2016年11月20日

「ラ・バヤデール」祥子&遅沢

2016年11月19日(土)16:30 東京文化会館

ニキヤ 中村祥子
ガムザッティ 浅川紫織
ソロル 遅沢佑介
ハイ・ブラーミン スチュアート・キャシディ
マクダヴェヤ 酒匂麗
黄金の仏像 井澤諒

熊川さんは中村祥子さんで、Kバレエの全幕レパートリーすべて映像に残すつもりなのでしょう。
白鳥、眠り、このバヤデールもシネマとして公開されるようです。
そのための録画撮りをしていたためか、コールドに至るまで気合の入った良い舞台となりました。

冒頭は苦行僧たちの踊り。ここはKバレエの男性ダンサーたちがはじけるところ。
マクダヴェヤの酒匂さんのジャンプがすごく高くて、開脚も空中のポーズが決まっていて、しょっぱなからワクワクしてきます。

ソロルの登場は、グラン・ジュッテの連続ではなかったです。海賊みたいなパッセの形を見せるジャンプ1回で登場。んーここはやはり、斜めに大きなジュッテで登場して欲しいところです。

ハイ・ブラーミンと共に僧侶たちが登場。このエキストラの僧侶が、初演時に驚いたのですが、太った中年の方々なんです。普通、こういうエキストラって、バレエ団員の下っぱがやるものですが、それだと体格的に細くて舞台に重厚感が出せないと判断したのか、体格の良いエキストラを調達(いったいどこから?)。
こんなところに熊川さんの「こだわり」を感じます。そうです。こういう小さなことの積み重ねで舞台の重みが違ってくるんです。脇役もエキストラも重要な要素です。

巫女の踊りの後、ニキヤ登場。ヴェールをかぶった祥子さん、そのままでも美しい。
この世のならぬ美しさというよりも、もう少しナチュラルで、平民の娘が取り立てられて巫女になった雰囲気。わりと普通っぽいというか。あえてのキラキラ度おさえめというか。

とても控えめで、神に仕える身という自覚があり、ハイ・ブラーミンのプロポーズもきっぱりと断る。
でも、マクダヴェヤから「ソロルが待っている」と聞かされると、突然瞳がキラッと輝いて、表情がパァーッと明るくなる。ニキヤにとって、ソロルは特別な存在だというのがよくわかりました。

ニキヤの踊りは、大変に抑制された感じで、それはこの1幕の時から、影の王国に至るまでずーっと続いていて、唯一解放されるのは、この一幕で踊るソロルとの愛のパ・ド・ドゥ。

そう言えば、この公演の前に行われた公開リハーサルで、ソロルを探すニキヤのことを、熊川さんが「Where is my lover?」ってアテレコをしていたけれども、祥子さんは、まさにそのセリフが聞こえるようなお手本のような演技でしたね。

場面が変わってラジャの屋敷。これがお前の婚約者だよとガムザッティに見せるソロルの似顔絵が、なにげに遅沢さんに似すぎていて(笑)あたりまえなことですが、ここが似ていない舞台って結構あるんです。こういう小道具も神経が行き届いているところ、いいと思います。

浅川ガムザッティが、ゴージャスな美しさでキラキラオーラ全開です。これはソロルでなくても誰でもまいってしまうだろうという位の。思わずくらっとくるソロルの気持ち、わかります。
ニキヤとガムザッティの対決シーンは、マイムからセリフが聞こえてくるようで、大変にドラマティックでした。美女二人の喧嘩、大迫力で、キッラキラのガムザと、身分の低いニキヤという対比もわかりやすかった。浅川ガムザは、生まれながらのお姫様で、自分の思い通りにならなかったことなど、一度もないという育ち方で、だから自分に歯向かっていうことを聞かないニキヤに対して、思わずムカついて「殺す!」となる流れも納得できました。

ニキヤの「殺す!」マイムで休憩かと思ったら、舞台は続いて婚約式のシーンへサクサク進みます。
度肝を抜くくらい大きな象(これは海賊の船にも匹敵するくらいの大装置です!)にソロルが乗って登場。これまた大きな仕留めた虎がお土産。

ジャンぺの踊り、にぎやかな太鼓の踊り、パ・ダクシオン、ガムザッティとソロルのパ・ド・ドゥなど、古典バリバリのクラシックから、土着的な太鼓の踊りまで、さまざまな踊りがてんこ盛りで楽しい!
杉野さんをリーダーとする太鼓の踊りは、みんなはじけておおいに盛り上がる!ボリショイにも負けていない!
バヤデールでは、きたない恰好の男子の方が見せ場が多くて踊りまくる!
例外はソロルの友人の栗山さん。シュッとして細くて長身王子。見た目は抜群です。踊りがもっともっと上手になってKバレエを背負うくらいになって欲しいです。

ガムザッティの難しいヴァリエーション、浅川さんが端正かつ華麗に踊りきって大喝采!!
浅川さんは初演時のニキヤが、とても良かった記憶がありますが、ガムザッティも素晴らしい。祥子さんと浅川さんでニキヤとガムザッティを交替して日替わり公演なんか、いいんじゃないですか?
この二人で、たとえばジゼルとミルタを交替して日替わり公演もいいと思います。

遅沢さんは、もっとできる人だと思いますが、ジャンプの高さが少し物足りない感じではありました。彼はKバレエで長いですからね〜もう7、8年?
経歴を見ると2007年入団、2013年からプリンシパルなんですね。遅沢さんという相手役がいるから祥子さんが踊れるわけであって、祥子さんのために外部からゲストを呼ぶのはKバレエらしくないし、かといって宮尾さんはいまいちなんで、もうすこし彼に頑張ってもらわなくては。

ニキヤの悲しみの踊り。ポワントでススしてからアティチュードという振付、普通はさっと脚を上げてからすぐにアテールに降りるのですが、祥子さんはポワントのまま、片脚をゆっくりとあげてアティチュードにもっていき、そのままポワントバランス。これを繰り返しました。すごい大技!
こういう大技、コジョカルとロホがやったのを見たことがあります。そういう世界でも超一流のバレリーナしかできない技です。

この悲しみの踊りが、花かごをもらってから明るい曲調になるのですが、熊川版では、花かごは直接ソロルからニキヤに渡されます。(準備したのはラジャです。ラジャが花かごに毒蛇をしかけさせたという設定です)
ラジャが花かごを「踊ってくれたお礼に渡せば」みたいな感じでソロルに渡し、ソロルがニキヤに花かごを渡し、受け取ったニキヤが喜んで明るく踊りだすという、大変納得のいく話の流れになっています。

花かごから毒蛇がでてきて噛まれたニキヤに、びっくりする様子のガムザッティ。ガムザッティが仕掛けたのではないようで、でもニキヤは「あなたがやったんでしょう」と言いますが、「そんなの知らないわ」と、まあ本当に知らないんでしょうが、悪びれず、ソロルの手を取り、あちらにいきましょうというガムザ。
それを見て、解毒薬を拒絶して死ぬニキヤ。このあたりのお話しは、ジゼルにそっくりですよね。

ニキヤの死で第一幕は終わって休憩です。第二幕は神殿の中で祈るソロル。この神殿のセット、タイムマシンの異次元空間みたいでなかなか面白いです。マクダヴェヤが水パイプをすすめて、ニキヤの幻があらわれ、それを追っていくと影の王国です。

影の王国は2段半ぐらいのつづら折り。影たちの衣装は、ちょっとかわったバルーンスカート風のチュチュで凝っています。コールドたちの見せ場の長いシーンですが、とても良く揃っていて、緊張感と一体感のある美しい踊りでした。観客もしわぶきせずに、かたずをのんで見守って、引き込まれました。こういう舞台と客席の一体感を味わえるのが、DVDでは味わえない、劇場空間ならではの良いところです。

影となったニキヤの踊りは、余計なもののないシンプルな、クリアな踊りでした。祥子さんはポワントに乗って「たゆとう」のが好きで、作品によってはよくそれをやるのですが、ここではそれは封印し、古典のエッセンスのみで魅せるような踊りでした。
ヴェールの踊りは、左右両方に回転する、とても難しいものですが、完璧でした。
そのあと、ちょっとピルエットで落ちるという祥子さんにしてはめずらしいミスがありました。まあ、たぶんもう一回の公演でもビデオ撮りをして良い方と差し替えてシネマで使うので大丈夫でしょう。
遅沢さんのソロも、だいぶ体力を使ったのか、ヘロッてるところがありました。少しお疲れなのかしら。

三人のオンブル、それぞれのヴァリエーションが素晴らしかったです。ふんわりと軽くて、体重がないようで。中村春奈さん、小林美奈さん、浅野真由香さん。このあたりのランクの女性ダンサーが徐々に育ってきているようです。

影の王国から帰ってくるとソロルは死んでいて、駆け寄ったガムザッティに白蛇が食いつく。
神殿が崩壊して(ここの舞台装置、すごくゆっくりと大岩が落ちてくるのが、CGみたいで迫力あります)すべてが無となった中に黄金の仏像が踊ります。

その後、スモークがたかれ、天国でニキヤを追いかけていくソロルで幕。

この最後の演出ですが、初演時は、たしか神殿崩壊のあと、洪水が起きて、それを水色の布で表現していたと思いますが、そこがなくなってしまいました。
あの水色の布の洪水で、「世界が浄化された」というインパクトがあるのに、改変されたのは少々がっかりです。初演時に、それで終わるのはどうかという意見があったのかと思いますが、熊川さんの秀逸なアイデアなのですから、つらぬき通して欲しいです。






















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2016年11月10日

新国立劇場バレエ「ロミオとジュリエット」米沢&ムンタギロフ

2016年10月30日(日)14時 オペラパレス
ジュリエット 米沢唯
ロミオ ワディム・ムンタギロフ
ティボルト 中家正博
マキューシオ 福田圭吾
ベンヴォーリオ 奥村康佑
乳母 楠本郁子
キャピュレット夫人 本島美和

私が新国立劇場バレエのロミジュリを見たのは2回目です。
前回は小野絢子さんとマトヴィエンコを見ましたが、マトヴィがどうもロミオに見えず、小野さんの熱演もいまひとつしっくり来ず、モブシーンはバーミンガムバレエ版のせいか、舞台に乗っている人数がロイヤル版よりも少なくて、スカスカしているような印象が残っていました。

今回も同じバーミンガムバレエ版なので、やはり人数少な目ではありましたが、主役の二人が素晴らしくて、あまり気になりませんでした。
最近お気に入りのプリマ、米沢唯さん。
お稽古場だとピルエット5,6回転してしまうという抜群のテクニック。端正で丁寧な踊りが魅力です。
古典の見せ場、連続フェッテなどでさらりとすごい技をやってしまうのがたまりません。
演技もわりとあっさり目という感じなので、今回のロミジュリ観に行こうかどうしようか悩みました。
ロミジュリだと古典のテクニックを見せるようなシーンはあまりなくて、演技が重要ですから。

でも観に行って良かったです!
唯さんの初登場シーン、ジュリエットの寝室。乳母とたわむれる唯さんのかわいらしいことといったら!!
いたずらっこの14歳そのもの。そのキュートさにハートを射抜かれました。

ワディムのロミオは、ひとりとびぬけて別人種の体型。腰の位置が他の男子より30センチくらい高くて、ゴージャスなヒップとすらりとした太ももが目を惹きます。あんなタイツのラインが出るのは日本人ではめったにいないでしょう。肉体の持つ力がすごい。もう立っているだけで美しい。その上踊りも端正で上手。

こんな素敵なロミオだったら、恋に堕ちなくてはいられないよね
バルコニーのシーン、ロミオの腕を取り、自分の胸が「ほら、こんなにドキドキしている」と
教える唯ジュリエットを見ていると、こっちもドキドキしてしまう。
ワディムロミオも恋に落ちた情感たっぷりで、唯ジュリエットを見つめる目が輝いている。

そう、恋をするって、こうだよね〜
ロミオとの恋に浮きたつそのまま、唯ジュリエットはまるで羽根のようで、リフトされてもまったく重力を感じさせません。

こんなに唯さんが、感情を踊りに乗せて解放しているのを見たことがあったでしょうか?
思う存分身体を伸ばして踊り、安心して思い切り飛び込んでいけるワディムロミオだから。
今まさに舞台の上でジュリエットとして生きている唯さん。
これです!
こういう米沢唯を見たかったのです!
こんな風に素晴らしく踊れるなんて!
この瞬間、世界は二人のためにある!
ワディムも唯さんも超一流レベルのヴィルトオーゾなダンサーですが、その二人がテクニックどうのこうのを超越したZONE状態に入ったようなバルコニーのパ・ド・ドゥでした。

良かったね、唯さん、こんな風に踊ることができて…といつの間にか涙がぽろぽろ流れてきて止まりませでした。そう、いままで唯さんの踊りをみて何か物足りない、米沢唯はこんなものではない、もっと出し惜しみをしないですべてを出し尽くして欲しいと感じていたフラストレーションが一気に解決されました!

それが古典作品ではなくて、ロミジュリだったのは意外でしたが、こういう演技が重要な役を演じることによって、つぎに古典作品を踊る時には、殻をやぶってさらに高いレベルのものを見せてくれるのではないでしょうか。
プリマ米沢唯が次のステージに上がった

唯さん以外のことについて。
今回はサイド席だったので、舞台を上から見下したのですが、そうすると、広場でのモブたちの配列や動線が良く見えて面白かったです。コールドはああいう風にカウントで斜め一列に出てくるんだな〜とか、それが紗に交差する具合とかも、段取りっぽい感じがありすぎて、もう少しその中でもそれぞれが芝居とか個性的な動きとかをするとだいぶ違ってみえてくるのだろうと思います。
でも、マクミランのロミジュリやマノンなど、コールドに至るまで演技を求められる作品をやることは、バレエ団の向上のためにはとても良い経験だと思います。
観客の動員率もよかったようだし、男性の観客も多かったので、もっと回数多く上演できるといいですね。
いっそのこと、舞台装置と衣装も新調して、2年に1回ぐらいやればいい。

ロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオの三バカトリオ。
ワディムロミオは上手なのですが、日本人男子はアンディオール不足。どこがというと、トリオの振付では、片足を上げて前から横、後ろへとぐるっと足を回すようなパが多用されています。女性のパでいうと、フェッテのようなパですが、前から横へ開くのって、日本人は苦手みたいです。
英国ロイヤルバレエのマックレイなどはここが実にクリア。吉田都さんのラストジュリエットの時は、マックレイ、マロニー、ポルーニンで三人とも見事でした。
体型の差はいかんともしがたいですけれど、三人の雰囲気は悪くなかったです。

マキューシオの福田さん。福田さんは道化役とかよくやるテクニシャンだと認識していましたが、あまりキレがありませんでした。この役は熊川哲也さんの当たり役だったそうで、思わず熊川さんだったら、さぞかし派手に演じるんだろうなぁと重ねて見てしまいました。チャンバラシーンは楽しいですね!音楽に乗ったリズミカルなチャンバラは、ロミジュリの名シーン。

本島美和さん、キャピュレット夫人、お似合いです。クッションダンスも美しいし、ティボルトの死を嘆くところも迫力がありました。本島さんも、もう主役は踊らなくなってしまって、キャラクターばっかり。以前の湯川さんのポジション的になってますね。











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2016年11月07日

「シンデレラ」中村祥子&遅沢佑介

2016年10月29日(土)16:30オーチャードホール

シンデレラ 中村祥子
王子 遅沢佑介
仙女 西成雅衣
シンデレラの義姉 山田蘭 岩淵もも
シンデレラの継母 ルーク・ヘイドン

シンデレラは、熊川さんがはじめて自分が踊らない前提で振り付けた全幕作品。
初演のタイトル・ロールは松岡梨絵さん。キッラキラに輝いていて、ボロ服が全然みすぼらしく見えないほどでした。今回中村祥子さんのシンデレラを見ていて、どうしてもあの時の松岡さんが思い出されてなりませんでした。
祥子さんの踊りはもちろん素晴らしいのですが、松岡さんのあの時の輝きとキレの良い脚さばき、心の美しさがどんな時でも伝わってくるようなにじみ出る情感…まさにプリマバレリーナ松岡梨絵の頂点として、燦然と私の中で輝いているのです。

その後、松岡さんは二度目のシンデレラの主演を降板して出産、Kバレエを去りました。
あの時は、松岡さんのプリマとしての洋々とした未来への道が、ずっと続いていくものだと思っていたのですが、シンデレラ初演がキャリアの頂点だったとは。
もちろんプリマであると同時に一人の女性であるので、女性としての幸せを得ることはおめでたい事なのですが、観客としては残念ですし、本当にバレエ・ダンサーの旬って短いです。

その点、中村祥子さんは、プリマバレリーナとして、そして母親として、この二つを両立させているという、日本ではめずらしいケースです。彼女の類まれな才能を認めて協力を惜しまない旦那様も影の立役者と言うべきでしょうね。

さて、第1幕のボロ服のシンデレラ。祥子さんは、いじめられてもすぐに立ち直って、自分で楽しみを見つけてその場を明るくしてしまう超ポジティブシンデレラです。
今の祥子さんは女性としての家庭の幸せ、プリマとしてのやりがいのある仕事と、大変に幸せな状態にあると思いますので、どうもそのあたりの地が出るというか、シンデレラが全然かわいそうに見えないんです。
この第1幕での悲惨さ、暗さがある程度ないと、変身したシンデレラとの差が際立たないのですけど。
もう少し陰影のあるような演技があるとよかったです。

義姉たちにも少し遠慮があるのかしら?山田蘭さんの義姉は初めて見ましたが、悪くはないけれど、もう少し踊りのキレと、特徴的な性格づけがあると岩淵さんとのコンビがさらに映えると思います。アシュトン版だと、ひとりのお姉さんはおっとりタイプ、もうひとりはちょこまかタイプとなっているのですけど。
岩淵さんは何度もこの役を踊っているだけにさすがの存在感とコメディエンヌっぷりでした。







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2016年08月22日

東京バレエ団「ドン・キホーテの夢」秋元&川島

2016年8月21日(日)14:30 めぐろパーシモンホール
キトリ/ドゥルシネア姫 川島麻実子
バジル 秋元康臣
サンチョ・パンサ 氷室友
ガマーシュ 岡崎隼也
エスパーダ 岸本秀雄
キューピッド 森田理紗

午前公演と比べると上位ランクのダンサーが多く出演していました。
サンチョパンサは、この子供ドンキではお話しをする進行役ですが、氷室さんは昨年もやっていてもうベテラン。とても上手だけれども、慣れちゃっているのでちょっと偉そうな感じ。午前中のサンチョの中村さんは、その点頼りないサンチョで可愛かったな。声も良く通っていたし。

安定の秋元&川島ペアだけども、想像以上に素晴らしかったのは岸本エスパーダ!
身のこなしに品格とオーラがある!そう、エスパーダとは誰もがなれる地位ではない。
闘牛士の頂点エスパーダには品格とみんなが憧れるオーラがあるべき。
岸本さんには、役に求められているのはどんな事なのかをきっちりと把握して表現できる力があります。
エスパーダのソロの途中で、2,3歩普通に歩く所があるのですが、そこで素のエスパーダとして歩く歩き方が、ちょっとぶっきらぼうで男らしいのもエスパーダっぽい!変なところにツボりました。
岸本さんは踊りも丁寧だけれども、役になりきる力が素晴らしい。
宮川さんよりこちらの方をもっと主役にして鍛えて欲しい!!
ルグリにも気に入られていたそうだし、すごく良いダンサーになる伸びしろがあると思います。

川島さんはテクニシャンだし、キトリはお手のものという感じですが、もしかして初役なのかしら?
だとしたら大したものです。グランパのフェッテは扇を開くという技も3回ぐらい入れ込んでいたし、他の大技も危なげなし。もっとも秋元さんはとてもサポートがうまいらしいから、安心して踊れるということもあるのかもしれません。沖キトリがほわんとしているのと比べて、川島キトリは気が強そう。

そしてお目当ての秋元さん。彼は本当に踊りがうまい。そのうまさ加減といったら、ヴァリエーションで、ザンレールの後ピタッとアラベスクで静止するとこなど、熊川哲也さんのうまさ加減にも匹敵するくらい。
才能なんでしょうね。踊りにキレがあるので、彼だけ輪郭が他のダンサーよりくっきりと見える。
どうしても目が秋元さんを追ってしまう。
演技はわりと薄めなんだけれど、踊りですべてを物語ってしまうから、それで事足りる感じ。
背は高くはないけれども、体幹がしっかりしていて、胴が厚くて顔が小さく、太ももが発達しすぎていなくてすらっとしている。体のバランスがいいんです。
サポートも上手で、女性が踊りやすいように、さりげなく次に動く方向へ押したりしてます。
おそらく、Kを退団したあと、ロシアのバレエ団で数多くの舞台で鍛えられたのでしょう。
日本と比べ年間の公演数が桁違いに多いロシア。「ダンサーは舞台の上でしか成長しない」とはよく言われる事です。もとからの才能が、舞台でさらに鍛えられて開花したのでしょう。
9年ぐらい前、NBAバレエ団にいたころも上手ではありましたが、今は段違いのレベルだと思います。

秋元さんは、おそらくどんな作品も、どんな役も踊りこなすことができると思いますし、どんな相手役でも上手にサポートすると思います。東京バレエ団はもちろんプロフェッショナルなんだけれど、他のダンサーとはレベルが違う、「超」のつくぐらいのプロフェッショナルダンサーだと感じます。
だから、彼の踊りをみると感心するし、もっと見たいと思う。

けれどもですね…そのプロフェッショナル具合が、時には物足りなさも感じさせるのです。
もっと一生懸命に、いちずに役になりきって欲しい。
踊ることへの情熱、踊ることが楽しくて仕方ない、というような気持があまり伝わってこないダンサーでもあります。お仕事でやってま〜す、というのが、上手なだけに他のダンサーよりも伝わってしまう。

たとえば、上でひきあいに出した熊川さんも、時にはセーブモードで踊ることもあります。
でも、踊りに対する情熱は常に伝わってくるのです。バレエに対する「愛」というようなものが。
そこのとこが、秋元さんの場合は足りないように感じます。
そこが残念。
もしかしたら、Kバレエを退団したのも、バレエを愛する熊川さんと、バレエをお仕事としてしかとらえていない秋元さんとの感覚の違いがその原因になっていたのかもしれないと妄想してしまいました。
真実は当事者じゃなければわかりませんし、秋元さんにもバレエへの情熱があるのかもしれないけれども、それならもっと役に没頭して欲しい、120%くらいを見せて欲しいと思うのです。















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2016年08月21日

東京バレエ団「ドン・キホーテの夢」沖&宮川

2016年8月21日(日)11:30 めぐろパーシモンホール

キトリ/ドゥルシネア姫 沖香菜子
バジル 宮川新大
サンチョ・パンサ 中村瑛人
ガマーシュ 山田眞央
エスパーダ 森川茉央
キューピッド 足立真里亜

二年目の子供ドンキ。マイナーチェンジはあれど、子供を飽きさせない工夫と飛びきりの楽しさを届けよう!
という意気込みが伝わってくる舞台。
本公演では目立たないコールドのダンサーがたくさん出ているし、今回は、ロシナンテとお嫁サンバという二匹の馬の足をやっているダンサーが、カーテンコールで出てきて、馬の足の衣装のまま、大ジャンプとか540とか、回転技とか、バクテンとか、思い切り好きな事やりまくっていたのが面白かった。
馬の中に入っていたフラストレーションを爆発させたみたいで、とっても微笑ましかった。
むしろ今回初めてそこに一番ツボったというか...

沖さんはすっかりプリマらしくなって、わがままでも気が強くもないけれども、かわいらしくてキュートなキトリ。むしろ、柔らかい腕の動きなど、とても女性らしさを感じる。
踊りも盤石。フェッテも危なげなくダブルをたくさん入れていた。
目が大きいので、視線の行先がはっきりみえて、細かい演技が分かりやすい。
去年より演技がとても自然になっている。
これから20代後半はバレリーナとしてぐんぐん伸びる時期だから、色々な演目を踊っていってほしい。
ジゼルなんか似合いそう。

宮川さんは、初めて見ましたが、踊りはまあまあ、頭が大きいのが気になります。
演技も薄いんですよね。昨年のドンキで沖さんと組んだ梅ちゃんがイケメンオーラがあって芝居上手で良かったのに、退団してしまって残念!
沖香菜子を、より輝かせてくれる相手役は誰だ?
岸本君じゃだめなんですかね?
まあ、12月のくるみでシムキンと組むからこれからは海外有名ゲストと組むことが増えるのかもしれない。

森川さんがエスパーダ、サラリーマンみたいな髪型で出てくるから、誰だか最初分からなかった。
なんか踊りが緩いのです。こんなダンサーだったっけ?もっと男性的な個性だった記憶があるのですけど。

足立さんのキューピッドが素敵でした!軽やかで、かわいらしくて、足音も全然しないし、スタイルも新国立基準だから抜群。
これからはどんどんソロにキャスティングされるといいですね。くるみの配役に期待します。

今日は午後の部とのダブルヘッダーなので、このへんで。


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2016年08月03日

オールスターガラBプロ最終日

2016年7月27日(水)18:30 東京文化会館

「ラプソディ」(振付:F.アシュトン) 
アレッサンドラ・フェリ
エルマン・コルネホ
[ピアノ:中野翔太]
「白鳥の湖」より第2幕アダージォ(振付:M.プティパ) 
ニーナ・アナニアシヴィリ
マルセロ・ゴメス
「Fragments of one's Biography」より(振付(振付:F.アシュトン) 
ジリアン・マーフィー
マチアス・エイマン
「ジゼル」(振付:M.プティパ) 
スヴェトラーナ・ザハーロワ
ミハイル・ロブーヒン
「リーズの結婚」(振付:F.アシュトン) 
ジリアン・マーフィー
マチアス・エイマン

休憩

「プレリュード」(振付:N.カサトキナ) 
ウリヤーナ・ロパートキナ
アンドレイ・エルマコフ
「フー・ケアーズ?」より(振付:G.バランシン) 
ジリアン・マーフィー
マチアス・エイマン
「ディスタント・クライズ」(振付: E.リャン) 
スヴェトラーナ・ザハーロワ
ミハイル・ロブーヒン
「レクリ」(振付:V.チャブキアーニ〜ジョージアの民族舞踊に基づく) 
ニーナ・アナニアシヴィリ
「ル・パルク」(振付:A.プレルジョカージュ) 
アレッサンドラ・フェリ
エルマン・コルネホ
[ピアノ:中野翔太]
「眠りの森の美女」(振付:M.プティパ/A.ラトマンスキー) 
カッサンドラ・トレナリー
マルセロ・ゴメス

フェリ、ニーナ、ロパートキナ、ザハロワ…バレエ界のレジェンドになるであろう方々のガラ。
同世代だとあと目ぼしいプリマはギエム、ヴィシニョーワ、オレリー・デュポン、ダーシー・バッセル、ユリア・マハリナとか?
ジリアン・マーフィーも素晴らしいけど、少し小粒。
タマラ・ロッホ、コジョカル、ルシア・ラカッラ、テリョーシキナ、アレクサンドロワ、ヤンヤン・タンも大好きなんですが…

ダンサーの旬の時期は本当に短い。テクニックの充実を追いかけていた若い頃を過ぎて、表現力が伸びてくると、今度は身体が思うように動かなくなってくるというせめぎあい。
だから、テクニックと表現力が両方とも熟してきた旬の時期のバレリーナの舞台にあたるのは至福の時となる。

まさに今旬の時期であろうザハロワ。
10年前ぐらいは新国立劇場バレエにゲストとしてたびたび来ていた。そのころはポテンシャルに恵まれている事の方が際立っていたが、今はそれに加えて踊りに深みがぐっと増している。
ジゼルは「孤高の」とでもつけたくなるように、ひんやりと冷たい空気をまとっている。
ゆっくりとデベロッペした脚を6時のポーズまであげて、アラベスクへ移行する、様式美のような端正さ。
たとえばギエムが6時のポーズに脚を上げるのは、どこか挑戦的なイメージがつきまとうが、ザハロワはあくまでも白いバレエらしく、たおやかさの中にすっと細く長い芯が通っている感じだ。
シャンジュマンの高さがすごい。ジュッテも軽い。開脚は180度を越えて200度ぐらい。
身体能力を出し惜しみせずに120%くらい見せてくれているような踊りだ。

容貌も卵型の顔で目鼻だちも上品に整っている。腕の細さ、脚の長さとしなるカーブの曲線、高く出た甲。出産後はガリガリに痩せすぎていたが、今は少し戻している。しかし、驚くほど細い体のどこにあれだけのスタミナがあるのだろうか。

ロパートキナも細い体型をずっと維持し続けている。fragment…はあまり踊りらしい踊りはなかったが、それでも踊り終わったあと、まったく息が荒くなっていないのには驚かされる。

ニーナの白鳥は、体型がコマのようになっていたが、情緒たっぷりの素晴らしい白鳥で、動作のひとつひとつに伝えたい思いがこもっているように感じられた。
回転技は健在で、サポートがなくてもくるくると回ってしまえそうだった。
ニーナの場合は、細い軸というよりはぶっとい軸があるようだ。

踊る女優フェリ。まさにレジェンド。女らしいオーラをまとっているし、見事な甲は相変わらず。だが、背中はやはり50を越えると固くなるようで、アラベスクのラインは良くなかった。
「ラプソディ」ではコルネホのソロが、精緻なピルエット、小気味よく決まる方向変換と、ラテンのイケメンオーラで実に素晴らしいかった。

マチアスとジリアンは、テクニシャンで踊り上手どうしなので、アシュトンの細かいパもものともせず踊りまくりで楽しかった。マチアスの見せ場をもっと見たかった。
ゴメスの見せ場ももっと見たかった。
基本、女性を見せるガラなので、そこが少々残念。

ラストの眠りは、ラトマンスキー版で、ちょこちょこ違和感を感じた。
トレナリーは、この女性陣の中で一人若くて、ハツラツとしていた。
このメンツならば、トレナリーでなくて、ジェリーケントとか呼んだらよかったかもしれない。



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2016年07月23日

新国立劇場バレエ 子供のためのバレエ劇場「白鳥の湖」井澤&米沢

2016年7月21日(木)15時 オペラパレス
オデット/オディール 米沢唯
ジークフリード王子 井澤駿

子供のために新制作した「白鳥の湖」
オーケストラがないけれども、大人でも楽しめるクオリティの高い公演でした。
子供向けに色々とカットされております。
第1幕は、ワルツの曲の中にすべてを詰め込んでいます。友人たちや道化の踊り、王妃のマイムも。
40分→5分といったところ。
しかし、その後王子の見せ場、哀愁のソロはあります!
女の子の「王子様ステキっ❤」という反応を狙っているのか、あるいは男の子に「カッコいい!僕もあんな風に踊りたい💡」と思わせてバレエ・ボーイズを作るためか…

第2幕は、オデットのヴァリエーションがカットされているのですが、ロットバルトの登場、王子とオデットの出会いとパ・ダクシオン。白鳥の見事なコールドもたっぷりとあります。

米沢唯さんのオデットは、清潔感があって、とても細いのだけれども、すっと強い芯が通っている。
肩の可動域が大きくて、鳥のように後ろにゆっくりと腕がまわり、どこまでも伸びていくようなしなやかさ。指の先までも繊細にコントロールして、音楽に寄り添い、音楽を彼女自身が奏でているような気がしました。

以前は胸が薄くて子供っぽく見えた体型も、体を大きく使って踊ることによって気にならなくなったし、女らしいというよりは、やや中性的な印象も、「人でないもの」というオデットの特性には似合っています。彼女らしい個性だと思います。

色々なダンサーのオデットを観ましたが、女っぽさ全開のオデットもいれば、女王らしいオデットもいるし、少女のようなオデットもいます。唯さんのオデットは、人間の女とか女性とかいうことをあまり感じさせない、不思議な存在感があります。でも、王子に白鳥たちの命乞いをするシーンなどは、少し女らしさが漂います。この不思議さに惹かれます。もう米沢唯のトリコです。

唯さんは、クラシックのテクニックが盤石なので、どんなシーンでも安心してみていられます。
王子との踊りは大変に美しかったです。これを見た少女たちが、「唯さんの白鳥を見て、バレリーナになろうと決意しました!」な〜んてことがたくさん起こりそうな名演でした。

休憩の後は第3幕です。
道化の踊りがたっぷりあります。これは、「あんなすごい踊りを俺もおどりたい!」とバレエボーイズを奮起させる効果がありそうです。各国のディベルティスマンは、スペインとナポリのみです。あとは私でも退屈することが多いのでカットして正解です。

花嫁候補たちの踊りもあります。この衣装が、ヘンテコな細巻貝みたいなものを頭に載せてます。
ああ…これって、今の牧版白鳥の前にやっていたキーロフ版で使用していた衣装だと思い出しました。
見るたびにヘンテコだと吹き出しそうになっていたのに、なぜまた採用したのか理解に苦しみます。ダンサーがかわいそうです。牧版の花嫁候補の衣装は、全員お揃いでなく、少しずつデザインが変わっていて、「やっとステキな衣装になったわ!」と思っていたのに…。
牧版を作ったのが2007年ごろだから、それ以前というと10年前の衣装を引っ張り出してきたのでしょうか。次回上演の際にはぜひ別のデザインで新調して頂きたいです。
ついでに言えば、舞踏会のロットバルトの衣装もたぶんキーロフ版のものですが、ものすごく変なので次回新調希望です。

黒鳥のパ・ド・ドゥはカットなしです!唯さんのオディールは、明快です。ゲームとして王子をたぶらかすのを面白がっているというのがよくわかる。
ヴァリエーションは、トリプルピルエットからアティチュードターン。見事です。稽古場では6回転ピルエットもやってしまうという話です。やはり稽古場で6回転できるからこそ、舞台で余裕の3回転ができるんですね。
注目の32回フェッテは、前半は1−1−3、後半は1−1−2。
トリプルをきっちりと拍の中に入れ込むので、後半のダブルがやけにゆっくり回っているように見えました。
唯さんの技を見ると、胸がスカッとします!!
クリアで雑味のないビールを飲んだ時みたいで…いえ、唯さんをビールに例えるなんて失礼ですよね、ピュアな最高品質、ピュアモルトです!すっきりして雑味がないけれども、奥深い。

井澤王子についてですが…容姿は王子度満点です。ちょっと暗めの雰囲気もいいかも。
彼は新国立劇場のNO1王子を目指して売り出し中ですが、存在感というかオーラが薄いんですよね。
悪くはないけれども、あまりひっかからない。もっとナルシストになればいいのかもしれない。

第4幕は、またまたナレーションであっさりと4曲分ぐらいをカットし、クライマックスへ突入です。
王子とオデットの間を裂こうとするロットバルトから逃げたり、「オデット最終兵器」(王子がバズーカ砲ようにオデットをリフトしてロットバルトに立ち向かうこと)で立ち向かったり…
牧版と振付が似ているので、うやむやにロットバルトが滅ぶのではないだろうな…と心配になりました。
しかし、やっと王子がロットバルトと闘い、それも結構一生懸命に闘って、羽をもぎ、その後ロットバルトが湖に落ちて稲妻とともに死ぬという、わかりやすい結末になっていました。

牧版の大きな欠点は、どうしてロットバルトが死ぬのかがわからないところなんですが、この子供版では、その点をきっちりとわかりやすくしたのは大変評価いたします。

花嫁候補の衣装以外は、白鳥コールドバレエの美しさを堪能できるし、物語もコンパクトにまとめられているし、白鳥の湖の踊り、黒鳥の踊りなど、みどころはすべてきっちりと入っているし、新国立劇場ならではの、クオリティの高い公演になっていたと思います。
これでオーケストラを付けたヴァージョンで、大人向け短縮版白鳥の湖として、料金を安めにして、バレエを見たことがないけれども一度は見てみたいという層を狙った公演を打ったらいいんじゃないかと思いました。












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2016年07月18日

Kバレエトリプルビル 2日目

2016年7月17日(日)14時 オーチャードホール

「ラプソディ」
伊坂文月 荒井祐子

「シンプル・シンフォニー」
中村祥子 遅沢佑介
宮尾俊太郎 井上とも美
栗山廉 小林美奈

「アルルの女」
熊川哲也 浅川紫織

前回の眠り公演のあたりに急に決まったトリプルビル。
パンフレットも間に合わなかったのか、薄いカラー刷りのものが無料で配られました。
ラプソディ30分、シンプル20分、アルル15分で休憩込で85分の公演。短いです。
最後に、出演者全員によるスペシャルアンコールがあって、元を取った感じでした。

熊川さんが出るというせいか、ほぼ満席。ラプソディのみ、ソリスト二人のキャストが違います。
本日のラプソディは井澤さん主演の予定でしたが「芸術的理由」とかで伊坂さんにチェンジ。
井澤さんは後ろのボーイズに混じって踊っていましたが、キレがいいし、すこし音を早取りで踊るので、この作品にはピッタリなのに、なぜなのでしょう。
身長が足りなかったのか、リフトが下手だったのか…伊坂さんの方が「陽性」な感じがするからなのか…

本当の理由はわかりませんが、伊坂さんは、きちっと踊っていました。
悪くはないのですが…面白くはない、物足りない。
この作品って、もともとミーシャに振りつけられたもので、天才的なダンサーが、90%くらいの力で、遊び心をもって余裕で踊るところがいいんです。
熊川さんしかり、マックレー先輩しかり。その点、伊坂さんは上手だけれど、天才ではない。
100%で踊っている感じでいっぱいいっぱい。もっと伸びやかさや、やんちゃなイメージが欲しかったと感じました。もっとはじけて踊るには練習時間不足だったのかもしれません。

荒井さんは久しぶりに見ましたが、抒情的でニュアンスたっぷり。さすが。貫禄がついてきました。
その分、重量感(実際に重くなったということではないです。相変わらず細いです)のある踊りというか、もう少し軽やかに踊っても良かったような。矢内さんとか、白石さんとかがやっても面白いかもしれない。

ラプソディは、DVDになった熊川&都のものと、舞台でも一度見ていますが、主役の男性が空気を切り裂くように飛び出してくる衝撃が、今回はありませんでした。
Kバレエの衣装は、不思議な黄色と赤とで昔のアバンギャルドみたいな強烈なセンスなので、今回は衣装を変えるかと思いましたが、そのままでした。荒井さんの胸にお花だか原子炉マークだかみたいなのがついているのが気になるんですが…
何度か見ているので、これはこれで面白いのかもしれないと思うようになってきました。

ラプソディの後でシンプル・シンフォニーを観ると、熊川さんは、ラプソディへのオマージュとしてこの作品を振りつけたんじゃないかと思うくらい、印象が似ています。音符ひとつひとつに動きがつけられているようなところとか、頻繁に方向変換をするところとか…舞台装置も三角の組み合わせで、なんとなく似ているし。

三人のカップルがでてきますが、メインは中村祥子さんと遅沢さん。
祥子さんがそれは素晴らしくて、柔らかく伸びやかな動きだけれども、この鬼振付にぴったり合っていて、その中で自分らしさを出しているのがわかります。
出演者は全部出づっぱりで、自分の踊りがないときも横で立っている。そのとき、さすがの祥子さんでも、荒い息を隠せないような呼吸をしているのを見て、どれだけ大変な振付なんだろうと。
衣装が黒いシンプルなハイネックのチュチュなのですが、チュチュの裏に鮮やかな緑色がはいっているのがおしゃれです。タイツとポワントも黒で、タイツは少し透けるので、祥子さんの素晴らしく発達した美しい脚の筋肉がよく見えました。
Kバレエに遅沢さんがいてよかった。こんなに祥子さんをきれいに見せてくれて。彼ぐらい踊りのうまい、釣り合うパートナーがいなくては、祥子さんはKバレエに来てくれなかったかもしれません。

男性三人は祥子さんに合わせて高身長。
宮尾さんと栗山さんがユニゾンで踊るところがありましたけど、宮尾さん!!栗山さんに負けてますよ!
栗山さんの方がよっぽど踊りにキレがあります。
プリンシパルなんだから、もっと頑張って!!

最後の演目、アルルの女ですが、私は初めて見ました。
最初は御大はほとんど踊りません。うつろな目をしているだけです。
浅川さんが、彼をなんとかしようとすがったり甘えたりします。
浅川さんはつま先も美しいですし、達者ですけれど、この二人カップルには見えません。

そして、いっちゃてる感じの御大は、彼女が去ったあと、ひとりになって狂気にとらえられて…
ラストのジャンプ、舞台一周(これは飛び上がらないのでマネージュではありません、みなさん、拍手はなさらないで〜〜)窓からのダイブ…終了。

踊りとしては物足りませんし、キレも高さも熊川さんらしくない(本人比)です。
今のKバレエではもっと踊れる男子がいっぱいいます。
でも、役柄に入り込んで、物語を語る演技は素晴らしかったです。
幕が下りて、カーテンコールになっても、役柄からなかなか抜けられないらしく、笑顔にならなかったです。

最後にスペシャルアンコールで、出演者全員が出てきて、最初のラプソディから順番に演目のさわりを踊ってくれました。
熊川さんもサービスで大ジャンプを披露して、やっと笑顔になりました。

しかし、私はアルルの女より、もっときちんと踊る熊川さんが見たかったです。
たとえば、ご自身振付のカルメンより、鎖でつながれて踊るパ・ド・ドゥとか。

今の熊川さんには、これぐらいがちょうどなのでしょうか。
そうすると、もうそろそろ舞台から引退した方がいいと思います。
今回で引退でもいいかと、いや今回引退するつもりで、急にこのトリプルビルをやることにしたのかと思いました。

スペシャルアンコールを見て、これはKバレエオールスターズか?と思いましたが、よく考えてみると、今回はキャシディとか、白石さんとか、佐々部さんとか、山田蘭さんとか、出ていない人も結構いるんです。
それでは引退公演にはできないですよね。













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2016年06月21日

新国立劇場バレエ「アラジン」奥村&米沢

2016年6月19日(日)14時 オペラパレス
アラジン 奥村康祐
プリンセス 米沢唯
ランプの精ジーン 福田圭吾
魔術師マグリブ人 マイレン・トレウバエフ

アラジンは2008年、2011年に次ぐ3度目の上演。
初演時は、新国立劇場のダンサーにあてて振りつける新作ということで、大変に盛り上がり、私も楽しみでならず、プレビューも含め合計4回、3キャスト制覇しました。
初演ペアは、山本隆二&本島美和、八幡顕光&小野絢子、芳賀望&湯川麻美子の3キャスト。
八幡&小野をイメージして作られた作品ですが、私は細やかな演技の山本アラジンが好きでした。

新国立劇場には、コールドでも主役を踊れるような優れたダンサーがたくさんいます。この作品ではソロの踊りが多く、それぞれに見せ場があり、ダンサー達を生かす構成となっています。
ディズニーアニメでおなじみのお話ですし、ジーンの宙釣りや魔法のじゅうたんの飛翔など、舞台装置に工夫があって、ミュージカルのように大人も子供も楽しめる傑作。
まあ、チャイコフスキー大先生の古典に比べると底が浅いのは致し方ないけれど、ファミリーバレエとして毎年子供の日を中心にゴールデンウィーク上演してはどうかと私は思っていました。

ところが、前回、そのゴールデンウィークに上演したところ、ガラガラだったそうで…
6年もお蔵入りになってしまってました。
今回はなぜか大入り満員でチケット争奪戦が起きるほどの人気。
評判も上々だったですけども、なぜでしょうね。
だって、ロイヤルと牧とザハロワとかぶっているんですよ。
楽日の客層は、男性の姿も多く、子供さんも多かったです。
お母さんとではなく、お父さんと見に来ていた少女もいました。父の日だから?
それなら「父の日はお父さんも子供に帰って、娘と一緒にアラジンを見よう!」という主旨で毎年上演もありでしょうか。
せっかくビントレーさんが作ってくれた宝物なのですから、有効活用して欲しいものです。

というわけで満員御礼の楽日は、奥村&唯。
このペアは、昨年の横浜バレエフェスティバルで見て気に入ったので、期待しておりました。唯さんはムンタギロフ、菅野さん、福岡さん、井澤さんなどと組んでおりますが、私は奥村さんとのペアが相性がいいように感じております。なんというか、ふたりとも男女の匂いを感じさせないし、顔芸とか濃い演技はやらずに踊りの素晴らしさで魅せるタイプというところが似ている。

今回も第2幕の結婚式のパ・ド・ドゥが美しかったです。
その振付で、二人が向かいあってキスをするかと思わせて、手でお互いの口をふさぐ、というのがあるのですが、お子様向けにキスNGなのかと不思議でした。
自然な流れだと、あそこはキスなんですけど、普通じゃつまんないからなのかしら。
ちょっと気になります。気にならせるためにあえて?かもしれません。

この作品、第1幕が秀逸です。
マグリブ人が、アラジンを大金持ちになれるぞとそそのかすシーン。
黒子が二人うしろについて、アラジンの動きにあわせて衣装を変えます。
帽子を取り替え、足を後ろにあげるタイミングで靴を替え、マグリブ人がさっと自分のはめていた指輪をはめ… まったくアナログなトリックなのですが、マジックみたいに見えるところが面白い。

砂漠のシーン。茶色いオンディーヌみたいな衣装の女性たちが砂漠の精として現れ、アラジンをもてあそぶように、風のように現れたり消えたりして踊る。風に舞い上がる砂をよく表現していて、幻想的で大好きです。

洞窟に行かされたアラジンが、体の向きを変えると、視点が洞窟の外→内と反転して、恐竜の骨のような階段があらわれるシーン。
その後の宝石たちのディベルティスマン、スピーディーで目まぐるしく次から次へと宝石たちが現れる、たたみかけるような高揚感がすごい!最後に出てくるダイヤモンドの鋭角的な振付がたまらない!
ランプをこすってジーンが現れるところ、今回はすこしフライングで、こする前からジーンが入口を開けているのが見えちゃいましたが、これは3階サイド席だったせいでしょうか?

家に帰ってきたアラジンが、お母さんに冒険を語るシーン。この時のアラジンの演技がダンサーによって少しずつ違っていて、山本隆二さんがとても丁寧にジェスチャーしていたので好みでしたが、奥村さんの演技も空間を大きく使っていてなかなか良かったです。

ランプをこすって、ジーンの影が長く伸びていって、宙吊りのジーンが現れるシーンも楽しい。

その後街に出かけたアラジンはプリンセスの姿を見て、マグリブ人が見せた女性だと気づく。

ここまでが第1幕の展開、これだけでお腹いっぱいですよ。

第2幕は、ひとめぼれしたプリンセスに会いたさに浴室に忍び込む(なんで浴室なんでしょう、まあ、面白いからだろうけど)アラジンがとっつかまって死刑になりそうなところ、お母さんが命乞いに現れて宝石を見せて王様に結婚の許しをもらい、ジーンとお付きのイケイケダンスシーン、続くアラジンとプリンセスの結婚のパ・ド・ドゥ。

これでめでたしめでたし、もうさらにお腹いっぱいなので、ここで終わってもいいくらいなのですが、そうはいかない後日談となるのが第3幕。

結婚して幸せな日々を送っていた二人ですが、マグリブ人にランプを奪われ、プリンセスも塔に幽閉されます。助けに来たアラジンと協力して、マグリブ人に毒を飲ませて逃げようとする二人。
この時、マグリブ人を油断させるために、プリンセスが色仕掛けの踊りをするのですが、ここが私の定点観測ポイント。
今まで清純で、いやよいやよと拒んでいたマグリブ人をだますため、一転して色っぽい踊りで誘惑するのです。ダンサーによって振り切れ度合に差があります。もともと色っぽい本島さんや湯川さんはあまり差が出ないのですが、小野絢子さんはガラリと変わります。女性の中のいろんな面をかいま見たような感じです。
唯さんも、ガラッととまではいきませんが、なかなかセクシーなところもありました。もっと吹っ切れてやれるようになるといいんじゃないかな。

マグリブ人が塔から落ちて、王宮に帰る二人が乗るのが空飛ぶ魔法のじゅうたん。
ディズニーアニメが刷り込まれていると「ちっちゃ!」というサイズのじゅうたんですが、まあ、装置の都合です。

王宮に帰ってめでたしめでたし、ランプの精ジーンを自由にしてやるところもアニメと一緒。
ここはもっと派手にジーンが踊ってもよかったと思いますけど。
第1幕の宝石シーンと比べると、ちょっと尻つぼみなエンディングは否めません。

第1幕だけでも完結しているし楽しいから、全幕上演が難しいなら、他のものと組み合わせてトリプルビルぐらいにして頻繁に上演する手もあると思います。
今回の上演が評判が良くてとても嬉しいです。









posted by haru at 13:35| Comment(2) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月11日

Kバレエ「眠れる森の美女」中村祥子&遅沢佑介

2016年6月11日(土)12:30 東京文化会館
オーロラ姫 中村祥子
フロリムント王子 遅沢佑介
リラの精 浅川紫織
カラボス ルーク・ヘイドン

私が前回Kバレエの眠りを見たのは2010年。熊川さんと東野さんが主演でした。
その時の自分のレビューを読むと、「東野さんはまだオーロラを踊るのには早すぎたのじゃないか、そして熊川さんはセーブ運転モードだった」等々と書いてあり、あまり満足した公演ではなかったようです。

しかし、今回は、大大満足の素晴らしい公演でした。
その原因は、衣装や装置を新調して色彩が上品で美しかったとか、浅川さんのリラと女性ソリストたちがレベルアップしていたとか、カラボスの演技が面白かったとか、キャシディの王様がかっこよかったとかというもろもろ以上に、「プリマが素晴らしいから」これにつきます。

眠りという演目は、古典中の古典。
ドンキや白鳥にあるような32回転フェッテはありませんが、クラシックのスタイルですべてのパをきっちりと見せることができてこそ、振付の良さが見えてくる演目です。
完璧なアンドォール、脚のライン、アラベスクのポーズ、優美な腕使い、ローズアダージオでのバランス…
端正に踊ることによって、オーロラ姫の貴族性や上品さを表現するのです。

中村祥子さんは、身長172センチくらいでしょうか、長くてスリムな手脚、弓なりの脚のライン、見事な甲、小さくて美しいお顔という容姿

どこまでも伸びていくようなアラベスク、微動だにしないポワントバランス、やわらかな腕使い、丁寧な踊りと、視線や指先までも語るような表現

第1幕の登場シーンでは、あまり跳ねるような踊り方ではなかったですが、そのかわり、紡ぎ糸をもらってはしゃいで踊るところでは、ピョンと飛ぶようなステップを見せて、オーロラの高揚感を表してくれました。

第2幕は「眠っているオーロラ」なので、夢の中にいるようにはかなげで、「眠っている」ことを表す腕のポーズが美しい。

第3幕のグランパのアダージオで、私は不思議な感覚におそわれました。
祥子さんの踊りを見ていると、自分がヨーロッパの伝統ある歌劇場にいるような感じがするのです。
祥子さんは、ウィーン、ベルリン、ハンガリーなど、そうそうたる豪華な歌劇場で踊っていたプリマです。
彼女はヨーロッパの歌劇場の空気を身にまとっているのですね。

バレエでは、わずかな首のかしげ方、ほんの少しの腕の角度などで、まったくニュアンスが違ってきます。
祥子さんは、ヨーロッパで長く踊ることによって、ヨーロッパの貴族のしぐさ、ニュアンスを表現できようになったのだと思います。
こんな感覚、他の日本人のバレリーナでは感じたことないです。
(米沢唯さんの踊りも端正で素晴らしいけど、ヨーロッパにいるという感じはしない)

遅沢さんは、祥子さんを美しく見せるようにサポートしてくださり、ありがとうございます。
特にアダージオでのフィッシュダイブ3連続、祥子さんの脚が天井に向くぐらい急勾配な角度で、あのような角度のフィッシュダイブは初めて見ましたが見事でした。

祥子さんの事ばかり書いてしまいましたが、まさに現役日本人バレリーナの中で一番のプリマでしょう。
今、年齢的にもキャリア的にも技術と表現のバランスが取れて、良い時期ですし、可能ならば彼女のすべての舞台を見たい!!と感じるくらい素晴らしい舞台でした。

熊川さんにも祥子さんを呼んでくれてお礼を言いたい気持です。
こんな素晴らしいプリマを見ることができる幸せ。
このオーロラはシネマにして欲しいし、祥子さんのジゼルも見たい!!











posted by haru at 18:36| Comment(0) | TrackBack(0) | Kバレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする