2015年08月03日

2015世界バレエフェスティバルAプロ(2日目)

2015年8月2日(日)2PM 東京文化会館
■第 1 部■
「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
振付:ジョージ・バランシン/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
ヤーナ・サレンコ スティーヴン・マックレー

サレンコとマックレーは英国ロイヤルでも組んで踊っているようですが、両人共テクニシャンで赤毛で背もちょうと釣り合う理想的ペアではないでしょうか。サレンコは前回もバレフェスに来ていましたが、ぐっとオーラが増してすごく惹きつけられました。

「3 つのグノシエンヌ」
振付:ハンス・ファン・マーネン/音楽:エリック・サティ
マリア・アイシュヴァルト マライン・ラドメーカー

ラドメイカーは昔は金髪サラサラの王子様という印象でしたが、今は身体つきもがっちりと大きくなってより男性的になりました。ほとんどサポートですが、まるで体重がないかのようにひょいとアイシュバルトを持ちあげるのは凄い。

「お嬢さんとならず者」
振付:コンスタンティン・ボヤルスキー/音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
アシュレイ・ボーダー イーゴリ・ゼレンスキー

初めて観る演目でしたが、ボーダーのワンピースが似合わないのと、ゼレンスキーのならず者具合は面白くはあったのですが、よくわからなかったという所です。

「白鳥の湖」より"黒鳥のパ・ド・ドゥ"
振付:マリウス・プティパ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
タマラ・ロホ アルバン・レンドルフ

タマラさん、以前は無表情で踊ることが多かったけど、良い表情をしていました。きっと前回はロイヤルの中でくすぶっているものがあったのではないかと。今やENBの芸監として、やりたい事をやって、その成果もしっかり出しているという自負や充実ぶりがうかがえました。表現にぐっと深みが出て、ちょっとした手の動きとかでオディールの誘惑者としての真髄を見せていました。踊りはもちろん盤石で、フェッテは3回転、4回転も盛り込んでました。こういう人がいないとフェスが盛り上がらない!!
相手役のレンドルフ君は若いけど、なかなか上手でした。

「フェアウェル・ワルツ」
振付:パトリック・ド・バナ/音楽:フレデリック・ショパン、ウラジーミル・マルティノフ
イザベル・ゲラン マニュエル・ルグリ

ルグリさん?顔が老けたので最初誰だかわかりませんでした。でもムーブメントはまだまだ素晴らしい。ゲランも美しい。

<休憩15分>


■第 2 部■

「アザー・ダンス」
振付:ジェローム・ロビンズ/音楽:フレデリック・ショパン
アマンディーヌ・アルビッソン マチュー・ガニオ

ハンガリーのマズルカの動きをとりいれていて、この振付好きです。
グレーの渋い衣装でニュアンスたっぷりに踊るアマンディーヌが素晴らしい。こういう地味目の衣装で、派手ではない振付で、魅せるというのは、肉体的魅力の乏しい日本人にはできないな〜と思いました。
途中、マチューがしくじった?と思ったけど、それは振付だという話もあり。

「マンフレッド」
振付:ルドルフ・ヌレエフ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
マチアス・エイマン

エイマンは伸びやかで、ただただ素晴らしい!!世界でも10本の指に入る踊り手ではなかろうか。
マックレー、ポルーニン、サラファーノフ、シムキンなどのダンサーと比べても、ポテンシャルが高いと感じる。


「ジゼル」
振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー/音楽:アドルフ・アダン
サラ・ラム ワディム・ムンタギロフ

サラ・ラムはマックレーと組んだ眠りを映画館中継で見たけれど、あまり古典は良くない。(冬の旅は良かったですよ)
バランスが短いしアダージオのポーズも、ムンタギロフがクリメントヴァと組んだ時みたいに、「これこれ、これがジゼルなのよ!」という前のめりのアラベスク・バランスや首のかしげ方が違うんです。
ワディム君がサービスで入れたアントルシャ・シスのつま先の美しい事といったら!!

「ライモンダ」より第 3 幕のパ・ド・ドゥ
振付:ユーリー・グリゴローヴィチ(プティパに基づく)/音楽:アレクサンドル・グラズノフ
マリーヤ・アレクサンドロワ ウラディスラフ・ラントラートフ

ラントラートフの長いマントがいいねぇ。ブルーと白でアレクサンドロワの衣装とお揃い。
華やかで大きくて、スカッとしますね。イッツ・ボリショイ!! 
二人はカーテンコールでラブラブ。

<休憩15分>

■第 3 部■

失われた純情 「いにしえの祭り」
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:リヒャルト・シュトラウス
アンナ・ラウデール エドウィン・レヴァツォフ 
シルヴィア・アッツォーニ アレクサンドル・リアブコ

ダンサーと振付はいいのだけれど、どういう状況だかよくわかりません。
後ろにあったパーティの支度を、東京バレエ団の男性二人が静かにお片づけ。
その中の一人が岸本君なので、そっちに思わず目が行ってしまいました。
レヴァツォフは背が高くてイケメンですが、目がいっちゃってる感じ(演技なのかも)


「シンデレラ」
振付:フレデリック・アシュトン/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
アリーナ・コジョカル ヨハン・コボー

ドンキで素晴らしい舞台を作ってくれたコジョカルは、キラキラのシンデレラ。
ヴァリエーションはなくて、見せどころは、王子の周りを高速シェネでくるくる2周することぐらいかな。

「オールド・マン・アンド・ミー」
振付:ハンス・ファン・マーネン/音楽:J.J.ケイル、イーゴリ・ストラヴィンスキー、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
ディアナ・ヴィシニョーワ ウラジーミル・マラーホフ

前半は機嫌の悪い夫をなだめようと、あれこれすりよったり、笑わせようとする妻で、おしりをプリプリ振るヴィシニューワが可愛らしい。その後、ヴィシが倒れ込む絶妙のタイミングでフッとマラーホフが支えるのを何度が繰り返し、床に倒れたマラーホフを、風船を膨らますみたいに息を入れて戻すヴィシと、それをお互いにかわるがわるやって、とてもユーモラスだったけど、後半は音楽が変わって、あの「ル・パルク」の音楽になり(長〜いキスをしながら女性を振り回すやつね)、なにこれ、この二人にあてたパロディなの?と思っていたら、舞台が暗転し、明るくなると二人の位置が変わっていて…という「コ―ト」のパロディみたいなことがあり、どっかで種あかしをするのかな〜と思っていたけど、それはなくて静かに終わりました。
夫婦関係のことを思うと、あるある…ですね。

「パリの炎」
振付:ワシリー・ワイノーネン/音楽:ボリス・アサフィエフ
ヤーナ・サレンコ ダニール・シムキン

サレンコ2演目目。今回の功労賞はサレンコですね。
サポートだけでほとんど踊らないダンサーもいるのに、この暑さの中、テクニックの要るグラン・パ・ド・ドゥを2つだなんて。彼女は難しい事も端正にキメるのが素晴らしいです。
4回転や3回転入りのフェッテ、45度ずつ角度を変えていくフェッテなどやってくれました。
シムキンはまたまたテクニシャンぶりを見せつけていました。
相変わらず上手だけれども、相変わらず小さいし、あまり進歩していないような。
というか、進歩しようがないのかしら。あの身長じゃ、相手役を選ぶし、英国ロイヤルバレエのような演劇的なバレエはABTはやらないだろうし、そもそも適役があまり思い浮かばないし。
これだけの逸材をもったいない。このままだとラスタ・トーマスのような道を行くことになるかも。

<休憩 10 分>


■第 4 部■

「白鳥の湖」第 2 幕より
振付:レフ・イワーノフ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
ウリヤーナ・ロパートキナ ダニーラ・コルスンツェフ

ロパ様の白鳥、ということで観客も息をのんで見守る感じでした。
脚が…太ももが…細〜〜い! 膝から下が細いダンサーでも太ももはそれなりの人が多いのに、ロパ様の細さは驚異的。容姿がまさに白鳥。極上の物を見させて頂きました。
バレフェスには必ずついてくる東京バレエ団のコールドが付くならここだろう、と予想していましたが、コールドはなしでした。(なぜ??ギエムには付いていたのに)いえ、今の東バのヴァージョンはドタバタ配置転換がうるさいので、なくてもいいんですけど。絵づら的には、後ろに白鳥たちがいた方がよりロバ様の美しさがひきたったかと思ったまでです。

「トゥギャザー・アローン」
振付:バンジャマン・ミルピエ/音楽:フィリップ・グラス
オレリー・デュポン エルヴェ・モロー

衣装がタンクトップとジーンズで地味で体型がわからないし、無駄に長くてつまらなかったです。
せっかくの美しい二人なのに、ミルピエってセンスないのね。

「オネーギン」より第 1 幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アリシア・アマトリアン フリーデマン・フォーゲル

アマトリアンのタチアナが夢見る少女でとてもよかったし、背中がとても柔らかくて、リフトされている時に驚異的に上体が反っていました。フォーゲルはオネーギンというイメージじゃないけど、体格はいいですよね、なんかニコニコしていたのが不自然だけど、まあタチアナの夢だからそれでいいんだってことで。

「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス
ヴィエングセイ・ヴァルデス オシール・グネーオ

グネーオさんは初めて観ましたが、今回のダンサーの中で唯一黒人で、小さめで、細くて子供みたいな体型(ヴァルデスと並ぶとそう見える)、赤いフンドシみたいなのが下がっていて胸をはだけてる変な衣装で、違和感MAXでした。キューバはダンサーの宝庫で、カレーニョみたいなテクニシャンでイケメンがいっぱいいそうなのに、なぜこの人?ヴァルデスと釣り合いの取れる大柄な男性はいなかったのかしら。
6年前のバレフェスの時に長いバランス技やフェッテの大技で会場の興奮をさらったヴァルデスですが、その時に比べると、優雅さと落ち着きが出たかわりにテクニックの勢いは落ちた感じです。
でも、トリの面目として、ポワント・アラベスクのバランス、7秒ぐらい、そして、ススからルティレ…アティチュードまでポワントのまま移行する大技、(今回ドンキ全幕では、コジョカルがこの反対のコースでアラベスクからゆっくりルティレ…ススに下ろす技をやってました)、フェッテも三回転、2回転取り交ぜて、サレンコほど端正に、場所の移動もなくという風ではなかったですが、まあ大したもんです。さすがキューバです。
しかしタマラさんは本日10秒のポワントバランスやっておりましたからね。(以前は12秒のバランスやってましたし)そういう人たちを前に見ちゃっていると、すごい事やっていても、ああ、さっきみたサレンコの方がきれいに回っていたな〜とか思っちゃうものですね、人間てやつは贅沢にできてますね。
グネーオさんの方も8回転の最後をゆっくり脚を下げながらとか、カレーニョが得意としていたような技をきれいに見せてくれましたが、いかんせん体格が小さめなので、迫力が足らん感じでした。

最後はダンサー達が出てきてカーテンコール。
ここでもマーシャが可愛かった。

フランス、英国、ロシア、ドイツ、ちょっとアメリカとキューバというラインアップで、参加国に偏りがあるようにも思いますが、レベルの高い芸術を堪能致しました。
やっぱりバレフェスは楽しい!!

ぴかぴか(新しい)


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世界バレエフェスティバル全幕「ドン・キホーテ」コジョカル&ムンタギロフ

2015年7月29日(水)7PM 東京文化会館
キトリ アリーナ・コジョカル
バジル ワディム・ムンタギロフ
メルセデス ヴィエングセイ・ヴァルデス(1幕)
      川島麻実子(2幕)
エスパーダ 柄本弾
ガマーシュ 梅澤紘貴
森の女王 渡辺理恵
キューピッド 松倉真玲
ドンキホーテ 木村和夫
サンチョパンサ 岡崎隼也
ジプシー女 奈良春夏

久しぶりに東京バレエ団のドンキホーテを見たら、演出も装置も舞台も変わっていて、「楽しい」が凄かったです。「お祭りドンキ」の宣伝文句は伊達じゃない!!まさにその通り!
2014年9月の時にワシーリエフが来日して改訂したようですね。
エピローグもたくさん人が出てくるし、舞台を賑やかにしようという意図で、ソロを踊っている時に後ろの群衆が同じ踊りをシンクロしたり、子供たちをたくさん出したり、3階席だったので演出、振付上の色々な工夫がされているのが良くわかりました。

1幕は夢の場面まで続けてしまって、休憩は1回。
スピーディな演出ながら、ジプシー野営地からドンキホーテが風車に突っ込むまでの話の流れも自然で、いつもそこだけ突出しているような違和感を感じていたジプシー女の踊りも、奈良さんの迫力と気迫もあり、良いアクセントとして感じられました。
ダンスも盛りだくさん、バジルもジプシーと一緒に踊るし、場面転換の時は幕前でのやりとりや小芝居もある。
もちろん主役のコジョカルとムンタギロフは素晴らしかったのですが、東京バレエ団のダンサー達はノリノリで、お祭りを盛り上げるゾ、というパワーがあって、第1幕の広場では群衆役の一人一人がそれぞれの役になりきり、小芝居をして舞台を盛り上げていて、どこを観ても面白い。キトリのソロでも、後ろの人たちが同じ動きをシンクロして踊ることによって、賑やかさを演出していました。

普通ならオペラグラスでコジョカルだけ追っかけてしまう所ですが、それでは舞台全体を観られなくてあまりにももったいないので、第1幕はほとんど使わずに観ていました。それぐらい、東京バレエ団の皆さんが楽しませてくれた。

木村さんのドンキホーテは風格と存在感があり、物語に奥行きを与えていたし、ガマーシュとサンチョパンサがおかしくて、しょっちゅうクスクス笑ってしまいました。観客の皆さん、ここはもっと笑ってあげていい所だと思いますよ。

オーケストラも豪快に鳴らしていて、バレエの伴奏ではボリショイが爆音だったけど、それに近いかも。
コジョカルは、容姿もポーズもテクニックも演技も素晴らしい。一時筋肉ムキムキだったけど、今回はそれほど気にならず、赤い自前の衣装がとても綺麗な色で、かわいいし、何で今まで日本で踊らなかったのだろうかと思いました。ムンタギロフ君は、荒技もさらりとこなすテクニシャンで、頭小さいし手足長いし長身で、身体も柔らかく踊りも正確でサポート上手ということなしだけど、ちょいと控え目なので、こういう演目ではもっとはじけてくれても良かったかも。
ジプシー達と一緒に、エスパーダとバジルが踊るところで、膝から下を後ろに曲げてジャンプするパ(白鳥の道化がよくやるやつね)、ワディム君は柄本さんと比べて、きれいに反っていて、身体が柔らかいのね〜と感心しました。白鳥の道化でも、グレゴリー・バリノフさんは理想的に反っていましたけど、このポーズは意外と難しいんでしょうね。

柄本さんのエスパーダは、もうちょっとあざといくらいキッレキレに踊って欲しかったです。太もものラインが丸いので、そこで既にエスパーダとしてどうかという印象ですし、粋じゃなかった。(森川さんのエスパーダが観たかったな。)

夢のシーンでは、女性の皆さまがぴったりと揃っていて、手の角度などびっくりするぐらいシンクロしていました。ユカリーシャ効果かしら。厳しいリハーサルするらしいので。
ドリアードの女王の渡辺理恵さんは、清楚できりっとして踊りも端正で美しかったです。
キューピッドの松倉さんは脚長くて、ジャンプも軽やかで、適役でした。
マラーホフの指導か、東京バレエのダンサーの皆さんは、ほとんど足音がしないのですが、ここで登場のちびっこキューピッド達だけカツカツとポワントの音がうるさくて、どうしてユカリーシャはそこにダメ出ししなかったのかと思いました。
子どもにはムリってこともないですよね。ポワントを柔らかめの物に工夫したり、最後まで力を抜かずに踊るように指導したり(漫画「アラベスク」にもそう書いてありましたよね)、やろうと思えばできるはず。
そこでせっかくの素晴らしい舞台が興ざめになってしまう事があるのですから。

第2幕は狂言自殺から、グランパドドゥまでで、1幕に比べてクラシックのテクニックを見せる場面が多かったですが、東京バレエ団のダンサーたちは皆健闘していました。
一時期に比べ(特に男子)クラシックが上手になってきました。マラーホフ効果でしょうか。
中堅どころがごっそり抜けてしまいましたが、こういう時こそ若手をどんどん育てて欲しいし、若い人もチャンスを与えられたらがっちりつかんで欲しいですね。

そのチャンスを掴んで見事プリンシパルになった梅澤さんのガマーシュは絶品でした。
最後にガマーシュとキトリとバジルのピルエット合戦があって、ここでマネージュやピルエットをするのですが、梅澤さんも負けていなかったし、とても楽しい趣向でいいですね!
客席も大盛り上がりでずーっと大きな手拍子があがって、本当にこんなに素敵な空間と時間を共有できて、ダンサーのみならず客席の観客の皆さんもありがとう!最高のバレエフェスの幕明けになりました。


ぴかぴか(新しい)









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2015年07月05日

新国立劇場バレエ「白鳥の湖」茅ケ崎公演

2015年7月4日(土)15時 茅ケ崎市民文化会館
オデット/オディール 長田佳世
ジークフリード王子 奥村康祐
ロートバルト 貝川鐡夫
道化 八幡顕光
パ・ド・トロワ 柴山紗帆 細田千晶 池田武志
ルースカヤ 木村優里

NHKで放映されたキャストと、主役以外はほぼ同じです。
舞台が少々狭いので踊りにくいところもあったかもしれません。
1列目で観賞しましたが、オケピがないので、ダンサーとの距離が近いこと!!
奥村王子の荒い息づかいや、ダンサー達の汗に光る肌も良く見えました。

シーズンラストの公演とあって、ダンサー達はとても気持ちの入った演技と踊りで、1列目の私は舞台の中に入ってしまったような感覚で楽しみました。
特に一幕の王子の友人たち、村人たちの踊りは、上品で軽やかで、そこに道化がぴりっと締める、みたいな。
八幡さんの道化は、かわいくてテクニシャンで素晴らしい。

第2幕の白鳥のコールドの揃っていること、最前列に超美人の関晶帆さん。
大原先生は白鳥もコールドは背の高い順に前から、なんですね。

長田さんのオデット。音楽のとらえ方や差し出す足先にも気持ちの入った饒舌な踊り。
姫にしてはファニーフェイスだけど、踊りの上手さ、演技力、表現力のバランスのとれたプリマだと実感しました。

王子の奥村さんは、若者らしく、どこかボクちゃんっぽい感じですが、踊りはのびやかでノーブルさもありました。

新国立バレエ団はやはりレベルが高く、素晴らしい舞台を見せてくれました。
残念だったのは、集客です。1階、2階とも7割ぐらいの入りだったでしょうか。
地元のバレエ教室は500人も生徒さんがいて、発表会は3回に分けてやっていて、もちろん満席。
なのに、どうして生徒さんたちはこんな凄いお手本を見に来ないのでしょう。
主催の茅ケ崎市も集客の努力が足りないと思いました。
親子券などのセット割引をしてもいいし、学性割引とか、直前割引とか、いろいろ打つ手はあったはずです。
そんなに集客をしなくてもいいという殿さま商売的な感覚がプンプンします。
たとえば、私が車椅子の母を連れて行こうと、障害者割引はあるかと聞いたら「まったくない」とのことです。
障害者割引、高齢者割引などがあってもいいと思います。
まったく茅ケ崎市のやり方は納得できません。
せっかくの、一流の文化芸術に触れる機会なのに。


ぴかぴか(新しい)



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2015年06月13日

新国立劇場バレエ「白鳥の湖」米沢&ムンタギロフ

2015年6月10日(水)7PM オペラパレス
オデット/オディール 米沢唯
ジークフリード王子 ワディム・ムンタギロフ
道化 八幡顕光
ルースカヤ 木村優里

シーズンエンドのこの作品は、この初日舞台が録画され、NHKBSプレミアムシアターで放送されるそうで、そのせいもあってか、みなさん気合が入ったパフォーマンスでした。
第1幕は、道化役の八幡さんが踊りの主役。
ジャンプや回転などのテクニックは目を見張るほどで、それでいながらどんな場面でもかわいらしい!
至極の「道化」芸に昇華している。
オディール顔負けの32回転も見事。

第1幕のコールドはパステルカラーの色あいが優雅で品よく、そこに道化がピリッとした味つけをする。
パ・ド・トロワの三人もふんわりとして心地よく、池田さんのジュッテは後脚が高くあがってきれい。
ワディム王子は、短めに切った髪型も、体型も踊りもノーブルで理想的。

第2幕、登場のシーンのオデットが素晴らしい。
クラシックバレエの象徴でもある「白鳥の湖」の湖畔の2幕のオデットは、余計なものをそぎおとした白い衣装で、鳥になった女性を表現する。
ここでは体型、テクニック、音楽性、プリマの人間性すべてが露呈する。
だから意図的に表情を作るような作業は必要ない。
踊りにすべてを込めて、丁寧に集中するのみ。
その点、唯さんのアプローチは正しいと感じた。
あまり表情を作らないが、正確で美しいポーズ、柔らかな腕の動き、ピタッと止るバランス。
テクニックのあるダンサーなので、余裕がある。
踊りでオデットの悲しみを表現していた。

オディールでは、ヴァリエーションでトリプルピルエットに続いてアティチュードターンという難しい技を、さらっと何事もないように4回ぐらい決めて、途中4回転ピルエットもきれいに決めて、コ―ダのフェッテは、最初はシングル、シングル、トリプルを4回ぐらい繰り返し、その後はシングル、シングル、ダブル。
涼しい顔でこんな大技を決めるという、すべてのバレリーナの羨望と夢を現実に身につけている稀有な存在。
きっと稽古場では10回転ぐらいやってしまうのだろうから、舞台でも、もうちょと頑張って5回転ぐらい見せて欲しい。唯さんの「余裕」でなく「必死」なところを一度見てみたいと思います。

今回のキャスティングで大抜擢されたのが、ルースカヤを踊る木村優里さん。
小学生のうちからコンクールで数々の賞を取り、新国立バレエ研修所に予科生から入所し、この秋にはバレエ団に入団するらしいです。
牧版のルースカヤは、プリンシパルとか次期主役候補とか、他団のプリマとか、重鎮ソリストとかが踊る「様々な事情から今回主役は踊らせてあげられないけれど、これで目立って頂戴ね」という感じの、特別な役。
衣装はロシア人形みたいで素敵だけれど、踊りはたいして面白くなくて、ソロなので長くて退屈〜と感じることが多いです。今まで見た中で面白かったのは、寺島まゆみさんが踊った時ぐらい。

木村優里さんのルースカヤは、登場の時から「なんて堂々としているんだ!」と驚かされ、女性らしい美しさ(彼女はとてもスレンダーな体型で衣装が似合う)、フレッシュな踊りに魅了されました。
この大舞台に立つのが楽しくて仕方がないように微笑み、若さからくる軽やかさをアピール、ゆっくりな所と音楽が盛り上がる所のメリハリも効いていて、観客を引き込みました。こんな風に軽やかにルースカヤを踊った人は初めて観ました!
(ルースカヤという踊りは、今まではベテランが踊ることがほとんどだったので、重厚な感じがつきまとっていたのです)
まだ正式にバレエ団に入ってもいない、無名のダンサーにこの役を踊らせるというのにはびっくりしましたが、その期待に見事に答え、将来が楽しみです。大原芸術監督は彼女を新国立劇場の新たな柱になるプリマとして育てる気なのでしょう。

牧版の白鳥は、第4幕が再演時に改訂されて、王子とオデットが二人で踊る曲(王子がオデットに許しを請い、オデットが許す)が時間短縮の為らしくバッサリカットされてしまったのが残念です。
それから王子がオデットをリフトしてロットバルトに向かうと何故かロットバルトが苦しんで滅びる(オデットが最終兵器?)という演出も相変わらずですが、もう少しわかりやすく工夫して欲しいものです。
創造性の感じられない第4幕が物足りませんが、ダンサーのパフォーマンスも美術も素晴らしいこの舞台が映像に残って、すぐにTV放映されるのは喜ばしいことです。

(たぶん6月28日深夜のNHKBSプレミアムシアターです。)

ぴかぴか(新しい)





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2015年06月01日

Kバレエ「海賊」中村祥子

2015年5月31日(日)14時 オーチャードホール
メドーラ 中村祥子
コンラッド スチュアート・キャシディ
アリ 池本祥真
グルナーラ 浅川紫織
ビルバント 杉野慧



Kバレエは、日本のバレエ団としては初めて、公演のライブ・ビューイング(と言っても、録画ですが)を映画館で行うそうで、その録画が行われたのがこの日のようでした。
録画を行うこともあって、皆さん気合いが入っているようでしたし、キャシディ、祥子さん、浅川さんとプリンシパル3人投入。

キャスト発表時に、キャシディさんがコンラッドを踊るというので驚きました。(今のKバレエには祥子さんを上手にサポートできる人がいないのか?宮尾さんでは役不足なのか?遅沢さんではダメだったのか?)
キャシディさんはくるみのドロッセルマイヤーとかコッペリウスとか、あまり踊らないキャラクター系主役という認識ができていたので、本人的にもきついのではないだろうかと。

まあ、キャシディさんもまだ踊れなくはないですけれど、正直踊りが重いですし、Kバレエの男性陣はテクニックがあってポンポン飛ぶ子が多いので、比べちゃうと厳しいですね。
ただ存在感はさすがで、今回の海賊の首領コンラッド役にはぴったりでした。

熊川さんがアリを踊ると、コンラッドより偉そうに見えてしまいますが、今回のキャスティングは、コンラッド、アリ、メドーラの関係性がきちっとはまっていたのがよかったです。

中村祥子さんは、登場の瞬間から劇場の空気が変わるようなオーラがありました。
出産をされてから、以前より優しく女性らしさが増したと感じられますが、体型は遜色なく、背中や全身の筋肉のラインがよく見えるほど痩せています。
トゥでのバランスは長く、たゆとうようなゆとりがあって、それがいいのです。
32回転のフェッテでは、最初はシングル、シングル、ダブルを5セットぐらいやって、その後はダブルの連続でした。最後にちょっとよろけちゃったのが、彼女にしては珍しい失敗だったですが、おそらく映画館中継ではゲネプロの録画かなんかと入れ替えるでしょう。

そして、今回素晴らしかったのが池本さんのアリでした。
完璧といえるほどの踊りです。特にジュッテの時に開脚が180度以上パッとひらくのが気持ち良いです。
ジャンプの高さもとっても高くて、高く飛びすぎて戻って来れないんじゃないかと思われたというニジンスキーを彷彿とさせます。
これだけ凄いアリを踊れるダンサーがいるのなら、もう熊川さんは踊る必要ないです(笑)

今のKバレエの中で踊りが上手で目立つのは井澤さんだと思っていましたが、池本さんもこんなに上手だったとは恐れ入りました。ただ、踊りは完璧ですが、もう少し俺様アピールがあってもよいような気がします。演技が少々淡泊というか、この役柄としてはコンラッドの忠実な従者なのでそれでもいいのですが、アリとしての自意識のようなものが感じられませんでした。(熊川アリの場合はそれがありすぎるのですが)

浅川紫織さんは、Kバレエの女性陣の中では現在実質トップなわけですが、祥子さんのオーラと比べると、美しいですが地味に感じられてしまったのは不思議です。怪我を乗り越えてどんどん成長しているプリマですが、硬質な持ち味があるので、もっと自由に自分を解放して色気を醸し出したらいいのではないかと思います。

今回、私のお気に入りの杉野さんがビルバントで、この役はいつもビャンバさんで見てたので、かなり新鮮でとっても素敵でした。やる人によって、ただの悪役でなくて魅力的になるんですね。ホントに杉野さんの才能は日本人としては珍しいぐらいのアピール力で、舞台に立つ人はこのぐらいやってほしいですよ。
これからも注目しています。色物だけでなく、王子もぜひ踊らせてあげてください!

ぴかぴか(新しい)
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2015年04月27日

バーミンガム・ロイヤルバレエ団「白鳥の湖」ギッテンズ&シングルトン

2015年4月26日(日)14:00 東京文化会館

オデット・オディール セリーヌ・ギッテンズ
ジークフリード王子 タイロン・シングルトン
王子の友人ベンノ ツァオ・チー

ピーター・ライト版の白鳥は初めて見ました。
まず、プロローグで王様の冠を載せた棺が運ばれ、涙にくれた王妃が続きます。
喪中という設定で、王子も王妃も黒い衣装です。
普通の版では、王子の誕生日のお祝いで友人や街の若者が踊り、王妃からプレゼントに弓を贈られるという設定ですが、ライト版では、王子を励まそうとベンノが宴を催し、高級娼婦を二人呼ぶという設定です。
弓は友人からの贈り物で、高級娼婦二人とベンノと王子が踊るのがパ・ド・トロワ。

白鳥の第二幕は、出演するのがほとんど女性で、この版では一幕と二幕を休憩なしで上演するという都合上、第一幕ではトロワの女性二人以外は冒頭だけですぐいなくなり、あとは男性陣が踊りまくり、振袖みたいな重々しい衣装の男性達も踊るという、異色な一幕です。
通常は湖に行く途中で踊れられる哀愁を帯びた王子のソロも、パ・ド・トロワに挿入されています。
タイロン・シングルトンは長身でスタイルが良く、エレガントにとても丁寧に踊っているのが好感が持てます。
美術は黒を多用して、暗めで重厚な雰囲気、女性の衣装も、黒や茶やダークな色合いを中心に、中世風にレースを重ねるようなものが多かったです。
友人達と宴を催していると、王妃が現れて、「喪中なのに、なんて不謹慎なことをしているのです!あなたは王に即位しなくてはならないのですから、明日の晩餐会では、このお姫様の中から結婚相手を選びなさい!」と三枚のお見合い写真(大きな本のようになっていて、従者が開けて見せます)を持ってきます。
王妃は王を亡くした悲しみで老け込み有無を言わせません。

鬱々とした王子はベンノと湖へ狩に行き、白鳥と出会って…という二幕はほとんど通常と同じです。
オデットが身の上をマイムで語るシーンもあります。
白鳥が4羽かける4列で16名というのは、ツアー仕様だからなのか、もともとそういう構成なのか、少々物足りません。
白鳥たちはフォーメーションを頻繁に変えます。
前列に2009年のローザンヌ・コンクールでスカラシップを受賞した水谷実喜さんがいました。他にも東洋系の方が3人ぐらいいました。

セリーヌ・ギッテンスはトリニダート・トバコ出身で、2006年のローザンヌコンクールのファイナリストだそうです。黒人というよりは、少し褐色系の肌色ですが、かなりドーランを塗っているらしく、黒人という感じはまったくしませんでした。手足が長く、顔もかわいくて、ポリーナ・セミオノワに雰囲気が似ています。
彼女も高い身体能力を過剰に見せることなく、上品にすべてをコントロールして、差し出す足先の一歩も丁寧に踊っていて好感が持てました。
シングルトンとの並びは背の高さもヴィジュアルもぴったりお似合いで、この二人は黒人の持つ並外れた身体能力を上手に、きれいに見せることを心得ていると思いました。

四羽の白鳥は、水谷さんも左端に入っていましたが、ピッタリと揃って見事でした。

そして休憩をはさんで第三幕は、王子の花嫁候補は3人です。
それぞれがソロを踊った後に、各国の踊りがあります。
ハンガリーの王女は、2007年のローザンヌ・コンクールで印象に残ったデリア・マシューズ。金髪美人で、踊りもきっちり正確でなかなか迫力がありました。曲は何の曲がわかりませんでした。
ポーランドの王女の曲は、ロットバルトのソロで使われる曲でした。
イタリアの王女が水谷さん。チャイパドのヴァリエーションの曲で、アレグロの速さにピタピタと軽やかにあわせる音楽性が素晴らしくて、彼女はこれからどんどん昇格していくと思いました。

オディールに扮したギッテンズは、白鳥の時よりも幼く感じるようなカラリとした可愛さ。あまり悪意のない小悪魔ちゃん、といったところでしょうか。
演技は過剰ではありませんが、程よく、ヴァリエーションも大変にきっちりと見事に踊ります。
オディールのグラン・フェッテはダブルを最後まで挟み込みながら、ほとんど場所の移動なしにきれいに回り、体の軸がしっかりしているのがよくわかりました。

第4幕では、白鳥たちのコールドバレエがあり、その後オデットが悲しみにくれてやってきて、そして王子がやってきてオデットに許しを請います。ロットバルトが現れて二人をいじめ、王子がオデットを頭上にリフトし、バズーカ砲のようにロットバルトに向けると、愛の力でロットバルトは弱ります。しかし、現世では結ばれることはないとオデットは湖に身を投げてしまいます。
王子もその後を追って飛び込もうとするのを阻止しようとするロットバルト。
ロットバルトを押しのけて身を投げる王子。
白鳥たちがロットバルトをつつき、ロットバルトは滅びます。
あの世で結ばれる王子とオデット。
現実の世界では、王子の遺体を抱いたベンノが現れて、幕となります。

黒人の主役カップルという事に注目していた公演でしたが、ギッテンズはビジュアルは白人に近いので、人種のことはあまり気になりませんでした。
先日、遅ればせながら、映画「ファースト・ポジション」を観たのですが、あれに出てくるシエラネオレ出身の女の子ぐらいだったら、白鳥を踊るのはやはり違和感があるだろうと思ったのです。
白鳥と黒鳥、善と悪。
そういう決め付けはいけませんよね。
だから、ダンサーが黒人ならば、いっそのこと衣装の色を逆にして、オデットが黒の衣装、オディールを白の衣装にしたら、そしてもちろん群舞も黒い衣装にしたら、もうそれだけでも、まったく違う物語になってしまうかもしれない、などと妄想していました。
白鳥の湖は、いろんなヴァージョンがありますが、まだそういう版は作られていません。
クラシックバレエの世界には圧倒的に黒人の数が少ないですから。
ハーレム・ダンスシアター、あるいはキューバ国立あたりで、そういうのやってくれないかな。


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2015年03月31日

「ジゼル」ザハロワ&ボッレ

2015年3月15日(日)2PM ゆうぽうとホール

ジゼル スヴェトラーナ・ザハロワ
アルブレヒト ロベルト・ボッレ
ヒラリオン 森川茉央
バチルド姫 吉岡美佳
ミルタ 奈良春夏

女王の風格でプリマとして君臨するザハロワには、ジゼルには似合わないのではないか…
という思いを裏切ったのが、DVD化された2006年ミラノスカラ座の「ジゼル」
とにかく美しかった。
それから9年。
「ジゼル」と「白鳥の湖」はバレリーナにとって特別の意味のある作品らしい。
白鳥のオデットとオディールを踊り分けること。
ジゼルの乙女らしさ、そして狂乱の場面を演じきること。

白鳥はテクニックとして難しい部分があるので、年齢を重ねていくと踊るのが難しくなるが、ジゼルはその点、32回転のフェッテのようなものはないので、かなり年配になって技術よりも演技力や情緒性の部分が増しても十分観客を感動させることができる。
往年の谷桃子先生のジゼルを子供の頃に見て感動したことを覚えている。
新国立でのダリア・クレメントヴァのジゼルも、一幕では年齢を感じさせないかわいらしさだった。

さてザハロワは、このところボリショイでは、若手ダンサーを育てる立場になっているようだ。
ワールドバレエデイのレッスン風景でも「孤高のバレリーナ」とでも言うような他を寄せ付けないような雰囲気をただよわせている。

9年前は、ただ踊っているだけで美しかったザハロワだが、出産後は、あばら骨が目立つほど痩せて、悲壮を感じるほどだ。今は、ジゼルという役柄をこう演じたいというしっかりしたプランを持って踊っている。
踊りが好きだけれども控えめで、箱入り娘のようにうぶで。
差し出す足先ひとつとっても、丁寧である。

ボッレはもうすぐ40才とは思えないほど若々しくて美しい。
ベージュ系のマイ衣装は、美しい脚と美しいヒップのラインを際立たせる。
こんなベージュ色の衣装が似合う奴はそうそういない。

ウィルフリードの岸本君は、マイムもエレガントで、貴族につかえる者らしい。彼のアルブレヒトが見たい、と思わせるほど、踊らなくてもたたずまいが良いのです。

ザハロワもマイ衣装らしく、白いクラシックチュチュにブルーのサッシュとエプロン。
東京バレエ団の方々のパ・ド・ユイットやコールドバレエはアンサンブルが良くなってきているのだけれど、この中に衣装の雰囲気もスタイルも違うザハロワはまるで妖精さんがひとり混じっているよう。

せめてもう少し衣装が東京バレエ団となじみがあるような暖色系のものだったりすればよいのだが、たとえていえば、月から来たかぐや姫が、百姓たちの中に一人まざっているようなもの。

狂乱の場面でも、ヘアもあまりぼさぼさにはならない。
美しくダウンへアになった感じで、美しさを壊さないように狂っていく、というか美しくないように見せることのほうが彼女の場合は難しいのかもしれない。

ボッレは、あまり濃い演技はしない。彼ほどのイケメンで踊り上手ならば、もっと、どうだっ!という俺様モードになったり、ナルシストになってもよさそうなものなのに、彼にはまったくそれらがない。
容姿にも身体能力にも恵まれて、コンプレックスのない人というのは、このように毒にも薬にもならない雰囲気を身に着けるのだろうか…などと考えてしまった。それほど、美しいけれど私の心にひっかからない。
たぶんボッレはコンプレックスがないから人を恨んだりしないし、きっとすごく性格がいいのだと思う。
踊りは素晴らしい…ウィリーに踊らされる場面で、連続のアントルシャをやるのを見たのは清水健太さん以来だ…素晴らしいというか凄い!!
それにサポートがめちゃくちゃうまい。ザハロワが、まったく体重がないようにふわっとあがる。
だけどもっと…なんというか…せっかく東京バレエ団のアドバイザーとしてマラーホフが来ているのだから、もっとロマンティックにやって欲しかった。

でもおそらくマラーホフも少しは演技指導したのだと思う。第二幕では、ザハロワとボッレは視線を合わせないように踊っていた。それは、マラーホフの解釈で、アルブレヒトは精霊になったジゼルを感じることはできるけれども、見ることはできないから、二人の視線は合うことがない、という。
二幕では、ザハロワも、思う存分妖精らしさを発揮できて、お墓から出てきたところも高速回転で、ジャンプも高くて素晴らしかった。
ボッレも最後に夜明けが来て、ジゼルのお墓で泣き崩れるところは、彼の慟哭が伝わってきて良い演技だった。

第二幕のジゼルのヴァリエーションでは、ピクリともせずに脚を6時のポーズまでもっていくザハロワの身体能力と集中力のすごさを堪能した。

ミルタの奈良春夏さんは、ふわっとして空気の精の感じはよく出ていたが、ミルタの恐ろしさや冷たさ、威厳のようなものはあまり感じられず。東京バレエ団のミルタといえば、なんといっても井脇幸江さんの絶対零度のようなミルタが印象に残っているが、井脇さんの温度をさらにマイナスして氷点下ぐらいに客席を凍らせてくれるミルタを待ち望んでいる。

ウィリー達のコールドバレエは良く揃っていて見事だった。特にヒラリオンとアルブレヒトをいけにえにして連れて来る場面で、舞台を斜めに一列に並ぶところは一糸乱れぬ直線で息を呑むほどのビジュアルであった。




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2015年02月20日

新国立劇場「ラ・バヤデール」小野&ムンタギロフ

2015年2月17日(火)7PM オペラパレス
ニキヤ 小野絢子
ソロル ワディム・ムンタギロフ
ガムザッティ 米沢唯
マクダヴェヤ 福田圭吾
黄金の神像 八幡顕光

久しぶりに夜のオペラパレスへ足を運んだ。
この劇場は音響を考えて、床も壁も木で作られている。
日が暮れた水辺にホワイエの照明が明るく映っているのを見上げながら劇場に入り、独特の匂いの木の客席の間の階段をコツコツを足音をさせて降りていくと、「ああ、劇場に来たんだ…」というわくわく感がこみ上げてきた。
オケピで練習をするオケの音や、始まりの予感でざわめいているホワイエなども、「劇場体験」そのもの。
ゆうぽうとや東京文化会館では味わえない、外国のオペラ劇場のようなこの感じ。やはり新国立劇場はいいなぁ。

ラ・バヤデールは他のバレエ団のものも含めて何度か見ているけれども、やはりニキヤとガムザッティを実力が拮抗するようなプリマが演じると抜群に面白くなる。
ニキヤの小野絢子さんは、安定した技術と、情感のこもった演技で、ガムザッティの米沢唯さんは、磐石のテクニックで観客を沸かせ、ワディム・ムンタギロフは柔らかい背中と、ふわっと浮かぶような跳躍、難しい回転技などもさらっとこなす卓越したダンサーぶりで観客を魅了した。

スーパーなスタイルを持つコールドバレエの美しさも一段と向上している。今回は、コールドの並びを身長が高い人から前の列に配置しているので、さらにスタイルのよさが際立つようです。
特にバレエ研修所9期生の関晶帆さんが常に目立つ位置で目をひきます。大原先生のお気に入り?

コールドの人たちは抜群のスタイルなのだけれども、主役のプリマ二人は、小野さんはテクニックと演技は素晴らしいけどあともうほんの少し手足が長かったらとそれだけが残念だし、超絶技巧をさらっとこなす米沢さんは、細すぎて子供っぽく見えるスタイルだし、お顔が和風で華やかさに欠けるのが残念。
影のヴァリエーションを踊った寺田さん、堀口さん、細田さんはスタイル抜群でゴージャスだから、この三人でニキヤとガムザをやるところを見てみたい。容姿がプリマ向きの人がたくさんいるのに、その方々がなかなか主役にキャスティングされず、経験をつめず育っていません。
牧バージョンのラ・バヤデールは、インド風のタペストリーをふんだんに使った美術も素敵だし、お話もよくまとめられていて無駄がなく楽しめるし、コールドの美しさも堪能できるので、4公演といわず、10公演ぐらい打って、プリマを育てればいいのに、と思います。小野・米沢は少々飽きた。

第一幕のマクダヴェヤが迫力満点。すごい太もも。誰かと思ったら福田圭吾さん。
巫女たちの踊りは、みんなスタイル良くて美人できれいでした。
ソロルの登場シーンはふわっと。ワディムはマイムが明確。
マイレンの大僧正は安定。
小野ニキヤは、前述のように彼女は少しスタイルの部分で不利なので、ヴェールをあげたときの圧倒的な驚きというほどではなかったかな。きれいだけど、やはりザハロワにはかなわない。
まあ、誰もザハロワにはかなわないだろうけど。

米沢ガムザと小野ニキヤ対決は、ニキヤに突き飛ばされて床に倒れたガムザが、スッと上体を起こしたまま、「なんなの、これは一体。なんでこの私が突き飛ばされるの」というように2,3秒自問自答をしているように見え、そのあと「卑しい身分の分際で!許さない」とガムザに怒りをあらわにしていきました。
その脈略がよくわかる良い演技を米沢さんはしていました。
どうしても少々子供っぽく見える容姿だし、いつもさらっとしすぎている米沢さんが、どのようにゴージャスなお姫様を演じるのかと思いましたが、この対決シーンは良かったです。
踊りはいうことなし。婚約式でのヴァリエーションも、イタリアンフェッテも、トリプルを入れたフェッテもまったく危なげなく、さらっとこなして。

小野さんは、婚約式での悲しみの踊りが、とっても情感がこもっていて、緊張感があって素晴らしかったです。その後の花かごの踊り、へびが仕込まれていて毒がまわって、ソロルを見ると、彼はガムザの手をとっている…絶望して大僧正の解毒薬を拒否して死ぬ一連の流れも、女の情念のようなものが出ていました。
第三幕のヴェールの難しい踊りもきれいに踊り、その後のソロでは超速シェネやピケターンにすごいキレがありました。

ワディムさんは、長身、小顔、手足が長く、太もももすらっとしてきれい。背中が柔らかく、ヴァリエーションの最後では、背中が床につくほどそらせていて、驚きました。
彼はノーブルダンサーとか言われていますが、実は野蛮なぐらいのテクニックの持ち主で、今回はやりませんでしたが、見たこともない超絶ファイブフォーティ技を持っています。まだ若いのにすごいもんです。
若くて見た目かわいいのに凄いんですというのは、フィギュアスケートの羽生結弦と通じるとこがあります。
王子役もいいけど、彼が思う存分暴れられるような役柄で見たいものです。

黄金の神像の八幡さんは、さすがという踊りでした。
ボディコントロールと回転技が素晴らしい。
プリンシパルなのに、主役踊らないでこんな役ばっかりなのがお気の毒。

婚約式の踊りもいろいろあってゴージャスだし、影の王国も美しい。
音楽もとっても良かったです。
劇場と音楽と踊りと美術、衣装、すべて楽しかった!!!


ぴかぴか(新しい)







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2015年02月18日

IBCバレエ団「眠れる森の美女」

2015年2月15日(日) 3PM ゆうぽうと
オーロラ姫 松岡梨絵
デジレ王子 ジュゼッぺ・ピコーネ
カラボス 橋本直樹
リラの精 井脇幸江

井脇幸江さんは、斉藤友佳里、吉岡美佳と同世代で長い間、東京バレエ団の3本柱として活躍していました。
古典ではジゼルのミルタ、眠りのカラボス、ドンキのシプシー、ラ・シルフィードのエフィなどの重要な脇役で、舞台を引き締める役どころで、コンテンポラリーでは春の祭典の生贄など、主役級をレパートリーにしていました。
プリンシパルと言っても、常に主役を踊る斉藤さんや吉岡さんとちがって、キャラクターダンサー的な扱いだったと思います。
実力がなかったわけではなくて(それはIBC立ち上げ公演の素晴らしいジゼルで証明されています)、タイミングや団の事情などによるものだったと推測します。
だいたい東京バレエ団は、海外からのゲストを主役にして公演する事がほとんどだったから、団員を主役として育てる環境があまりなかったとも言えます。
東京バレエ団を辞めずにいたら、ミストレスや、付属バレエ学校の教師(校長)をしながら、時々王妃とかの立役をやるような未来だったかもしれません。

バレエ学校からダンサーとして育ててくれた東京バレエ団を飛び出し、IBCというバレエ団を立ち上げ、ダンサーが心から楽しいと感じて踊る事のできる舞台を作りたいという、井脇さんの野望というか、野心とチャレンジ精神には感服していますし、心から応援したいと思っています。
立ち上げ公演のジゼルでは、井脇さんの目指したような舞台になっていたと思います。
その後、ガラとドンキ全幕などは観なかったのですが、今回は、元Kバレエの松岡梨恵さんがオーロラを踊るというので、楽しみにしていました。

松岡梨絵さんは、キラキラしたオーラを放ち、優雅で上品な美しさあふれるオーロラでした。
Kバレエ時代踊ったオーロラが素晴らしかったと友人に聞いていたので、噂以上の演舞が観られて大変満足です。今、日本のプロフェッショナルなバレエ団を見回しても、松岡さんのような美しい容姿と輝き、正確なテクニック、女性らしい柔らかさを兼ね備えたダンサーはいないと思います。

王子のピコーネさんは、すごいイケメンで長身。松岡さんと身長の釣り合いもいいし、本当に絵に描いたような美男美女。だけど踊りは重かったです。いくつなのかわかりませんが、結構年なのかも?

カラボスの橋本直樹さんは柔軟で伸びやかな跳躍は健在で、マネージュしまくりでした。
カラボスを男性が踊るのはよくある事ですが、役の設定自体が男性というのは初めてです。目からウロコです。
ただ、橋本さんって、もともと持っているオーラが明るいので、憎しみや嫉妬まみれのカラボスのダークさとは相容れない個性なんですよね。踊りそのものが明快で爽快なものだから、どうしても伝わってくるものが陽性なんです。
松岡さんと並ぶとちょっと背が低いけど、夫婦だからサポートは慣れているだろうし、橋本さんが王子でも良かったのにと思いました。
井脇さんのリラの精は、観ていた時は、だいぶテクニックが落ちちゃったなぁと思ったのですが、なぜか舞台が終わった後に、頭の中でぐるぐると浮かんでくるような、不思議な存在感がありました。観客に訴えかけてくる力は健在だったようです。

メインの4人のダンサーと、元東京バレエ団の方々、そしてある程度のレベルに達している数人のダンサー以外は下手すぎて、これはプロの舞台として見ていいのか、それともアマチュアの贅沢な発表会として見た方がいいのか困りました。特に妖精たちのレベルが、先週見た東京バレエ団の踊りと違い過ぎるし、コールドの中に足先も伸びない子がいて興ざめでした。これだったら、私の地元のバレエ学校のジュニアちゃんたちの方がもっと上手じゃないかと思います。
いちおう9千円も払ったし、それだけの舞台になっているだろうと思っていたのですが、これでは高すぎると感じました。ジゼルの時は値段に釣り合わないとは感じなかったのですが、演目の選択の問題でしょうか。

眠れる森の美女のようなグランドバレエでは、まず生オケの演奏、宮殿の豪華なセットと貴族達のゴージャスな衣装、ある程度の人数も揃えないと、見応えのある舞台にするのは難しいようです。
井脇さんの演出は、カラボスを男性に設定し、オーロラが黒バラのトゲに刺される設定により、糸紡ぎうんぬんのシーンをバッサリカット、幻想の森もオーロラのヴァリエーションは無くて、パノラマの音楽も使わず、休憩2回でも3時間のかなりの短縮版。
カタラビュットがカラボスに猫に変身させられたり、赤ずきんちゃんが増殖して狼を追い払ったりと、ユニークなアイデアが光っておりましたが、いかんせん、グランドバレエとしては予算が一桁足りないようでした。
芸術にはお金がかかりますからね。
ジゼルなら男性もそんなに必要ないし、セットも豪華でなくてもよい。
井脇さんのチャレンジと、松岡さんをゲストに呼んでくれたという事はいいのですが、身の丈というか、IBCの現実に即した作品を選んで上演して、レパートリーを増やすよりも質を高めるほうがよいのではないかと思いました。

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2015年02月12日

東京バレエ団「眠れる森の美女」川島&岸本

2015年2月8日(日)2PM 東京文化会館
オーロラ姫 川島麻実子
デジレ王子 岸本秀雄
リラの精 三雲友里加
カラボス ウラジーミル・マラーホフ

マラーホフ版の眠りは、まさにマラーホフの「バレエ絵本」ですね。
彼の大好きな紫色とバラの洪水。
マラーホフの大好きなお菓子のパッケージみたいな妖精の衣装。
マカロンみたいな色使い。
初演の時には、猫ちゃんたちの衣装が、かわいい系ではなくて豹柄だったのでちょっと違和感がありましたが、考えてみたら豹柄もマラーホフが好きそうです。
マラーホフが、自分が好きなものだけを詰め込んで作ったこのヴァージョンを上演するのは、これからは東京バレエ団だけになるのでしょう。
マラーホフのいたベルリンでは、新芸術監督のナチョ・ドゥアトは自分の作った版を上演するだろうし。

王様とか貴族たちの衣装などは、体格が見劣る日本人では着こなせないと初演時に感じましたが、今回この作品を見ていて、これはこれで、なんだか生身の人間でなくてお人形たちが演じているような雰囲気が出て、面白いような気がしてきました。

思えば、初演時はマラーホフが王子でヴィシニョーワがオーロラ。
ただでさえ耽美すぎる美術と衣装に、さらに濃い二人で、もうお腹いっぱい。
その点、淡白な日本人が演じると、くどさが薄まって、ちょうど良い。

川島さんは、はかなさを感じさせるほど細くて、清潔感があって、初々しいオーロラでした。
テクニックもあるようで、ローズ・アダージオでは、王子の顔をにっこりと微笑んで見てから、手をアンオーに上げていました。この場面、表情が固くなるダンサーが多いですが、川島さんはそんなこともなく、あぶなげなくバランスを取っていました。
しっかりしたテクニックがあるのに、そんなことをひけらかすようなことはせず、ひとつひとつの踊りを丁寧に踊っているのがとても好感がもてましたし、必要以上に表情を作ったりしないところも良かったです。
初役だとはとても思えないほど、安定した踊りと演技で素晴らしかったです。

そして岸本王子!!
登場のシーンでの、びっくりするぐらい高い跳躍が美しい。
踊りの質がとても良いダンサーですね。
指の先までエレガントです。
男性ダンサーは、ジャンプをするときに力んでいるように見えることが多いけど、岸本さんはまったく力みなくふわっと跳躍します。特に王子のヴァリエーションでは、マラーホフ仕込なのか、猫のようにまったく着地音のしない、美しいジュッテでした。
すごいポテンシャルを感じます。これからどんな風に進化するのかとっても楽しみです。

妖精さんたちも、コールドもみんな揃っていていい出来だったと思います。
カナリアの精を踊った沖香菜子さんが、生き生きとしてかわいくて目を惹きました。
サファイアを踊った河谷まりあさんもかわいかった。
お二人のオーロラも見たいです。

ぴかぴか(新しい)

posted by haru at 22:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 公演レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする