指がまるでタランチュラのように不気味に動きだし、せむしのように首が引っ込み、膝が曲がった妙なつま先立ちで歩き回り…
ワトソンは、カフカ原作の「変身」を踊って評判になりましたが、その経験がこのシーンで生かされているようで、おそらく振付も彼のアイデアがかなりの部分使われていると感じました。

親友と妻が彫刻を見ながら楽しく話しているだけなのに、それを盗み見しているレオンティーズには二人が不倫している幻覚が見えるというシーンは、照明が暗くなると、一転して二人が絡み合い(レオンティーズの妄想)、明るくなると普通に語らっていて、影でのぞいているレオンティーズがその度に真っ黒な嫉妬心にさいなまされて苦しむ、狂気とただならぬ緊迫感をもった秀逸な場面でした。

その後の身重の妻へのDVシーンは見ているこちらが辛くなります。長いですし。

第2幕は生命の樹のような大きな樹木のセットを中心に、羊飼いたちの生命力と若いパワーあふれる群舞が次々と踊られます。
ここではロイヤルのダンサー達の踊りを堪能できます。
美しいサラ・ラムと、信じられないようなマネージュを見せてくれるスティーブン・マックレーのパ・ド・ドゥもふんだんにあります。
「眠り」では、少し固さがみられたサラ・ラムですが、がちがちのクラシックではない、このぐらいの作品ではとても生き生きとして美しく、マックレーのサポート付きピルエットでは10回転ぐらい軽々と回っています。
この作品では、男性の衣装がほとんどスカート付きで、それが跳躍や回転の時に大きくひるがえって華やかな効果をもたらしているのですが、この幕の群舞では、ただひとりマックレーはスカート履いていませんでした。
彼の場合はスカートの効果なくても踊りがゴージャスですからね。スカートはむしろ邪魔なんで、これは正解です。
2幕はなかなか楽しかったです。

第3幕は、舞台上でミュージシャンたちが、笛やめずらしい楽器を演奏しています。
アコスタ版のドンキでも、舞台上でミュージシャンが演奏していましたが、最近の流行でしょうか。
レオンティーズが悔い改め、ハーマイオニーが自分の娘だとわかり、若い二人が結ばれて、結婚式のお祝いになります。
そこで終わるのかと思ったら、亡くなった妻と息子の彫像を見にレオンティーズが連れて行かれ、そこで彫刻だと思った妻が動き出す(実は妻は生きていた)という短いシーンがあります。
せっかく結婚式の祝祭感があったのに、最後がこの静かなシーンになったので、盛り上がりに欠けると感じました。
シェークスピアの原作通りにしたかったのかもしれませんが、ここは結婚式の場に彫刻を持ってきて、そこで妻が現れて、娘とも再会して、ハッピーエンディング黒ハートの楽しい気分で終わらせて欲しかったのに、なんだかなぁ



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2014年04月27日

新国立劇場「カルミナ・ブラーナ/ファスター」

2014年4月27日(日)2時 オペラパレス

ファスター
闘うFIGHTERS 小野絢子 福岡雄大
投げるTHROWERS 福田圭吾 米沢唯 寺田亜沙子
跳ぶAERIALS 本島美和 菅野英雄 奥村康祐
マラソン 五月女遥 ほか全員

ロンドン・オリンピックの時に作られた作品だそうで、ハイパージャズとでもいうような、早いリズムで押しまくる中、バスケットやフェンシング、陸上、体操、シンクロなどにインスパイアを受けた格好のダンサー達が走る!跳びまくる!!
見ているこちらも心拍数がアップするようなテンションが心地良い。

跳ぶAERIALSのパートで、男性二人にリフトされて、女性が体操の床競技のようなアクロバティックな回転技をスローモーションでおこなうのがとても面白かった。
男性の手のひらだけで支えられて、開脚の姿勢をびくとも崩さない本島さんが実に凛として美しかったです。
同じようにスローモーションでおどられた闘うFIGHTERSのパートは、照明が暗すぎるし、レスリングなのか、よくわからない踊りが繰り返されて退屈でした。

最後のマラソンのパートは、女性はお腹が見える陸上の衣装なので、見事な腹筋が目の保養で、見惚れてしまいました。ランダーのエチュード後半のジュッテの交差シーンのように、走りながらの交差、編成替えが集団行動を思わせて面白い。
スピード感、盛り上がる熱気、そしてマラソンがいつのまにか楽しいダンスのようになっていくシーンの五月女さんの表現が良かったです。

カルミナ・ブラーナ
運命の女神フォルトゥナ 湯川麻美子
神学生1 菅野英雄
神学生2 八幡顕光
神学生3 タイロン・シングルトン
恋する女 さいとう美帆
ローストスワン 長田佳世

カルミナ・ブラーナは合唱付きの音楽にまず酔い知れます。
冒頭の、運命の女神フォルトゥナのシーンは、何度見ても古びないスタイリッシュさがあって、このイメージを作り出した事が作品を成功に導いたと思う。
久しぶりに見たので、だいぶ忘れているところもありましたが、最後に大きな布で舞台を覆って、すべてが無に帰したところで、オープニングのフォルトゥナがまた現れ、同じ踊りがリフレインされ、そして同じ衣装のフォルトゥナがしだいに増殖していくというカタルシスがたまりません!
このカッコ良さは、映画でいうと「マトリックス」で受けたような衝撃と似ています。

フォルトゥナを当たり役にしている湯川さんも、今回は一段と気合が入っていて動きにキレがあり、場を掌握するオーラがありました。
恋する女のさいとう美帆さんがかわいかった。
神学生2の八幡さんは、キレッキレの踊りで凄かったけれど、ダボダボの衣装なので、体のラインが解らなかった点は残念でした。

フォルトゥナと神学生はいいのですが、他の登場人物の設定や衣装のセンスがどうも私にはピンとこないんです。
妊婦と気持ち悪い赤子を背負った母親、時代遅れのヤンキー達はまだ許せるとしても、黒い乳首を描いた
白の全身タイツに男と女の秘部の絵を描いた小さな股エプロンみたいなのしている、裸の象徴的なあのヘンテコ衣装はどうなんでしょう。
イギリス風ユーモアのつもりかもしれないけれど、笑えないんですけれど。


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2014年03月21日

中継:英国ロイヤルバレエ「眠れる森の美女」

2014年3月20日(木)19:15 イオンシネマ
オーロラ サラ・ラム
デジレ王子 スティーブン・マックレー

簡単に感想を。
このプロダクションは、第2次世界大戦が終わって、ロイヤルバレエが再開された時に最初に作られた物の復元だそうです。
そのせいか、舞台美術も衣装のセンスも、どこか時代がかっていて古臭い。
その前に踊られていたダウエル版の方が、しゃれていて好きですね。
スティーブン・マックレーは、音楽的な踊りが素晴らしい。
出番が少ないのが残念。
王子らしい態度とサポートも万全。アラベスクが綺麗です。
サラ・ラムは脚が長くて細くてまっすぐで、彼女もアラベスクがきれいだけど、表現はあっさりだし、古典のテクニックもそれほど強いわけでもないらしく、なんだが全体的に表情も踊りも固い印象でした。
最後の方なんか、なんだかいっぱいいっぱいな感じに見えました。

ロイヤルバレエも、古典をばりばりに踊れるタマラ・ロホとコジョカルが出て行ってしまって、オーロラを踊るのにぴったりな女性プリンシパルがいない!!
サラ・ラムはいまいちだから、ヌニェスぐらいかしら。
だから、大急ぎで育成しようと、高田茜さんやら、小林ひかるさんやら、ユフィさんやらにオーロラを踊らせているらしいですね。
カラボスを踊ったクリスティン・マクナリーが美しくて演技も迫力があって素敵でした!!
リラの精のローラ・マッカロクは全然オーラもないし、踊りも下手だった。
第3幕で宝石の踊りを踊った3人が良かったです。


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2014年03月16日

パリオペラ座バレエ団日本公演2014「ドン・キホーテ」フルステー&エイマン

2014年3月16日(日)3PM 東京文化会館
キトリ(ドルシネア)マチルド・フルステー
バジリオ マチアス・エイマン
エスパーダ ヴァンサン・シャイエ
街の踊り子 サブリナ・マレム
ドン・キホーテ ギョーム・シャルロー
サンチョ・パンサ シモン・ヴァラストロ
ガマーシュ マロリー・ゴディオン
ロレンツォ パスカル・オーバン
キトリの友人 ロレーヌ・レヴィ、カロリン・ロベール
ジプシー マルク・モロー
ドリアードの女王 アマンディーヌ・アルビッソン

パリオペラ座のドンキは、DVDでも見たことがなく、初めて見ました。
特に序幕の演奏から気になったのが、編曲がちょっと変わっている事です。
編曲は、ジョン・ランチベリーです。
ドンキといえば、ミンクスの明るい、単純明快な音楽なのですが、これはいつも聞くのとはだいぶ編曲してあり、たとえば1幕のキトリの踊りのワンフレーズが、本来長調なのに短調にしてあったり、他の部分でもメロディーに細かいトリルなどを付けたしてあったり色々違っていました。
耳慣れたドンキの音楽と比べると、まったくの晴天でなく、時々曇ったり晴れたり、複雑になっています。
ヌレエフは音楽にもこだわりがあったようで、最期には指揮もやっていたぐらいですから、彼好みに、様々なニュアンスを持たせた編曲にしたようですね。

プロローグがとても長くて、ドンキホーテが壁に映った自分の影を曲者と思いこんで、剣で闘いを挑むシーンがあります。これはその後の風車へ突っ込む伏線となっています。

2002年に衣装は一新したようですが、あまりドンキホーテらしくない色づかいで、第1幕の漁師たちはパステルカラー、闘牛士は深いグリーンに赤いマント(補色関係)、第3幕のグランパは、豪華絢爛。
コールドのダンサーは美男美女揃い。踊りも上手で若々しいエネルギーに満ちています。
なかでも美しいのはオニール八菜さん。

キトリ役が次々と降板で、最終的に呼ばれたのは、なかなか昇進できなくて一時サンフランシスコバレエ団に出向しているマチルド・フルステー。
勢いのあるはじけた踊りで、お顔はそれほどかわいくないけれども、キトリにはぴったり。
ジャンプは高くて足音もしない。
マチアスは音符にピッタリはまる気持ちの良い踊りで、パドシャの空中姿勢の形がきれい。

第2幕のジプシーの野営地では、ラ・バヤデールから持ってきた音楽で、キトリとバジリオが恋人同士のパ・ド・ドゥを踊るのですが、こういう抒情的なシーンをたっぷり入れることで、明るいだけのドンキではない、音楽的な幅が出て、全体のメリハリがくっきりすると感じました。
このシーンが終わるとまたドンキの単純(といっては失礼かもしれませんが)な音楽になります。

ジプシーたちの踊りは、照明が暗くて、天井桟敷の私の席からは良く見えませんでしたが、皆ハツラツとしていて、若者のパワーを感じました。
タペストリーのような凝った布の大きなスカートが印象的でした。
キトリが耳飾りを与えて、追いかけてきたガマーシュとロレンツォからかくまってもらいますが、そこにドンキホーテとサンチョパンサもやってきます。
人形劇を見ている間に興奮して暴れて、風車に突っ込みます。

気絶したドンキホーテの前に、ドルシネアが空中浮遊で現れます。
これは黒子がリフトしているのですが、なかなかのアイデアで面白いシーンです。
森の場面は綺麗でした。
ドリアードの女王のアルビッソンは、大きな迫力のある踊りでしたが、着地音もデカイ!
イタリアンフェッテは大成功でした。
キューピットは軽やかでしたし、ドルシネアは、キトリの時とは雰囲気が少し変わって優雅でした。

第3幕では、ジプシーの扮装のままでやってきた居酒屋での狂言自殺があり、キトリを取られたガマーシュとドンキホーテとの決闘あり、それで負けたとたんに、結婚式になります。

ファンダンゴのリードの男女がカッコ良かったです。誰だかよくわかりませんでしたが。
ふつうの版での第1ヴァリエーションに相当する踊りを、パク・セウンさんが踊りました。
軽やかで素晴らしかったです。

グラン・パ・ド・ドゥは、ゴージャスな衣装に身を包んだフルステ―が、アダージオの最後に、ススからアラベスクに脚を上げて、サポートなしの長ーいポワントバランスを披露してくれました。

マチアスのソロの前、待ち構える観客の期待から、館内に静寂の瞬間が訪れ、その静けさと無音の中で、スス(つま先立ち)からそのままアラベスクへ移行して、バジリオのヴァリエーションが始まりました。
ヌレエフの振付は、ダブルのピルエットからアラベスクで静止。それを左右繰り返す。
これって見た目は飛んだり跳ねたりしなくて地味だけれども、ものすごいボディコントロール力が必要です。
この難しい振付をとても綺麗に、音楽にピッタリ乗せてこなすマチアス・エイマンの技術は大したものです。
そして小さめの軌道のマネージュも、体をほとんど水平に傾けていました。

フルステーのキトリのヴァリエーションも、扇をシャッシャッとさばきながら、キビキビとしていてとても良かったです。
超スローなテンポからはじまるパッセの連続は「ゆっくりポワントに乗って、ゆっくりポワントから降りる」という、これも見た目地味だけれど、スムーズにやるのは超難しい技。
男女とも、マニア向けの振付か?と思うほどダンサー泣かせの鬼振付じゃないですかね、これって。

コーダでの32回転のフェッテ、マチルドは前半は全部ダブル、後半はシングルで、テクニシャンぶりを見せてくれました。
マチアスも負けずに相当回っていました。
彼の踊りは、押しつけがましさがなくてエレガントだし、つま先も綺麗です。
お姉マンっぽさがあるので、キトリの恋人というよりは弟みたいな感じではありましたが、ヌレエフの鬼振付をさらっと踊ってしまうヴィルトオーゾぶりを堪能致しました。
マチルドもしっかりした技術があって、この役のキャラにもあっていましたし、コールドのレベルの高さや、美術や衣装、こだわりの音楽とともに、大変に楽しめた公演となりました。
さすが、パリオペ!!


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2014年02月24日

新国立劇場バレエ「白鳥の湖」堀口&トレウバエフ

2014年2月21日(金)14時 オペラパレス
オデット/オディール 堀口純
ジークフリード王子 マイレン・トレウバエフ
ロートバルト 輪島拓也
道化 小野寺雄
パ・ド・トロワ 長田佳世 細田千晶 江本拓
小さい4羽の白鳥 さいとう美帆 五月女遥 大和雅美 石山沙央理

久しぶりの新国立劇場の白鳥。
1列目だったので、オペラグラスなしに、美しい1幕のワルツや、白鳥の群舞を堪能しました。
1幕の友人たちの群舞やパ・ド・トロワは、バレエを見始めた昔は退屈に感じてましたが、最近はこういう場面がとてもきれいだと感じます。
優しい色あいの衣装と、柔らかく上品なダンサー達の踊り。
道化の小野寺さんは、健闘していましたが、道化はもっとはじけていてもいいと思います。
私はキュートな道化が好きですね。道化とは、退屈な宮廷をなごませる役目だから、いつも何かおかしな事をしていて、ずっと見ていても飽きないかわいさがあって欲しいです。
踊りはとても良かったし、八幡さんの32回転には届かないけれど、しっかりした回転軸だったから、これから色々工夫していったら将来有望です。
パ・ド・トロワの江本さん、長田さんは明るい雰囲気でとても良かったです。
細田さんは表情がお葬式みたいなので、もっと笑えばいいのにと感じました。
プロなんだし、このシーンの祝祭感が出ないです。ああいう顔で踊っていると、上手でも発表会みたいに見えるものですね。
細田さんは大活躍で、1幕はパ・ド・トロワ、2幕は大きい4羽、3幕はルースカヤ、4幕の2羽も踊っていました。ルースカヤと白鳥は笑わなくても大丈夫ですし、白鳥のポーズはとても美しかったのでそちらは良かったです。

マイレンは、キュラクター系の濃い役のイメージが強いので、この正統派王子というのがなんだが不思議な感じだけれども、若々しさはなくても落ち着いていて、踊りも安定しているし、演技も丁寧。
1幕でにぎやかな仲間が去ってひとりきりになるシーン。
自分はどうしたらよいのか…と心の不安を押し隠すように、机の上の花(これは花嫁を選べという命令の象徴)をまず手に取り、匂いを嗅ぎ、いややはり違うとその花を置いて、本を手に取る(これは大人になれという象徴)が、読もうとしても内容が心に入ってこない様子。
そこで今度は本を置いて、弓を手に取って、そうだ、このもやもやを晴らすために狩りに行こう!(まだ大人になりたくないし、結婚もいやだということの象徴)
…という王子の気持ちの流れがすごく良く解りました。
このシーンでこんな風に王子の気持ちが伝わってくることって少ないです。
たいがいは憂いを帯びた表情で踊っているだけが多いですから。
マイレンさん、さすがでした。

オデットの堀口さん。触ると壊れてしまいそうな繊細な白鳥でした。
去年のガラで観た白鳥が、ちょっと寂しすぎる印象を受けたので、どうなるかと思っていましたが、その時よりもずっと良かったですし、ポーズで静止する時間が長くて、きっちり踊ろうとする意志を感じました。
様式美だったり、女王様だったり、とらわれの身だったり、色々なタイプの白鳥がありますが、堀口さんの白鳥は、「オルゴールの上で踊っている繊細なガラス細工のバレリーナ人形」のようなオデットで、彼女のキャラに似合っていると思いました。
ただ、黒鳥オディールとの演じ分けが、まだできていないようでした。
あの繊細なオデットとの対比ですから、うんと人間くさくて泥臭いとか、いじわるで自己中とか、これはもう自分の中の黒い部分を思いっきり拡大していくしかないと思います。
誰にでもオデットのような白い部分と、オディールのような黒い部分がありますからね。
でも、若いバレリーナだと、たいがいはオディールの方が演じやすいはずなんですよ。
若さからくる未熟さとは人を傷つけるものですから、それがオディールにつながる。
オディールよりもオデットの方がうまく表現できる堀口さんって、すごく心の清い方なのかもしれません。

白鳥のコールドは、よく揃っていて美しかったです。
とくに小さな4羽の白鳥はぴったり。今まで見た中でもダントツと感じました。

この牧版の欠点は、やはりラストのロートバルトとの対決です。
王子がオデットをリフトすると、「最終兵器オデット」のようにロートバルトが苦しみ出すんです。
二人の愛の力でロートバルトをやっつけたという事らしいですが、それならそれで、照明でビーム砲が二人からロートバルトへ照射されるように工夫するとかしたらどうなんでしょうか。


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2014年02月10日

東京バレエ団「ロミオとジュリエット」沖&柄本2日目

2014年2月8日(土)2時 東京文化会館

ジュリエット 沖香菜子
ロミオ 柄本弾
マキューシオ 木村和夫
ティボルト 森川芙央
ロザリンデ 渡辺理恵
僧ローレンス 岸本秀雄
キャピュレット夫人 奈良春夏
ベンヴォーリオ 杉山優一
パリス伯爵 梅沢紘貴

素晴らしい舞台でした。感動しました!!
ノイマイヤー版のロミオとジュリエットは初めて見ましたが、展開がスピーディで現代的な味つけがあり、衣装や舞台装置など、スタイリッシュだなと感心するシーンがいくつもありました。
シルエットをうまく使ったり、葬儀のシーンで黒い頭巾を全員にかぶらせたり…ジュリエットの寝室(ロミオとの初夜)は、まるで現代の都会のホテルの一室みたい(笑)でした。

ジュリエットが裸にバスタオル1枚で登場するシーンは、ジュリエットの走りや動きを、あえてバレエの動きではなく、素の動きでやらせているそうで、沖さんのはねまわるようなお転婆ぶりの演技もあいまって、新鮮な驚きがありました。
タオル1枚の入浴シーンといえば、新国立劇場の「アラジン」の中にも似たような場面がありますが、ビントレーは、ノイマイヤーのこのシーンからヒントを得たのでしょうか。

ロミオが当初恋こがれているロザリンデは、落ち着いた美しい完璧な女性ですが、従妹のジュリエットはまだまだ幼いドジっ子ちゃんで、舞踏会で階段からずっこけるわ、テンパって踊りの振りを忘れるわ…14才ぐらいの女の子って、そんなもんですよね。
マクミラン版だと、ジュリエットの幼さを表わすのに、乳母と人形を取り合うシーンがあるのですが、14才になってお人形遊びなんかやっている子いるわけないじゃないですか。せいぜい9才ぐらいまででしょう。
だから私はいつもそこに違和感を感じていたんですが、ノイマイヤー版なら、納得です。

リアルな14才の女の子が恋をして、別の相手との結婚を押し付けられて、どうしたらいいかわからなくて、知り合いの僧ロレンスに相談したら、「この薬を飲んだら、死んだみたいになるから、みんなに死んだと思わせておいて、ロミオとどこか遠くに行って幸せになったらいい」とか言われ、その計画にのったけれども、行き違いがあってロミオは死んでしまったので、ジュリエットも後を追った。

このストーリーの中には、両家の対立という要素は少なくて、ロミオとジュリエットも、家のこととかあまり重要に考えていなくて、その場その場の感情でどんどん行動していく。
ロミオがティボルトを殺してしまったのもそうで、まさに若さとありあまるパワーでスピーディに物語が動いていく。

その象徴ともいえるシーンが、結婚を押し付けられたジュリエットがロレンスの元に相談に行く場面。
文字通り、「走る」「走る」「走る」「走る」。舞台を全速力で、バレエ的でない素の動きで、走って横切って袖幕に入り、また走って反対側の袖幕に入るのを4回ぐらい繰り返す。
こんなシンプルな振付を大胆に全幕バレエに入れたノイマイヤーの革新性にびっくりします。
これを見たときはなんという振付だろうとあきれたけれども、あとあとになって思い返すと、すごく印象に残っているのが不思議です。

両家の対立の犠牲になった悲劇の恋人たち、というよりも、若さでつっぱしった恋人たちの物語なんだと思います。だから、最後もジュリエットが自殺して、ロミオの手に自分の手を重ねてすぐに幕が下りる。
両家の人たちが二人を見つけて、悔いて和解するというような場面はあえていれていないのでしょう。

この版には、ノイマイヤー作品の特徴である「劇中劇」や二重構造もいくつか使われています。
広場に旅芸人が来て、ロミオとジュリエットの悲劇のお芝居をする。
ロレンスが秘薬の説明をする時に、旅芸人がロレンスの計画をわかりやすく演ずる。
ジュリエットが秘薬を飲む前に踊ると、ロミオが表れてシンクロして踊る。
秘薬を飲んだジュリエットが、薬のもたらす幻覚の中でロミオと、ついで死んだマキューシオと踊る。
こういうシーンがあるから、登場人物も多くて、ソロの見せどころも用意されているので、東京バレエ団がレパートリーにしたということは、とても良い判断だったと思います。大切に育てていって欲しいと思います。

ダンサーについてですが、沖香菜子さんは素晴らしかったです。
浴室でのはつらつとした踊りや、柔軟な肢体を生かした美しいポーズ、大きな目で語る喜怒哀楽の表現、ジュリエットになりきった演技もとても良かったし、ノイマイヤー版のジュリエットは彼女にぴったりのはまり役でした。香菜子さんは、古典だけではなく、コンテンポラリーも良さそうです。
子どものための眠り、ラ・シルフィード、ザ・カブキ、ロミジュリと大きな役が続いていますが、一段一段プリマへの階段を昇っているように感じます。これからが楽しみです。

柄本弾さんは、ザ・カブキの時とはがらっと変わって、ちょっとおバカさんな等身大の明るい若者を好演していました。ニコニコしながら三バカトリオの踊りを一番元気に踊っていたシーンがかわいくて忘れられません。
ジュリエットとのパ・ド・ドゥは難しそうなリフトがてんこもりなのですが、このペアでの2日目のせいか、踊りの流れをとぎらせるような不自然さはほとんど感じませんでした。
カーテンコールの時に、弾さんが、沖さんにうやうやしくかしずいて、優しく手にキスしていた(それも2回も)のが印象的でしたが、柄本さんにとっても、それほど役にのめりこめた舞台だったのだと思います。

マキューシオの木村さんは、さすがでした。演技も踊りも。でもこの舞台ではちょっと老成しすぎていて浮いていたような気がしました。ノイマイヤー版に求められている、若さからくる馬鹿さかげんを表現するには、現実に若いダンサーでなくてはだめなのかもしれません。

ティボルトの森川さんは、すごくかっこよくてしびれました。森川さんがこんなに背が高くて、ちょっとダークな役が似合うとはと認識を新たにしました。ロミオに刺されて、2階から落っこちるというドラマティックな演出でしたが、あれ大丈夫なんでしょうか。
キャピュレット夫人の奈良さん、ティボルトが死んだシーン、ティボルトの上半身を無理やり起こして踊る場面は、マクミラン版の死体とのダンスシーンのようで、ド迫力でした。白塗りも怖かった。

ロザリンデの渡辺さんは、完璧な女性というこの役にぴったりで、美しくて優雅でした。ロミオに惚れられて、まんざらでもなかったのに、あら私のこともうお忘れになったのちょっと残念だわ、という表情、良かったです。

なかなかに適材適所な配役だった一方、女性はいいとしても、男性陣がやはり人材不足の感は否めませんでした。中堅どころが大量に抜けたのは痛かったですね。マキューシオにもっと若い人をキャスティングできなかったし、パリス伯爵はロミオの対抗馬としては、もっと長身イケメンでなくちゃ。ベンヴォーリオも目立たなかったです。長身男子が欲しい!!

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