2012年01月16日

「眠れる森の美女」日本バレエ協会神奈川ブロック自主公演

2012年1月15日(日)4PM 神奈川県民ホール
日本バレエ協会神奈川ブロック自主公演
「眠りの森の美女」
オーロラ:大滝よう
デジレ王子:清水健太
リラの精:樋口ゆり

2012年の初バレエ観賞は、「眠りの森の美女」でした。
眠りは久々に見た気がします。
夏山周久さんによる再振付で、ほとんどスタンダードな演出ですが、ゲストの4人の王子の見せ場も作ってあったり、いろいろ配慮があり、やはり眠りはこういう普通の演出が楽しめますね。

大滝ようさんは、初めてお名前を聞いた方でしたが、ニュージランドバレエ団にいたこともあるそうです。かなり小柄で、ローズのバランスやもろもろのテクニック的なことはきちんとやっていましたが、これだけの規模の公演での主役という責務からなのか、終始表情が硬く、オーロラの幸せ感が伝わってきませんでした。

デジレ王子の清水健太さんが、登場の瞬間のジュッテからして軽やかで、それまでのやや発表会的な雰囲気がガラっと変わって舞台がビシッと引き締まりました。
やはり海外でも活躍しているプロダンサーの力はすごいです。

清水さんは踊りも演技も、サポートも一流ですが、今のバレエ界では貴重な上品さと清潔感があって、きっと誠実ですごく性格のいい方なんだろうなと観る人が感じ、好感黒ハートを持つ。
天性の「華」というか、人を引き付ける魅力を持っている方だと思います。

Kバレエを退団して、日本であまり見られなくなったのは残念な事です。
(クリスマスシーズンは、ロサンジェルスバレエでくるみの王子を踊っていたそうです。)


ぴかぴか(新しい)


posted by haru at 21:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月09日

「パゴダの王子」小野&福岡 千秋楽

2011年11月6日(日)2PM オペラパレス

さくら姫 小野絢子
王子 福岡雄大
皇后エピーヌ 湯川麻美子
皇帝 堀登
北の王 八幡顕光
東の王 古川和則
西の王 マイレン・トレウバエフ
南の王 菅野英男
道化 吉本泰久


「パゴダの王子」という作品は、ニネット・ヴァロワがイギリス人による全幕物のバレエを作ろうとして、ブリテンに曲を依頼し、クランコに振付をさせたものが最初だったそうです。
その後マクミランがダーシー・バッセルの為に同じ曲を使って「パゴダの王子」を作りなおしましたが、どちらもあまり成功はしなかったそうです。

それは、物語がすっきり筋が通っていなかったのと、曲をカットしたりするのが、ブリテンが存命中は許さなかったから、コンパクトにまとめられなかったという事らしいです。

今回はそのあたりを意識して、とかげに変えられた兄と、その妹と、魔法使いの継母のお話。
色々なおとぎ話がまざっている感じです。

美術が素敵です。フィリップモリス風の舞台装置と、浮世絵のような、きり絵のような東洋的世界が不思議と調和しています。
西洋人の目でみた、東洋的美しさというところでしょうか。
富士山のきり絵と、燈色の太陽(日の丸のようです)が印象的。

この作品に出てくるとかげは、黒白のシマ模様で、日本人にとってあまりポピュラーでない種類ではないかと思います。
南の王(アフリカ)がシマウマのようなボディペインティングをしているので、それとかぶるのが気になりました。もっとも、南の王は宝塚みたいなダチョウの羽根をしょっているのがもっと気になりましたが(笑)

第2幕のディベルティスマンでの空と海のシーンは、女性たちのチュチュがかわいかったです。
あのチュチュでくるみ割り人形の雪をやったらいいのに!という友人の意見や、深海役のかぶりものは、赤塚不二夫の漫画「天才バカボン」に出てくるウナギイヌに似ている、という意見にはまったく同意です。(もっとも、今の若い子たちはウナギイヌって知らないでしょうが)
ウナギイヌ、もとい深海とタコに化けたエピーヌの場面はユーモラスで大好きです!

第3幕は、伝統的なパ・ド・ドゥの形式をとっていて、最後に大円団で盛り上がるのが良いですね!
これは、もともとの音楽がそのように作られていたのでしょう。

小野さんはおとなしくても芯の強いプリンセスを好演していたし、エピーヌの湯川さんは堂々としてまさにこの演目の中心でひっぱっていたし、福岡さんはガタイが良くて踊りもきれいです。
女性陣はあとはほとんどコールドで、男性はソロを踊るのは4人の王と道化のみという感じでしたが、新国立劇場のダンサーは皆揃っていてアンサンブルも良かったです。

とても面白く楽しみましたが、「アラジン」と比べると、まず音楽が少し難解で、耳にすぐ残るようなメロディーラインがないこと、物語自体が、アラジンのように誰でも知っている話でないことから、家族連れへのファミリー・バレエとしては「アラジン」に軍配が上がるのではないかと思いました。

けれども新国立劇場バレエ団のオリジナルとして発信するにふさわしい、シックでおしゃれ、かつユーモラスな秀作ができたと思います。バーミンガムバレエ団でも上演されるそうですが、むしろこれは外国人にはすごく受けるかもしれないです。


ぴかぴか(新しい)













posted by haru at 14:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月10日

新国立劇場バレエ研修所第7期生・第8期生発表公演

2011年10月8日(土)15時 新国立劇場中劇場

第1部 クラシカル・バレエ

『海賊』より“オダリスクの踊り”
第1ヴァリエーション 島田沙羅
第2ヴァリエーション 中西夏未
第3ヴァリエーション 佐藤愛香

『ラ・シルフィード』より第2幕のパ・ド・ドゥ
シルフィード 鈴木優 ジェームズ 小野寺雄

研修生振付作品
『Light of the flower』振付・出演 直田夏美
『また明日へ』 振付・出演 横山翼

研修の様子の映像紹介

第2部クラシカル・バレエ
『パキータ』より“グラン・パ・クラシック”
パキータ 西成雅衣
ルシアン 菅野英男
男性ヴァリエーション 横山翼
第1ヴァリエーション 直田夏美
第2ヴァリエーション 三宅里奈
第3ヴァリエーション フルフォード佳林
第4ヴァリエーション 榎本朱花

第3部 スパニッシュ・ダンス
『Fandangos y Bulerias』

バレエ研修所も8期となり、契約ダンサーの中で研修所出身者の占める割合も多くなってきました。
新国立ウォッチャーとしては、未来のプリンシパルを探す楽しみがあるのが発表公演です。

今回は、かなりクラシックバレエに重点を置いた発表でした。
7期ではフルフォード佳林さんが、派手さはありませんがきちんとした踊りで好感が持てました。
彼女の表情はわりと淡々としていて、媚びたところがないというか、そこがある種の不思議さを醸し出しているように思います。

男性陣、横山翼君はジャニーズ系のグッドルッキングボーイですから、踊りをもう少し精進して、背がもう少し伸びたら、バレエ王子になれる可能性があるんじゃないでしょうか。
彼自身の振付は、ありがちではありますが、楽しい作品でした。
もう一人の男性、小野寺雄君は、スパニッシュダンスでソロを踊ったのがすごくカッコ良かったです。彼はそういうカッコ良さを追求していった方がいいのかもしれない。

8期の皆さんは、クラシックがみな上手でしっかりしたテクニックをすでに持っているようでした。
8期は6名のうち5名が予科生から入ったせいか、プロポーションや容姿も粒ぞろいで、やはり良い子は15才で青田買いしておかないと、みな海外へ行っちゃうから、予科生制度を作ったかいはあったなと思います。

私が以前から注目している双子ちゃんのうち、鈴木優ちゃんがシルフィードを踊りました。
まずシルフィードの衣装がすごく良く似合います。首が長くて手足が細くて本当に美しい。
柔らかな腕の動きと、きれいなパンシェ、そして時々見せるいたずらっぽい表情がシルフィードらしくて良かったです。
回転技は失敗してしまって残念でしたけど、見るたびに上手になっているので、これからが楽しみです。
容姿と雰囲気は素晴らしいのですから、もっと貪欲にテクニックを身につけるようにしたらいいんじゃないでしょうか。

双子のもうひとりの舞ちゃんは、パキータに出演していましたが、ちょっとしたしぐさや音の取り方にも他の人と違った美しいセンスと自信が感じられ、彼女はすでにバレリーナとしての自覚をしっかり持っているように感じられました。舞ちゃんは翌日にシルフィードを踊るのですが、見られなくて残念でした。

最後のフラメンコは、本場のギターとカンテが入って、迫力満点。見ごたえがありました。


るんるん


それにしても研修生達の行く末について憂慮してしまいます。
というのは、現在、研修所の所長は、前芸術監督の牧阿佐美。
バレエ団の芸術監督はビントレーです。

牧さんは、自分の好みの子を選んで研修生にしています。色白で手足が長く、スタイルが良くて、お上品な雰囲気を持った子がお好きなようです。
牧さんが芸術監督の時代なら、そういう子が研修所を卒業した時に、すんなりと新国立バレエ団に入って活躍できたのですが、今は違うのです。

ビントレーさんはどうやら「スタイルが良い」という事に、あまりこだわっていないようです。
彼の優先順位はスタイルが良いことよりも、彼の表現したいものを積極的に表現してくれる熱意だったり、ダンサーとしての引き出しの多さだったり…
つまり、白鳥が似合うダンサーよりも、コンテンポラリーを踊りこなせるようなダンサーを求めているわけです。というか、その両方ともをかなりのレベルで踊れるダンサーを求めているのでしょう。

日本のバレエ界ではクラシックが好まれていますが、海外、特にヨーロッパでは、コンテンポラリーの重要性が年々高くなっています。パリオペラ座の演目を見ても、コンテンポラリー作品の上演割合は増え続けています。

ビントレーさんも、そういう状況の方へ、新国立劇場バレエ団を導いていこうとしているのでしょうし(本当は単に自分の作品を上演したいだけだったりして)、これからはコンテンポラリーも踊れなくてはバレエ団と契約できなくなりそうです。

そうすると、今のままの研修所のカリキュラムでいいのでしょうか。
アキコカンダ先生はお亡くなりになりましたが、あのような古いモダンなどやっていは現代ダンス界についていけないのではないでしょうか。
中村恩恵さんとか、平山素子さんとか、もっと良い教師がいるでしょうに。
早急に改善しなくてはならないのは、コンテンポラリーダンスのカリキュラムだと思います。

研修所がその点を改善しないのなら、研修生は自分の力でコンテンポラリーの勉強をした方がいいと思います。

ぴかぴか(新しい)




















posted by haru at 14:19| Comment(2) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月02日

新国立劇場バレエ団による「バレエ・オープニング・ガラ」

2011年10月1日(土)14時 オペラパレス

第1部
『アラジン』から「序曲」「砂漠への旅」「財宝の洞窟」

アラジン:八幡顕光
プリンセス:小野絢子
魔術師マグリブ人:マイレン・トレウバエフ
オニキスとパール:さいとう美帆、高橋有里、大和雅美、江本拓、菅野英男、福田圭吾
ゴールドとシルバー:西川貴子、丸尾孝子、貝川鐵夫、清水裕三郎
サファイア:湯川麻美子
ルビー:長田佳世、厚地康雄
エメラルド:芳賀望、寺島まゆみ、寺田亜沙子
ダイヤモンド:川村真樹

第2部
〈バレエ パ・ド・ドゥ3選〉

『眠れる森の美女』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ
オーロラ姫:小野絢子
デジレ王子:福岡雄大

『ロメオとジュリエット』第1幕よりバルコニー・シーン
ジュリエット:本島美和
ロメオ:山本隆之

『ドン・キホーテ』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ 
キトリ:米沢唯
バジル:菅野英男

『シンフォニー・イン・C』から最終楽章 

第1楽章プリンシパル:長田佳世、福岡雄大
コリフェ:西山裕子、大和雅美、小口邦明、小柴富久修
第2楽章プリンシパル:川村真樹、貝川鐵夫
コリフェ:細田千晶、川口藍、清水裕三郎、田中俊太郎
第3楽章プリンシパル:寺田亜沙子、輪島拓也
コリフェ:寺島まゆみ、堀口純、野崎哲也、宝満直也
第4楽章プリンシパル:丸尾孝子、古川和則
コリフェ:さいとう美帆、高橋有里、アンダーシュ・ハンマル、原健太

るんるん

この公演は文化庁芸術祭オープニングとして主催は文化庁が行っているイベント。
2年に1回ぐらい新国立劇場で行うそうです。
このイベントにはいつも皇族の方がいらっしゃいますが、今年は皇太子様でした。

ということで、オケもダンサーも気合いが入って良い公演でした。
でも、第1部30分、休憩25分、第2部45分でかなりあっさりと終わってしまったので、
もう少しアラジンとか、シンフォニーCとか長く見せて欲しかったです。

アラジンは砂漠のシーンから洞窟のシーンまでなので、抜粋とはいえ見ごたえがありました。
サファイアの湯川さんが女性らしいゴージャスでセクシーな魅力を振りまいていてノックアウトされました。

パ・ド・ドゥ集は微妙でした…
小野さんと福岡さんの「眠り」は、すごくきっちりと踊っていて、様式美を狙っているのか、天覧舞台としての格式を見せようとしているのかわかりませんが、大変立派ではありましたし、絢子さんのポーズはきれいだし、雄大君のマネージュも伸びやかでしたが、キチキチしすぎて幸福感というものが感じられませんでした。
たしかに「眠り」はクラシックバレエの規範のような踊りでありますが、結婚式での踊りなので、幸福感を観る人に感じさせることは絶対必要だと思います。
それをわかっていながらも、あえてやっているのかと思う位、踊る方にフォーカスが行き過ぎていたような気がしました。

ロミジュリは、本島さんが一段と痩せてきれいになっていましたが、踊りの方は、もう少しピルエットからアラベスクへのつながりなど、スムーズにやって欲しいところがいまひとつでした。
山本さんは、最近不調だと聞いてましたが、意外とよく踊っていました。でも、マクミランのロミオは、どうしてもスティーブン・マックレーのすごいキレのある踊りが目に浮かんでくるので、比べてしまうと、割と良くやっている、ぐらいの感想になってしまうのは致し方ない所です。

そして、ドンキは、踊りはきっちりとしてこの大舞台にふさわしいものではありましたが、このお二人、華がなくてつまらないです。眠くなりました。目が覚めたのは米沢さんの超絶技巧フェッテのおかげです。扇子を持ってでてきて、シングル、シングル、ダブルの時に頭上で開き、胸のところまでもってくるという大技を4回ぐらいやりました!
新国立のダンサーではぴか一のテクニックの持ち主ではないでしょうか。
これだけのことができるのだから、他のところでも、もっとケレン味のある踊り方をしてもいいのに、あくまでもお上品でした。

最後の演目のシンフォニー・イン・Cは、新国立の美しいコールドが堪能できて楽しめました。
これまた最終章だけだったので、あっという間に終わってしまいましたが、よく揃っていたし、女性陣はスタイルが良くて美しいです。対しての男性はやっぱりちびっこです。残念です。

余談ですが、バレエ研修所4期生の山田蘭さんが今シーズンからKバレエのコールドに入り、白鳥公演では4羽の大きな白鳥に抜擢されていました。彼女は研修所を卒業したあと新国立の準コールドでしたが、Kに移ったとたん、このような役がつくということは、やはり新国立基準のスタイルのせいなのかと思いました。Kは身長が低めの女性が多いですから。
良い女性ダンサーがいる新国立と、男性が良いKバレエ……お互いにトレードでもできたらいいのですが、まあ世の中うまくいかないものですね。


ぴかぴか(新しい)




















posted by haru at 22:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月28日

小林紀子バレエシアター100回記念「マノン」

小林紀子バレエシアター
第100回祝賀公演「マノン」
2011年8月27日(土)17時 オペラパレス
マノン:島添亮子
デ・グリュー:ロバート・テューズリー
レスコー:奥村康祐
ムッシュG.M.:後藤和雄
レスコーの恋人:喜入依里

実は小林紀子バレエシアターの公演を観るのは初めて。
小林先生と言えば、新国立のミストレスをやっていた時の指導の素晴らしさは聞いていました。
とっても厳しいリハーサルをするという噂も聞いていました。

なるほど…コールドや立ち役にいたるまで、まとまりのある素晴らしいアンサンブルでした。
マクミランのステップも、先日の新国立ロミジュリよりも、よっぽどしっかり踊っているように感じました。

今回は、震災で中止になった99回公演の後の記念すべき100回公演。
いつもは中劇場だけれども、たまたまオペラパレスが取れたのでマノン上演に踏み切ったようなことがパンフレットに書いてありました。
舞台装置&衣装はオーストラリアバレエのもの。
デザインはピーター・ファーマーで、柔らかい茶系を多用した色調で落ち着いた雰囲気です。

マノンを演じた島添さんは、今までほとんど見た事がありませんでしたが、脚のラインが美しく、難しい踊りをほぼ完璧に踊っていたと思います。
ただ、濃くない…物足りなさを感じました。
特に最初のデグリューとの寝室のパ・ド・ドゥ。
きれいなのですが、こちらにぐっとくる何かがない…恋の情熱というようなものでしょうか。

島添さんは、ファム・ファタールというような味つけをするどころか、むしろ彼女自身の演技プランというようなものは持っていないように思えました。
前回の記事で書いた熊川さんの言う「奥ゆかしく、自己主張しないダンサー」なのかもしれません。
それでも、物語バレエの不思議さか、2幕3幕と重ねていくうちに、薄い味付けながらもマノンという女性が浮かび上がってきました。

今回の公演の中心にいたのは、ロバート・テューズリー。
彼は世界各地でデグリューを踊っていて、いわば十八番。
男性的な包容力がありながらも、美しい容姿と体つき。
マラーホフほどロマンティック過ぎず、ルグリほど大人過ぎず。
ハンサムで若々しくて、踊りも素晴らしい。
サポートも万全で、島添さんをよどみなくくるくる回し、宙をただよわす。
表情、演技も理想的なデグリューでした。

小林紀子先生の目指すものを感じられた、レベルの高い舞台でした。
来年は新国立が「マノン」を上演しますが、果たしてこれを越えられるのか???




ぴかぴか(新しい)








posted by haru at 15:17| Comment(1) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月23日

ABT2011 スペシャル・ドンキホーテ

主役の二人が幕ごとに交代するスぺシャルなドンキ!

2011年7月22日(金)18:30 東京文化会館
ABT スペシャル・ドンキホーテ

第1幕 パロマ・ヘレーラ ホセ・マニュエル・カレーニョ
第2幕 シオマラ・レイエス アンヘル・コレーラ
第3幕 加治屋百合子 ダニエル・シムキン

メルセデス&森の女王 ヴェロニカ・パールト
エスパーダ コリーン・スターンズ
キューピッド サラ・レーン


とっても楽しいドンキでした!やっぱりABTにはドンキが良く似合う。
主役の3分の2はラテン人だしね。
一番楽しかったのはやはり1幕。
パロマ・ヘレーラは6年前にアンヘルとのドンキを見た時と比べて格段の進化でした。
もともと細くて手足が長い体型に、パワーとテクニックを兼ね備え、軽やかなジャンプがハッとするほど高くてキレがある。それでいて差し出す足先も丁寧で、大変好感のもてる踊りでした。
う〜ん、とっても好み黒ハート
カレーニョも余裕しゃくしゃくで、この演目は踊りこなれてます。
パロマを頭上高々と上げるリフトの1回目がちょっとあやしかったけどね。
花売り娘の一人、ミスティ・コープランドは黒人の血が入っているせいか、動きがラテン的で熱く、この演目にピッタリでした。彼女のキトリもいいかもしれない。
ロレンツォ、ガマーシュも笑わせ所のツボを抑えていて上手。
エスパーダはオーラと、この役に必要な色気がまったく不足しています。
エスパーダは常に猛牛と闘う、死と隣り合わせの毎日を送っている男。そこのところを理解しているのか…。

第2幕のアンヘルは、やはり一時の勢いはありませんでした。それが一番残念だったこと。
6年前のドンキではピルエットのデフォルトが10回転、調子に乗ると12回転ぐらいしていたのに、今回はデフォが6回転、やっても8回転ぐらいしかしませんでした。
踊りにもキレがなく重ため。仕事の比重がダンサーとしてよりもカンパニーの方にいっているのでしょうか。全盛期を見れたのは幸せでした。
でも彼のサービス精神は健在でした。その心意気はやはりアンヘルです。

森のシーンでは、女王役のヴェロニカ・パールトがのびやかでオーラがあり、美しい女王でした。
女王があまりに光って存在感たっぷりなのに比べ、シオマラのキトリはちっちゃくて衣装も貧弱だし、小学生のように見えてしまいました。
どうもシオマラの良さがわからない。
アンヘル&シオマラはラテンというよりも、落ち着いた大人カップルに見えました。
でも、狂言自殺のあたりの演技は細かくて、とても面白かったです。

さて、注目の3幕。
バレエファンの関心の的、ダニーム・シムキンと組んで、このスペシャルドンキのトリのパ・ド・ドゥを踊るというのは加治屋さんにとっては大きなチャンスだけれども、大変なプレッシャーであると思います。しかもシムキンはサポートが下手。

でも立派に踊りきりました。おそらくもっとトゥバランスを見せたりしたかった所もあったとは思いますが、品格を保ちながら、最後のフェッテでは、前半をアラスゴンドの脚を高く長めに上げて回るという技(私これ初めて見ました)を14回ぐらい? その後は方向を変えながら回る技をきっちりと決めてきました。あのフェッテはなかなか見ごたえがあったと思います。

二人で踊る時は、サポートピルエットの軸が傾くことが多くて、かなりスリリングだったと申し上げておきましょう。それぞれ一人で踊るヴァリエーションは素晴らしいのですけれど。
これではシムキンは物語バレエの王子様はできるのでしょうか。
また、二人が恋人同士という雰囲気を醸し出す余裕はなかったようにも見受けられました。

加治屋さんは、シムキンより15センチぐらい身長が低いように見えるので、二人のバランスは良さそうです。もっと柔らかく踊れるようになるといいと思います。
痛々しいほどに細い、小枝のような腕が気になりますが、ABTの伝説のプリマ、ゲルシー・カークランドも小鹿のような体型でしたから、ゲルシーを目指してはどうでしょう。

シムキンの相手役として、体型はもちろん、相応しいテクニックと、彼のエレガントな踊りと似合うムーヴメントを持った女性ダンサーが早急に求められていると思います。

今はまだ未知数ですが、加治屋さんがそうなれたら、ABTのプリンシパルも夢ではないでしょう。



とても楽しいスペシャル・ドンキでしたが、第1、第2幕のあとのシメの3幕としてふさわしかったのは、マーフィー&ホールバーグペアの方だっただろうと感じました。

震災の後、バレエ公演の観客が減っています。
このスペシャルドンキも空席がありましたし、この後の公演も得チケが出ているようです。
今日のマチネ(マーフィー&ホールバーグ)、ソワレ(シムキン&加治屋)
明日のマチネ(シオマラ&コレーラ)、ソワレ(ヘレーラ&カレーニョ)
どれを見ても楽しめると思います。
迷っている方はぜひ観に行ってください。

ぴかぴか(新しい)









posted by haru at 10:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月22日

ABT2011オープニング・ガラ

2011年7月21日(木)18:30 東京文化会館


「アレグロ・ブリランテ」
振付 ジョージ・バランシン
音楽 チャイコフスキーピアノ協奏曲第3番

パロマ・ヘレーラ コリー・スターンズ
他8名

ピアノのソロ部分があまりにヘタクソなので、いったい誰が弾いているのかとオケピをのぞいたら、ABTが連れてきた太ったおばちゃんだった。
音階スケールの音をすかしたり、適当で、音もくぐもった感じだし、この人にピアノ協奏曲を(たとえバレエの伴奏でも)弾かせてはいけないと、そっちの方が気になってました。
パロマは、差し出す足先の丁寧さが好印象で、軽やかだし、私が5年前に観た時よりずっと上手になっていました。
あとの人達の中では、ヒー・セオさんがきびきびとして良かったです。

「トロイカ」
振付 ベンジャミン・ミルピエ 
音楽 バッハ無伴奏チェロ組曲第2番・第3番

ダニール・シムキン トーマス・フォスター サッシャ・ラデツキー

映画「ブラックスワン」の監修をした(そしてポートマンのハートを射止めた)ミルピエの作品。
この3人にあてて制作したのでしょうか、一番チビのシムキンを二人がかかえて持ち上げたり、滑らせたりする動きが何度もありました。
今度のチェロの演奏は上手でした。(日本人)

シムキンは、何というか、動きのすべてが完璧なコントロール下にあり、エレガントで音もしないし、常に80%ぐらいの力でやっているように見え、他の二人とはレベルが違う?!
ちっちゃいけど… ジャンプは一番高い!!

「くるみ割り人形」のグラン・パ・ド・ドゥ
振付 アレクセイ・ラトマンスキー
音楽 チャイコフスキー

ヴェロニカ・パールト アレクサンドル・ハムーディ

グランパといえども、アダージオだけでした。
見慣れないラトマンスキー版で、全幕の中でみればいいのかもしれませんが、ここだけ抜き出すと、振付も盛り上がりに欠けるし、プティパ版とくらべて格式が感じられない振付なので、あまりガラむけではないのではと…

パールトは美人だしオーラもあるけど、肩幅が広いっ!

「ディアナとアクティオン」
振付 アレグリッピーナ・ワガノワ
音楽 チェーザレ・プーニ

シオマラ・レイエス ホセ・マヌエル・カレーニョ

レイエスってちっちゃくて手足もそれほど長くないし、ポーズもあまりきれいとは言えないし、どこがいいのが正直わかりません。
テクニックがしっかりしているから、カレーニョとかアンヘルとか背が高くない男性の相手役としてちょうど良かったとか?
カレーニョは覇気がないです。ジェントルだけどさらに油ッ気が抜けてしまったというか。
ピルエットも以前の完璧にコントロールされたものにはちょっと届かず。

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
振付 ジョージ・バランシン
音楽 チャイコフスキー

イザベラ・ボイルストン アンヘル・コレーラ

イザベラは少々荒けずりだけれど勢いがあり、甲が高くて美しい足の持ち主。
コレーラは、なんて楽しそうに踊るんでしょう。
彼の表情を見ているだけでこちらも幸せになる。本当にエンジェル。
ただ回転は最盛期より少なくなっていたようで、6回転でした。(以前は10回転がデフォ)
やはり自分のカンパニーを運営したり、色々忙しくてお疲れなのでは…

「椿姫」第3幕 黒のパ・ド・ドゥ
振付 ジョン・ノイマイヤー
音楽 フレデリック・ショパン
ピアノ:イーゴリ・シェヴツォフ

ジェリー・ケント マルセロ・ゴメス

本日の白眉。ケントがマントを脱いだ途端、まごうことなきマルグリットがそこにいました。
神々しい美しさが少し年齢によって陰っている様もまさに椿姫。見た目がピッタリです。
ゴメスも若々しく、ダイナミックだけれどエレガントでアルマンにぴったり。
ケントはテクニックにすぐれたバレリーナという感じでは見ていませんでしたが、演技がとても自然で素晴らしく、これだけ舞台で見栄えのする美しさのある人もなかなかいないと思いました。
パートナリングも流れるようで、ゴメスが頭上リフトで、プロペラのようにケントをぐるぐる回していました。
そして今度のピアニストは、すごくきれいな音を出す男性で、二人の演舞の高まりを、さらなる高みへまで盛り上げてくれました。
素晴らしかったです。

「THERTEEN DIVERSIONS」
振付 クリストファー・ウィールドン
音楽 ベンジャミン・ブリテン「ディヴァージョンズ」より

ジリアン・マーフィー デヴィヴィッド・ホールバーグ
ヒー・セオ コリー・スターンズ
マリア・リチェット ジャレッド・マシューズ
シモーン・メスマー アレクサンドル・ハムーディ
他16名

これは現代のバランシンといった感じのアブストラクト・バレエ。
薄いグレーの衣装組と黒の衣装組が音楽を表現するように踊る。
またあの男性ピアニストで、音がきれいだった。
ジリアンはどこにいても凄く目立つ。踊りのうまさが別次元だから?
私のいた5階席から見下ろすと、くるくるとシェネで回る時、彼女だけスカートが完璧に円形になっていて(他のダンサーは楕円形)、いかにコンパクトに回っているかが分かる。しかもスピードが速い。
ホールバーグは、背が高くて美しい体型をしているのでやはり目立つ。
前回見たときよりもずっと上手になっていたし、プリンシパルになってからの成長がうかがわれた。



2003年あたりに撮られた「ABT 素顔のスターダンサーたち(原題Born to be wild)」というDVDは当時のメインだった男性プリンシパル、マラーホフ、コレーラ、カレーニョ、スティーファルの4人を取り上げたドキュメンタリーだったが、この時代がキラ星のようなスターが集まる黄金時代だったのでは?
今はその4人はそれぞれの道を歩んでいって、カレーニョも引退だし、現在はシムキン・マーフィー以外際立ったダンサーはいない。だからボッレやオシポワを呼んでいるのかもしれない。


ぴかぴか(新しい)









posted by haru at 00:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月19日

親子で楽しむ夏休みバレエまつり キエフ・バレエ

2011年7月18日(月・祝)13:30 神奈川県民大ホール

第1部 
「眠りの森の美女」より、ワルツ、ローズ・アダージオ
オーロラ:カテリーナ・ハニュコワ

「白鳥の湖」第1幕第2場
オデット:ナタリヤ・ドムラチョワ
王子:セルゲイ・シドルスキー

「海賊」第1幕より 奴隷のパ・ド・ドゥ
ギュリナーラ:カテリーナ・ハニュコワ
ランケデム:ルスラン・ベンツィアノフ

「バヤデルカ」第2幕よりパ・ダクシオン
ガムザッティ:ナタリヤ・ドムラチョワ
ソロル:チムール・アルケーロフ

第2部
「くるみ割り人形」第2幕より、花のワルツ、アダージオ
クララ:ナタリヤ・ドムラチョワ
王子:セルゲイ・シドルスキー

「人形の精」よりパ・ド・トロワ
人形の精:カテリーナ・ハニュコワ
ピエロ:ルスラン・ベンツィアノフ、イェヴゲン・クリメンコ

「瀕死の白鳥」
田北志のぶ

「パキータ」より
ナタリヤ・ドムラチョワ
セルゲイ・シドルスキー
カテリーナ・ハニュコワ
田北志のぶ

「ゴパック」
ルスラン・ベンツィアノフ


なぜ、こんなお子様向けの公演を観に行くことにしたかというと、前世占いで、私の直近の前世がキエフのバレリーナだったと言われたから。
それにこれはVISAカードで買うと割引があって5500円だし、リハーサル見学もついてくるので。

そのリハーサル見学は11時集合とありましたが、実際に始まったのは11:30から。
舞台上のバーレッスンが30分ほど、その後センターが10分ぐらいで、すぐに場あたりとなり、12:30には開演の準備があるからと出されました。
1時半から公演だというのに、たった2時間前からバーを始めるって、どうよ…
もちろんスッピン。
日本のバレエ団やお教室と違って、公演が日常茶飯事の彼らにとっては、こんなもんで大丈夫なんですね。

リハーサル見学は面白かったです。キエフバレエを見るのは初めてですが、みんな足先がきれいです。
前もって応募したバレエッ子10人ぐらいがバーレッスン体験で加わっていました。
小学生ぐらいの子たちだったけど、日本語の説明もないし、スピードも速かったので、たぶん頭の中は「???」状態だったでしょうが、頑張ってよくついっていってました。

今回は「バレエまつり」ですから、未就学児が入場OKなことはもちろん、このバーレッスン体験にはじまり、リハーサル見学、本公演では、司会のおねえさんが登場して演目の説明や、バレエの歴史、超簡単なクイズ、そしてダンサー2人と一緒にバレエの足のポジションと、レべランス(お辞儀)をやってみる、というコーナーもありました。
そして公演終了後は「王子様と写真を撮ろう!」という催しもあったようです。

前日にTVで熊川さんが「万人受けするために、おもねることはしたくない!」と言っていたのを思い出すと、これって、おもねっているのかなぁ…と少々感じました。

でも、舞台の方はなかなかしっかりした踊りを見せてくれましたので、全幕物のだいご味はありませんが、肝心の踊りがちゃんとしたものならいいのではないかとも思いました。

その舞台ですが、特に気に入ったのは、オーロラを踊ったカテリーナ・ハニュコワです。
金髪で愛らしく、ほっそりして繊細な感じ。本当にお人形さんみたい!でもテクニックはあって、トリプル回転をやったり、バランスも良かったです。

今回のメンバーでは二人プリマ(ドムラチョワ&ハニュコワ)で回しているので、二人とも大活躍ですが、ドムラチョワはどーんと貫録があり、しっかりしたテクニックでピルエット5回転とか、めったに見られない大技もやってくれました。

男性陣は、セルゲイ・シドルスキーが一番上手でした。彼が相手だとサポートも安心して見ていられますが、チムール・アスケーロフは、190近い長身で脚長君なのに、サポートがダメダメで、「ピルエット止めてどうするよっ!」と思わず突っ込みたくなりました。

この公演は、ガラではありますが、眠りのワルツや白鳥、花のワルツやパキータなど、コールドバレエも披露されているのがいいなと思いました。

一番盛り上がったのは「人形の家」です。
ハニュコワがピンクのかわいいチュチュで、あとの男性二人はピエロ。
二人のピエロが、かわるがわる人形にアプローチしては、お互いに牽制しあって踊る、コミカルなバレエです。

日本人バレリーナの田北志のぶさんの「瀕死の白鳥」は素晴らしかったです。
前日のTV番組で熊川さんが、「白鳥はもっとすごくなると、腕の動きがボーンレス(骨がない)になる」と言っていましたが、まさに田北さんの腕は滑らかでボーンレスでした。
パキータにも出てきましたが、すごいジャンプ力でした。

他にもこのバレエ団には東洋人の女性ダンサーがあと3人いました。
検索してみたのですが、あまり情報がなくて誰だか分りませんでした。


ぴかぴか(新しい)








posted by haru at 15:51| Comment(2) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月03日

新国立劇場バレエ「ロメオ&ジュリエット」小野&マトヴィエンコ

2011年6月29日(水)19時 オペラパレス
マクミランの「ロメオとジュリエット」

ジュリエット 小野絢子
ロメオ デニス・マトヴィエンコ
マキューシオ 八幡顕光
ティボルト マイレン・トレウバエフ
ベンヴォーリオ 芳賀望
乳母 堀岡美香
キャピュレット夫人 楠本郁子
3人の娼婦 湯川麻美子 西川貴子 丸尾孝子
ジュリエットの友人 さいとう美帆 高橋有里 西山裕子 寺島まゆみ 長田佳世 米沢唯


ロミジュリには色々なヴァージョンがあるけれど、一番人気があるのはこのマクミラン版であろう。
前回上演したのは7年前。版権を持っているデボラ夫人は、もう二度と日本人には踊らせないと怒ったとか怒らないとか…

デボラ夫人の言うのも一理あるかもしれないと思った。
たしかに、これは英国ロイヤルバレエのやるロミジュリとは別物のように感じられる。
それは、まず1幕の広場のシーン。
ほうきを持った女性や、頭に壺を載せた女性達が舞台をクロスするように出てくるが、カウントに合わせているように、きっちりと列で踊っている。
人数も心なしかロイヤルの舞台より少ないようで、舞台がスカスカ、群衆の雑多な感じや、猥雑さがまるで感じられず、人が集まった熱気もない。

その中でひとり熱気を放っていたのは、娼婦のリーダー湯川麻美子。
彼女はまさに、役柄を生きていた。全身全霊で。

ロメオ役のマトヴィエンコは、マクミランのパに慣れていないのか、脚を空中でぐるっと回すテクニックや連続の回転技などが、きっちり決まらず、流して踊っているように見えてしまう。
3バカトリオのあとの二人についても、マキューシオは身長が低い為に小学生ぐらいに見えてしまうし、ベンヴォーリオはスタイルはいいけれども、振付がきちんと踊れていない。

ジュリエットの小野絢子は、マクミランらしくきちっと踊っていたし、演技も良かったと思う。
特に驚いたのは、登場シーン。
14歳のジュリエットが、人形を乳母と取り合ってふざける場面だが、私はかねがね、14歳でお人形遊びをするなんて設定はウソっぽい、現実の14歳はそんな子供っぽいことはとっくに卒業していると、マクミランのセンスに疑問を持っていた。

ところが、絢子ジュリエットと人形の似合うこと!14歳というより10歳ぐらいの幼さがぴったりである。こんなに人形遊びをして違和感のないジュリエットを見たのは初めてだったからびっくりした。

ジュリエットは恋をして、急速に大人になる。
絢子ジュリエットも、登場の時と比べて最後の方は大人びていたと思う。
ただ、ひとつ私が不満だったのは、父親にパリスとの結婚を強制されて絶望し、ベッドの上に腰かけてどうしようか考えるシーン。

吉田都さんが何かでこのシーンの解説をしていたが、最初は絶望していて視線も下を向いているが、徐々にどうしたらよいか考えが湧いてきて、視線が上を向いていく…という事だった。
小野さんなりの解釈だったのかもしれないが、腰かけた時から決意していたように、まっすぐ強い視線で前を向いたまま変化がなかった。
ここは都さんのように視線の変化があったほうが良かったと思う。
踊りに関してはまったく文句がない。
美しいポーズ、音楽にぴったりあったスムーズな動き。
相手役が、ロシアン、じゃなくてマクミランなダンサーで観たかった。

新国立劇場でもロイヤルより良い場面もあった。
それはジュリエットの友人たち。
新国立ではベテランソリストが揃い踏み。
踊りも揃っているし、細かい演技や表情もとても素敵。
さいとう美帆さんは、ジュリエットといってもいいくらい可愛らしいし、ジュリエットの死に気付いた西山さんの繊細な演技がとても上手だし、寺島まゆみさんはふんわりした素敵な踊り。
いつも退屈する友人たちの場面が、ダンサーが良いとこんなにも味わいがあるのかと…。


あと印象に残ったのはキャピュレット夫人の嘆きっぷりと、マンドリンの踊りのへんな衣装(回転しているとタワシみたいに見える)

熊川哲也さんがKバレエのロミジュリで証明したように、群衆シーンをもっと面白く演出することは可能なはず。日本人は確かに個性を出さないように教育をされているし、新国立劇場バレエはお上品なのがカラーだから、ああいう猥雑さは少し苦手かもしれないが、できないわけではないと思う。
今回の経験があるから、来シーズンのマノンでは、もう少し良くなっていると期待したい。

ところで、今回プリンシパルに昇格した湯川さんだが、やはり素晴らしい女優バレリーナ。
彼女なら、ジュリエットだって踊れると思う。
年齢でキャスティングしないのかもしれないが、40過ぎても可愛らしい役を踊るプリマはたくさんいる。
次回はぜひ、湯川ジュリエットを見てみたいと思う。


ぴかぴか(新しい)










posted by haru at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月07日

2010/2011「ビントレーのアラジン」

2011年5月6日(金)19時 オペラパレス

アラジン 八幡顕光
プリンセス 小野絢子
ランプの精ジーン 吉本泰久
魔術師マグリブ人 マイレン・トレウバエフ
アラジンの母 遠藤睦子
オニキスとパール さいとう美帆 高橋有里 大和雅美
ゴールドとシルバー 堀口純 米沢唯 小口邦明 清水裕三郎
サファイア 湯川麻美子
ルビー長田佳世 厚地康雄
エメラルド 寺島まゆみ 寺田亜沙子 古川和則
ダイアモンド 川村真樹

久しぶりに観たアラジンですが、第1幕の宝石たちのディベルティスマンが、これでもかこれでもかと、新国立の素晴らしいダンサーたちの美しさやテクニックを競うように踊られて見事だし、ミュージカルのような解りやすいお話とマジカルな舞台の仕掛け、日本人が踊っても違和感のない舞台設定…
深いところまで沁み込むようなことはないですが、毒もなくて子供にも安心して見せられるファミリー・バレエの傑作だと思います。

主役のお二人もすごく良かったです。
八幡さんはやんちゃなアラジンにぴったりで、村の広場でりんごをプリンセスに放り投げるとこ、お風呂場で見つかって逃げ回るところ、ゆかいで回転技も冴えわたっていました。

小野さんもポーズが美しく、二人のパ・ド・ドゥはダイナミックなリフトが流れるように決まり、このお二人の踊りの相性は良いように思います。
二人ともちっちゃいので、もっと身長があれば空間を支配するスケール感がより感じられたとは思いますが、とてもいい出来でした。

小野さんは役に求められるものをいつも的確に理解して表現しようとするバレリーナ本能の持ち主だと思いますが、このアラジンでも、それは発揮されていて、マグレブ人からランプを取り返すために、彼を誘惑するような踊りをするところ、姫とはがらっと違った色っぽさをかもし出していました。そうです、あそこはやっぱりセクシーでなくちゃね!

すべてにおいて音にぴったり合って小気味よく、小野さんはうまいなあと思っていましたが、なんと、マグレブ人の巣窟で目覚めて逃げようとするシーンで、バターン!とすごい音をたててうつ伏せに“ぶっ倒れ”(という表現をするのがぴったりなくらい)、さっと起き上がって踊り続けたので、一瞬「ん?いまのはもしかしてそういう振付?」と思ったぐらいでした。

振付じゃないとしたら、床が濡れていて滑りやすくなっていたのか、体は大丈夫かしらと心配でしたが、まったく何事もなかったかのように踊り続け、その後も難しい回転や大技のリフトもこなして、集中力をとぎれさせず、終盤までにはそんなアクシデントなど忘れてしまうぐらい素晴らしいパフォーマンスでした。

主役以外のダンサーも、DVD収録とあって、みんな気合いが入っていました。
ジーンの吉本さんは高速回転がキレキレだし、うしろのお付きの皆さんも、ハードな振付なんですが、どんどんヒートアップして盛り上がり(特にジーンの隣にいた寺島まゆみさんが、すっごく楽しそうにノリノリで踊って)、見ているこちらも楽しくなりました。
宝石のディベルティスマンもそれぞれとても良い出来でしたが、特に私はサファイアの湯川さんの、透明感がありテクニックの冴えわたる美しい踊りに魅了されました。

エメラルドの踊りは寺島まゆみさんと寺田亜沙子さん、初演時の寺島ほどぴったりシンクロとはいきませんが、寺田さんは寺島さんに負けるとも劣らないプロポーションなので並びは良かったです。

ルビーの長田さんはやっぱり踊りが上手です。寺島ひろみさんが抜けた穴を、踊りのうまさでおぎなっているのは長田さん、スタイル面でおぎなっているのは寺田さんなのかなという気がしました。

堀口さんがゴールドで踊っていましたが、この踊りは上品な彼女に似合っていて良かったです。怪我をされて少し休んでいたようですが、無事復帰して安心しました。

ダイアモンドは川村さん。ソロの部分では少し音に遅れることがあり、もっとピキピキ、アシュトンっぽく踊って欲しいですが、コールドを伴って踊るところでは、さすがの存在感と美しさで、「宝石達のリーダー」がピッタリでした。そりゃあ、ファーストソリストですから、このぐらいの格の役でなくてはおかしいですよね。
といっても今回の主役は山本さん以外はみんなヒラのソリストなんですが。
まったく新国立の格付けはおかしいです。前監督が選んだ人選だから、来シーズンには是正されると思いますが。

DVD収録があるにしては、アクシデントありすぎという日で、洞窟でジーンがシルエットで初登場した後の暗転時にランプが光ってしまったり、逆にアラジンの家でジーンを呼ぼうとランプをこすった時に光らなかったり、獅子舞が踊っていたら、衣装の一部(毛のついた大きな布)が落ちてしまったり。

落ちた衣装の一部は、八幡さんが拾って、それをさりげなく大和雅美さんが受け取って、「わーい、これもらっちゃった〜縁起がいいわ〜」とみんなに見せているような演技をしていましたが、それがさりげなく実にナチュラルで感心しました。さすがベテランの舞台人!


アラジンは新国立劇場に合っている演目ですね。これで海外公演をやっても受けると思います。

ぴかぴか(新しい)







posted by haru at 13:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月14日

東京バレエ団「ラ・バヤデール」上野&ゴールディング

東京バレエ団マカロワ版「ラ・バヤデール」
平成23年4月13日(水)東京文化会館大ホール

ニキヤ:上野水香
ソロル:マシュー・ゴールディング
ガムザッティ: 田中結子
ハイ・ブラ―ミン(大僧正):後藤晴雄
ラジャ:木村和夫
マグダヴェーヤ:高橋竜太
ソロルの友人:柄本弾
ブロンズ像:松下裕次

影の王国ヴァリエーション1:岸本夏未
影の王国ヴァリエーション2:佐伯知香
影の王国ヴァリエーション3:高木綾

東日本大震災の影響で、当初キャストされていたフリーデマン・フォーゲルが来日できなくなり、急遽オランダ国立バレエプリンシパルのマシュー・ゴールディングが代役を踊ることになった公演。
余震もこの2日間大きなものがあって、舞台の間に起きたらどうしよかと思っていましたが、無事に終わり、バレエの世界に浸っている間は現実を忘れて、以前と変わらないような気分を味わえました。
残念ながら客席には空席もあり、特に2列目と3列目はなぜかガラガラ。
こういう時期にと控えた方、あるいはフォーゲルのファンの方で来なかった方もいたのかもしれませんが、ダンサー達の気合いの入った熱演で、良い公演だったと思います。

第1幕
マクダヴェーヤがカッコいい!純クラシック派ではない高橋さんが踊ると、この役は修行僧ではなくてヒップホップダンサーかレゲエの人?に見えなくもないくらい、泥くささがなくなる。不思議!

後藤さん扮する大僧正が、僧にあるまじき色気ばしった風情。というか、後藤さんは頭ボサボサで王子を踊っているより、こういう作り込んだキャラクテールの方がお似合い。面白い!

ソロルは顔がちっちゃ!
あの小顔レベルはポリーナ・セミオノワ並。
すらりとした若々しいイケメンです。踊りも上手でした…少し荒けずりなところもあるけど、勢いがあるし、回転もきれいでした。
水香さんのくどさを、マシューのさわやかさが消してくれたし、二人とも宇宙人みたいな人間ばなれしたスタイルだし、二人の取り合わせは良いと見ました。

上野水香さんは大きい!動きが大きいし存在感が巫女というこの役には合っていると感じます。ただ、ヴェールを取った時に、顔がどうも美しいというよりファニーフェイスなのがねぇ…ザハロワだと、本当に「ハッ」とする美しさなんだけど。
水香さんの踊りは時として品がないように見えたり、音楽を聞いてこう来てほしいときに来ない動きをしたりするのが好みに合わないんですが、気になったのは最初の方だけでした。

ガムザッティの田中さんは、本来ファーストキャストだった奈良春夏さんが怪我のため全公演ガムザッティを踊ることになったそうで、主役二人と比べると背が低いし、オーラもないし、水香さんの存在感に全然太刀打ちできない。また、ニキヤとガムザッティの対決シーンで、水香さんがかぶっていたフードが取れてしまって、お姫さまvs貧しい舞姫という見た目の図式がくずれてしまいました。
ちょっとしたことだけど、フードをかぶっていないと、「貧しい」って感じがしないんですよ。
対比のバランスが壊れましたね。

ガムザッティとソロルのバランスはあまり良くないです。マシューが小顔すぎて、田中さんと並ぶと、遠近感があるように、彼だけすごく後ろにいるように見えてしまって仕方なかったです。
田中さんは、テクニックはしっかりしているという事でしたが、余裕綽々という感じではなかったですね。
水香さんのニキヤに対抗するなら、先日のロイヤルバレエのTV放映で見たマリアネラ・ヌニェスのガムザッティぐらいテクニックと美しさがないとダメでしょう。井脇さんとか吉岡さんぐらいのキャスティングが必要だと思います。

第2幕
影の王国は大変美しかったです。とてもよく揃っていたと思います。
つづら折りが、1回だけなので、あともう少し上の方から3回ぐらい折り返すのだと、もっときれいかなとは思いますが。
マシューと水香さんのバランスはここでも良かったです。マシューのさわやかさ、水香さんの身体能力を生かした踊りはみごたえがありました。水香さんは、難しいヴェールの踊りも完璧にこなしていました。

第3幕
マカロワ版はソロルとガムザッティの結婚式に、亡霊のニキヤ(ソロルだけに見える)があらわれて二人の結婚式の邪魔をするという演出になっています。
ラコット版ラ・シルフィードにも、本来二人のパ・ド・ドゥに男性だけに見えるシルフィードが加わって踊る場面がありますが、それを同じ趣向で面白いです。
第3幕の冒頭で踊られるブロンズ像の踊りは、クラシックの上手な松下さんが踊りましたが、めちゃめちゃ速いシェネなど実に見事でした。


マシュー・ゴールディング、ひょうたんから駒じゃないですけど、水香さんのお相手としては、フォーゲルやマチュー、ボッレよりもお似合いではないかと思います。水香さんのくどさを消すケミストリーがあるし。
こんな時期に来日してくれた彼への喝采も大きかったし、これからも水香さんと組んで踊ってくれたらいいと思います。


ぴかぴか(新しい)



posted by haru at 12:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月21日

エトワールへの道程2011

新国立劇場バレエ研修所の成果
2011年2月19日(土)15時 新国立劇場中劇場

1.シアトリカル・ダンス
振付 キミホ・ハルバート
脚本・演出 三輪えり花
音楽 メンデルスゾーン

人魚姫 中川郁
王子 入戸野伊織
王女 原田舞子
海の魔王 林田翔平
王子の友人 佐藤かんな、宇賀大将

2.クラシカル・バレエ
「シンデレラ」より
振付 小倉佐知子
音楽 プロコフィエフ
音楽構成 福田一雄
 
シンデレラ 原田舞子
王子 福岡雄大
お姉さん 吉岡まな美 本島美和
仙女 佐藤かんな
ダンス教師 宇賀大将
四季の精 三宅里奈、西成雅衣、直田夏美、フルフォード佳林
道化 入戸野伊織

バレエ研修所6期生の修了公演です。
研修所も、予科生の2期生が入って、総勢20名となり、このような立派な作品ができるようになったのはすごい進歩ではないかと思います。
コンテンポラリーは新進気鋭の振付家の新作だし、クラシックも2幕仕立てで、衣装もステキでした。
ただ、シンデレラは、舞踏会から逃げ帰るまでで終わりなので、最後に王子がシンデレラを見つけて、「めでたしめでたし」がバッサリカットされており、ちょっと欲求不満が残りました。

「人魚姫」は、パートごとに、セリフを言う部分、コンテンポラリーダンスの部分、とわりと分かれている感じで、こちらは一応物語的には最後まであって、面白かったです。
長いセリフを、中川さん、林田さんは上手にしゃべっていました。
メンデルスゾーンの音楽の選び方もこの物語に合っていると思いました。

「シンデレラ」
人魚姫で軽やかに王女を踊っていた原田さんが主役でしたが、ボロ服のシンデレラはなかなか良かったのではないでしょうか。舞踏会ではもっとキラキラとした輝きが欲しいです。
ゲスト出演のお姉さん役二人、特に本島美和さんが、楽しそうに悪役を演じていました。
とっても美人さんなのに、顔中そばかすを描いて、アゴを突き出した顔つきで暴れまくりでした。
すごく面白かったし、目を引き付けられました。


年々研修生が小粒になっているような感じですが、7期のフルフォード佳林さんは素敵で将来が期待できます。
それから将来が楽しみなのは、予科生の島田沙羅ちゃん、鈴木舞ちゃんと優ちゃん。
手足が長くて細くて、ひときわきれいで目立ちます。特に舞ちゃんはデコルテのラインが美しい。
3月で予科生を卒業だそうですが、このまま研修所に進めると良いですね。

バレエ研修所は、バレエだけでなく、日本文化から美術、テーブルマナーなど、幅広い経験をさせてくれるカリキュラムとなっているところが素晴らしいと思います。
ただ、これからは、クラシックだけでなくコンテンポラリーを踊れるダンサーでなくては、ビントレー監督のもとでやっていけないでしょうから、その部分の強化がもっと必要でしょうね。


ぴかぴか(新しい)
posted by haru at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月23日

新国立劇場「ラ・バヤデール」小野絢子&福岡雄大

2011年2月22日(土)14時 新国立劇場オペラパレス

ニキヤ:小野絢子
ソロル:福岡雄大
ガムザッティ:本島美和
ハイ・ブラーミン:輪島拓也
マグダヴェヤ:八幡顕光
黄金の神像:福田圭吾
つぼの踊り:湯川麻美子 島田沙羅 鈴木優

今回の主役キャストが発表された時点で一番「観たい!」と思った組。
小野ニキヤと本島ガムザの対決やいかに!と思いましたが、
以外とそこは台本通りというか、あっさり風味でした。

小野絢子さんは、ポーズのひとつひとつがとても美しいラインを描き、<ニキヤとはかくあるべきもの>というイメージを踊りで表現してくれました。
特に、ソロルとガムザッティの婚約式で悲しみの舞を踊る時は実に女性らしく、その後花かごを渡されて喜びに満ちて踊る場面との対比もはっきりしていて、とても良かったです。

彼女は、役に求められるエッセンスを直観的に理解し、表現できる<バレエ本能>の持ち主ではないかと、私は常々感じています。
彼女のラインは、ザハロワと比べても遜色ないポーズを作っていると思います。
ただ、残念ながら、小柄だし、手足もそれほど長いわけではない。
もちろん素晴らしいプロポーションではありますが、特筆するほどのゴージャスな体型ではありません。その点で、すごくもったいない。惜しい。
あれで腕がもう少し長ければ、もっと妖艶さが出るだろうし、美しさも倍増するのに。
これからもっと精進して、そのハンディを乗り越える時、すべての人が納得するプリンシパルになれるのではないかと思います。

本島美和さんは、超美人で、ソロルがくらくらっとなびくのも無理ないというガムザッティ。
何不自由なく育って、自分の思うままにできないことなど何ひとつなかったというお嬢様という演技でした。
イタリアン・フェッテも連続フェッテもきちんとこなしていました。
彼女は、バレエを良く知る玄人筋には評判が良くないですが、どこが悪いのか私は今まであまりよくわからなかったんですが、今回感じたのは、<軸が太い>という事。
クラシック・バレエでは細くて強靭な軸で踊ることによって、切れ味や軽やかさが出てくるのですが、その点、軸が太い為にどうしても重く見えてしまうのです。
一通りのテクニックを踊れても、凡庸に感じられるのはそんなところにあるのでしょう。

ソロルの福田雄大さんは、登場シーンのジュッテが素晴らしくて、わくわくしましたが、第1幕ではあまり踊らないんです。せっかくあのジュッテで出てきたのだから、舞台を歩かせてばっかりじゃなくて、ここはひとつヴァリエーションを踊って欲しいところです。
ソロは良かったのですが、サポートが苦手なのでしょうか、マトヴィエンコと振付が違えていたところもあり、ちょっとどっこいしょ風になっていたところあり。
彼は新国立の王子として期待の星なのですから、キャラクターは踊らせずに王子専門にして、もっとサポートを訓練してあげてください。

マクダヴェヤの八幡さんがキレキレの踊りでした。
眼にもとまらぬ高速シェネが凄かった!
それにしても修行僧って、どうしてあんなに汚くしなくてはいけないんでしょう。
あれではまるで北京原人です。

コールドは、ふらふらしていた人もいましたが、概ね初日より揃っていてとてもきれいでした。
第2幕の影の王国の美しさは、本当にバレエ・ブランの極致ですね。

なんだかんだ突っ込みながらも、初日よりも楽しく観賞できた公演でした。












posted by haru at 18:34| Comment(2) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月22日

ベルリン国立バレエ団「チャイコフスキー」初日

2011年1月20日(木)18:30 東京文化会館

台本・振付・演出:ボリス・エイフマン
装置・衣装:ヴァチェスラフ・オクネフ

チャイコフスキー:ウラジーミル・マラーホフ
分身/ドロッセルマイヤー:ヴィスラウ・デュデク
フォン・メック夫人:ベアトリス・クノップ
チャイコフスキーの妻:ナディア・サイダコワ
王子(若者/ジョーカー):ディヌ・タマズラカル
少女:ヤーナ・サレンコ


これが、あのマラーホフ?
ロマンティックな「ジゼル」の貴公子(アルブレヒト)?
そこにいたのは、他人とうまく合わせることができず、
自らのエキセントリックな嗜好に苦しみ、
のたうちまわる1人の男。

狂気と現実のすれすれの境を行ったり来たりして、
かろうじて生にとどまっているよう。

あれだけの美しい音楽の数々を残しながら、
(特にバレエの世界では聖典ともいえる3つの作品を残しました)
妻にいつも苦しめられ、おのれの卑しさ、醜さを
もうひとりの自分にいつも見せつけられ、
この世では一時、もてはやされても、
すぐに暗い断崖にひきもどされてしまう。

全身全霊でチャイコフスキーの魂を表現し、
その人になりきっているアーテイストが舞台にいました。
今のマラーホフには、この「チャイコフスキー」が、
一番似合う演目だと思います。

1幕はほとんど出づっぱりで、柔らかい背中でのランベルセや、
音のまったくしないジュッテ、力みがなく自然体のピルエット…等々、
マラーホフの素晴らしい踊りも堪能できます。

マラーホフと相対する形であらわれる
チャイコフスキーの分身を演じたヴィスラウ・デゥデクは、
切れ味鋭く、スマートで怪しげ、長身で美しい脚を持つ魅力的なダンサー。
(SHOKOさんの彼ですが、こんなに踊れる人とは知らなかった)
チャイコフスキーがいつも夢の中にいるような呆然とした顔つきなのに対し、
分身は何かたくらんでいるような目的意識を持った表情でチャイコフスキーを導く…
何へ? 時には歓喜、陶酔、そして苦痛、破滅へ…

この作品のテーマは1幕で十分説明されます。
男色だったチャイコフスキーの性的嗜好は、
男性が黒鳥となって出てくることから明らかですし、
白鳥はピュアなものへの憧れ、そして若く美しい王子は
まともでありたかった自分の夢の象徴。

くるみ割り人形をモチーフにしたシーンでは、
チャイコフスキーを援助するフォン・メック夫人と妻の両方が
ねずみのかぶり物をして出てきて、<どんな女性でも、彼にとってはやっかいの種でしかなかった>ことの象徴のようです。

そして何度も出てきては執拗にチャイコフスキーに絡む妻は、
ついに花嫁衣装のヴェールで彼をがんじがらめにします。

2幕では、1幕で提示されたテーマが色々なダンスシーンで繰り返されます。
自分がこうありたかったという姿の象徴である王子と、若くピュアな少女(どこか妻の若いころという感じもあり)の恋愛。
それは男色の自分には無理だったもの。

男色の自分にお似合いなのは…
そこで、「スペードの女王」のモチーフで、
カード賭博のシーンがあり、ハードゲイファッションの男性たちの踊りがあり、ベジャールの「ボレロ」を思わせる、テーブルの上のダンスがあり、さらには氷の上をすべるペンギンのように、テーブルの上をスーッとすべる面白いアイディアの振付もあり…

マッツ・エックの「ジゼル」を思わせる、スキンヘッドで精神を病んだ風な妻も現れます。

書いていて気がつきましたが、ベジャールの「ボレロ」あり、ローラン・プティの「スペードの女王」、マッツ・エックの「ジゼル」あり、そしてバランシンの「セレナーデ」もあり、もちろんチャイコフスキーの3大バレエもありじゃないですか。

この作品はそれらのバレエ作品へのオマージュでもあるんですね。
つまり、チャイコフスキーは、オペラや交響曲などの作曲でも有名ですが、バレエにおいては、何といっても「眠り」「白鳥」「くるみ」という3大古典を作った大恩人。
ですからこの作品ではその点を軸に置いて、その後、近代までの有名なバレエ作品を時間軸に沿って入れ込んであるのではないでしょうか。
1幕ではチャイコフスキーの3大バレエ、2幕ではバランシン、ベジャール、プティ、エックの代表作。バーレッスンをするシーンもありますね。
チャイコフスキーの物語と2層構造をなすような仕掛けで、<バレエ>というテーマが仕込んであります。

なるほど…さすがエイフマン!
スタイリッシュなだけではない。
バレエへの愛を感じてしまいました黒ハート


ぴかぴか(新しい)








posted by haru at 00:03| Comment(1) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月16日

新国立劇場「ラ・バヤデール」小林ひかる&マトヴィエンコ

2011年1月15日(土)16時 新国立劇場オペラパレス

ニキヤ 小林ひかる
ソロル デニス・マトヴィエンコ
ガムザッティ 厚木三杏
ハイ・ブラーミン(大僧正)森田健太郎
黄金の神像 福岡雄大

芸術監督がビントレーになった今シーズン唯一のプティパ作品。
ザハロワを見たかったのに、おめでたで降板。
代役を、ロシアからでなく、英国ロイヤルから、なぜか(あるいはあえて)日本人ダンサーを呼び、今回はニキヤを踊る全員が初役というキャスト。

小林ひかるさんを観るのは初めてでしたが、とても丁寧に、足先を出す時や、ひとつひとつのパを大切にして踊っていて、また演技も、特に2幕の悲しい踊り〜花かごの踊り〜毒へびに噛まれる〜一連のシチュエーションのあたり、感情の流れがよくわかる確かな演技で、とても良かったです。

ニキヤが登場してヴェールをさっと取った時、まず、しっかりした体つきにちょっとびっくりしました。日本人ダンサーって、痩せると薄っぺらで貧相な体形になりがちなのですが、小林さんは痩せていても体躯に厚みがある外人のような体型なのです。

面高な顔つきで、姫というよりは庶民的な印象です。
プロポーションもいいと思いますが、ガムザッティ役の厚木さんと並んだら、顔がだいぶ大きい??
厚木さんが小顔すぎるのかもしれませんが。

まずは手堅くニキヤデビューは成功だったと思います。
ザハロワの代役としては、「美しさが足りない」それにつきます。

今日文句なく舞台が美しく輝いた場面は、「つぼの踊り」です。
湯川麻美子さんと、将来が楽しみな美しい二人の予科生は、このシーンだけで完結するかわいらしい物語を見せてくれました。すごくチャーミングな3人の踊りでした。永久保存版にしたいくらいです。

デニス・マトヴィエンコは、すごく張り切っていました。
この演目はあまり男性が活躍するところがないんですが、それを十分カバーしてあまりあるほどのハッスルぶりだったと言えましょう。

黄金の神像を踊った福岡雄大さんは、まず見た目が美しい。
踊りも上手でした。王子を踊ったり、こういうキャラクテールを踊ったり、守備範囲が広く大活躍です。ポスト山本の最右翼といったところでしょうか。

ガムザッティの厚木さんは、あまり調子が良くなかったのか、胸から上をガチガチに固めたような踊りで、いつも以上に硬質な踊りでした。
すごく怖く見えるので、彼女から視線をはずして、後ろで柔らかく音楽的に踊っている西山裕子さんばっかり見てしまいました。

第3幕の影の王国のコールドは、坂を下りてくるところが、もう少し静謐さがただようになると、もっと良くなると思います。何度か公演していけば、きっと揃ってくるでしょう。
ただ、左右1列に並んだ時に、身長が揃ってなくて、ボコッと途中で低くなっているのは、いただけませんでした。

ぴかぴか(新しい)


posted by haru at 00:14| Comment(2) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月27日

Kバレエ「くるみ割り人形」松岡&宮尾

2010年12月25日(土)18:00 ACTシアター
クララ:神戸里奈
マリー姫:松岡梨絵
くるみ割り人形:宮尾俊太郎
ドロッセルマイヤー:S・キャシディ
雪の女王:浅川紫織
雪の王:遅沢佑介

昨年は新国立劇場のくるみと重なって見られなかったKバレエですが、今年は新国立が12月上旬に公演が終わったので、クリスマスはKのくるみでわーい(嬉しい顔)
私と同じように考えた人が多かったのか、満員御礼でした。

ACTヴァージョンでの上演はもう3回目ぐらいになるでしょうか。
クリスマスの恒例として定着しつつあるようです。
今年はまた少々手直しがあり、第1幕45分、休憩25分、第2幕50分ときっちり2時間で終わるようになっていました。
おそらく第1幕の紳士淑女の踊りのあたりをけずったのかな?
とにかく、子供が観ていて眠くなるようなシーンは一切ナシ!!
楽しさ、驚き、わくわく感満載で、素晴らしい公演でした。
演出はお子様でも楽しめるように作ってありますが、バレエの振付はかなり難しいので、バレエファンにも見ごたえがあります。(もっとも、振付の難しさについていけないダンサーもいましたが)


これは本当に1カ月間ぐらいロングランでやっても良いかもしれません。
熊川さんの人気に頼らなくてもよい、優れたプロダクションだからです。
Kバレエは良い男性ダンサーが豊富に揃っているから、若手に順繰りにくるみ割りを踊らせたりする趣向もありかなって思いました。

マリー姫の松岡梨絵さんが、女性らしい柔らかい踊りで美しかったです。
宮尾さんは、どうしたことか… ピルエットが全滅だし、体のキレも良くなかったようです。
スランプなのでしょうか?彼は。
貴重な長身ダンサーなのだから、もっと頑張ってください!
熊川さんの一押しが浅田君になったようだから、すねているのでしょうか。
その浅田君、25日マチネでくるみ王子を踊る予定でしたが、体調不調で降板、代役は橋本さんだったそうです。


ぴかぴか(新しい)



posted by haru at 11:08| Comment(2) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月04日

新国立劇場バレエ「シンデレラ」寺島まゆみ&貝川鐵夫

2010年12月4日(土)14時 オペラパレス

シンデレラ 寺島まゆみ
王子 貝川鐵夫
義理の姉たち 保坂アントン慶
井口裕之
仙女 湯川麻美子
春の精 丸尾孝子
夏の精 本島美和
秋の精 米沢唯
冬の精 寺田亜沙子
道化 福田圭吾
ウェリントン 小笠原一真
ナポレオン 八幡顕光

2年ぶりの寺島まゆみさんのシンデレラはもう、キッラキラぴかぴか(新しい)

ボロ服の時も、決して悲観したりしない。
とっても天然で、根っからポジティブな女の子。
一生懸命に部屋のそうじをして、お姉さんたちがいじわるをしても、全然元気で楽しそう。

舞踏会へ行く美しいドレスをまとったシンデレラは、体全体から金色の粉をふりまいているように美しく、その粉と軽やかな足捌きのステップは見る人を幸せに導く魔法。

王子の貝川さんは、立ち姿がすらっとして美しい。
願わくば、もうちょっと、ソロをびしっと決めてほしかったことと、シンデレラを担ぐときに、<よっこらしょっ>はないだろうと。

でも、それ以外はそれほど破綻もなかったし、王子とシンデレラの間に交わされる優しい視線があって、ほんわかとした愛を感じました。

仙女の湯川さんは、皆をまとめる統率力がありますし、動きのキレが小気味よいですね。
義理の姉たちは、なかなか細かい演技をしていました。ちびのナポレオンでなく、長身のウェリントンを二人で取り合うシークエンスは笑わせてもらいました。

何と言っても素晴らしかったのは、シンデレラのまゆみさんです。
まゆみさんのヴァリエーションは、音にぴたぴたと心地よくあった踊りで、見ていて胸がすくように気持ちが良い。
2年前に比べて経験を積んだせいか、舞踏会のドレス姿のシンデレラのプリンセスオーラが10倍ぐらい強くなっています。
ボロ服のシンデレラはもともとの<村娘系>のキャラにあっているのだけれども、<姫系>であるプリンセスの方もしっかりと自分のものにしていて、プリマとしての成長を感じました。

この「シンデレラ」という演目は、まゆみさんに最適かもしれません。キャラ的にも似合うし、アシュトンの振付も、きびきびとこなすことができるし。
そして何よりも、まゆみさんは、その踊りで観る人を幸せにしてくれる稀有な能力を持ったバレリーナ。もっと主役を踊るべき人です。


実は私、この「シンデレラ」という演目はそれほど好きではないのです。
だって、義理の姉たちにウェイトが置かれすぎていて、シンデレラとどっちが主役なのかわからないので。
面白くはあるけれども、それより美しいものを早く見せろ、って感じなんです。

でも今日のまゆみさんは、本当に美しかったし、可愛かった。
愛らしくて、チャーミングで、最後に王子と二人で抱き合って去る後ろ姿に金色の粉が降ってくるところなんぞ、おとぎ話の最後の決まり文句「...and they lived happily ever after」(それから二人は幸せに暮らしましたとさ)
というのが私の脳内に字幕で出てきて、おもわずホロリとしちゃいました。

こんな「シンデレラ」なら、かなり好きかも?!



ぴかぴか(新しい)

posted by haru at 20:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月15日

第49回バレエ・フェスティバル

2010年11月12日(金)18:30 メルパルクホール

バレエ・フェスティバルとは、日本バレエ協会が文化庁芸術団体育成事業として開いている創作バレエの祭典だそうで、毎年3人の振付家の作品を上演しています。

江藤勝己作品「シェスタコヴィッチ・ピアノコンツェルト」

寺島ひろみ/Ligang Zou
津下香織/河島真之
平塚由紀子/冨川祐樹

白、グレー、黒の衣装で、クラシックバレエの基本のパを見せながら、コールドとソリストが交錯していきます。
バランシンとランダーの「エチュード」を混ぜたような感じの作品で、最初の1楽章は特にテンポが早く、振付の難易度も高かったですが、寺島ひろみさんはピタッと合わせてきてさすがでした。
シェネを連続しながら方向を2回変えていくところなど、見事でした。
エチュードのように、コールドがジュッテをしながら交差するシーンもありました。
プリンシパルより下のダンサー達のレベルがいまひとつだったのですが、新国立で上演したら、きっとカッコイイだろうと思います。
センスのいい作品でした。



貞松正一郎作品「アイ・ガット・リズム」

岩田唯起子/富村京子
大久保真貴子/吉田真由美
法村圭緒/藤野暢央

昔のブロードウェイ・ミュージカルの雰囲気で、カラフルな衣装で踊ったり、傘を使ってボーイ・ミーツ・ガール。富村京子さんは香港バレエにいた方なんですね。チャーミングでした。
バレエでもこんなミュージカルみたいにできるよ、って感じの作品で、私にはつまらなかったです。



篠原聖一作品「カルメン」

カルメン 下村由理恵
ドン・ホセ 佐々木大
スイーガ 森田健太郎
エスカミリオ 沖潮隆之
運命 篠原聖一
子供達 裄V郁帆/アクリ土門/伊藤充/奥田祥智/加藤静流/佐野朋太郎/西澤優希

以前に2幕仕立てで制作したものを1時間程度にまとめたものだそうです。
簡素ながらも効果的な舞台装置、オーケストラだったり、主旋律を抜いていたり、効果音で作ったりと、色々な演奏で流れる「カルメン」の音楽、群舞とソロ、猥雑さと静けさの対比…
素晴らしい演出力の作品でした。

カルメンを演じた下村由理恵さんはまさに女優バレリーナ!ポワントを履いていると感じさせないくらい自然なポワント使いで、野生の女、本能の女のカルメンになりきっていました。
ドン・ホセの佐々木大さんは、まじめそうで華が無いのがホセらしいとも言えますが、背中が柔らかくてランベルセがとてもきれいです。
スニーガの森田健太郎さんがカッコよかったです。踊りもキレてました。王子よりこういう役の方が嬉しそうに生き生きとやっています。
エスカミリオの沖潮隆之さんは、背が高くて、180センチ以上あるでしょうか、見た目は良いのですが、闘牛士とは、もっとシャープでイナセであって欲しい。

子役がすごく上手で、みなさんコンクール入賞の常連らしいですが、コールドの人たちよりも上手で際立っていて、目の保養になりました。
何年か後に有名になるかもしれないから、名前を上に書いておきました。

ぴかぴか(新しい)


posted by haru at 16:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月03日

新国立バレエ2010/11シーズンオープニング「ペンギン・カフェ」

2010年10月27日(水)19時 オペラパレス
「火の鳥」
火の鳥:小野絢子
イワン王子:山本隆之
王女ツレヴァナ:寺田亜沙子
魔王カスチェイ:マイレン・トレウバエフ

この作品は、バレエ・リュス100周年として上演されたもの。バレエ・リュスは当時の最先端の芸術家たちを集めて実験的な作品を次々と作り上げていった。
しかし、こうして見るとそのセンスが、面白いとは思うけれども私は好きではないと感じてしまう。
たとえば乙女たちのギリシャ風衣装とか、魔王の手下の悪魔的衣装とか、狙いが見えすぎて古臭い。
最後の結婚式の場面で、これでもかこれでもかと、いろいろな人物が舞台に登場するが、当時としては単に大人数でスペクタクルを表現したかったものではないかと思う。
ほとんど意味はない。これで何かしら踊ったりすればまだいいのだが、ただ出てくるだけ。
現代の発想とはかなり開きがあると感じられた。
ダンサーで際立っていたのは火の鳥と、魔王カスチェイ。
小野絢子さんは、火の鳥を演じるには小柄だが、彼女は役の求めるものを本能的に嗅ぎ取って表現できる才能があると思う。
火の鳥という役において求められるのは、超常的な存在感と目力。独特のポーズの作り方も巧かったし、この世のものならぬ雰囲気も十分に出ていた。
魔王カスチェイのマイレンときたら、一瞬たりとも目を離せないような強烈な演技で、火の鳥と彼のおかげで、この退屈な作品を見届けることができたようなもの。


「シンフォニー・イン・C」
第1楽章プリンシパル 長田佳世 福岡雄大
第2楽章プリンシパル 小野絢子 富岡祐樹
第3楽章プリンシパル 酒井はな 芳賀望
第4楽章プリンシパル 本島美和 マイレン・トレウバエフ

ネオ・クラシックといえども、バランシンのこの作品を端正に踊るためには、ダンサーひとりひとりのクラシックの技量が問われるが、二つ目の演目として持ってきた順番は正しかったのだろうか。
火の鳥を踊った小野絢子さん以外はトウシューズを履いておらず、短い休憩時間の間に、モダン向けの体から、軸の通ったクラシックバレエ仕様に調整するのは難しいと思われる。
ポワントの音が目立ったし、本来の新国立バレエ団ならもっと上手く踊れるように感じた。
その中でも抜群に上手だったのは第1楽章の長田佳世さん。福岡雄大さんも素晴らしい。
久しぶりに新国立劇場に登場した酒井はなさんは、以前に比べてクラシックバレエが下手になってしまってるようだった。最近はクラシックよりもコンテンポラリーを踊ることが多いようだが、やはり純粋なクラシックは、しょっちゅう舞台を踏んでいないとそのレベルを持続するのが難しいのだろうか。
第3楽章のコリフェをやっていた寺島まゆみさんは、とっても音楽的で、かろやかなジュッテが高くて、楽しそうだった。

「ペンギン・カフェ」
ペンギン:さいとう美帆
ユタのオオツノヒツジ:湯川麻美子
テキサスのカンガルーネズミ:八幡顕光
豚鼻スカンクにつくノミ:高橋有里
ケープヤマシマウマ:芳賀望
ブラジルのウーリーモンキー:福岡雄大
熱帯雨林の家族:本島美和 貝川鐵夫

ショーケースのように、いろんなタイプの音楽にのって、動物たちが踊る。
最初にペンギンのかぶり物で踊るベンギン・カフェは、女性がロングドレスでボールルームダンスのようで美しい。オオツノヒツジもボールダンス風。
ノミは、スパイダーマンのようなオレンジ色のマスク&総タイツで、唯一ポワントを履いて踊る。
ケープヤマシマウマの場面も、シマウマと黒白の衣装の女性たちが、スタイリッシュに踊る(というか女性はポーズがほとんど)
ウーリーモンキーはサンバのように賑やかで楽しい。ここでも福岡雄大さんは素晴らしかった。
熱帯雨林の家族は、おかっぱ頭が微妙。
やがて雨が降ってきて、左右からダンサーが走ったり、ジャンプをしたりしまくる。
これは体力が要るだろう。
最後にノアの箱舟のようなものが現れる。
動物たちはこれに乗るが、ペンギンは乗らずにみんなを見送る。つまりこのペンギンは絶滅してしまったということ。

ペンギン・カフェとシマウマのシーンはスタイリッシュだけれども、あんまりバレエを見たという気分にはならない作品。ショーダンスです。
クラシックバレエがきちんと踊れる新国立のダンサーたちには、もっとふさわしい作品があると思います。
この3つの演目をみた感想としては、新国立は「美しいクラシックバレエを踊る団」から「なんでも踊る団(クラシックもあり)」になってしまったのかな、という事です。
せっかく10年かけて培ってきた伝統を守りながら、新しい風を入れるのならいいのですが…来年1月のラ・バヤデールを見れば、そのあたりがどうなったのか、はっきりするでしょう。


ぴかぴか(新しい)

posted by haru at 16:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月19日

オーストラリア・バレエ団「くるみ割り人形」

2010年10月16日(土)15時 東京文化会館
振付・演出:グレアム・マーフィー
年老いたクララ:マリリン・ジョーンズ
クララ、バレリーナ:レイチェル・ローリンズ
子ども時代のクララ:柴平くるみ

医師/恋人の将校: ケヴィン・ジャクソン

スタンダードな「くるみ割り人形」とはまったく違ったストーリーで、ロシア人の元プリマバレリーナが、帝政ロシアのバレエ学校時代から、革命で恋人を亡くして、バレエ・リュスに入り、その後オーストラリアに渡ってボロバンスキーバレエ団のプリマになった、過去の人生をノスタルジックに振返るドラマです。
始まりの場面は、雪でなく太陽サンサン降り注ぐ真夏のクリスマス。主役は少女でなくて老女のクララ。という本家と正反対の設定にひねっています。
創立30周年記念に作られただけあって、実際のオーストラリアバレエ団の歴史を描いてもいます。最後に、クララがバレエ・リュスからボロバンスキーバレエに移籍して金平糖の精を踊るという設定ですが、このボロバンスキーバレエが核となり、現在のオーストラリアバレエ団ができたのです。

老いたクララを演じたマリリン・ジョーンズ。

首のしわとか、背中の丸いぐあいを見て、おそらく60過ぎかなと思いましたが、こちらのサイトによると、1940年生まれで、なんと70才!昔の写真の美しいこと!
音楽を聞いて昔のように踊りだすシーン、高いアラベスクはできなくても、はだしの足先がぐっと甲がきれいに伸びていてプリマとしての過去を物語っていました。
他に7名のおじいちゃん、おばあちゃんが出演していましたが、たぶんみなさんも70代だったんですね。バレエの公演で老人だけでほぼ1幕もたすというのは初めて見ました。正直いうとちょっと長すぎましたが、マリリンがいたから、見ていられました。彼女は振付家のスタントン・ウェルチのお母様で、ボロバンスキーバレエとオーストラリアバレエでプリマとして活躍したというのは、このお話の主人公と一緒。
今でも十分美しくて、はかなげで、他のキャストが考えられないほど、この老クララがぴったりです。

疲れてベッドに横になった老クララは、夢の中で若いクララとなって起き上がります。
そして付き添いの医者は、彼女の恋人に変身して、美しいパ・ド・ドゥを踊ります。
さんざん老人ばかり見せられた後の、若々しい二人が、一服の清涼剤のようにみずみずしく、空気をリフレッシュしてくれました!
レイチェル・ローリンズ扮する若いクララは、最初、足が太い?と感じたのですが、体型や控えめな雰囲気が似ていて、マリリン・ジョーンズの若いころという説得力がありました。(このあたり、迫力あるルシンダ・ダンのクララだと少し違和感があったかもしれません)

愛のパ・ド・ドゥの後に、ねずみたちが出てきて、クララをいじめます。
ねずみは赤い腕章をしていて(革命軍の象徴)で、当時のコラージュ映像が舞台いっぱいに映し出されて、スモークがたかれる中、ねずみとクララのバトルが……(長かった)で、恋人は死んでしまう。

大時計の下から巨大マトリョーシカが現れて(ちょっとびっくり)
それを開けると(縦開きです。棺桶みたい)またマトリョーシカ。
それを開けるとまたまたマトリョーシカ(笑)
それを開けると、白いネグリジェの少女のクララが現れました。

その後が雪の踊りです。頭にタンポポの綿毛のような丸いかぶりものをした「雪ん子」たち。
綿毛のように、同じ方向へくるくるっとまわって、まわって、ぺたっと地面に倒れて、
そのままお尻でまわって…というような、かわいい振付。
ラジオシティ・ミュージックホールのレビューか50年代ミュージカルみたいで、私はこれ結構気に入りました。

第2幕は盛りだくさんです。
バレエ学校のシーンから始まり、恋人とのピクニック。
皇族の前でグラン・パ・ド・ドゥを踊るクララ。衣装がバレエ・リュス風でゴージャスです。
王室のダンス・パーティで踊られるのが「花のワルツ」。みんな黒っぽいロングドレスで重々しく、花のワルツのイメージとは正反対。
「金平糖の踊り」は、クララを見染めたお金持ち達が、彼女に我こそはと宝石をプレゼントしようとするシーンで使われました。
チェレスタの響きが、宝石がキラキラしているように聞こえて、これはうまい演出でしたね。

その後、恋人が戦争に行って死んでしまい、クララはバレエ・リュスに入ることにしました。
ここでまた映像で、クララのロシア脱出と客船で世界を回ることが語られます。
「スペインの踊り」は、小銭をやって踊らせたジプシーのダンスとなり、
「アラビアの踊り」は、綱につながれた半裸の奴隷たちの踊りとなっていました。
「中国の踊り」は、無音ではじまり、スモークの中を20人以上が太極拳をしています。
そこに人力車に乗ったクララが通りかかるという趣向でした。
音楽とまったく違うスローモーな動きをしている人たちとの対比が強烈でした。
でも、中国に行ったことのある人は、あの光景が目に焼きつくのだと思います。マーフィーもきっとそうだったんでしょう。
中国は神秘的な感じがしますが、スペインとアラビアは、うらぶれて暗く、物語のつじつま合わせを優先したばかりに楽しさがなかったので、ちょっとがっかりでした。

オーストラリアの港では、水兵たちが踊っています。ミュージカル「踊る大ニューヨーク」風です。
音楽も、ここはくるみ割りではなく別の曲でしたが、明るくて、さきほどまでの暗いディベルティスマンよりよっぽど良かったです。
バレリーナたちを新聞記者が出迎えて質問を浴びせます。
新聞記者にはセリフがあります。かなりベラベラしゃべっていましたが、さほど違和感はありません。

場面が変わって、劇中劇のバレエシーンになります。
観客に背を向けて、クララが入団したボロバンスキーバレエで「くるみ割り人形」の金平糖を踊るという設定です。
あたかも舞台奥から見ているようで、自分もバレエ団の一員になったように感じられて、ちょっと新鮮な演出でした。
主役を踊り終わって、大歓声のカーテンコールに出るクララ。
投げ入れられた花を拾って、舞台の奥(つまりこちら側)に顔を向けると、それは老クララでした。
最後の音楽が聞こえてきます。
老クララはベッドの方へ行きます。
老クララ、若いクララ、少女のクララの3人がベッドの上で重なります。
走馬灯のように思い出を駆け抜け、彼女は息を引き取ります。

最後に、若いクララからいつのまにか老クララになったのか、全然わかりませんでした。
振返ったとき、その老いる年月の早さに、ぐっときました。

オーストラリア・バレエ団の歴史。
マリリン・ジョーンズのたどった道。
彼女と同じようなたくさんのダンサー達。
過去へのノスタルジー。

映画「バレエ・リュス」を観た方だとなおさら、このノスタルジーが理解できると思います。

パ・ド・ドゥが、ステップは踏まずにリフトばっかりしているとか、映像を使い過ぎだとか、これだけ演劇的な作品にするなら、ねずみじゃなくて兵隊をだしても良かったんじゃないかとか、老人たちで1幕ひっぱるのは長すぎるだろうとか、発想が面白いだけに、もっと完成度を高めて欲しいところはありますが、いっそのこともっとセリフを増やしてミュージカルにしてしまうのも面白いかもしれません。


posted by haru at 01:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする